大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想“AKB48論”

2013-09-29 22:32:40 | 読書感想
タキさんの押しつけ読書感想
小林よしのり“AKB48論”


これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している書評ですが、もったいないので転載したものです。


ゴーマニズム宣言SPECIAL最新刊です。
 ゴー宣といえば、ご存知の向きには説明不要……ながら、ちょいと説明すると、小林よしのりは私と同い年、誕生日も同じ8月で、ヨシリンの方が10日早い。20歳の時に「東大一直線」でデビュー、「おぼっちゃま君」も小林作。ギャグ漫画家が二本以上ヒットを出すのは極めて稀、赤塚不二夫くらいしか前例がない。
 ゴー宣を始めたのが92年だから、もう20年以上このシリーズを描いている。当初、左翼寄り論調で始まったが「差別論(95年)」から左翼イデオロギーから飛び出し始め、薬害エイズの運動ボランティアが既制左翼に取り込まれる事に警鐘を鳴らした、96年「脱正義論」から左翼と決別、98年「戦争論1」からは右翼視されている。
 小林よしのりその人は、保守的論者ではあるが、その立場はイデオロギーに捕らわれる事なく“太古からの日本人とは何者か”“そのからだにはいかなる血が流れているのか”にこだわり続け、今や右であろうが左であろうが納得いかない人間には容赦ない非難を浴びせる。一頃ほどの影響力は無くなったようだが、未だに政治/思想論壇からは恐れられる存在ではある。
 その小林が大真面目にAKB48を論じているのが本書。本人は「エエ歳したアイドルヲタ」と言ってはいるが(まぁ、確かに“ヲタ”ではあるが)立派に社会文明論になっている。 最近、敵が増えたので、“小林が描いている、主張している”ってだけで、端から聞く耳持たないっちゅう人が増えているが、そりゃあ狭量っちゅうもんでしょう。私も一頃ほど諸手を挙げて賛成と言いかねる論調もあるが、まずは全部読んでみる。
 ものの20年前、日本人の良識は朝日新聞(人民日報倭国版)論調とイコールだった。保守論壇など無視か蛇蝎のように嫌われた、そこに風穴を開けたのは小林よしのりである。
 ゴー宣初期には左翼だってお世話に成ったでしょ? 薬害エイズ闘争があれだけの規模の大衆運動たりえたのは誰のおかげ?
「護国論」やら「修身論」辺りから???と思う所が出だしている「天皇論」の1/3は賛同しかねる。しかし、小林の論調はほぼ首肯できる。今回の「AKB論」は珍しく、ほぼ100%同意する。“ほぼ”っていうのは、小林が本書中で指摘する“NMBの誰某”“HKTの誰某”ってのが解らんからです。この爺ヲタクが、ええ加減にしなさい(大爆)〓〓〓


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想『祈りの幕の下りるとき他』

2013-09-28 20:02:44 | 読書感想
タキさんの押しつけ読書感想
『祈りの幕の下りるとき他』


これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している書評ですが、もったいないので転載したものです


書評のメールが大幅に遅れまして……じつは、TVドラマ「半沢直樹」の前半が終わった所で、シリーズ第一作だけを読むつもりが、一気に第二作はおろか最新刊まで読んじゃいました。

 書評を書こうにもドラマはまだやってるし、ネタバレはいかんし……ちょうどええわと「楊令伝」を一から読み返してたら。東野圭吾が新刊だすわ、忘れていた「ハンガーゲーム」の第三部を見つけるわ……で、ズルズル来ちまいました。申し訳ございません。
 さて、TVドラマ「半沢直樹」は社会現象になっちまったようで、最終回視聴率42-45%(瞬間50%を遥かに超えたとか)、 これで一番泡を喰ったのが他ならぬTBSだってのが大笑い。こんなにメガヒットになるとは夢にも思わなかったから、堺雅人のスケジュールは押さえてないわ、シリーズ化するにも原作あと一本しかないわ。さらに10月からの新ドラマがキムタク/柴崎コウの鳴り物入り(本来こっちが本命)、コイツの数字が悪かったら今後のドラマ制作にどんな支障がでますやら。
 流行語大賞にしたところが「アベノミクス」なんざ早々に姿を消して、ライバル「ジェジェジェ」も一蹴、「倍返しだ!」が大本命。最近、実力もないのにやたら上司に噛みつく若いサラリーマンが増えたとか、中間管理職のおっちゃん達は戦々恐々としてるらしい(この腰の引け加減が笑わしてくれます。勘違いの若手を怒鳴りつけられないから事態が捻れる) こういう社員の増えているのが銀行じゃなくってテレビ、マスコミ関係だっていうからまたまた大爆笑。半沢のビデオがまだ出ていないので、今レンタル屋で人気なのが「クライマーズ・ハイ」 御巣鷹山日航機事故を取材した地方新聞社のお話、堺雅人が怒れる記者役で出演している。もう一つが、全く逆の発想から「南極料理人」が人気だそうです。原作も爆発的売れ行きで、作者の他作品も売れているとか……いやぁ、目出度い話であります。ドラマの後半も、途中経過が原作とは微妙に違っており、これがまた絶妙な効果を発揮しとります。
 
 もうバラしてもええと思うんですが、原作との最大の違いは半沢の父は自殺しておらず、剣道も登場しません。半沢の不倶戴天の敵は常務ではなく、花ちゃんもテレビほどには活躍しません。ひっくり返すと、この変更が実にテレビ的効果をあげているのです。
 さて、二階級特進以上の働きをした半沢次長ではありますが、頭取の深謀遠慮なのか、いくらなんでも制止を振り切ってやりすぎたのか、はたまた「斬れすぎる刀」として敬遠されたのか、結果は系列証券会社への出向に終わった訳であります。原作第三部において、またもやアリエネ~大暴れをやらかします。扱い金額も跳ね上がり、この分だと第四部では国家予算クラスになるんじゃ無いですかねぇ。となると、次なる相手は金融庁をぶっ飛ばして財務省やらユダヤ資本なんですかねぇ。まぁ、あんまり「ドラゴンボール化」(次々超絶能力の敵が現れる)せんように祈っています。とりあえず第三部(ゴメン、タイトル忘れました)はオススメです。まだ暫くは文庫にはならんかもしれませんが……。

 東野圭吾「祈りの幕が下りるとき」は、「新参者」でお馴染みの加賀恭一郎シリーズの最新刊です。相変わらずのストーリーテリングで、物語がどう転ぶやら全く解らないまま、ドンドン読者を引っ張って行きます。 今回、恭一郎が子供の頃に別れた母親が登場、しかも事件の最重要容疑者と絡んでしまう。証拠は総て断片的ながら、巧く読者をミスリードしていく臭線は残っている。私なんざものの見事に騙されて「これは朝鮮特務絡みか」と思っておりました。終わってみるとシリーズ中MOST切ない幕切れ、ただ、これはシリーズファンにして初めて味わえる切なさです。まぁ、シリーズの初めからとは言いませんが、せめて「新参者」「麒麟の翼」だけはお読みになった上で本書に取りかかられる事をオススメいたしますです。

「ハンガーゲーム第三部」は、昨年11月には発売になっていました。つい先日手にしたのですが、未だに第一刷、どんだけ刷ったか知りませんが全く売れていないんでしょうねぇ。アメリカじゃ社会現象になる程の売り上げで、映画第一作も大ヒット。それが日本では殆ど宣伝もされず、映画も原作も不人気のままです。原作第一作は、主人公カットニス(16歳の女の子、弓の名手)の目線だけで語られる見事な世界観で、アメリカのヤングアダルト向けに新しい作品の登場を思わせたのですが。第二作は単なるジュビナイルに堕しているし、重大な設定に破綻も来している。最終刊で何らかの説明があるかと思いきや、まんまスルーしてある。物語を語る視線も混乱している。第三部で、カットニス個人の目線のみで語られる手法は復活するものの、今度はカットニスが初めから終わりまで混乱したまま、世界構造がひっくり返る結末にカットニスの決断が影響を及ぼすのですが、重大決断を下す彼女の心はグチャグチャのまま、果てはカットニスの行動をみずから責任とる訳でもなく、真実が明かされる訳でもなく……単に少女が一か八かで行動を起こし、彼女とは関係ない所で幕切れになった。暫くトラウマは残るが、どうやら時間と共に癒やされたようだ…チャンチャン。
 アメリカで3部作総てが大ヒットならば、何がそんなに受けたのか、教えて欲しい。私にはさっぱり解らない。

 楊令伝を読み返していて、北方謙三にして未だに作家として成長しているんだなぁと感じた。現在進行中の「岳飛伝」では、歴史を語る目、登場人物の心理、戦闘の描き方が洗練され、まず殆ど混乱する事はないが、楊令伝では時々表現に混乱がある。ただ、童貫を破るまでのひりつくような緊張は岳飛伝にはない。
 とは言え、榛檜の登場、許定の暗躍、梁山泊の発展方向の芽等々、再確認出来て面白い。やっぱり、止められまへんなぁ。


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『そして父になる』

2013-09-27 18:18:12 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『そして父になる』


 これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


結婚すらしていない俳優が二組の家族を演じ、それを父に成れなかった60男が見ている。

二人の子供がいて、6年前、同じ病院で生まれた。看護婦の悪意で取り違えられ、別人の子供とは知らず育てて来た。
 育てて来た年月をとるのか、血の繋がりをとるのか、究極の選択を迫られる大人達……。
 当然、「自分ならどうするのか?」と、問うてみるけど、結論など出ない。自分がやりそうなのは、無理苦理にでもなし崩しに二家族を一つにしてしまう方法を考える? 全く違う家族が大人同士は互いの異質さに感じる嫌悪を隠しながら、子供に真実を告げる日を先延ばしにする……臆病な自分ならそうするだろうなぁ、今は子供を傷つけたくない、と 言い訳しながら。映画は結論を出していない。
 ある意味、今後、今自分が考えたような関係になって行くのかもしれない。子供の取り違えによって、新たに親戚が増えるようなものである。二組の家族で二人の子供を育てる。血縁に対する我欲(支配欲)
を押さえ切れるならば……残念ながら親に成れなかった身には確答が見えない。

 自分にも取れる立場はあるが、それは後にして、まずは映画の話。

 監督の是枝裕和は日常の切り取りが巧い人だ、決して結論を急がない、押し付けない。“誰も知らない(柳楽優弥/カンヌ史上最年少最優秀男優賞)”“歩いても、歩いても”“空気人形(ビニールのダッチワイフに命が宿る)”これらが私の知る監督の全て、いずれの作品もまったく押し付けがましい結論は無い。
 福山雅治は半人前の父親として顕在していた。スター福山雅治はどこにもいない。そして“父”になろうとする、一人の男として実在していた。リリー・フランキーの演じる斎木は、野々宮(福山)より少し年上、強い嫁さん(真木よう子)に支えられて気のいい親父を演じる。父と言うよりは一番デカい子供の雰囲気。野々宮はエリートサラリーマンで、何でも与えてくれそうだが、子供の目からは斎木の方が気楽だろう。
 その意味で斎木も未だ父親になりきってはいない。
 二人の妻は、その点立派に母親である。母性愛はやはり最強の愛情の在りようだと思う。斎木ゆかりは三人の子供を揺るぎなく抱き留めている。野々宮みどり(尾野真千子)は慶太を産んだ後の予後が悪く、その後、子供を持てなくなったが、その分慶太への想いは大きい。夫を深く愛しながらも、慶太に「このまま二人で遠くに行こうか」と語りかける。おそらく、その時慶太が「パパは?」と聞かなければ実行しただろう。
 女性は出産を通して本能的に母親となる(中には、その本能の弱い方もいらっしゃるようですが)。 映画は、その本能的強さの上に「そして“母”になる」行程をも描いている。それは、野々宮の母(事情有り)の姿を通しても語られる。

 えらそうな言い方を許して貰えるならば、人間は毎日を自ら選択しながら生きている……などと思うから傲慢になっていく。しかし、これを“与えられている”ととらえるならば感覚が変わるのじゃないだろうか。  野々宮は選択の繰り返しの中で、常に勝ち上がって来た強者であるが、この究極の選択の前で「選択出来ない自分」を発見したのではないだろうか。
 押し付け、説教のない作品ながら「人は子によって親にしてもらうんだよ」というメッセージだけは、一本の大黒柱として屹立している。親になりそこねた私が言うのはおこがましい限りではありますが……そんな私が、この作品を自分なりに受け止める視点は「子供の視点」です。
 いかに、取り違えられた存在であろうとも、子供にとって両親と暮らした6年は自分にとっての全てです。まったく幼い自我とはいえ、それは両親から与えられ育まれて培ってきたものです。この映画の事情は6歳の子供には100%の理解は不可能です。しかし「今日からお前は、あちらの家の子供だよ」と言われる意味は理解できる。幼い魂にどれだけ深い傷が残るか……こんな残酷な仕打ちもないだろう。
 私にも、ほんの短い間だが、両親と離れて母方の祖母と暮らした時期がある。両親が離婚の際にあり、暫く離れて暮らした。弟と一緒に預けられ、毎日が宙に浮いたような頼りなさの中で過ぎて行った。幸い、両親との日常は取り戻されたが、暫くは親の顔色をうかがい、しかし、決してうかがっていることを知られてはならないという事も解っていた。 だから、外に飛び出すより、静かに本を読んでいる方が落ち着いた。
 年を経るに従い、両親のあり方への理解もついて、今やこの事は傷でも何でもないが、ユングやフロイトに言わせれば「立派にあんたのトラウマだっせ」といわれるんだろうなぁ。
 歳と共に行動範囲は広がり、自分なりの世界を築くようになる。自分を築くのは両親ばかりでななくなり、人は社会的生き物になっていく。しかし、ここに至っても不動なものは“家族”という存在であり、人は「そして“親”になる」のであり、かつまた「そして“子”になる」のである。
 私の家は、映画ほどではないにせよ「野々宮家」に近かったかもしれない。だから二人の子供の内、野
々宮慶太の傷により感情移入できる。描かれざる本作の結末に、幸多かれと願うばかりです。私事ばかり書くようですが、映画を見終わっての一番の感慨は、今や亡き両親への感謝でした。

ありがとう、あなたたちの子供で幸せでした。俺はあなたたちの子供として、少しは幸せを伝える事ができたのでしょうか。


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『エリジウム』

2013-09-21 07:43:41 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『エリジウム』


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している評ですが、もったいないので転載したものです。


ブロムカンプ(第9地区)がまたもややってくれました。

 2154年ラグランジュポイントに直径60㎞/幅3㎞のスペースコロニー“エリジウム”が浮かんでいる。エリジウムとはギリシャ神話のエリシュオン(死後の世界、神々に愛された者だけが住む世界)のラテン読み。ここでは超富裕層のみが生活し、その数、わずかに8000人!
 前作「第9地区」は、南アフリカ映画として、いきなりアカデミーノミネート、「厚かましいくらいに社会的SF」と評された。前作は南アフリカのアパルトヘイトを、人間対宇宙人の構図に移し替えて描かれたが、エビ型宇宙人は労働力とはなりえておらず。本作の地球に住む人間とエリジウム住民の図式において前作で積み残した問題が浮かび上がってくる。
 地球においても社会の隅々までロボットが入り込んでいるので、エリジウムにおけるユニバーサルサービスも究極まで機械化されていると推察出来るが、金持ちばかりが生活しているこのコロニーに生産活動の臭いがしない。恐らく、生活物資は地球からのサポートに拠っているのだろう。
 この点“銃夢”のザレムとクズ鉄町との関係に似ている。“銃夢”はJ・キャメロンが映画化企画中だが、きっと今頃焦っているのではないだろうか。それほど本作の世界の構築と見せ方は見事の一言に尽きる。 本作の出来映えがキャメロンの企画にきっと良い影響を与えるものと思いたい。
 ブロムカンプの手腕の一つは、極力「ブルーバック」に役者を立たせず、セットの中で演じさせる事。CG合成されるロボットはモーションキャプチャーを用いて作られ、それだけリアルが担保されている。  メカとガジェットの表現力が天才的なのは前作で嫌というほど見せつけられたが、本作は更に何段階も上に到達している。こればかりは見て納得していただくしかない。無論、各所に矛盾は有るのだが、細部に神経の行き届いた作り込みが、その矛盾すら押し込んで忘れさせてくれる。
 
 SF小説は、現在の社会問題を未来(あるいは過去に)に移し替えて語る文学だが、それをヴィジュアル化する時には様々な問題があり、一定の方法論が確定していないので、過去多くの失敗作を生んできた。
 ブロムカンプの巨大な構築物を見せながら、細部のリアルに徹底的にこだわる映画作法は間違いなく、一つの模範解答である。
 エリジウムの天井が素通しに開いている設定も見事で、この設定だと、自由にコロニーに出入りできる。巨大コロニーならではの人工重力で大気は漏れない設定になっている。ラリー・ニーブンの“リングワールド”[地球の軌道上に、ぐるりと太陽から等距離のリングコロニーが築かれ、これも天井は素通しになっている。]を思い出した。
 ブロムカンプの見事さの更なる一点は暴力は只々 暴力に過ぎず、そこに説教臭い注釈が無い事。手段としてのヴァオレンスを際立たせる事でキャラクター達の目的と行動をクローズアップしていく。その際の武器のセレクトと威力設定にも妥協が無く、すなわち、嘘が無い。
 エリジウムへの侵入を目指すシャトルへの攻撃兵器が提示されない事と、有ったとしても、使用出来ない事情があるらしく、それに対する説明が漏れていて、この点不満が残るのだが、大して気にはならない(でもないが、これを受け入れないと後の話に入っていけなくなる)
 冒頭に現れる矛盾なので、ここを乗り切るか否かで本作の評価が変わるかもしれない。私は取り敢えずスルーして、後の世界構築の見事さと引き換えに無視しました。
 本作の幕切れにも賛否があると思います。主人公の選択が果たして地上の“デストピア”を解消する事に成るのか、という疑問で、これまでの数ある駄作に見られる失敗は「神の御心」に逃げ込むことです。本作でも主人公の少年時代に、シスターからメッセージを受け取るシーンが有って、神に導かれた自己犠牲とも読み取れますが、そんな個人の思い入れより、大きな問題が提示されるので、宗教色は隠れています。
 ブロムカンプは間違いなくクリスチャンでしょうから、「神の導き」が心の底にあるのは確実です。しかし、その事を必要以上強調せず、最低限に抑える作法で本作を よりグローバルな作品に押し上げているのです。
 いやいや、少々語り過ぎですねぇ。もうやめにします。予告を見る限りにおいては、「第9地区」と同じような映像に見えたのですが、百聞は一見にしかず、どうか この見事なSF世界を堪能して下さい。勿論、ブロムカンプの社会性も遺憾なく発揮されており、その点も堪能出来ます。殊に、地球上の管理ロボットの人間臭さ(???)は爆笑(?)物であります。持つと持たざるが人間性をどれだけ歪めるか……あます所無く描かれています。
 本作もやっぱり「厚かましいくらい社会的SF」なのであります。
 ご免なさい、もう一つ。人間が外宇宙にでたり、そこまで行かずとも火星や月に移住するのは、地球がこれ以上の人口を抱えきれないという問題から発していて、スペースコロニーもこの発想の一部です。しかし、宇宙空間に巨大構築物を浮かべたり、他の惑星を改造(テラフォーミング)する力が有るならば、砂漠の緑化や海中都市建造の方がより現実的です。この点、昔からSF世界でも両派入り乱れて大喧嘩中、見終わってそんな事を考えてみるのも面白いもんですよ。〓


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『怪盗グルーのミニオン危機一発』

2013-09-15 07:26:50 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『怪盗グルーのミニオン危機一発』


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に、身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


もっとミニオンだらけのスピンオフ的作品かと思いきや、前作と同じく、グルーと三人の子供達が家庭を作れるかがメインテーマ。

 ミニオンのスピンオフは来年公開されるとか! そこでグルーは、子ども達の為に悪党をやめ、まっとうな事業家を目指す。三人の子供を見る目は父親そのもの……いや、べつに文句はないけど、やはりグルーは悪党が似合っている。カイル(グルーの正体不明のペット)が前庭で小便をしかけた時、さっと持ち上げて隣家の庭に降ろす。この時の表情こそがグルーの正体に他ならない。並んで待つのが嫌いで、人の遊びを邪魔する子悪党じみたオッサンが、月を盗むなんてな悪事を企む、それを多くのミニオン(“手下”っちゅう意味です)達がサポートする。こいつら間抜けなのに、何をやらせてもかなりな精度でやりとげる。 だから、メインテーマに添って グルーの悪巧みがないと締まらない。

 ところが、本作は第一作以上のヒット、並み居るピクサー作品を凌駕してしまった。これは日本人には少々分かり難い、ましてや吹き替えを見ていると尚更解らない。その原動力は“クロスカルチャー”にある。製作陣の顔ぶれだけでもアメリカとフランスのカップリングだし、BBCのモンティパイソンのテイスト、ルーシーの車が潜水艦に変化するシーンは007のロータスエスプリそのものだし、日本のカルチャーともコラボ、アメリカ国内で日々増え続けるヒスパニックにも目を配ってある。ミニオンの喋る言葉(こいつばかりは原音のまま)もデタラメながら前作よりもヴァラエティに富んでいる。鶴瓶のグルーにも慣れたし、芦田愛美のアグネスは絶品なのだけど……やっぱり字幕スーパーの原音版でなければ伝わらない物がある。一日一回でいいから原音版を上映してくれい!

 今作、映像的にも格段の進歩があり、ムービーアトラクションの意味合いが上がっている。初めて3Dを見ても良いんじゃないかという気になった……とは言え、そうなるとグルーとルーシーの恋愛部分(結構多い)では効果が出ないし、だからやっぱりグルーはとんでもない悪事を企んでいる方が良いのであります。
 ストーリー構成のリアルさに鑑み、どうしても説明口調に成らざる得ない必要が有る。その部分が多少中弛みを生んでいるのも否めない。そうなると笑いのサイクルが断ち切られて大爆笑につながらなくなる。
 まぁ、神経細やかに丁寧に作り上げられているのは確かなので大人の鑑賞にも充分耐える、大爆笑は来年のスピンオフに期待するとしましょう。
 しかし、今頃、ピクサーの製作陣は戦々恐々としてるんでしょうねぇ。数週間前公開のモンスターズUNVは大成功ながら、もし本作と同時公開していたらピクサー始まって以来、初めて公開第一週二位スタートになっているところ。日本公開は来月ですが“カーズ”の飛行機版“プレーンズ”が思わぬ大苦戦、来年のミニオンスピンオフの後塵を拝する事態に成ったりしたら株価はおちるわ、資金は集まらんわで、それこそ危機一発っつなもんです。

 さて、ピクサーの起死回生はあるのか?

 そうそう、グルーの吹き替え版には日本語文字は登場しませんでした。これは慧眼であります。だから、余計に、字幕スーパーを見せてくれい~~!!!


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『エヴァリン・許されざる者』

2013-09-14 08:11:58 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『エヴァリン・許されざる者』


これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


ウルヴァリン
 まぁ~無邪気に作ってありますわ。これの原作は聞く所によると、ウルヴァリンが日本にやってきたのはエグゼビア達と知り合う前で、日本でであったマリコと結婚し、マリコは死んでしまう……というストーリー。映画はX-MEN ファイナルの後の設定で、ジーンを自ら殺してしまったトラウマに苦しんでいる。
 このシリーズ、基本 戦う相手は同じミュータントなんですが、今回は粗方が普通の人間。だからウルヴァリンの身体に異常を持たせたり、相手が剣の達人に忍者だったりと苦労しとります。新幹線の屋根の上で戦うヤクザが「あんた、まさかなスーパーマン?」的強さだったのは笑いましたけどね。ヤクザってば、葬式でマリコをさらおうとするヤクザ達が、変装していた僧服を脱いでモンモン剥き出しで走り回るのには、笑うの忘れて呆れけえりましたけどね。
 ただ、日本に対するイメージは、まだまだ混乱しているんだろうなぁってのが画面の端々から見えて来ます。日本は映画撮影に対して規制が多く、妥協しながら撮影するからどうしてもこうなっちゃうんでしょう。世界に理解されたいなら、関係省庁は真剣に考えた方がよろしいでっせ。
 本作は、ほんまにゴチャゴチャ言わんと、日本が舞台のアメコミを読んでるつもりで無心に見ましょう。 そうです! この日本は私たちの日本では有馬線!パラレル日本のお話です。信じなさい!信じる者は救われるのでありますぞ。
 所で、日本人ヒロインがなんで二人ともモデルさんなんですかねぇ。いや、頑張ってはるんですけどね(殊にアクション)、アメリカのスレッドでは、えらく褒められているらしいんですが……ドラマのリアルを担保できていない。そんなもん、当たり前なので彼女たちを責める気にはならんのですが、キャスティング担当は何を考えていたんでしょうか?
 もっとビックリしたのが、ウルヴァリンとマリコのラブシーンは追加されたんだとか……始めの企画では何を作るつもりだったんでしょうねぇ??????


許されざる者
C・イーストウッドの名作ウェスタンを同時代(1880年)の北海道に舞台を移してリメイクした。イーストウッドは、この作品でアカデミー 作品/監督/助演男優/編集賞を始め、各賞を総ナメにしている。
 ストーリーは原作映画をなぞって展開するのだが、全く違う映画のように見えた。銃も使うが、基本刀での闘い……その分、人の生き死にの距離感が近い。
 李相日監督は「悪人」と本作しか見ていない(他に「フラガール」)のだが、「痛い」作品を作る人ですねぇ。「悪人」は、殺人犯が主人公で、本来 こいつが一番悪い人なわけですが、「そうなの?もっと悪い奴はいないのかい?」という構造でした。本作も、女郎の顔を切り裂いた奴/それを殺しに来る奴ら/法執行官でありながら、法より自分の感覚を優先する奴……登場するキャラクター総てが“許されざる者”……それは人間存在の内面をさらし出せば、皆 それぞれに“許されざる内面”を持っているとの告発であって、これは原作映画とも共通している。 イーストウッドは原作を撮影しながら「こんな暗い映画を誰が見るんだ」と自問しながら撮ったと語っている。しかし、原作を見ていて そこまでの暗さは感じなかった。それは当時のアメリカが「自警国家」であり、「法秩序の支配下にある」とは とても言えない状況であった所から、全員「許されざる者」であるとはいえ、その罪には微妙な軽重があり。娼婦の苦しみ、賞金稼ぎの主人公の正義がわずかながらも勝って見える。粗方が死んでしまった後、生き残った人々が「それでも前向きに生きて行くのさ」というメッセージが読み取れる所からも、そんなに暗いイメージはなかった。“暗さ”というよりは賞金稼ぎ(イーストウッド)と保安官(ハックマン)の、内に秘めた「虚無対虚無」という構図の方が恐ろしく見えた。
 この意味で、本作の方が「全員 許されざる者」という構図はクローズアップされている。これは日本が江戸時代以降、ずっと法治国家であったからで(現在の法秩序感覚からして如何に歪であろうとも)、その“法秩序”が届き切っていない北海道が舞台であるという所に、原作より恐怖がある。
 原作をご存知の向きには、原作世界に「地獄の黙示録」のカーツ帝国を重ね、そこに 昭和残侠伝の人切り秀次的“謙さん”が殴り込みをかける……うん、そんな感じで見ていただけると分かり易くなります。 アメリカが南北戦争終焉、リンカーン暗殺と近代の誕生の苦しみにあった時期、日本も徳川から薩長への交代 時期の混乱状態、いずれも混沌の中にあった。とは言え、原作登場人物の抱えていた虚無よりも、本作に現れる一人一人の虚無感の方が、よりリアルに近く感知できると思う。
 決して安易なリメイク作品ではない、日本人のための“許されざる者”である。  渡辺謙/佐藤浩市/江本明/柳楽優弥の絡みは絶品、原作でE・ハリスの演じた役どころを演じる國村隼も迫力がある。
 炎上する娼館(ほんとにセットを燃やしたんだと思う)の前を馬に乗った男が去って行くシーンに有無をいわせぬ圧力がある。カタルシスでも迫力でもない。前述の賞金稼ぎと保安官の虚無の対決は本作では後退しているが、それ以上に主人公/釜田十兵衛の虚無と悲しみがクローズアップされる。それだけに原作ラストにあった僅かな救いが本作にはない。これは辛い幕切れではあるが、映画の描き方の文法からすると、映っていない部分で……本作には、原作に該当しない部分がある。現場に向かう三人があるアイヌの村で 屯田兵の暴力を目撃するシーンがそれ。李監督がアイヌの歴史を調べた結果 挿入したシーンなのだが、在日半島人を重ね合わせたのだと思う。子供を別にすれば唯一“責められざる人々”……しかし、力を持たぬが罪との告発もある。
 どこを切り取っても一筋縄ではいかない作品です。本作をご覧になるに際して、敢えて原作映画を見る必要はないと申し添えておきます。どうか、真っ正面から受け止めて下さい。


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『号外・日本公開ランキング』

2013-09-12 07:05:42 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『号外・日本公開ランキング』


 悪友の映画評論家・滝川浩一が送ってきた、直近のランキングです。


日本公開ランキング 9/7~8

①風立ちぬ
 なんと8週連続一位! 既に100億円目前、今週は前週末比114%。監督の引退宣言効果やね。
 なんぼなんでも来週は落ちると思うが、果たして何位になるのか、来週は「ウルヴァリン」「許されざる者」「アタル」が公開。

②キャプテンハーロック
 ……とは言え、578館で公開(これは相当多い)され、3Dもあったのに、観客9万人 1億3千万……製作費30億弱らしいので……どないすんのよ……既に70ヶ国以上輸出オファーが有るらしいので、何とかなるんかな?

マン オブ スティール
公開2週目3位とはいえ、ハーロックに負けとるってことは、動員9万人以下。前週末21万人だから、ちょっと落ちすぎ。日本じゃスーパーマンは今一人気なんだよなぁ~、もったいなさすぎ!

あの日見た 花の名前を僕たちは知らない
 アニメシリーズの劇場版なのですが、先週3位 16万人、スーパーマンに5万人負けとるんですが……ちょっと待った、敵は510館、こちらは64館(!!!)これが どんだけスゲエ事だかお分かりでしょうか? 以下はもうほとんど事実上ランキングの意味なし。動員3万人以下だが、まぁちょいと、それなりに記録的なものもあるので……。

⑤貞子3D Ⅱ 2週目

⑥謎解きはディナーの後で6週目 累計260万人 30億円超。やるもんや。

⑦モンスターズ UNV 10週目 8週目で既に80億円超ですから、そろそろ90に手が届く?

⑧スタートレック 3週目

⑨少年H 5週目

⑩ホワイトハウス ダウン 4週目

 てなわけで、

“風立ちぬ”の一人勝ち状態、来週はヤバそうとは言え、動員30万人行けば またもや一位の可能性有り。げに恐ろしきは宮崎駿の神通力でござる。さて、ほんまに来週はどないなりまんにゃろか?


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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想『忍びの国』

2013-09-07 07:13:58 | 読書感想
タキさんの押しつけ読書感想
『忍びの国』


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が身内に流している書評ですが、もったいないので、転載したものです。


「のぼうの城」作者/和田竜の忍者小説です。

 山田風太郎亡き後、このジャンルは久し振りです。作品そのものは5年程前の物ですが23年に文庫化(新潮)しています。
 一読、さすがに和田竜、一行目からありありと画が浮かび上がって来ます。 物語は、織田信長の伊賀攻めの前に、伊勢の国を支配した信長次男/北畠信雄と伊賀との戦いがメインのお話。ストーリー展開は史実をベースに虚実取り混ぜて繰り広げられる。
 主人公は“無門”と名乗る伊賀一の術者……この人物は作者創作だと思うが、その他の登場人物は 皆実在した人々。とはいえ、作者の視線は歴史専門家と読者の中間に位置し、適度に史書を引用しながら語って行く。
「のぼうの城」もそうだったが、主人公/無門以外の人物像も鮮明に描かれていて、それぞれがなかなかに魅力的である。作中、名前の出て来る人物は皆丁寧に書き込まれている。
文吾(後の五右衛門)に思い入れる人もいるだろう、信雄の悲しみに共感する人もいるだろう、大膳の戦国武者の生き様を是とする人もいるだろう。
 すなわち、読み手によって本作の主人公は変わる。 本来、本作の主人公は、百地党一の術者“無門”に違いはないが、それ以外の登場人物が その位魅力的に書き込まれている。 戦国戦略ミステリーとしても第一級作、余計な事は一切言わない。風太郎以後、読む本が無かったと嘆いている方々よ! 刮目しつつ本書を読みたまえ、内容絶対保証!
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