大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・紙模型 戦艦扶桑製作記・1

2018-08-20 17:40:24 | エッセー

紙模型 戦艦扶桑製作記・1

 

 戦艦扶桑は、今から103年前の1915年11月8日に竣工した旧帝国海軍の超ド級戦艦です。

  「戦艦扶桑」の画像検索結果

 1944年10月25日にスリガオ沖海戦で沈没するまで29年間現役で活躍し、その現役歴の長さは大戦中の12隻の戦艦の中では金剛に並びます。現役期間が長かったので何度も改装され2本あった煙突は1本にまとめられ、艦橋は洋上の違法建築と言われるほどに高く聳えてしまいました。日本の戦艦は扶桑ほどではなくとも積み上げ式が多くアメリカからはパゴダ型と揶揄されましたが、その特異な艦橋のため、今は世界的にファンが多いようです。

  

 今回手掛け始めたのは、日本の艦艇研究では日本以上に進んでいると言われるポーランド製の紙模型です。

 

 1/200というビッグサイズで、完成すると全長1メートルを超えます。このサイズをプラモデルやソリッドモデルだとキットだけで3万円から10万円しますが、この紙模型は7000円ほどでしかありません。

 また、冊子の形になっているので、プラモデルの箱のように場所をとりません。この扶桑から買い始めて、空母大鵬・戦艦比叡・空母赤城・空母信濃を買ってしまいましたが、棚の上に並べても幅が6センチに満たず、狭い我が家にはありがたいです。

 

 この紙模型シリーズはレギュラーというか廉価版とハイグレードがありまして、金属の砲身やエッチングパーツやレーザーカットされた骨材が点いているものは数倍の値段がします。紙模型なので紙だけで作るのが本道! と言うよりは高くて手が出ないわたしには紙だけの廉価版がありがたいです。

 

☆ 問題はボール紙

 船体の骨格を作るには厚さ1ミリと2ミリのボール紙が必要と書かれていますが。2ミリはおろか1ミリのボール紙が手に入りません。昔は文具屋に行けば売っていたのですが、近頃はホームセンターに行ってもありません。

 夏休みの工作用などで売られているのは、せいぜい厚が0.5ミリしかありません。

 それにボール紙というのは水性ボンドを使うと伸びてしまうので、全長が1メートルにもなろうかという艦船モデルではひずみや、ゆがみ、たわみの原因になってしまいます。

 

☆ スチレンボード

 そこで目を付けたのがスチレンボードです。ホームセンターや画材屋さんで手ごろなA4サイズで売っています。

 書店のポップなどに使われている発泡スチロールの目の細かい板状のあれです。ボール紙に比べると割高なのですが、一隻分買っても2000円くらいですみます。

 水性ボンドで簡単に接着できますし切削加工が紙よりも容易で、カッターナイフやデザインナイフでスラスラと切れます。

 むろんボンドの水分を含んで伸びたりたわんだりすることもなく、仕上がりがきれいです。

 そいいえば建築模型などは、このスチレンボードが使われることが多いですね。

 ただ一点問題なのは、厚みが3ミリあるので、キットの組み合わせの切込みが2ミリと1ミリ厚いので加工が必要です。

 切込みを1ミリ大きくするだけなのですが、ピッタリ正確にやるのが難しく、それが歪みの原因になって来るので、ちょっと気を付けなければなりません。

 

 

 キットにはペラペラの紙に骨材が印刷されているだけです。それをスチレンボードに貼り付けるのですが、水性ボンドは使いません。前述しましたが水性ボンドは伸び縮みやたわみがでてしまうので、スチレンボードに貼り付けた時点で誤差が出てしまいます。特にキール材などの船の全長に関わるパーツでは伸び縮みが大きな問題になります。

 割高ですが、スプレー缶式のノリを買ってきて、サッと吹き付けて手早く貼り付けます。

 まあ、写真のようになんとか組み上がりました。

 

 つづく

   

コメント

高校ライトノベル・ムッチャンのイレギュラーマガジン34『乃木坂エレジー』

2018-07-31 06:34:23 | エッセー

ムッチャンのイレギュラーマガジン34
『乃木坂エレジー』

 初出:2015-05-02 16:27:34

 




 乃木坂学院高校は乃木坂46のパクリではない!!

 と、言えるものなら声をにして言いたい。

 わたしのブログには、毎回下に広告がある。グーブログのスポンサーではない、わたし自身の広告である。
『ノラ バーチャルからの旅立ち』『あたし今日から魔女!? え うっそー!?』という戯曲集と『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』という小説の4冊です。

                 

 以前は、ここに『自由の翼』という戯曲集が入っていましたが。完売したので、今は載せていません。

 問題は『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』なのです!

 戯曲集はひとまずおいて、小説に関する限り『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』が最初で『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』が一番新しくなります。
 で『乃木坂』です。

 横浜の出版社の依頼で、2011年にネットマガジンで連載していたものを明くる2012年に単行本にしたものです。記憶は定かではありませんが、2011年の春の終わりごろから夏にかけて書いていました。
 
 もともとは『ホンワカ女子高生HBが本格的に演劇部に取り組むまで』という長ったらしいタイトルでネットマガジンに連載していた『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』のアンサーノベルでした。
 細かいところはすっとばします。
 アンサーノベルを書くにあたって、主人公の学校に困りました。舞台は東京と決まっています。

 実在の学校とかぶらないこと、どこか伝統女子高の雰囲気がする名前ということで、丸一日東京の地図とにらめっこ。

 で、青学にも近い『乃木坂』に決めました。グーグルのマップで歩いてみたり、動画サイトで乃木坂界隈を調べました。

 これはイケる!

 そう思って、初回分を書き上げ出版社に送り、周辺のロケーションを調べるためにネットで検索すると『乃木坂46』がヒットしました。
 読んでみると秋元康氏が、AKB48のシャドウキャビネットとしてアイドルグループを作るというもので、初期メンバーと概略が書いてありました。まあ乃木坂というのは普通の地名で特に問題は無いと思っていました。ネットで検索しても、わたしの乃木坂学院が乃木坂46と並ぶようにして出てきました。

 正直乃木坂46は「柳の下の何匹目のドジョウやねん?」ぐらいに思っていました。

 しかし、恐るべし秋元康! みるみる乃木坂46はメジャーになっていき「大橋、あんまりパクリはみっともないで」と友達に言われる始末。
 だいたい乃木坂46は。たまたまオーディション会場の「SME乃木坂ビル」にちなんでいるだけで、オーディションが神楽坂で行われていれば神楽坂だし、赤坂ならば赤坂46になっていたはずです。

 いやはや、知名度が低いというのは辛いもんですなあ。だれが見ても、わたしの方がパクリだと思われるでしょう。

 ちなみに乃木坂で検索すると、今やウィキペディアの『乃木坂』をしのいでトップに46が出てきます。
『乃木坂学院』で検索すると、『ラブライブ』の音乃木坂学院がトップ30を占め、わが乃木坂学院は40番台に転落。

 いやはや、もう少し高尚で面白いことを書こうと思ったが、ただのグチでおしまい。

 読者諸氏! 書いた本人が言うのです。『まどか 乃木坂学院高校物語』は面白い。むろん他の4冊も!

 嗚呼、乃木坂エレジー哉!



コメント

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想『大橋むつお:ノラ バーチャルからの旅立ち』

2018-06-23 06:48:02 | エッセー

タキさんの押しつけ読書感想
『大橋むつお:ノラ バーチャルからの旅立ち』



昨年の春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が身内に流している書評ですが、もったいないので転載したものです。


 なんか、ほのぼのと胸の中から暖かくなる作品達やね、一気に読み切ったよ。

 俺はノラが一番好きやね。好みのSF設定だし、落ちが二重になってるし。 WOWOWで「イヴの時間」のアニメやってました。テレビ放送があって(? 知らんけどね)それの劇場版らしい。

 タイトルと同じ名前の喫茶店があって、アンドロイドが普通に存在する未来、その喫茶店では人間とロボットを区別しない、それがルールですと、わざわざ入り口はいった所のボードに書いてある。
 ちょっと別な事をしながら見ていたから……でも、ノラを読んでから、何か気に成ってきた。もっかい見るわ。   

 ちょうど旧タイプが破棄されるタイミングで記憶回路が初期化されても、ノイズ入りで在るかなきかの記憶にすがっているロボットが悲しい……そこだけ、妙に覚えてます。他に、恋人が死んで引きこもった女の子の所に、その恋人ソックリに偽装されたロボがやってくるってのもあったなぁ。何? こういった設定が流行ってたんかい? 俺、最近 深夜帯のアニメを全く見てないから解んねーでんす。

 クララは、やり方によっては、立派に不条理劇になるよね。そのバヤイ、ちょっとしたホラーテイストがまざるとええんやない? ただ、そうすると、始めのチャット部分に弱い所があるかな。ハイジが来てからラストまでが短いから、チャット部分で匂わせるか、それでラストにドンってひっくり返す。まぁ、大橋さんはそんなつもりで書いてないから、俺の勝手な読み込みやけどね。でもな、これでクララはほんまに一歩踏み出せるんかな。ちょっと書き足りないんじゃない? 結論は観客に預けるにしても、問題点をも少しはっきり見えるようにしたほうがええような…… 。

 星に願いを……も、可愛いね。ただ、志穂がトコとトシ君の関係を知らなかったって所が……ムムゥなんだよな、王子の存在もファンタジーと現実の間に浮いたまんまに成ってるように思えるし。この距離感は嫌いやないけどね。

 すみれの~は懐かしいねぇ、高演の芝居を思い出すなぁ……あれが優勝じゃないなんて、いかん!怒ってたのを思い出したよ。この本が埋もれちゃうなんて(いや、これだけがそうなるってんじゃなく。今は本の回転が早いからなぁ)もったいなさすぎやね。誰か推薦図書とかにしてくれへんのかなぁ。 とにかく、書き続けてね、継続は力だよ。 ネット小説もええけどさ、脚本も続けようぜ。 高校生向けだけじゃなく大人向けにも書いてみようよ。

 大橋むつおは埋もれたらあかんでぇ。

コメント

高校ライトノベル:真凡プレジデント・37《琢磨の本気》

2018-06-20 13:23:33 | エッセー

真凡プレジデント・37

《琢磨の本気》

 

 

 こんな取材は止めてください。

 

 静かに三回繰り返した。

 相手は各社との取材合戦に、いささか興奮気味だ。俺が先日の列車停止事件の張本人だという興奮もあるんだろう。

 こういう場合は、相手よりも冷めたトーンで静かに繰り返す方がいい。相手がいっそう薄っぺらに見えるからだ。

 三回繰り返したところで、スタジオから――話を聞いてやれ――の指示があった。一点リードだ。

 

「ありがとうスタジオの青木プロディユーサーと報道局の佐藤さん」

 あらかじめ調べておいたスタジオの責任者の名前を上げて置く。

 スタジオに軽いどよめきが起こったのが、取材チームの表情からでも分かる。

「本件の決定は主に教育委員会です。学校は、その指導に従っているだけです。入試当時の学校長・教務主任・入試委員会委員長は、すでに退職・転勤されています。取材するなら、当事者にあたるべきでしょ。単に絵面がいいからというだけで学校に押しかけられるのは迷惑な話です。それとも、そんな基本的なウラも取らないで取材に来たとしたら、取材のリテラシーやマスメディアの常識をわきまえない行為だと言っていいでしょう、どうなんですか?」

「いや、でも、世間の注目は……」

「数字さえ取れればいいというゲスな狙いからだけじゃないですよね」

「それは、もちろん」

「じゃあ、お引き取りください。こんなことをされては授業も部活も満足にできない」

「だから、学校の裏通りからやってるし……」

「そこの立て看板や住居表示を映しといて、それはないでしょ。ネットの時代、これで学校名は秘匿したということにはならないでしょう、それに上空のヘリコプターはオタクのでしょ」

「でも、我々を追い返したら、ますます学校は疑われるわけで……」

「威力業務妨害です、通報しますよ」

「だから、そうはならないように……」

「見えるでしょグラウンド、みんな部活どころじゃないんです。あの三階では補習をやっていますが、みんな落ち着きがない、カーテンの隙間から、こっちを伺ってるんですよ」

「それは、ぼくらの……」

「責任ではないと? らちがあきません……」

「なに、いまスマホ触ったのは?」

「あらかじめ用意していたものを添えて通報しました、通報先は……」

 

 スマホを掲げて見せてやった。地元警察始め、当該放送局以下主要メディア、文科省、CNNテレビまで135か所余りに流れた。

 

「それに、あなた方の対応には幻滅しました。この二十四時間以内に、この行き過ぎた取材と放送に局として陳謝し回復措置をとらない限り、僕は市民として許される範囲で報復に出ます」

 そこまで畳みかけた時にパトカーがやってきた。

「な、なんですか! 正当な取材ですよ! 横暴なことは止めて……」

 警察は二枚の逮捕状を示した。

 記者と現場のディレクターに、それぞれ婦女暴行と薬物使用教唆の容疑だ。

 俺は戦うとなったら、あいつらの吐く息の成分まで調べ上げてかかるんだ。ニュースソースは勘弁してほしいけどね。

コメント

高校ライトノベル・イスカ 真説邪気眼電波伝・28「三宅先生の突然死」

2018-02-05 14:09:01 | エッセー

イスカ 真説邪気眼電波伝・28

『三宅先生の突然死』

 

 

 本館二階の職員室はこんな具合だ。

 

 独立した準備室を持たない、国語・英語・数学の三教科の先生たちと教務の先生たちの島が四つあり、真ん中に教頭先生のデスク。これが職員室の中核で、それを挟むようにしてパーテーションで区切られた情報処理のコーナーと、作業用の共同の長テーブルがある。

 長テーブルの向こうには隣接して放送室と印刷室と給湯室があって、長テーブルは印刷物の仕分けや小会議に使われるほかは、先生たちの休憩コーナーになっている。

 その長テーブルに突っ伏すようにして三宅先生は亡くなっていた。

 

「寝ていらっしゃるんだと思いました」

 

 第一発見者である数学の野崎先生の弁……て、おかしいだろ!?

 三宅先生は、佐伯さんが様子を見に行った直後に職員室に移動し、発見されるまでの四時間、ずっと職員室に居た。

 印刷室に入ろうとした野崎先生が突っ伏している三宅先生の椅子をひっかけ、先生は、そのまま床に倒れ伏してしまった。「こんなとこで寝てちゃ風邪ひきますよ……」と声をかけて、そのまま印刷室へ。

 いつまでたっても起き上がらない先生をおかしいと思った、わが担任の香奈ちゃんが起こしに行って「キャー!救急車!」ということになったらしい。

 警察が来て、死後四時間と判断された。

「わ、わたしじゃないですよ! わたしは引っかかっただけで、ちゃんと『こんなとこで寝てちゃ風邪ひきますよ』って声もかけたし!」

 野崎先生はブンブン手を振って、厄払いするように否定した。

「それは分かってます。でも、なぜ助け起こさなかったんですか? 居ねむっているのと亡くなっているのとでは違うと思うんですが」

「い、いや、だって、わたしが引っかけた時は、もう死後四時間だったんでしょうが!」

 警察の質問にワタワタするばかりの野崎先生だ。

「すみません、背中合わせだとは言え、すぐ近くに居たのに気付かなくって……」

 香奈ちゃん先生は、大変ショックを受けた様子で、消えてしまいそうに肩を震わせていた。

 

 この学校はおかしい! いかれてる! 

 

 オレと佐伯さんはため息をつきながら職員室を後にして階段を下りる。イスカは無言だ。

 同僚が、すぐ近くで突然死し、死後硬直が始まるまで気づかないって、この学校の先生たちはどんな神経してるんだ?

 こんなんじゃ、普段からの生徒の異変やらシグナルに気づけるわけないよ。イジメとか問題行動がほとんどない学校だけど、なんだか背筋が寒くなる。オレみたいな奴が、とりたてて文句言われたり指導されたりってことがないのは、寛容な学校だと思っていたけど、それは単なる鈍感とか無関心というカテゴリーの問題だったのか?

 いろいろ思いながら校門を出たところでイスカが言う。

「パラレルは三宅先生だったんだ」

「「え?」」

「意地悪な三宅先生はルシファーに浸食されてモンスターになって、わたしたちにやっつけられ、それを埋めるようにしてパラレルワールドから別の三宅先生が、本人も気づかないうちに移動したんだ」

「え? でも、パラレルから移動してきたとしても、なんで死んじゃうの?」

「空気が合わないのよ。こちらの世界では、先生というのは……」

 イスカは言葉を濁したけど、さっきの職員室の様子から察せられる。オレ一人だけだったら口汚く学校やら先生やらの悪口を言うところだろうが、すぐ横を歩いている佐伯さんは、そんな言葉を言わせない雰囲気がある。

「佐伯さん」

 三人が分かれる三叉路まで来たところで、イスカが声をかけた。

「はい?」

「あなたも清い人だから、魔法をかけておくわ」

「魔法?」

「うん、三宅先生みたいに突然死しない魔法……」

 

 イスカは、ごく小さな声で呪文を唱え始めた……。

 

コメント

高校ライトノベル・乃木坂学院高校演劇部物語・102『第二十章 嗚呼荒川のロケーション・6』

2018-02-03 05:58:47 | エッセー

まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・102   



『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』姉妹版


 この話に出てくる個人、法人、団体名は全てフィクションです。

『第二十章 嗚呼荒川のロケーション・6』


 それは、ラストシーンの撮影が終わった直後におこった。

 監督さんがOKを出したあと、ディレクターとおぼしき(あとでNOZOMIプロの白羽さんだって分かる)人が、ADさんに軽くうなづくの。

 すると、ロケバスの上から花火があがって、カメラ載っけたクレーンから垂れ幕!

――『春の足音』ロケ開始! 主演坂東はるか!――

「え、ええ……ちょっと、これってCMのロケじゃないんですか!?」
 驚きと、喜びのあまり、はるかちゃんはその場に泣き崩れてしまいました。
「おどかしちゃって申し訳ない。むろんCMのロケだよ。でもカメラテストでもあったんだ。僕はせっかちでね、早くはるかちゃんのことを出したくってね。スポンサーと話して、CMそのものがドラマの冒頭になるようにしてもらったんだ。監督以下、スポンサーの方も文句なしだったんで、で、こういう次第。ほんと、おどかしてごめんね」
 白羽さんの、この言葉の間に高橋さんが、優しく抱き起こしていた。さすが名優、おいしいとこはご存じでありました。
「月に三回ほど東京に通ってもらわなきゃならないけど、学校を休むようなスケジュ-ルはたてないからね。それに相手役は堀西くんだ、きちんとサポートしてくれるよ」
「わたしも、この手で、この世界に入ったの。大丈夫よ。わたしも、きちんとプロになったのは高校出てからだったんだから」
 と、堀西さんから花束。うまいもんです、この業界は……と、思ったら、ほんとうに大した気配り。とてもこの物語には書ききれないけど。

 で、まだ、サプライズがあんの。

「分かりました、ありがとうございました。わたしみたいなハンチクな者を、そこまでかっていただいて。あの……」
「なんですか?」
 このプロデューサーさんは、とことん優しい人なのよね。
「周り中、偉い人だらけで、わたし見かけよりずっと気が小さいんです。人生で一等賞なんかとったことなんかありませんし。よかったら、交代でもいいですから、そこの仲間と先輩に、ロケのときなんか付いててもらっちゃいけませんか……?」
「いいよ……そうだ、そうだよ。ほんとうの仲間なんだからクラスメートの役で出てもらおう。きみたち、かまわないかな?」
「え、わたしたちが……!?」

 というわけで、その場でカメラテスト。

 笑ったり、振り返ったり、反っくり返ったり……はなかったけど。歩いたり、走って振り返ったり。最後は音声さんが持っていたBKB47の音源で盛り上がったり。上野百合さんが――あんたたち、やりすぎ!――って顔してたので、BKB47は一曲の一番だけで終わりました。

「監督、変なものが写ってます!」

 編集のスタッフさんが叫んだ。みんなが小さなモニターに集中した。
 それは、わたしたちがBKB47をやっているところに写りこんでいた。
「兵隊ですかね……」
「兵隊に黒い服はないよ……これは、学生だな……たぶん旧制中学だ」
 と、衣装さん。
「この顔色は、メイクじゃ出ませんよ」
 と、メイクさん。
「今年も、そろそろ大空襲の日が近くなってきたからなあ……」
 と、白羽ディレクター。
「これ、夏の怪奇特集に使えるなあ」
 と、監督。
 わたしたちはカメラの反対方向を向いてゴメンナサイをしている乃木坂さんを睨みつけておりました。
「どうかした?」
 潤香先輩と、堀西さんが同時に聞くので、ごまかすのにアセアセの三人でした。

コメント

高校ライトノベル・小悪魔マユの魔法日記・49『フェアリーテール・23』

2017-08-18 06:18:22 | エッセー

小悪魔マユの魔法日記・49
『フェアリーテール・23』
     




 声の主は、新聞配達の少年ジョルジュだった。

「どうしたの、ジョルジュ?」
「大変なものに出くわしてしまった……あ、こっちへ」
 そういうと、ジョルジュはミファとマユを道路脇の大きな岩陰に連れて行った。
「いったいなによ、なにがあったのよ!?」
「驚くなよ……」
「シッ……!」
 息を整えながら話を続けようとしたジョルジュを、マユは静止した。

 岩の向こうの道を町長が歩いていく。道は、岩のところで曲がっているので、後ろから来た町長は気がついていなかった。いつもなら、目の前を歩いていた二人の女の子の姿が見えなくなれば「おかしい」ぐらいは思うのだけれど、この時は気づきもしなかった。
 それほどサンチャゴのライオンのショックが大きかったのだ。

 町長の気配が完全に無くなっても息をひそめ、さらに三つ数えてからジョルジュは話し出した。

「さっき、ライオンに遭ってしまった……」

「「え!?」」

 ジョルジュは、二人を案内しながら、説明した。

「新聞を配達し終えて、家に……帰ろうとしたんだ、そして北……の、町はずれのイガイガ林の……ところまで来た……ら……オレの上……上を、大きな影がよぎった……んだ……」
「あの(……)のとこは、人目を気にしてるんだろうけど、分かりにくいから」
「とりあえず、イガイガ林まで行って話してくれる。ただでもお喋りなあたしたちが、人前で黙り込んじゃ、かえって怪しまれるわよ」
「それもそうだ」

 ということで、イガイガ林に着くまで、三人はバカ話ばかりした。おかげで、マユのこともジョルジュは自然に理解した。年頃の少年や少女は改まった話は苦手だ、バカ話の中で話したほうが、お互いに通じやすい。
 ジョルジュは、マユが小悪魔であることもミファと友だちであることも自然に理解……信じた。むろんサンチャゴじいちゃんのライオンのことは言わなかった。

 そういうオトモダチ的な話をしているうちに、三人はイガイガ林の前までやってきた。
 あたりをうかがい、イガイガ林の中に入ると、ジョルジュは一気にまくしたてた。

「でよ、大きな影がよぎったかと思うと、そいつはオレの目の前に降りてきて、オレをめがけて駆けてきたんだ。オレは、足がすくんで、動くことも声を出すこともできなかった。だって、そいつは……ライオンなんだ!」
「で、ライオンはどうしたの? どこにいるの?」
「林の、あるところに閉じこめてある……」
「ジョルジュが、閉じこめたの!?」
「あ、ああ、町に出られちゃ大騒ぎだからさ。オレだってやるときゃやるよ!」
「えらいんだ、ジョルジュって!」
 マユは、一応カワユゲな女の子らしく驚いてやった。なにかありそうな気はしたが、まあ若者同士の礼儀として……。
「で、ライオンは?」

「……ここ」

 ジョルジュは、体をカチコチにして、目の前の薮を指差した。
 一見薮に見えたが、それは木の枝を切り積み重ねたカモフラージュであることが分かった。三人でカモフラージュの薮をどけると、そこは岩肌で、人がやっと通れる割れ目が開いていた。

 割れ目の奥から気配がした……たぶんライオンの気配……でも、サンチャゴじいちゃんのライオンの気配とは違っていた。薄暗いので、マユは魔法で明るくしてみた。

 割れ目の中は意外と広く、奥の方で「く」の字に曲がっているようで、気配は曲がった「く」の字の奥の方からしてくる。
 マユを先頭に、ゆっくりと奥に進んでいくと、後ろの方で、ガラガラガラと大きな音がした。
 崩れてきた岩で、入り口がほとんどふさがれてしまった。
 ミファとジョルジュは思わず抱き合ってしまった。

「あなたたち、友だち以上なのね……」
「あ……思わずよ、思わず。手近にいたから」
「そ、そうだよ」
「ま、どうでもいいけど……フレンチキスまですることないと思うよ」

 マユは、今のが(二人が抱き合ったことじゃなく、岩が崩れたこと)ライオンの仕業であることに気づいていた。

 気配はいきなり「く」の字の角を曲がって現れた。
 それは身の丈二メートルは超えるライオンであった……身の丈?

 そう、ライオンは二本の足で立っていたのだ!

「やあ、わざわざすまないね」

 ライオンが口をきいた……!!?



コメント

高校ライトノベル・時かける少女BETA・8《アナスタシア・4》

2017-07-09 06:26:25 | エッセー
時かける少女BETA・8
《アナスタシア・4》
          


「さあ、何からやったらいいのかしら!?」

 アナは張り切っていたが、大使館のキッチンでやることは「お湯を沸かすこと」だけだった。
「で、あとは?」
 当然な質問だった。しかし、アリサの答えは「段ボールの箱を運ぶ」ことだけだった。
 それは、アリサが個人的に大使館から借りている物置で、部屋の中は、その50センチ四方ほどの箱で一杯だった。
「日本で一番簡単で、栄養も温かさも摂れる新開発の非常食です。まずは大使館のみんなと試食です」

 とりあえず運び出した。

「アリサ、力持ち!」
「見かけより軽いんです。アーニャ(大使館ではアーニャで通すことにした)も持ってごらんなさい。5箱は軽いですよ」
「そんな、あたしは……あ、持てた!」
 その箱は大きさの割には軽く、ひと箱1キロ程でしかなかった。
「さあ、手すきの大使館員のみなさん、ちょっと試食に付き合ってくださいな!」
 なんだなんだと、警備以外の大使館員が、ホールに集まった。
「アーニャ、その箱開けて、中身を人数分出して」
「はい……なんだろ、これ」
 中からは紙でできたカップが30個ほど入っていた。日本語で書いてあるのでよくわからないが、カップの中はカサコソ音がして、何か入っていることは確かだが、食べ物にしては、あまりにも軽い。
「カップの蓋を1/3ほど開けてください」
 この段階で、皆がざわついた。良い匂いはするが、中はカチカチにこんぐらがってプレスされた針金の塊のようなもの。そこに、エビや野菜、小さな肉のようなものがミイラのようになって入っていた。
「台所のお湯は沸くのに時間がかかります。サモワールのお湯を中に注いで、もう一度蓋をして3分待つ。3分経ったら、蓋を開けて、カップに貼りついているセルロイドのフォークで食べてください。

 いい匂いがして、3分間の沈黙になった。

 あちこちで、蓋を開けてカップラーメンをすする音がした。
「美味しい! でも日本人て、食べるとき行儀が悪いわね」
「それは違うの。アーニャ、これは『すする』という食べ方で、麺状の食べ物を食べる時には一番早く食べられるし、のど越しって感覚が、とってもいいの……ズルズル」
 アナは吹き出しかけたが、たしかに日本人たちは美味しそうに、そして早く食べている。
「有紗さん。これ美味いけど、新製品かね?」
 一等書記官の水野が聞いてきた。
「はい、これで一儲けしようと思っております。なんたって、お湯さえあれば、このロシアの真冬だって温かいものが食べられます。軍の携帯糧秣なんかにいいんじゃないかと思っています」
「さすが大黒屋光太夫の末ではあるなあ」
「え、アリサって、コーダユーの子孫なの?」
「はい、玄孫(やしゃご)のひ孫になります。縁あってロシア人みたいな顔になっておりますけど」
「すごい! エカチェリーナひいひいひいひいお祖母さまから尊敬された日本人よ。歴史のセミョーノフ先生からも聞いたことあるわ!」
「しかし有紗さん。これでは男の腹はくちくならないね」
「それは試食用。炊き出しに使うのは……こちらの方です!」
 アリサはスーパーカップを取り出した。
「おお、デカイ。それにみそ味って書いてあるじゃないか!」
 一等書記官は素直に喜んだ。さすがに迫水大使が心配げにアリサの肩を叩いた。

「炊き出しは無理だ。君の部屋にあるものじゃ5分ともたない。足りなければ騒ぎになる。ペトログラードは革命の寸前だよ、大使館が無事で済まなくなる」
「大丈夫です。仕掛けは申せませんが、この携帯食料は無尽蔵です。お湯をかけてあげるのは最初の百人ほど。あとは箱ごと渡します。食べ方も箱とカップの両方に絵文字で印刷してあります。それよりもお話が……」
 アリサは、大使にだけはアーニャの身分と処遇について話をしておいた。

 アーニャは、楽しげに炊き出しの手伝いをやり始めていた……。

コメント

高校ライトノベル・時かける少女・29『プリンセス ミナコ・11』

2017-04-20 06:27:28 | エッセー
時かける少女・29 
『プリンセス ミナコ・11』 
       

 昭和二十年四月、前月の大空襲で肺を痛めた湊子(みなこ)は、密かに心に想う山野中尉が、沖縄特攻で戦死するまでは生きていようと心に決めた。そして瀕死の枕許にやってきた死神をハメた。死と時間の論理をすり替えて、その三時間後に迫った死を免れたのだ。しかし、そのために時空は乱れ湊子の時間軸は崩壊して、時のさまよい人。時かける少女になっ。てしまった……今度は2013年の大阪から始まった。なんとミナコはプリンセスに!



 墜ちたヘリコプターに乗っていたのは、全員が人形だということが分かった。

 つまり、実物のヘリコプターをラジコンにしたようなもので、ミナコ放送のそれに、良く似せてあるがニセモノであることが判明した。
 ローテ・クレルモンの人形が乗っていたことは、数台のカメラに写っており、クレルモン家にも疑惑の目が向けられたが。
「そんな、見え透いたことを当家がやるわけがないし。理由もない!」
 クレルモン公はきっぱりと否定した。
 爆発物が仕掛けられていたわけでもなく、女王やミナコが乗った車を狙ったものでもなく、ひどく悪質な嫌がらせであろうと思われた。

「犯人は、海の上のクルーザーからコントロールしていたようですが、事件後、CU国の港に入って、車で逃走しています」
 女王はテレビのボリュームを落とした。
「わかりました。調査はそこまでにしましょう」
「やはり……」
「たぶん。国際的なテロでないことが分かれば十分よ」
「では、発表は?」
「国際的テロの疑い。マスコミもそう見るでしょう。曖昧な表現がいいわ」
「承知しました……」

 ダニエルが姿を消すと、マスコミの取材を終えたミナコが戻ってきた。

「お祖母ちゃん、あれでよかったかしら?」
「その前に、きちんとお辞儀」
「あ、はい女王陛下」
 ミナコはぎこちないお辞儀は、テイク3までやって合格。
「ミナコが飛び出したときはびっくりしたわ」
「すみません。軽はずみでした。ローテの姿が見えたのでつい……」
「世界のジグソーパズルは、日本ほど単純じゃないの。今は、それが分かればいいわ。インタビューも自分の軽はずみを恥じていることが、共感を呼んだようでけっこうでした」
「ありがとう、お祖母様」
「疲れているでしょうが、今夜は歓迎晩餐会です」
「はい」
「課題を一つ」
「なんでしょう?」
「ローテと仲良くなる……」
「いきなりですか?」
「とっかかりができれば、合格。それが、あなたのジグソーパズルよ」

 女王は、軽く微笑んだが、ミナコには、とても重いことに思えた……。

コメント

高校ライトノベル・VARIATIONS*さくら*45《コクーン・4》

2017-03-28 06:20:23 | エッセー
VARIATIONS*さくら*45
《コクーン・4》



「どなたか、ジェット旅客機の操縦が出来る方はおられませんか!?」

 機内放送が、日本語、英語、フランス語で、喋り始めた……。
「どうしたんでしょ?」
「……これから詳しい事を言うだろう」

 小林一佐の言うとおりだった。数秒の沈黙のあと、別のCAがフランス語で喋り始めた。

「機長と副機長が二人とも身体的な理由で、操縦ができません。自動操縦で飛んでおりますので、今すぐ危険だというわけではありません。ただ、このままでは着陸ができませんので、どなたか操縦できる方を探しております。出来る方がおられましたら、近くのキャビンアテンダントまでお知らせください」

 早口で、少し聞き取り辛かったが意味は分かった。フランス語の分かる少数の乗客に動揺が走った。続いて英語、日本語、そして中国語と別のCAがアナウンスした。

「いかん、クルーがパニック寸前だ。母国語を喋るCAが、それぞれ話しているぞ」
 あたしたちがいるビジネスクラスにも動揺が走った。女性のCAが、こわばった笑顔で通路を歩く。
「どなたか、操縦出来る方……」
 かえって乗客の不安をあおっている。
「大丈夫、これはボーイング777だ、400人以上乗っている。一人ぐらいいるさ。落ち着いて」
 小林一佐が、CAの手を取り、優しく言った。軍服の力だろうか、キャビンは少し落ち着いた。しかし15分が限界だった。CAが三度目にやってきたときには、またキャビンに動揺が走り出した。
「さっきの軍人さん。あんたら出来んのかね!?」
 アメリカ人らしいオッサンが、小林さんに言った。
「申し訳ない、わたしはアーミー(陸軍)でね。いや、きっと経験者がいますよ。今頃手を上げるタイミングを計ってるでしょう」
「ああ、きっとル・モンドが注目するのをね」
 アメリカのオッサンは、こんなときにもユーモアを忘れない。ル・モンドとは、フランス最大手の新聞社だけど、直訳すれば「世界」だ。そんなことを思いながらも、あたしは手足が冷たくなって行くのを感じた。
「そんなに寒がらなくてもいい。ボクがなんとか……してもいいですか、サンダース?」
「君がか、レオタール?」
「父はフランス空軍のパイロットでした」
「で、君は、陸自の施設科だぜ」
「施設科のモットーは、利用できるモノはなんでも利用しろ。そして、最後まで諦めるなです。大丈夫、777はシシミュレーターで何度もやっています」
「実物は?」
「自衛隊でもシミュレーターのあとで、本物に乗せてるじゃないですか」
「じゃ、この777のコクーンは君が預かれ」
 一瞬真剣に目を見交わしたあと、レオタード君が立ち上がった。
「ボクが操縦します。交通違反で免停中ですが、腕は確かです」
 レオタード君は、三カ国語で話して、乗客の人たちから拍手をもらった。
「責任上、わたしが上官として立ち会います。そして、精神的なサポーターとして、このさつきさんにも付き添ってもらいます。
「え……」
「無事成功の暁には、連隊長であるわたしが、二人の仲を公認いたします」
 小林さんが、とんでもないことを言った。
「この特別なオペレーションと、カップルの出現に、元アメリカ海兵隊大尉として立ち会えることを光栄に思います。大佐!」
「サンキュー、メルシー、ありがとうございます」
 レオタード君は、三カ国語で礼を言って、あたしの肩に手を回した。その手が震えていることは、あたしの生涯の秘密にしようと誓った。
「大佐、よければ、このオペレーションに名前を付けさせて下さい」
 アメのオッサンが言った。
「ほう、オペレーション・トモダチ・2とか?」
「いいえ、『オペレーション・コイビト』であります」

 キャビン中から前にも増す拍手が起こった……。

コメント

高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・〔俺の妹がこんなにモテるわけがない〕

2016-10-06 07:06:04 | エッセー
ライトノベルセレクト
〔俺の妹がこんなにモテるわけがない〕



「受けるったら、受ける!」

 妹の小百合は、それで通してしまった。
 俺を含め家族は、もう説得するのにも疲れた。
「まあ、本人の人生だ。やりたいようにやらせてみようか……」
 親父のこの言葉が家族の総意ということになった。

 小百合は、来春に打ち上げられる人類初の超光速宇宙船の乗り組員に応募しようというのだ。
 なんせ、人類初の超光速である。なにがおこるか分からない。

 妹の小百合は兄の俺がいうのもなんだが、取り柄が無い。高校は平成に創立され、今年創立二百周年を迎えた古いことだけが取り柄の『青春高等学校』これが『聖駿高校』でもあれば、音はおなじでも21世紀初頭に流行ったテレビ番組と同じでカッコいいんだけど、なんにもなしの『青春』この200年間偏差値48を奇跡的に維持。学校関係者は、いっそ『SSK48高校』にしようと真面目に考えたほどである。
 その青春高校でも特に成績がいいわけでもなく、かわいいわけでもない。
 名前が示すように、イメージ古すぎ。平成の時代だったら小野さんが生まれてきた娘に「小町」と名付けるようなもの。この23世紀はカタカナの名前が一般的だ。ちなみに小百合は、この夏に大失恋している。フッた男が玉置コージ、横からかっさらっていったのが親友と思っていた名取ヨウ。二人とも並の上ってとこだけど、フラれた小百合にはフラれたという傷しか残らない。
 存在感の薄さも災いしている。遠足で点呼して、どうしても一人足りない。三回目にやっと小百合を飛ばしていたことを担任が気づくぐらいに存在感が無い。

 そこへ、宇宙船の乗組員の募集があった。

 昔の宇宙船と違って、居住性は客船並。人工引力もあり、21世紀のように宇宙酔いなどはしない。まるで超人を養成するような特殊訓練もない。ただ超光速は人類初で、なにが起こるか分からない。予定では一か月でマゼラン星雲まで行って帰ってくる予定だが、学者によっては、古臭い相対性理論を持ち出して危険と叫ぶ人もいたが、その昔、超音速に人類は耐えられないと言われた以上に少数派で、完全に無視された。

 ……それから40年がたった。

 小百合を乗せた宇宙船は、まだ帰ってこない。専門家は超光速のあまり、異次元に入り込み、二度と、この世界には現れないだろうということで意見が一致していた。
 発射場には記念碑が立てられ、犠牲者の碑がたっていて、全部漢字の小百合の名前は目立っていた。石碑になってやっと目立てたか……老眼の進んだ目に眼鏡という古典的な視力矯正器をかけて、俺は石碑を撫でた。
 23世紀も半ばを過ぎると、ほどほどの科学というのが流行り、日常生活は古典といっていい風俗に変わり始めていた。細胞操作をやれば125歳ぐらいまでは生きられるのだけど、人は、あえて自然な人生を選ぶようになり、親父もお袋も人工関節には入れ替えているが、人並みの年寄りになっていた。

 この墓参りのような、妹への追憶も、これを最後にしようと決めた。

 俺たちには、世話をしたり関心を持たなければならない家族や妻や子や孫たちがいる。この23世紀では、まだまだ仕事もしなければならない。
「じゃ、小百合。これでお別れするよ……」
 親父とお袋は、さすがに涙ぐんだ。息子夫婦は神妙にしているが、孫たちは帰って遊びたくて仕方がないようだった。顔も見たことが無い40年前の大叔母などに興味の持ちようはない。

 それは、秋晴れの日だった。

 月の交通管制局が、地球と月の間に現れた、観たこともない宇宙船の出現に気づいた。
「いきなりコスモレーダーに現れたんです。いやあ、交信した時には驚きました!」
 管制官が、モニターの中で興奮した顔で言っている。

 そう、小百合を乗せた超光速宇宙船が帰って来たのだ!

 宇宙船の搭乗口が開くのを固唾をのんで見守った。
 信じられなかった。乗組員たちは40年前に出発したときそのままの姿だった。
 相対性理論は生きていた。光速以上で移動する乗り物の時間は、その速度に従って短くなる。
「え……おにいちゃん!?」
 そう言って驚いた小百合は、高校三年生のままだった。

 そして、この時代は、新古典主義の時代と言われ、450年以上前の昭和や、平成の文化がもてはやされていた。

 40年前では、なんの取り柄もない小百合だったが、23世紀末では得難い『生きた昭和』ともてはやされた。コンタクトレンズ以外何も人工的なものをほどこしていない小百合は、それだけでも賞賛の的だったが、そのルックスと物腰は、トップスターが真似ようとしてもできないもので、小百合は世界のアイドルになってしまった。

 ああ、俺の妹が、こんなにモテるわけはない……のに!

コメント

高校ライトノベル・大橋誤訳 日本の神話・14『イザナギの三神・スサノオ・3(天津罪)』

2016-09-16 13:43:52 | エッセー
大橋誤訳 日本の神話・14
『イザナギの三神・スサノオ・3(天津罪)』
  

 日本は八百万(やおよろず)の神さまの国です。

 その八百万の神さまの東の横綱が天照大神で西の横綱が出雲大社であります。
 何度も申しましたが、今の皇室に繋がる大和朝廷の神さまがアマテラスで、出雲大社に象徴される出雲勢力の神さまの大元がスサノオであります。
 出雲勢力がどれだけ強大であったかは、十月を神無月として、十月には日本中の神さまが出雲に集まるということになったこと。で、出雲地方だけは十月のことを神有月と言うことでも分かります。

 スサノオは高天原で大暴れします。

 大暴れの結果、高天原を追放されることになるのですが。これは出雲勢力が大和勢力に敗れたことを反映させるためにできたストーリーです。
 それはさておき、面白いので観ていきましょう。
 
 スサノオは高天原の田んぼを踏み荒らしてメチャクチャにします。神さまが食事をする御殿にクソを巻き散らかして汚します。アマテラスがスサノオを罵倒するときに「このウンコ!」と言ったのは、わたしの筆が滑ったからですが、まさにその通りのことをやってのけます。
 最初は大目に見ていたアマテラスですが、しだいに収まらないスサノオの乱暴にキレてしまいます。
 機織り姫が織物をしているところに生皮を剥いだ馬を投げ入れ、機織り姫はビックリしてショックのあまり死んでしまいます。
 このくだり、原文では機織りに使う板で陰(ほと=性器)を突いて死んだとされています。こういう描写は神話のいたるところに見られるのですが、それについては、また触れてみたいと思います。

 ここにきて、アマテラスは怒り心頭になり、天岩戸に隠れるのですが、ひとまずスサノオがしたことに目を向けます。

 古代においては、天津罪という概念がありました。とんでもない罪という意味です。

 宗教儀式や、祭祀の場をメチャクチャにすることは、大変な罪でした。
 スサノオがクソをまき散らしたことや機織りの場に皮を剥いだ馬を放り込んだことが、これに当たります。
 神道は、清浄を第一にする宗教です。

 何事のおはしますをば しらねども かたじけなさに 涙こぼるる

 西行の和歌です。
 なにがお祭りされているかよりも、かたじけないと感動するような清浄さが重要なのです。
 伊勢神宮の本殿は、式年遷宮と言って、20年に一度、すっかり建てなおして引っ越しします。清浄さやあらたかさを大事にするからです。
 ですので、神事や神社を穢すのは一番の罪とされます。

 次いで大きな罪が田畑を荒らす罪です。
 スサノオは田んぼの畔を壊したりしてメチャクチャにしています。
 神話の中には書かれていませんが、ああ、こんなのもあるんだ。というものがあります。

 頻撒(しきまき):人が種籾を撒いた上から別に種籾を撒いて「ここは、オレの田んぼだ!」と主張すること。

 串刺(くしざし):人の田んぼに立札を立てて新たに所有権を主張すること。

 農耕秩序を破壊するような行為が、神社を穢すことと並んで大罪でした。
 下って、鎌倉幕府ができたのも農村地主である武士たちが土地の所有権や、土地にまつわるイザコザを公平に裁いて欲しかったからでであります。日本の原型は、やっぱりお百姓さんの国なんですね。

 次回は天岩戸について考えたいと思います。
  
コメント

高校ライトノベル・大橋誤訳 日本の神話・13『イザナギの三神・スサノオ・2』

2016-09-14 13:51:18 | エッセー
大橋誤訳 日本の神話・13
『イザナギの三神・スサノオ・2』
  

 高天原(たかまがはら)というくらいですから、高い空の上にありました。

 そんな空の上に、スサノオはどうやって行ったか?
 むかし、スサノオの話をアニメにした『腕白王子のオロチ退治』というのがありました。たしか東映動画の作品で若き日の宮崎駿監督も参加していたと思います。
 アニメでは、アメノフチコマという空を飛べる馬に乗って行くことになっていますが、記紀神話では記述がありません。
 まあ。神さまだから行けたということでいいのではないかと思います。

「え、弟のスサノオがやってくるって!? なんなのよ、それは!?」

 スサノオが高天原にやってくるのを知ったアマテラスは、歓迎するどころか、とても嫌がります。
 そうして、自分も他の神さまといっしょに完全武装してスサノオに立ち向かいます。
「なんだって、おまえが来るんだよ! おまえ、父ちゃんも持て余してたって聞いてんぞ、入ってくんな!」
「そりゃねーだろ! オレはワルサなんかしねーよ。ただただカアチャンが恋しくってさ、父ちゃんに言ったら、ネーチャンがカアチャン似だってっから……その、来ただけなんだし」
「ざけんじゃねーよ! あたしはカアチャンの代用品ってか!? おまえ、どんだけマザコンなんだよ!? ここはなリア充しか住んじゃいけないんだよ、さっさと帰れ、このウンコ!!」
「ウンコじゃねーよ! おいら、ただただ寂しいんだ。な、ネーチャン、ワルサしねーから、置いておくれよ……頼むわ」

 姉弟とは思えない冷めた関係です。アマテラスは、もうスサノオのことを敵認定したような態度です。

 前にも述べましたが、アマテラスは伊勢神宮の御祭神で、皇祖神であります。
 その皇祖神であるアマテラスが非常に警戒するのですから、ここにおけるスサノオは、大和政権に敵対した大きな勢力があったことの記憶が反映されていると見るべきでしょう。
 大和政権が確立するまでは、いろいろな対立や抗争があったんだと理解しておけばいいと思います。

「じゃあさ、神さま生んで、潔白を証明しようじゃんか!」

 スサノオの提言で、姉弟の神さまは、子どもの神さまを生みあうことになります。
 アマテラスが付き合うのは、こういう場合の潔白の証明は双務的に行うものだからです。

 例えば、握手とか敬礼に、この名残があります。

 握手も敬礼も右手で行います。
 右手は武器を持つ手なので、お互いに相手の右手を握ることで武器を持っていないことを確かめ合うのです。
 敬礼も同様に、右手を肩の上に掲げることで、武器を持っていない=害意が無いことを証明しています。
 ですので、世界中にある敬礼の中で、はっきり右手の手の平を見せるイギリス流が敬礼の元祖なのかもしれません。

 礼砲というのがあります。

 外国の港に軍艦が儀礼的に入港する場合や、逆に入港される場合は、20発前後の大砲を撃ちます。
 儀礼がなんで大砲を撃ちあうことになるのかというと、物騒な気がしますが、以下の理由があります。

 昔の大砲は一発発射すると、次の発射までには時間がかかりました。だから、大砲を撃ってしまうことで「撃ったあとは無防備」なので害意はありません。ということの表明になるからです。
 最近の軍艦は、礼砲専門の大砲を積んでいることが多いようです。いまの艦載砲は口径120ミリくらいで、昔ほどデカい音が出ません。かといって、主力武器のトマホークやハープーンなんかのミサイルをぶっ放すわけにのいきませんのですから。

 この項続きます。

 
コメント

高校ライトノベル・大橋誤訳 日本の神話・12『イザナギの三神・スサノオ・1』

2016-09-12 12:26:55 | エッセー
大橋誤訳 日本の神話・12
『イザナギの三神・スサノオ・1』
  


 イザナギが、命からがら黄泉の国から戻って産んだのが三人の神さまです。

 産んだと言っても、男神なので、目を洗ったり鼻を洗ったりして出来た神さまたちです。
 困難と穢れに打ち勝って、その末に聖なる神さまが生じるという、まあ、観も蓋も無く言ってしまえば演出ですね。

 三人の神さまの中で、重要なのはアマテラスです。ツクヨミもスサノオもアマテラスを引き立てるための脇役です。

 脇役ではありますが、準主役と言っていいドラマがスサノオにはあります。

 本当なら、スサノオは日本のポセイドン(ギリシア神話の海の神さま)になるはずでした。父のイザナギは、そう命じたからです。
 しかし、スサノオは見かけは立派なアンチャンであるのですが、とてもマザコンでありました。

「なー、父ちゃん、なんで俺には母ちゃんがいねーんだよ!?」

 大きなドンガラをして、イザナギを責めては身も世もなく泣いていました。
 スサノオの泣きっぷりは凄まじく、というか、スサノオと言う名前も「凄まじい」という意味が被っているのかもしれません。
 スサノオが泣き叫ぶと、大地震が起こり、海が溢れたり山が崩れたりします。
「もー、かなーねえなー! デカいなりして泣くんじゃねーよ! みんな迷惑するじゃないか!」
「だって、母ちゃんに会いてーもんよ! オーイオイオイ……!!」

 息子ながら持て余したイザナギは、こんなことを言います。

「そーだ、スサノオ、おまえにはアマテラスって母ちゃん似の姉ちゃんがいるからよ。会ってくるといいよ!」
「ほ、ほんとか、父ちゃん!?」
「ああ、父親の俺が見ても惚れ直すぐらいのベッピンだ。若いころのイザナミにソックリだ!」
「オー! あの二本の柱周って、いいことしまくってた頃の話だな!?」
「あ、あれは、神聖な国生みの仕事だったんだよ!」
「でも、ヤリまくったっだろ!? 父ちゃんの凸と母ちゃんの凹を合わせまくってよ! このエロ親父!!」
「エ、エロじゃねーよ! 国生みだ!!」
 そう言いながらも、イザナギは鼻血を垂らしてしまいました。
「父ちゃん、やらしいぜ。ほら鼻血拭きなよ」
 スサノオはティッシュを箱ごとイザナギの膝に投げてやりました。
「す、すまん……」
「やっぱさ、母ちゃんに会っておかなきゃ……母ちゃんいねーから、姉ちゃんに会ってくるわ。俺のレーゾンデートルの問題なんだよなあ……じゃ、ちょっち行ってくるわ!」

 そうして、スサノオは高天原を目指して行くのでありました……。
コメント

高校ライトノベル・大橋誤訳 日本の神話・11『イザナギの三神・アマテラス』

2016-09-11 10:33:03 | エッセー
大橋誤訳 日本の神話・11
『イザナギの三神・アマテラス』
  


 三人姉弟の長女であるアマテラス=天照大神(あまてらすおおみかみ)は、伊勢神宮の神さまであります。   

 伊勢神宮というのは、日本の神社の総元締めで、アマテラスは皇室のご先祖であり、事あるごとに天皇や皇室の方々が参拝されています。
 庶民の間でも伊勢神宮と言うのは「一番偉い神さま」であると同時に、もっとも親しみのある神社であります。

 江戸時代、庶民が旅行する場合には名主や町年寄が発行してくれる通行手形が必要でした。時代劇で関所で「へえ、これでござります」と、関所役人に差し出しチェックしてもらうのが通行手形であります。海外旅行において税関でパスポートを提示するのと同じことですね。パスポートが無いと出入国管理法違反ということで身柄を拘束され、最悪の場合スパイ容疑などをかけられ死刑になることもあります。
 このパスポート無しで、外国に行ける場合があります。
 難民に等になって外国に亡命する場合です。亡命には程度の差はありますが、厳しい審査があります。ちなみに日本が受け入れている亡命は、年間で二桁にはなりません。
 そのくらいパスポートと言うのは大変なものなのですね。

 それと同じくらいに通行手形と言うものも大変なものでした。

 ところが、例外的に通行手形無しで庶民が旅に出る手段がありました。

 お蔭参り(抜け参りともいう)であります。

 ある日、空から伊勢神宮のお札が降ってきます(もちろん誰かが蒔いたか作ったりかしたもの)、そのお札を持っていれば、その場から伊勢参りにでかけていいのです。
「お蔭でね スルリトね ぬけたとさ(^^♪」
 などと囃しながら伊勢を目指します。お蔭参りする者は道中、沿道の人たちから無料で食事や宿泊の世話がうけられます。
 天下御免のお蔭参りであったわけですね。
 めったにお蔭参りは起こりませんが、幕末に大流行して治安悪化の原因になり、江戸幕府崩壊の原因の一つになりました。

 なにが言いたいかというと、ことほど左様に伊勢神宮はエライ! ということであります。

 ご祭神のアマテラスはとびきり偉い神さまであるということを頭においてほしいのであります。そして、この偉い神さまの末裔が高天原から日向国(宮崎県)は高千穂の峰に降り立ち東に進んで大和朝廷を作ったということになっております。
 これが神武東征神話になっていくわけですが、そこは後ほど展開ということにいたします。

 アマテラスは、二千年の日本の歴史の中でのスーパースターであるというイメージを持っていただければ、理解が早いように思います。

 次回は、三兄妹の末っ子であるスサノオに迫ってみたいと思います。

 
コメント