大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・セレクト№25『UZA』

2012-11-25 16:14:26 | 小説
ライトノベル・セレクト№25
 『UZA』 
                


 UZA……って言われしまった。

「ウザイの……サブのそういうとこが」
 正確には、そう言った。
 でも、感じとしてはUZAだった。去り際に、もうヒトコト言おうとして息吸ったら、まるで、それを見抜いたように沙耶は、げんなり左向きに振り返って、そう言った。

 UZA……ぼくの心は、カビキラーをかけられたカビのようだった。最初にバシャッってかけられて、ショック。そして、ジワーっと心の奥まで染みこんでいく、浸透力のある言葉。そして、ぼくの心に残っていた沙耶への愛情は「痛い」というカタチのまま石灰化してしまった。

 自分で言うのもなんだけど、ぼくは人なつっこい。だから、元カノの沙耶が「ノート貸して」と言ってくれば「いいよ」とお気楽に貸しにいく。浩一なんかは、こういう。

「そういうとこが無節操てか、ケジメねーんだよ」

 で、ヘコンダまま駅のホームに立っている。ヘコンだ理由は、もう一つ、ウジウジ考えながら駅に向かったら、ホームに駆け上がった直後に電車が出てしまった。
「アチャー……」
 オッサンみたいな声をあげて、ノッソリとベンチに座り込む。向かいのホームの待合室に、その姿が映る。
まるで、ヘコンデ曲がったお茶の空き缶のようだった。我ながら嫌になって、時刻表を見る。見なくても登下校のダイヤぐらいは覚えてるんだけど、諦めがわるく見てしまう――ひょっとして、ぼくの記憶が間違っていて、次の快速は二十五分後ではないことを期待しながら……こういうところの記憶は正しく、自分の念の押し方がいじましく思われる。

 未練たらしく、去りゆく快速のお尻を見たら、ホームの端に、もう一本お茶の空き缶が立っていた。でも、この空き缶は、ヘコミも曲がりもせずに、ぼくに軽く手を振った。
「田島くんよね?」
 空き缶が近寄って口をきいた。
「あ……碧(みどり)……さん」
「嬉し、覚えててくれたんや」
 この空き缶は、今日転校してきた、ナントカ碧だ。ぼくは、朝から沙耶のことばかり考えていて、朝のショートの時、担任が紹介したのも、この子の関西弁の自己紹介もほとんど聞いていない。ただ、すぐにクラスのみんなに馴染んで「ミドリちゃん」と呼ばれていたのと、碧って字が珍しくて記憶に残っている。
「L高の子らが『おーいお茶』て言うたんやけど、なんの意味?」
「あ、この制服」
「え……?」
「色が、そのお茶のボトルとか缶の色といっしょだろ」
「あ、ああ……あたしは、シックでええと思うけどなあ。ちょっと立ってみて」
 碧は遠慮無く、ぼくを立たせると、ホームの姿見に二人の姿を映した。
「うん、デザイン的にも男女のバランスええし、イケテルと思うよ」
 そう言うと、碧は遠慮無く、ぼくのベンチの真横に座った。そのとき碧のセミロングがフワっとして、ラベンダーの香りがした。そして何より近い。普通、転校したてだと、座るにしても、一人分ぐらいの距離を空けるだろう。ぼくは不覚にもドギマギしてしまった。人なつっこいぼくだけど。ほとんど初対面の人間への距離の取り方では無いと思った。

「田島くんは快速?」
「うん、たいてい今のか、もう一本前の快速……ってか、ぼくの名前覚えてくれてたんだ」
「フフ、渡り廊下に居てても聞こえてきたから」
「え……それって?」
「人からノート借りといて、UZAはないよねえ」
「聞いてたのか……」
「聞こえてきたの。二人とも声大きいし、あのトドメの一言はあかんなあ」
「ああ……UZAはないよなあ」
「ちゃうよ。UZAて言われて、呼び止めたらあかんわ」
「え、オレ呼び止めた?」
「うん、『沙耶あ!』て……覚えてへんのん?」
 ぼくは、ほんの二十分前のことを思い出した。で、碧が言ったことは、思い出さなかった。

 ホームの上を「アホー」と言いながら、カラスが一羽飛んでいく。

「あれえ、覚えてへんのん!?」
「うん……」
 ばつの悪い間が空いた。ぼくはお気楽なつもりでいたんだけど、実際は、みっともないほど未練たらしいようだった。その時、特急が凄い轟音とともに駅を通過していった。おかげでぼくのため息は、碧にも気づかれずにすんだようだ。
「その、みっともないため息のつきかた、ちょっとも変わってへんなあ……」
 そう言うと、碧は、カバンから手紙のようなものを取りだして、ゴミ箱のところにいくと、ビリビリに破って捨てた。ぼくの、ばつの悪さを見ない心遣いのようにも、何かに怒っているようにも見えた。その姿が、なんか懐かしい。
「あたしのこと、思い出さない?」
 碧は、ゴミ箱のところで、東京弁でそう言った。
「あ……」
 バグった頭が再起動した。
「みどりちゃん……吉田さんちのみどりちゃん?」
「やっと思い出した、ちょっと遅いけど。やっぱ、手紙じゃなく、直に思い出してくれんのが一番だよね」

 小さかったから、字までは覚えていなかった。みどりは碧と書いたんだ。小学校にあがる寸前に関西の方に引っ越していった、吉田みどりだった。

「今は、苗字変わってしまったから。わからなくても、仕方ないっちゃ仕方ないけど。あたしは、一目見て分かったよ、サブちゃん。改めて言っとくね。あたし羽座碧」
「ウザ……?」
「うん、結婚して、苗字変わっちゃたから」
「け、結婚!」
「ばか、お母さんよ。三回目だけどね」

――二番線、間もなくY行きの準急がまいります。白線の後ろまで下がっておまちください――向かいのホームのアナウンスが聞こえた。

「じゃ、あたし行くね、向こうの準急だから。それから『沙耶!』って叫んではなかった。ただ顔は、そういう顔してたけどね……ほな、さいなら!」
 
 そう言うと、碧は、走って跨道橋を渡って、向かいのホームに急いだ。同時に準急が入ってきて、すぐに発車した。前から三両目の窓で碧が小さく手を振っているのが見えた。
 ぼくのUZAに、新しいニュアンスが加わった……。

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タキさんの押しつけ映画評・『人生の特等席』

2012-11-24 08:30:42 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『人生の特等席』
   

これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので、本人の了解を得て転載したものです


 ワウ!! 後の予定がなければ このまま飲みにいきたいぜい!

 イーストウッドの頑固爺に乾杯! いやいや、82歳にゃ見えまへん。
 兎に角、脚本が素晴らしい、エイミー・アダムス最高! ジャスティン・ティンバーレイク さすが!
 エイミー・アダムスは「魔法にかけられて」なんてなクソ(失礼!)映画が初見だったので すっかり実力を見誤っていた。
 しかし、考えてみたら「魔法~」なんてな作品がまがりながらも一応見られる映画に成っていたのはエイミーの力だったのかも… ストーリーは多少先読みできたり、ご都合主義がみえるが、言うなりゃ これがハリウッド式ハッピーエンドの基本形、これだけ綺麗にはまれば 少々の事は無視してO.K.
 
 監督はロバート・ロレンツ、イーストウッド作品のプロデュースをしてきて今作が初監督、イーストウッドが監督の方が良かったとの評価もあるが賛成しかねる。彼の仕事は見事だ。 妻の墓の前でイーストウッドのだみ声で歌う「YOU ARE MY SUNSHAIN」まさかこの歌に泣かされようとは、「あなたへ」で健さんと大滝秀次が短いセリフのやり取りだけで人生を垣間見せたのと同じく「燻し銀」の演技です。 父と娘の間に有ったわだかまりが徐々に溶けて行く様も美しい。カタルシスが計算されていると言う向きもあるだろうが、それに付き合うのもハリウッド作品の見方ってもんであります。楽しみましょう。


☆滝川浩一
 1953年生まれ、大阪府立山本高校、龍谷大学卒。両親のたっての希望で、イヤイヤながら10年あまりサラリーマンをやるが、その舌先三寸の口と、良く回る頭(実際回転するわけではない)押し出しが強くデカイ顔(AKBのトモチンの倍はある)で、あやうく中間管理職になりかけ退社。 以後子どもの頃から身に付いた勝負師の勘と、料理の腕、映画演劇への造詣の深さから、志忠屋というレストランを経営しながら映画評論を続けている。辛口ではあるが、的確な評論には定評がある。現在門土社の『モンド通信』などに連載を持つ。唯一の欠点は、大橋作品に点が辛いこと。面当てに『志忠屋繁盛記』を不定期連載し、本人の姿だけは、ありのままに描写するも、カエルの面にナントカである。


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 この物語は、顧問の退職により、大所帯の大規模伝統演劇部が、小規模演劇部として再生していくまでの半年を、ライトノベルの形式で書いたものです。演劇部のマネジメントの基本はなにかと言うことを中心に、書いてあります。姉妹作の『はるか 真田山学院高校演劇部物語』と合わせて読んでいただければ、高校演劇の基礎連など技術的な問題から、マネジメントの様々な状況における在り方がわかります。むろん学園青春のラノベとして、演劇部に関心のない方でもおもしろく読めるようになっています。
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高校演劇・体育会系に学びませんか

2012-11-20 09:01:29 | 評論
体育会系に学びませんか

 高校演劇のコンクール、たとえば大阪府高等学校演劇連盟は、大阪府教委や、大阪市教委の後援を受けております。全国大会で文科省の後援があったかどうかは記憶にありませんが、該当自治体教委の後援は受けているでしょう。教委主催の行事や、学校の入学、卒業式では、国旗の掲揚、国歌の斉唱が当たり前になっています。
 
 高校野球の甲子園が規模的には最大のものでありますが、各種のインターハイや自治体の総合体育祭では、国旗の掲揚と国歌の斉唱が当たり前になってきました。
 第八十二回全国高校野球大会での、国歌斉唱の動画アクセス(you tube)は平成24年11月19日現在で百五十万件を超え、評価は高評価が99%です。

 わたしは、現職のころから、卒業式、入学式において、国旗の掲揚と国歌の斉唱を主張、職員会議では「反動」「破壊分子」「裏切り者」と、結果としては嬉しい讃辞を職員のみなさんから頂きました。70年安保世代の尻尾に位置するわたしは、反対勢力からの、こういう言葉に力が湧いたものです。
 また、管理職からは、気持ちの悪い賞賛を受けました。
「ありがとう、大橋先生の発言で勇気をいただきました」
 わたしは、別に、管理職をヨイショするために発言したのではないのです。自分の信念……というほど大げさなものではありませんが、想いとして述べてきました。そして、ようやく、学校現場では、曲がりなりにも実施されるようになりました。

 体育会系の高校のインターハイなどでは、国歌の斉唱、国旗の掲揚が定着、正常化してきました。

 高校演劇でもやりませんか。ここで国歌の斉唱、国旗の掲揚の正当性については述べません。ナガッタラシクなるだけだからです。
 ただ、一言言うなら、日本の高校演劇の連盟がオフィシャルに行われる行事なのですから、当たり前である。と、だけ申し上げておきます。教委や自治体の後援を受けているのなら、やるべきです。また、教委もそれを条件に後援すべきでしょう。

 あえて、ご批判覚悟で提案いたします。大阪の連盟は幕間交流で、現役生徒以外の者の発言を封じられました。円滑な大会運営をお考えになった上でのことなのでしょう。
 しかし、オオヤケのサイトに予選の日程、時程が載っておらず、OB始め、一般の観客の方が混乱されたこと、本選の開場が30分以上遅れたことの意味。大会関係の常任委員の先生が、開演の時間を把握されていなかったことなど(オフィシャルなパンフを示すと、担当の先生は「あ、ほんまや」でした)いささか愕然といたしました。とても円滑な運営に気を配っておられるようには思えません。
 
 引き締める方向が間違っているように思いました。

 幕間交流の発言を制約し、コンクール運営の根幹である広報や、時程管理に手抜かりがある。何かが逆立ちしています。
 そこで、大会運営に一致団結と整然とした進行が行われるため、そしてなにより、高校生に対する教育を考えるならば、国旗の掲揚、国歌の斉唱はなさるべきでしょう。
 すでに、体育会系の大会では常識になり、正常化されているのですから。一般の国民的行事でも当たり前になってきているのですから。高校演劇のコンクールも国民的な常識に立って行われるべきでしょう。
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小悪魔タキさんの押しつけ読書感想『アルゴ』読了

2012-11-20 07:30:45 | 読書感想
タキさんの押しつけ読書感想
『アルゴ』読了


これは、我が悪友の映画評論家滝川浩一が、身内に流している読書感想なのですが、もったいないので本人の了解を得て転載したものです。



 典型的な直訳悪文でんなぁ。読むのに時間が掛かってしゃあない。
 話は、1979年に起こった テヘランのアメリカ大使館占拠事件で、当時 運良く脱出してカナダ大使公邸に匿われていた6人を 架空のSF映画をでっち上げ、脱出させるってぇお話し。CIAの公式作戦だったが、1986年まで機密とされ、その後も 各方面への影響に鑑み、当事者の著述は無かったようだ。

 映画台本はインタビューをもとに起こされたようで、本作は映画公開に合わせて書かれたようです。だから、この本が原作って訳じゃない。映画と本作を単純比較すると、脚本のほうが断然面白い。ただ、その筋(ってどの筋?)に聞いた所によると、この本に書かれてはいないが、映画の中のエピソードにはホントに有った出来事が描かれているとか……それがどれなのかまでは解らんのですが……まぁ、実際に有った情報戦だけに どこまで行っても「これが真実だ」ってのは解らんのでしょうねぇ。
 私の聞いている話では、みんなが空港に向かっているその最中に カーター大統領が諫言されて作戦中止となり、あわやの所でチケットがキャンセルされそうに成ったのがそれだってんですが、ちょっと確認のしようがないので“?”であります。「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(アフガンゲリラに武器を供給するように働いた上院議員の話)なんかと同じ混乱があります。「チャーリー~」の訳文はもっと酷かったなぁ。
 いずれも映画公開に間に合わせる為、大特急で翻訳したかららしいのですが、「てにをは」の間違いなんてな可愛いもんで、内容に齟齬があって、有り得ない展開に成ってたりしとりました。本作にはそこまでのミスは無いようですが「てにをは」の混乱はそこら中に散見できます。だから 意味が逆転していたりして、途中何度となく読み返しましたわい。これが原文のミスなのか翻訳のミスなのかは判断しかねますが、本作は少なくともプロの物書きが共同執筆者として名を連ねていますから、やっぱり翻訳ミスなんでしょうねぇ。

 昔のミステリー翻訳には専門用語が解らず、ムチャクチャええかげんな訳文が有ったもんですが、さすがに最近ではさほど酷い作品は有りません。突き詰めれば、出版社が間に合わせる事だけを考えた結果って事に成るんでしょう。お粗末。


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 この物語は、顧問の退職により、大所帯の大規模伝統演劇部が、小規模演劇部として再生していくまでの半年を、ライトノベルの形式で書いたものです。演劇部のマネジメントの基本はなにかと言うことを中心に、書いてあります。姉妹作の『はるか 真田山学院高校演劇部物語』と合わせて読んでいただければ、高校演劇の基礎連など技術的な問題から、マネジメントの様々な状況における在り方がわかります。むろん学園青春のラノベとして、演劇部に関心のない方でもおもしろく読めるようになっています。
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高校演劇・ベジタリアンさんからの便り『門前払いをくらいました』

2012-11-19 09:02:41 | 評論
ベジタリアンさんからの便り
『門前払いをくらいました』


 ベジタリアンさんから、お便りをいただきました。まずお読みください。 



 大橋先生、こんばんは。
 今日は大阪府大会第一日目。
 私もお手伝いに行ってきました。

 そこでショックな出来事に遭遇しました。
 なんと、幕間交流での発言権が、高校生にしか与えられていないのです。
 後で、近くにいた先生に
「私たち卒業生がコメントをしたい場合はどうしたら、いいのですか?」
と聞くと、
「各上演校が準備したアンケートにお書きください。」
と門前払いをくらいました。

 ショックでした。あ…、私は他人なんだ。と感じ、むなしくなりました。去年も卒業生として府大会を観に行ったいましたが、普通に3回も質問ができました。
去年にかえりたいです。(明日行くのが嫌になりました。)

 聞くところによると、近年、幕間交流でクレームに近い質問が増えているとか。
 もちろんTPOをわきまえない人も悪いけど、生徒を守るために私たちまで巻き込む先生方もあんまりです。
 幕間交流は、転換の時間稼ぎもありますが、観客と演者の交流を目的としたものです。

 それを高校生だけって、私たち卒業生や定年退職された先生方の気持ちは無視ですか?
 一度芝居から引退したものは赤の他人ですか?

 最後のよみうり文化ホールでの府大会。お客様が例年よりも多く入っているだけに、この仕打ちはあんまりです。


☆たぶん、わたし大橋むつおのせいです。
 昨年の近畿大会での、幕間交流のわたしの発言が、原因であるように、複数の情報提供者からうけております。
 二校の作品について、疑問があったので、二度発言したと思います。わたしは、感覚が、大昔の高校生のころのままです。また、現場の仕事に追われ、高校演劇に関われなかった時期が十数年、不連続でありました。
 わたしたちのころは、幕間交流、講評会、合評会など、場合によっては、論戦になりましたし、それでいいと思いました。しかし、最近は、誉め言葉しか言ってはいけないことになってしまっていることを学習いたしました。だからブログでも複数回、「わたしは、もう発言しません」と申し上げてきました。しかし、大阪府高等学校演劇連盟は、本当にやってしまわれました。いささか「羮に懲りて膾を吹く」ではないかと思います。
 また、連盟から、わたしの発言が原因であると、オオヤケに表明されたことはありません。直接注意や、苦情を言われたこともありません。いま確認しても、お答えにはならないでしょう。

 何度も、ブログで主張してきましたが、幕間交流、講評会、合評会は双方向性が原則で、疑問や批評があれば、ぶつければいいのです。むろん時間的な制約があるので、問題解決などはできません。言いっぱなし、言われっぱなしでよいのです。

 昔、講評会で講評内容に批判的な発言が多く出て、審査のやり直しをやったこともあります。あまり誉められたことではありませんが。独善的な審査を防止することや、真の批評が受けられるという点では、一定の効果がありました。むろん批評されて傷つくこともあります。しかし、それを恐れていては切磋琢磨ができません。進歩がありません。
 近畿大会では、「現役の高校生以外お断り」は止されたほうがいいと思います。そして、来年以後のコンクールにおいても。
 この件は、ベジタリアンさんからの便りを付けて連盟にも問題提起しておこうと思います。オオヤケのサイトでは、連盟の広報のアドレスが載っていますので、クリックすれば、コメントが送れる、双方向性が担保されています。ぜひ、そっちの方にもご意見を述べられることをお勧めいたします。
 




 
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タキさんの押しつけ映画評『新ヱヴァンゲリヲン劇場版Q』

2012-11-17 22:11:39 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『新ヱヴァンゲリヲン劇場版Q』


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が、身内に回している映画評ですが、おもしろく、もったいないので、本人の了承を得て、転載したものです



 まいったなぁ…なんにも書けません…兎に角、見に行って下さい。

 既に見た方と全く興味の無い方々に、以下 解放します。〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 さて、「序」では旧シリーズを引きずっていたのですが、「破」では 未知のメンバーも加わり、どうやら全く違うストーリーに成って行く可能性が有りました。
 本作「Q」において、物語は完全に別物に成りました。しかも、新しく提示される謎、謎、謎、謎、謎、謎………足掛かりは有るものの、一切答えは示されない。ただ、今度こそ最終回(らしいけど……)の「シン・ヱヴァンゲリヲン劇場版」に 「つづく」とでるだけです。今回ほどシンジに同情した事は有馬線。まるでシンジに対する「サド講座」みたいになっています。
 観客以上に何も知らされない、理解出来ないままに流転していく。前回 助け出した筈のレイは何処に……シンジの前に姿を現すカオルの正体は?……ここはどこ?今日はいつなんだ! 世界は存在しているのか……まさに、地獄で悪夢を見ているかのような扱い……こんなものを中学生が抱えられる訳がない。いつの公開に成るんだか、最終回第四作に早くたどり着いて楽にしてやりたい。心の底からそう思う。 あるいは、エヴァ劇場版第一作(「序」ではなく、テレビシリーズ直後の奴)に繋がるのかもしれないが……もう、それでも構わない。レイとシンジの魂に平安あれかし…本当にそんな気分なのでしよ。疲れた……「巨神兵、東京に現る」…?
 なんのこっちゃと思ったら…なんと「ナウシカ」の大前提、炎の7日間の東京バージョンをミニチュアとCGで作ったショートムービーでありんした。ちょいとゾッとする画面でありましたわい。



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高校ライトノベル・らいと古典・わたしの徒然草64『車の五緒=ステータスシンボル』

2012-11-17 07:14:09 | エッセー
わたしの徒然草64
『車の五緒=ステータスシンボル』
    

徒然草 第六十四段

「車の五緒は、必ず人によらず、程につけて、極むる官・位に至りぬれば、乗るものなり」とぞ、或人仰せられし。


 短い段であるが、解説がいる。
 車とは牛車のことで、「車の五緒」とは、牛車の人が乗るカゴのような部分の簾(すだれ)にかけられた、細い平帯状の飾りのこと。兼好から見て昔の平安時代とかには、この五緒の簾をかけた牛車に乗れるのは、それなりの身分、位階を持った人間で、いわば、それに乗っているだけで「カッコイイ! セレブゥ!!」と、羨ましがられたステータスシンボルであった。
 それが、兼好のオッチャンの時代は、貴族の衰退と共にやかましく言われなくなり、それほどの身分でなくても乗れちゃったわけで、有職故実(昔のシキタリ)に詳しい兼好のオッチャンには、ややナゲカワシイことであるようだ。で「或人仰せられし」などと人が言ったようにしているが、本当は本人の嘆きである。

 で、今回はステータスシンボルについて考えてみたい。
 昭和の懐かしい時代には「三種の神器」というステータスシンボルがあった。
 テレビ、洗濯機、冷蔵庫、であった。今は、こんなもの誰でも持っている。
 時代がくだると、「三C」と言われ、自動車(特に外車)、カラーテレビ、エアコン(昔はクーラーと言った)になった。これも今ではステータスシンボルとは言えなくなってきた。今の若者は車に乗らない人が増えてきたし、アナログのカラーテレビは常識どころか、地デジのおかげで過去の産物になり果てた。エアコンなど当たり前で、どうかするとエアコンを使わずに、涼をとるほうが、なんだか「エコやってます」と、カッコイイと思われるくらいである。
 車で外車なんか乗っていると、「燃費の悪い車に乗ってアホかいな」と思われた時代も、もう古く、車なんぞ、今や靴と同じ感覚。履いていて当たり前。中には、サンダルやスニーカーで済ませる若者やオジサンも増え、ステータスシンボルでは無く、趣味の問題に変わってきた。

 現代社会は、ステータスシンボルが無くなった。あるいは、あまり意味のない時代になってきた。で、ステータスシンボルとまでは言わなくとも、カッコイイと思われることを考えてみた。
「成城に住んでますの」
 ちょっとカッコイイ。しかし「葛飾柴又です」というのも同程度にカッコイイ。
 関西では、芦屋や近鉄の「学園前」などカッコよかったが、今は、それほどではない。
「海外留学」昔は、たいそうなお嬢ちゃん、お坊ちゃんがなさることであったが、今では、長期の海外旅行とあまり意味は変わらない。むろんマサチューセッツ工科大学やケンブリッジなどは別格であるが、別格ということが一般化していないのでステータスシンボルとは言わない。「ケンブリッジ……どこそれ?」の世の中である。

 話しは変わるようだが、全学連が存続の危機に立たされている。全学連の参加団体の最大の東京大学が全学連から脱退したからである。
 先日、このことをツイッターで呟くと、「全学連なんて、まだあったんですか!?」というツイートが返ってきた。
 ぼく達の若い頃は、全学連というと、恐れと尊敬の入り交じった目で見られたものである。このツイートを返してきた人は、まだましで、たいがいの若者は「ゼンガクレンて、なんですか?」になる。
 東京大学も値打ちが下がった。以前は東大出の芸能人ということだけで売りになったが、今は、それほどでもない。いつだったか、東大現役女子大生がヌードになったと騒がれたことがあったが、今では、そんなことではスポーツ新聞の記事にもならないだろう。

 ザックリ言って、現代社会はステータスシンボル喪失の時代なのではないかと思う。
 見上げる憧れが無くなってしまった。
 AKB48などが、憧れではあるのだろうけど、この憧れは、総選挙の視聴率を上げたり、CDの売り上げを伸ばしたりはする。また、AKBのオーディションに受かったら「やりー!!」ということにはなるが、国民の誰もが「ひょっとしたら、努力次第でわたしだって!」と思えるものとは少し違う。

 ステータスシンボルが無いというのは、大げさに言えば、日本という国自体が「理想」を失った結果ではないかと思うのだが、どうであろう。
 適度なステータスシンボルの存在というのは、その国の活力の指標であると、わたしは思う。
 今、アジアの多くの国にはステータスシンボルがある。中には国自体がステータスシンボルを持っているところもある。航空母艦を中心とした機動部隊や核兵器を持つことをステータスシンボルとしていて、国民自身のアイデンティティーとも結びついている。
 もし、日本の海上自衛隊が航空母艦を持ったとしたら、数百人規模の反対デモが、ちょこっとあって、大半の国民は無関心だろう。
 平成の時代が終わって年号が変わっても、日本人は昭和が終わって平成になったときほどの関心もないだろうと、わたしは予測する。
 広い世界で、年号を持っている国は、わたしの知る限り日本だけだと思う。これは、世界的に見ても日本だけのステータスシンボルで、日本という国のカタチ( The national polity )と大きく関わっている。

 わたしは、無いことをステータスシンボルにして実行している。
 携帯電話を持たないこと、IDカードを首からぶら下げないこと。この二つは、利便性よりも束縛を感じてしまう。
 そんなわたしを、家人は「原始人」と呼ぶ。
 わたしは「原始人さんに失礼」だと思うのだが、口には出さない。

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「第一回ハイスクールOMS戯曲賞」公募について

2012-11-16 11:03:54 | 評論
「第一回ハイスクールOMS戯曲賞」公募について


 わたしは、PCオンチで、検索すると、以下のものが出てきます。


 大変申し訳ありませんが、該当ページがございません。

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で、サイトの見出しを引用させていただきました。以下の内容です。
  
2012年11月5日 - 大阪府内の高校等に在学、または大阪府内に在住する高校生による創作(オリジナル) 戯曲作品※1で、平成24年4月から11月までに実際に演劇コンクール、HPF( Highschool Play Festival)、北摂高校演劇フェスティバル、文化祭などで上演された 作品に限ります。

 斜陽の高校演劇を、企業の取り組みとして応援してやろうという姿勢は、高く評価いたします。行政からは、そっぽを向かれ、一般の高校生や観客が離れていく中、私企業として、高校演劇を応援して下さることは全国を見ても希なことであると思います。

☆それが戯曲募集であることの問題
 他の文化部の活動、軽音やブラスバンドなどに企業が主催、協賛され、賞を出されることはあります。
 しかし、これらの分野で、創作作曲賞は寡聞にして存じません。おそらく無いのでしょう。

 なぜでしょう。作曲の難しさと畏敬の念をお持ちだからです。そのため、軽音でも吹奏楽でも、生徒はおろか、顧問でも作曲には手を出しません。軽音で若干、吹奏楽では、30年以上前に顧問による作曲があっただけです。

 戯曲は、これらの軽音や、吹奏楽の演奏曲にあたります。そして、戯曲というのは、作曲と同じほど、演劇の基本が分かっていなければ、できないことであります。
 高校演劇の衰退の原因の一つに、創作脚本の弱さがあります。一般の高校生や観客には分かりにくい未熟な作品が並び、役者として力のある生徒でも、その力を発揮できない状況です。
 OMS戯曲賞の関係者の方々は、むろん演劇について専門的な技能や知識、ご経験が豊富でいらっしゃいますので、以上、わたしが指摘してきたことはご承知されていると思います。
 わたしは、個人的には、高校演劇に肩入れしていただけるのなら、発表の場を提供していただきたいのです。OMS戯曲賞の関係者の方々なら、小屋を探したり、大阪ガスさんの力をもってすれば、コンクールの本選会場の提供も可能であると考えます。
 今、大阪府高等学校演劇連盟は、長年つかった、よみうり文化ホールが使えなくなり、来年からは、某ホールを使おうとなさっています。本来本選は、府の中心の交通の便が良く、大阪の東西南北のいずれからでも。交通アクセスの良いところがいいに決まっています。
 失礼な申しようになるかもしれませんが、内蔵に疾患がある患者に、スキンケアのサービスをすることに似ています。スキンケアでは、内蔵は良くなりません。
 本選会場の提供が無理なら、小ホールでも結構です「OMS・高校演劇祭」などの看板で、上演の機会を与えてはいただけないでしょうか。今の高校演劇は内向きに閉じており、一般の高校生や観客は、ほとんど見向きもしませんし、また連盟も外にひろげようとの意思もありません。そのことは、別のブログでも述べましたが、連盟のオフィシャルなサイトに、コンクール予選の日程も時程も載っていないことでも分かります。
 先日F地区の予選をご覧になろうとした方が、このオフィシャルな情報がないために、混乱したむねと、高校演劇を応援したいことをコメントでよこしてこられました。連盟は、こういうところからのてこ入れが必要です。そして、応援して下さるなら、高校生に上演の機会を与えてくださることです。

 むろん、私などが申し上げても「蟷螂の斧」であることは自覚しております。こんな野人のいうことでOMS戯曲賞が無くなり、会場提供の方向に代わるなどとは思っていません。
 一度決定し、社会的にも公表されたことですから、実施はされるのでしょう。
 願わくば、その審査にあたり、相対評価はとらないでいただきたいのです。水準に達しない作品しか集まらなければ、絶対評価で「該当作品無し」で臨んでいただきたいものです。経験の浅い高校生は、OMS戯曲賞を受賞しただけで、岸田戯曲賞……では、分かりにくいですね。そう、レコード大賞を取ったような気になり、その作品や、作風をサクセススタイルと誤解し、高校演劇は、低い水準のまま、低迷のラビリンスに迷い込んでしまいます。
 また、権威あるOMS戯曲賞そのものの値打ちを下げてしまいます。
 関西は、演劇そのものが低迷、劇団新感線のように、関西で生まれた劇団でありながら、東京にその拠点を移してしまったところが、いくつもあります。

☆中島陸郎さんから学べませんか
 昔のオレンジルームのプロデューサーであった、故中島陸郎さんは、自分で足を運び、関西で魅力や力のある劇団や、演劇人を発掘し、上演の機会や、役者と劇団、劇作家のコラボをやってこられました。中島さんによってイッパシの演劇人になった方が、大勢いらっしゃいます。
 こういう言い方をするから、お叱りをうけるのでしょうが、あえて申し上げます。OMSの中で、募集戯曲が送られてくるのを待っているのでは、なにも変わりません。
 ご自分で、足を運んで観てください。それも連盟から情報を得るのではなく、いっぱんのファンとして、ネットで検索して、足を運んでください。いかに大阪の高校演劇が内側に閉じているかがよく分かります。
 中島さんは、常に観客席上手の後ろで観客の反応こみで芝居を観ていらっしゃいました。つまらなければ、終演とともに小屋を出て行かれました。これがいいと思われたら、その場で「うちでやってみませんか」と声をかけられました。事務所で他人の評や送りつけられた本だけでは判断されませんでした。現場第一主義の方であられました。
 せっかく、高校演劇に目を向けてくださるのですから、中島陸郎さんのやりかたで、まず観て、発表の場を与えてはもらえませんでしょうか。
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高校ライトノベル・志忠屋繁盛記・6『それからのトコ&トモ』

2012-11-15 15:40:52 | 志忠屋繁盛記
志忠屋繁盛記・6
『それからのトコ&トモ』
    

 この物語に出てくる志忠屋は実在しますが、設定や、登場人物は全てフィクションです。



 それから……それからと言うのは、前章で志忠屋の南隣の新米巡査をイジった後のことである。

「自分ら、あんまり純粋なお巡りさんイジるんやないでえ」
 タキさんに、方頬で笑いながらオコラレても、言葉も返せないアラフォーであった。ちなみに、アラフォーというと四十歳前を想像しがちであるが、このトコ&トモは、あくまで四捨五入してのアラフォーであるとおことわりしておく……にしては、やることが子どもっぽい。

「大滝はんがパトロールから帰ってきたら出られるで。なんせ、あの秋元巡査は勉強熱心で、大滝はんが帰ってきたら、質問攻めの勉強やからな」
 その言葉通り、大滝巡査部長が帰るのを待って、交番の前を何食わぬ顔で通り過ぎ、トコ&トモは、ちょっとだけセレブなカラオケ屋に行った。

 小田和正(オフコース)、鈴木雅之、レベッカ、中森明菜、とまぁ、世代的に相応しい曲を一通り歌ってしまい、勢いづいてAKBに挑戦したところでタソガレテしまった。
「どうも『UZA』はあかんな……」
 挑戦的な歌い出しが気に入って歌いだしたのだが、「運が良ければ愛し合えるかも~♪」「相手のことは考えなくていい~♪」の、あたりでタソガレだした。
「こんな子ら……ほんまの『UZA』なんか、分からへんねやろねえ……」
「ああ、トコちゃんは、そこでひっかかったか……」
「トモちゃんは?」
 そう言って、トコは気の抜けたハイボールを飲み干した。
「それより、トコちゃんが先。なにかあったんでしょ……」
「……なんで分かるのん?」
「いちおう物書きのハシクレだから、今日のトコちゃん明るすぎ」
 
 何を思ったのか、トコは部屋の明かりを半分に落とした。

「……今日、科長をしばいてしもた」
「え、どっちで!?」
 トモちゃんは、両手でグーとパーを作って見せた……トコが反応しないので、トモはグーを少し開いて望遠鏡のようにして、トコの顔を覗き込んだ。目が潤んでいるのが分かった。
「トコ……」
「ほんまにウザかってん」
「で、どっち?」
 トモは再び、グーとパーを見せた。それにトコはチョキをもって答えた。
「あ、こっちが負けだ」
 トモは、パーの左手を下ろした。
「て、ことはグー……」
「で、ヴィクトリー……」
「勝っちゃったんだ……で、手応えなかったんでしょ?」
「なんで、そう先回りして分かるのんよ。グチ言う甲斐があれへんでしょ!」
「グサ……別れた亭主にも同じこと言われた」
「たとえ、自分に間違いがあったとしても、オンナにしばかれて、鳩が豆鉄砲を食ったような顔は、ないわよ。怒るなり反論するなりしたらええねん。いや、せなあかんねん!」
 
 トモは、カラオケのモニターの音をミュートにして、真面目に答えた。

「だれでも、トコちゃんみたいに仕事に命賭けてやってるわけじゃないからね。あんた、いい加減てのができないヒトだから」
「トモちゃんも、ヒトのこと言われへんでしょうが。娘道連れにして、亭主と別れて大阪くんだりまで落ちてきてからに」
「あ、それ聞き捨てになんないなあ。あたしはね、いい加減だから、亭主と別れたの。一所懸命だったら、亭主しばきたおしてでも、印刷工場立て直したわよ。いい加減だから見切りをつけたの。それに、はるかには強制はしていない。あの子は、自分の意思で、あたしにくっついてきたんだから」
「はるかちゃんは偉い子。それは認めるわ。一見しなやかそうで、なかなか心が強い。なんで、あんたみたいなオンナから、あんなええ子が生まれたんやろ」
「悔しいけどね、はるかは、あたしと元亭主のいいとこだけとって生まれてきたような子だから」
「四十過ぎのオバハンが十八の娘に、もう白旗かいな」
「うん」
「なんか、張り合いないなあ」
「だって、ハナから負けてるやつに張り合ったってくたびれるだけだもん。まあ、そのへんのとこは『はるか 真田山学院高校演劇部物語』読んでちょうだい」
「もう、三回も読んだ」
「トコはさ、人生の中途から、理学療法士なんかなっちゃったから、なんか理想主義ってとこあんじゃない?」
「そんなんとちゃう」
「ま、たとえ話だけどさ」
「ん?」
「働き蟻ってのが、いるじゃん。よく一列になって、餌だかなんだか運んでるの。あれ、よく観るとね、一割の蟻は、働いてるふりして、サボってんだって」
「ほんま?」
「うん、そいでさ。サボってる奴ばっかり集めてチーム組ませると九割の蟻がきちんと働き出すらしいよ。そいでもってさ、働いてばっかの蟻を集めてチーム組ませると、やっぱ一割のサボりが出るんだって」
「ほんまあ……?」
「ほんとだって、本書くときに、マジ調べたんだから。なんなら、休みの時にアリンコ掴まえて実験してみる?」
「ハハハ、それほどヒマやないけど、なんか元気になってきたわ」

 それから、二人はヘビーローテーションで締めくくった。

 それから二人は、深夜営業のボーリングに行き、一番ピンを科長に見立てたり、タキさんに見立てたりしてボールを転がした。
「やったー!」
 トモが鍛え上げたローダウンリリースでストライクを取ったとき、タキさんは店のシャッターを閉めて、何故かバランスを崩してこけてしまった。
 トコが、それを真似して、惜しくも一番ピンをかすめたとき、件の科長は、帰宅途中、家まであと二十メートルというところで、危うくバンに轢かれそうになった。
「こ、こらあ!」
 と、叫んだ科長の目には「玉屋」と屋号がかかれていた……。


『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』    

 青雲書房より発売中。

お申込は、最寄書店・アマゾン・楽天などへ。現在ネット書店は在庫切れ、在庫僅少で、下記の出版社に直接ご連絡いただくのが、一番早いようです。

青雲書房直接お申し込みは、定価本体1200円+税=1260円。送料無料。
送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。

お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。

青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351
 
 この物語は、顧問の退職により、大所帯の大規模伝統演劇部が、小規模演劇部として再生していくまでの半年を、ライトノベルの形式で書いたものです。演劇部のマネジメントの基本はなにかと言うことを中心に、書いてあります。姉妹作の『はるか 真田山学院高校演劇部物語』と合わせて読んでいただければ、高校演劇の基礎連など技術的な問題から、マネジメントの様々な状況における在り方がわかります。むろん学園青春のラノベとして、演劇部に関心のない方でもおもしろく読めるようになっています。
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タキさんの押しつけ読書感想『ツナグ』

2012-11-14 20:09:15 | 読書感想
タキさんの押しつけ読書感想
『ツナグ』


 これは、悪友の映画評論家、滝川浩一が個人的に、仲間内に流している読書感想ですが、おもしろく、もったいないので、本人の了解を得て転載したものです。



 映画もやってて、予告編を見ていて「泣かせの映画」だと一人決めしてました。 だからライターの仕事も他の人に頼んで、小説もほったらかしてました。

昨日まで、水の専門書を読んでたんですが、それも終わって……さて、今日から何を読みますかいねと持った文庫が二冊。「ARGO」と、コレだったんですが、なんで「ツナグ」を選んだのか解らないんですが……
 一読、「泣かせ」の対局に有りました。俄然、映画に興味がわいたのですが、これは後の祭り。月末の連休にまだやってたら見に行ってきます。
 さて、ご存知かもしれませんが、「ツナグ」とは、一生に一人だけ、死者との再会をさせてくれる「使者」の事です。
 これは死んだ人にも同条件で、死者も一回一人きりしか会えない。 使者は意外に若い(後に高校生と知れる…この謎は少しずつ解けていく)物語における一人目の依頼者は、突然死したアイドル(飯島姉御を思わせる)に会いたいという、彼女が死んで直ぐではなく、すでに数ヶ月が過ぎている。アイドルなんてな人種がそれまでに誰かと会っていないてな事があるのか、ましてやアイドルにとってもたった一回のチャンス。それを単なる一ファンのために使ってくれるのか。
 他には、母に会いたい息子、親友を無くした女子高生、恋人が失踪したサラリーマン…彼に至っては恋人の生死すら解らない。生者・死者共に心に秘めた想いがあり、また自覚していなかった秘密もある。一つ一つのエピソードには二重三重の展開があり、一夜の邂逅の後に去来する想いも様々である。 そして「使者」たる若者にも重い過去が有った。
「死」を描くのはとても難しい、ことに現在の日本のように確たる宗教観の無い国では 人の死生観もバラバラである。だから、物語の中で年若い「使者」は苦悶する。「死者に会いたいとねがうのは生者の傲慢ではないのか」 読み進む内に解ってくるのは、本作は単に生者と死者が会う話ではなく、互いに等しい存在としての命の物語だという事です。今、自分に問うています、もし自分なら……自分が死んでいたなら……チャンスは一回だけ。
 あまり、語らない方が良さそうです。静かに心に染み込んでくるような本でした。泣かせてやろうなんぞという企みは全くありません。逆に泣かさないで読み通してもらうには どう描くべきか、よく考えられた作品だと思います。さて、映画はどこまで原作に迫ってるんでしょうねぇ。
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高校ライトノベル・らいと古典『わたしの徒然草63・ITを用ゐん事、穏かならぬことなり』

2012-11-14 14:39:23 | エッセー
わたしの徒然草63
『ITを用ゐん事、穏かならぬことなり』
   

徒然草 第六十三段

 後七日の阿闍梨、武者を集むる事、いつとかや、盗人にあひにけるより、宿直人とて、かくことことしくなりにけり。一年の相は、この修中のありさまにこそ見ゆなれば、兵を用ゐん事、穏かならぬことなり。


 ちょっと説明がいる。
 兼好法師の時代一月八日からの七日間、天下太平を祈って大内裏の真言院で行われる仏事がおこなわれていた。阿闍梨(あざり=偉い坊さん)が指導し、武者を集めて、厳重に警備した。いつからか、こんな行事にも盗人が出るようになり、宿直人(とのゐびと=ガードマン)だって、こんなに、ものものしくなってしまった。一年の吉凶を祈る行事にだって、こんなこの有様。穏かじゃないねということである。

 つまり、昔は(おそらく、鎌倉時代、平安時代)宮中で穏やかにやってたのが、世の中が物騒になり、完全武装の武士のオッサンたちの世話にならなくてはならなくなったことを、兼好のオッチャンは嘆いているのである。まあ、鎌倉幕府が倒れ、大ざっぱな歴史区分では、室町時代になるんだけども、後醍醐さんというケッタイな天皇さんが出てきて、「自分で政治をやっちゃうからね!」と宣言した。
 どこがケッタイかというと、歴代の天皇さんは君臨し、国の安寧を祈る以外に仕事をしないことが常識であった。むろん政治なんかはやらない。それをやろうとしたんだから、実にケッタイ、無謀である。後醍醐さんは寝る間も惜しんで、なんでも一人でやっちゃう。それも理想は延喜天暦の治(えんげてんりゃくのち)と言って、平安時代の醍醐・村上天皇の時代がそうであったと思い(摂関を置かなかったので、そう思いこんでいた)自分の天皇としての名前を後醍醐、息子には後村上と名乗るように決めてしまった(普通、この時代は、天皇さんの名前は、没後みんなで相談してつけた) 後醍醐という人は、中国の歴史に詳しく、中国の皇帝がそうであったように、「オレだって、やっちゃうもんね!」と、思いこんでしまった人である。はた迷惑なこと、この上ない人で、後醍醐さんの「建武の新政」は、二年あまりでズッコケる。その前後の混乱期であるので、宮中といえ、物騒だったのである。

 横道に入るが、日本史上、最重要な決定をご自分でなさったのが昭和天皇の終戦の決定である。正確には、何度も開いた御前会議で事が決まらず、天皇陛下に丸投げしてしまった。旧憲法の規定からも違法の色が濃い。ここに日本の軍国主義と、ドイツ・イタリアのファシズムの大きな違いがある。

 先日、大阪の新設公立高校の職員室を見る機会に恵まれた。
 ここで、わたしは兼好のオッチャンと同質の「穏やかじゃないね」を感じた。職員室に校内に設置された防犯カメラのモニターがあるのである。機密上、何台のカメラがあったかは言えない。しかし学校に防犯カメラは穏やかではない。
 わたしは困難校の勤務が長く、生徒の行動監視や不審者の侵入には悩まされてきたが、冗談で「監視カメラ欲しいなあ」と言ったことはあるが、設置が話題にのぼったことはなかった。生徒はワルサをするもの、不審者の侵入はあるものと覚悟はしていたが、その監視は、教師という生身の人間がやっていた。それが、当たり前であった。
「ちょっと、なにやってんねん!?」
「あなた、どなたですか?」
 などと生身の人間が見て言うのと、監視カメラで機械的に警備するのとでは、あり方として基本的に有りようが違う。
 教師は、首から犬の鑑札のようにIDカードをぶらさげている。
「こんなもん着けられるか!」
 わたしの感覚では、こうなる。出退勤もこれで管理される。昔は出勤簿への捺印であった。
 むろんIDカードの方が管理にはラクチンである。しかし、これには「人間は不正をする」という性悪説が潜んでいる。出勤簿には、「まあ、ええかげんにやっておきましょう」という大らかさと、信頼感があった。
 IDカードにしろ、監視カメラにしろ、抜け道はいろいろある。IDカードは中抜けができる。極端な場合、他人が代わりに機械を通すこともできる。監視カメラは死角を見つければ、いくらでも抜け道がある。
 信頼というものを、人の目や心に置かず、機械に置いた結果がこれである。
 職員室にいる先生達の机上には、パソコンが置かれ、それとお見合いしている先生がたくさんおられた。成績や、その日の出欠状況を確認されておられるのだろう。
 わたしは、放課後は、個人的な生徒指導ノートに肉筆で書き込んでいた。最後には、そのノートをパラパラとめくる。すると、ひっかかる生徒や事件の記録が目に止まる。その時の筆跡で、そのコトガアッタ時の気分や状況まで蘇ってくる。で、気にかかった生徒を呼び出したり、そのまま家庭訪問に行ったりした。
 教育にはアナログでなければできない領域がある。
 だって、相手にしている人間(生徒、保護者、同僚、ご近所の方など)は、けしてデジタルではなく、生身のアナログ人間なのだから。

ITを用ゐん事、穏かならぬことなり……で、ある。


『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』    

 青雲書房より発売中。

お申込は、最寄書店・アマゾン・楽天などへ。現在ネット書店は在庫切れ、在庫僅少で、下記の出版社に直接ご連絡いただくのが、一番早いようです。

青雲書房直接お申し込みは、定価本体1200円+税=1260円。送料無料。
送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。

お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。

青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351
 
 この物語は、顧問の退職により、大所帯の大規模伝統演劇部が、小規模演劇部として再生していくまでの半年を、ライトノベルの形式で書いたものです。演劇部のマネジメントの基本はなにかと言うことを中心に、書いてあります。姉妹作の『はるか 真田山学院高校演劇部物語』と合わせて読んでいただければ、高校演劇の基礎連など技術的な問題から、マネジメントの様々な状況における在り方がわかります。むろん学園青春のラノベとして、演劇部に関心のない方でもおもしろく読めるようになっています。



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タキさんの押しつけ映画評

2012-11-11 05:57:38 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
「悪の教典」「シルク・ド・ソレイユ 3D」


 これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している映画評ですが、もったいないので、本人の了承を得て転載したものです。


「悪の教典」
 三池崇史…とうとう ここまで来ちまいましたか。
  本作はご存知の通り、貴志祐介の本屋大賞作の映画化です。主人公は頭脳明晰な天才的サイコパス。  三池演出を見ていて、こういう読み方も有りか?とビックリしちまいました。奴はこう言っています「蓮実(主人公、サイコパス)はいい奴だ。そもそも“一般とか普通”ってな何? 蓮実はいつも自分の気持ちに対して真っ正直なだけじゃないか」……三池のこれまでの仕事を見ていると、こういう読み方をしていても不思議じゃないが、それを映画にしてしまうと いかにもグロテスクだ。
 原作にはここまでの肯定的表現は無い(と信じたいだけかもしれない)、単に殺した人数だけなら 大藪春彦の主人公の方が遥に多い、サイコパスで言えば T・ハリスのハンニバル・レクターなんてな先輩がいる。しかし、彼らには殺人に理由と目的がある。対して蓮実には…前半にはそれらしき物があるが、後半の大暴走は単なる大量殺人でしかなく、そこに美学も何も無い。
 こういう映画はこれまでもありましたけどね、ここまで殺人者を肯定した作品は無かった。「殺し屋1」みたいにファンタジーじゃない、漫画の「サイコ」みたいにホラーでもない。三池は「ほれほれ、お前らの心の中にもハスミンがいるぜ」と言いたいんでしょう……その衝動は理解しますけどねぇ……。
 ラストが“THE END”ではなくて“TO BE CONTINUE”になっている。???原作に続きは無いはず(有ったら教えて)っちゅう事は、物語の終わり方に引っかけたのか? ごめん!この点が解らない。

「シルク・ド・ソレイユ 3D」
 シルクが日本以外で展開している“KA”“O”なんてな舞台から見せ場を抜いて、一組の男女を狂言回しにして繋いである。監督は“タイタニック”のジェームズ・キャメロンです。
 まず、3Dの先頭にいるキャメロンですが、この3Dは出来が悪い。頭が痛く成ります。画像は綺麗のだが、なぜか構図に失敗があり(画面手前に人が立っていて邪魔…とかです)肝心なシーンが両断されていたりする。いつもなら2Dを見なさいと言う所ながら、こいつが 舐めた事に3Dしか公開されていない。
 よって 結論!ディスクになるのを待ちましょう。映画館へは行かんで宜しい。 しかし、人間の刺激を求める本能ってのは贅沢なもんです。私、何回かステージを見に行って、ディスクはほぼ全部もってます。各々見せ場を持っていますし、世界最高の水準にあるのは確かなのですが、初めて“キダム”を見た時の感動は有りません。「何を贅沢こいてやがる」と、自分でもあきれますが、正直に言うとそうなります。“ラ・ヌーバ”なんてな結構ワクワクしながらディスクを見ましたが、やっぱり“キダム”で受けたショックは再現されません。ほんま、贅沢こいとりますわい。
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高校演劇・ベジタリアンさんからの便り・4

2012-11-05 21:26:02 | エッセー
ベジタリアンさんからの便り・4 

ベジタリアンさんから、久しぶりにお便りをいただきました。まずお読み下さい。



font size="6">コンクールの報告 (ベジタリアン) 2012-11-05 18:02:50  

 大橋先生、お久しぶりです。
 
 3ヶ月ぶりの書き込みとなりました。
 内容はもちろん、地区大会です。

 昨日まで行われていた地区大会に行ってきました。
 私の母校は少人数でしたが、優秀賞をいただくことができました。
 内容は…2009年に大谷高校さんがやられた『村田さんと東尾さん』…みたいな作品でした。
 とにかく少人数で苦しい中、よくやってくれました。

 さて、私の地区の様子ですか…。
 一言でいえば、「団栗の背比べ」と申しましょう。時代性が感じませんでした。
 去年、東日本大震災の影響で府大会にでた作品はどこか影を感じさせる作品が多いように感じました。全国大会も東日本大震災をテーマに書いてきた学校が何校かありました。
 そして今年は、「いじめ問題」がでると期待していたら…、出ませんでした。(恐らくどこかは出してくるでしょう。少なくともK会高校は。)
 台本に書かれた内容には現実性がないものは多く、ただ「楽しそう」とかの気持ちでしょうか?何を伝えたいかがわかりませんでした。

 また、次の高校への転換が遅い遅い。
 幕が開いてみると、豪勢な装置。それで合点がいきました。装置に懲りすぎでいたのです。
 後で話を聞くに搬入だけで20分以上かかったところや、先生が指示をしないとわからない状態だ、というところがポコポコとあったそうです。

 で役者も自然に動けていませんでした。
 私が現役の時は、激戦区と叫ばれていたのがどこへやら。見たくれだけがいいものが多かった印象でした。


 生徒がそれにいち早く気がついてくれることを祈るのみです。


<追記>
 先生は大阪府大会に来られますか?
 私は行きます。
 因みに来年は○○の○○○○ホールとのこと。
 13校そろっての大阪府大会は今年で最後になるかもしれません。

ベジタリアンさん&みなさんへ

 最初に、来年度からの本選ホールについては、連盟からの発表を公式に確認していないので伏せ字といたしました。
 常任委員長の先生からは、今年は加盟校が微増したと伝えられました。直後に実数を掴んでいましたが、連盟が公表されませんでしたので、今日まで触れませんでした。105校が106校になりました。この数字を、どう受け止めるかは、読者のみなさんにお任せいたします。ただ資料として、大阪の高校の数は270ちょっとだと記しておきます。加盟率は約39%です。本選出場校は、パンフで見る限り87校。19校が加盟しながらコンクールに参加できていません。
 同じ文化系の軽音のスニーカーエイジが88校の参加で、参加校数、参加人数の点でも、軽音に抜かれました。
 スニーカーエイジの総入場者数は16000人で、この大半が大阪からの観客です。大阪府高校演劇連盟の観客動員は公表されていませんが、個人的な推計では二日で1000~1500人とふんでおります。キャパ600のよみうり文化ホールが満席になったのを見たことがありません。
 連盟のオフィシャルパンフには、個々の取り組み、例えば講習会や、全国大会バスツアー参加者については詳しく書かれていますが、肝心のマスになる数字は書かれていません。
 コンクールの実際の参加校も実は、実数がわかりません。昨年は複数の棄権校があったと聞いていますが、オフィシャルではないので、数字はあげません。

 顧問の研修が始まったそうです。世代交代を考えてのことだと書かれていました。私見ですが、いささか遅きに失します。もうバトンタッチが行われていなければならない時期です。顧問の劇作家の養成も計られるようですが、これも遅いと言わざるをえません。大阪で顧問劇作家として名を成しておられる方の本が、大阪ですら他校によって再上演された記録がありません。ネットで検索しても出てきません。知恵袋で、そういう先生方の隠れた作品をたずねてみましたが、質問そのものが削除されました。残念ですが、その先生方の視野にはご自分の演劇部しかないようにお見受けします。今こそ、良質な高校演劇の戯曲が求められています。ベジタリアンさんの地区も、出てくる作品は今ひとつのようですね。
 現代の高校教師が多忙なことは百も承知です。しかし、顧問で職員劇をやる時間はあるのです。書いていただけないものでしょうか。
 大阪は、創作劇が多いことが誇りであるとおっしゃる先生がおられます。わたしは間違っていると思います。戯曲は、吹奏楽で言えば楽譜に当たります。吹奏楽や軽音が、そのコンクールや発表会で、創作曲を演奏することは、まずあり得ません。素人の作ったものはすぐにそれと知れてしまいます。高校演劇は、周りがみんな創作劇なので、いわば怖い者知らずで創作劇が並びます。だから、書ける人が書いて残しておくべきなのです。まあ、今から養成される方が伸びるまで、連盟の維持を図ることが現実的なのかもしれません。
 もし、ベジタリアンさんや、仲間の方で書いてみようかと言う人書いてみませんか。失敗してもいいのです。駄作でも構いません。ダメなところは手を加えましょう。どうしようもないものなら、淘汰されていきます。一作上演してもらって5000円にしかなりませんが、他人様に上演していただくと達成感はあります。
 演劇と心中しろとは申しませんが、多少の付き合いを維持していこうと思われるなら。まず書いてみませんか。

 ホームラン王は一番三振が多い。

 わたしの好きな言葉です。わたしは今までに200本あまり書いてきましたが、複数回上演してもらったものは30本に届きません。
 F地区で、榊原政常先生の『しんしゃく源氏』が上演されました。この本は書かれてから半世紀以上たちます。それでも新鮮な本です。過去に1000回ぐらいは上演されているでしょう。こんな先生が全国に何人かいらっしゃいます。大阪に、そういう人が現れることを期待します。

 あ、本選は行くつもりです。昨年はコンクール本選の日が父の葬儀と重なって行けませんでしたが、そういう突発事故が無い限り、行くつもりでおります。
 ただ、わたしは人の名前と顔を同時に覚えるのが苦手ですので、ベジタリアンさんのお顔もおぼろになっております。失礼があったら申し訳ありません。
 他の方々も、ロビーなどで見かけましたら、お気楽に声をかけてくだされば、幸いです。


『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』    

 10月25日に、青雲書房より発売。

青雲書房直接お申し込みは、定価本体1200円+税=1260円。送料無料。
送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。

お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。

青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp  ℡:03-6677-4351

また、アマゾンなどのネット通販でも扱っていただいておりますので、『まどか、乃木坂学院高校演劇部物語』で、ご検索ください。

 このも物語は、顧問の退職により、大所帯の大規模伝統演劇部が、小規模演劇部として再生していくまでの半年を、ライトノベルの形式で書いたものです。演劇部のマネジメントの基本はなにかと言うことを中心に、書いてあります。姉妹作の『はるか 真田山学院高校演劇部物語』と合わせて読んでいただければ、高校演劇の基礎連など技術的な問題から、マネジメントの様々な状況における在り方がわかります。むろん学園青春のラノベとして、演劇部に関心のないかたでもおもしろく読めるようになっています。
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タキさんの押しつけ映画評『のぼうの城/黄金を抱いて翔べ』

2012-11-05 07:14:17 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『のぼうの城/黄金を抱いて翔べ』
    

この映画評は、映画評論家の悪友・滝川浩一が、個人的に仲間内に流しているものですが、あまりにもったいないので、本人の了解を得て転載したものです。


☆のぼうの城
いやいやいや、映画館 マジで満席でしたわ。
原作を読んだ時ほど笑わんかったんですが、それは「笑えない」のではなく感心する方が先だったのと、野村萬斎のあまりに見事な「のぼう様」振りに見とれていたからです。
本作は単純に「原作」と「映画」を比べる訳には行かない。というのが、本作の原形脚本が先に有って、脚本家がそれを小説化、さらにそれを脚本化という制作過程を経ているからで、小説を映画のノベライゼーションとは言えないという事情がある。元々が秀吉の小田原攻めに関するまごうことなき史実であり、埼玉県行田市に行けば当時の史跡がかなり残っている。タイトルロールに現在の様子が映し出され、たった今見た映画がそのまま現実の歴史であると実感できる。
さて、映画の出来ですが、こらもう見事と言う他無い。細かく言えば…水攻めで沈むシーンを模型じゃなくCGにすりゃいいのに とか ヤッパリ全体に音響が悪く、慣れるまで何を喋っているのか聞き取れない とか有るんですが、まぁそれは些末な事として切り捨て出来る。
音響が悪いにも関わらず、野村萬斎だけはハッキリと台詞を聞き取れる、舞台人というより狂言役者の真骨頂を目の当たりにしました。小説に登場する「のぼう様」は ボーっとした大男として描かれ、その表情は最低限の言及が成されるだけで、だから 読者は最後まで凡人なのか天才なのか判断がつかない。
小説の場合、眠っていた才能が危急存亡の場に臨んで眼を覚ましたと読める、対して映画では各シーンが映像として描かれる(あったり前) 萬斎の「のぼう様」はボーっとしているようで、一瞬表情にハッキリした意志が現れる。これを見る限り野村萬斎は「のぼう様」を堂々たる侍大将として演じている。可能性の中の一つの表現であるが、この一瞬の表情が観客に緊張を産む、本作の成功の半分は野村萬斎を起用した事に拠っている。
残り半分は成田長親を囲む人々を演じた俳優達の安定した熱演が担保した。榮倉甲斐姫、佐藤丹波守、グッサン和泉守、成宮酒巻~~~~一々言及出来ない、敢えて一人を上げるなら上地雄輔の石田三成が見事だった。正直、この人が一番不安だったのだが爽やかに裏切られた、もう「お馬鹿タレント」の皮を完全に脱ぎ捨てた。拍手を贈りたい。見どころはそれこそ「満載」なのだが、白眉はのぼう様が舟の上で踊るシーン、敵味方双方を飲み込む設定だが…設定を超えた、このシーン 野村萬斎の踊りには本物の力がある。見ていて身震いのする思いがした。
絶対の自信を持ってお薦めします。是非とも劇場に足を運んで下さい。

☆黄金を抱いて翔べ
 見事に久々の日本版フィルムノアールです。原作と比べると、実にその30%にも相当する詳細な下見がほぼカットされているのですが、これは仕方が無いでしょうねぇ。大阪に住み、中之島に土地勘が有れば、ほぼ犯行をトレース出来る。執筆時に詳しく取材したのだと思うが、こんな作品に成るなると判っていたら取材拒否されただろう、まさかそれをスクリーンに映せない。この点を除けば、井筒監督に手落ちは無い。
 まずはキャスティングの妙がある。主人公たちは恐ろしい程に荒んだ精神の持ち主ばかり、それを演じるに妻夫木、溝端、チャーミンはあまりにも整った顔をしている。本作のスティールを始めて見た時、それが一番の引っかかりであった。
 チャーミン以外の二人の演技力は充分知ってはいたが、小説から思い描く彼らは見るからに「悪」そのもの。ある意味、自分の状況に正直に生きている人物達。ここに西田敏之「爺さん」も含まれる。対して浅野、桐谷の二人は仮面を被り、社会に溶け込んでいる。この対比が一つの大きな見所、結論から言って私の危惧など全く杞憂、稀に見る堂々たる“ノアール”でした。
 チャーミンの芝居は初見でしたが見事なもんです。日本人がヤクザ、兵隊、警官なら誰でも演れる(最近はそうでもないでしょうが)と言われるように、韓国人にとっては「北の工作員」は誰でも演れるキャラクターなんですかねぇ。
現在、銀行強盗は陳腐な犯罪である。それはネット上に舞台を移してしまったのだが、その現代に身体を張って、然もわざわざ重い金塊を狙う。この時代錯誤が妙なリアル感を持って迫って来る。
 作戦成功の高揚も死の虚しさも無い、新しい(う~ん、でもないかな)ノアール感が現出している。フランスノアール全盛期には無理なく受け入れられた筈だが、今 本作を見るのにテクニックがいる(?)かもしれないが、どうかあるがままに一度受け入れて、後にジックリ振り返っていただけると、色んな事が見えてくる…なぁんてね、ちょっと「上から目線」過ぎる? 本作もお薦めです。但し、ジャリにはこの映画の本質は解りにくいやろなぁ(またまた上から目線?)


『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』    

 10月25日に、青雲書房より発売。

青雲書房直接お申し込みは、定価本体1200円+税=1260円。送料無料。
送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。

お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。

青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp  ℡:03-6677-4351

また、アマゾンなどのネット通販でも扱っていただいておりますので、『まどか、乃木坂学院高校演劇部物語』で、ご検索ください。

 このも物語は、顧問の退職により、大所帯の大規模伝統演劇部が、小規模演劇部として再生していくまでの半年を、ライトノベルの形式で書いたものです。演劇部のマネジメントの基本はなにかと言うことを中心に、書いてあります。姉妹作の『はるか 真田山学院高校演劇部物語』と合わせて読んでいただければ、高校演劇の基礎連など技術的な問題から、マネジメントの様々な状況における在り方がわかります。むろん学園青春のラノベとして、演劇部に関心のないかたでもおもしろく読めるようになっています。
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高校演劇・クラブはつらいよ 秋編三

2012-11-04 05:39:44 | 高校演劇基礎練習
クラブはつらいよ 秋編三

 秋深し……となりはなにをする……クラブ。

 コンクールもあらかた予選が終わり、あなたのクラブは、なにをしているのだろう?
 この時期、クラブは、大きく四つに分けられる。
一; コンクールの予選を勝ち抜き、本選出場の準備に追われている、ごくかぎられた幸運なクラブ。
二; コンクールの予選で落ちたクラブ。これはさらに二通りに分かれる。地域の発表会など、スケジュールのあるクラブと、なにも目標のないクラブ  
三; もともとコンクールにも参加しなかったクラブ。これも二通りに分かれる。しようと思っていても参加できなかったクラブ(事情はさまざまで、コンクール直前に断念せざるをえなかったクラブ、部員が少なく参加できなかったクラブ、連盟加盟費や、コンクール参加に必要な費用がまかなえなかったクラブ) コンクールなど頭から否定して参加しなかったクラブ。
四; すでに、つぶれてしまったクラブ……

【未来を見据えたクラブ活動】
 一のクラブは、「おめでとう!」である。ただ、主な出演者が三年生である場合、来年度につなげるため、出演者の一部に一二年生を加えておこう。無理矢理に配役を増やしてでも、これはやっておいたほうがいい。役者が無理なら舞監か、その助手にして、芝居作りのノウハウを伝えておければいい。
 二の予選で落ちたクラブ。これが大多数だと思う。地域や校内で発表の機会があるなら、それに専念してもらいたい。そのプロセスで演劇部のノウハウを一二年生に伝授しておかなければならないのは一のクラブと同じである。
 
 わたしが、もっとも心配するのが、コンクールの予選に落ちて、春、どうかすると、来年の文化祭あたりまで、目標のないクラブである。ここで安易に休部などしてしまうと、来春は自然消滅ということになりかねない。年内か年度内には上演の機会を持とう。とにかく「芸術は場数!」である。走っている自転車と同じで、止まれば倒れてしまう。
 では、その場数の機会である。一番簡単なのが校内公演。ただ、生徒の絶対数が少ない学校が多いので、ただボンヤリと「校内公演やります」では、人は集まらない。顧問の先生に交渉してもらって、PTA総会などでほんの二十分ほど時間をもらって、コント(下手なりに、わたしも何本か紹介してきた)を、二本ばかり上演させてもらうという手がある。また、総合学習などのボランティアで、幼稚園、保育園、老人施設などとコネのある先生がいたら、ワタリをつけてもらって、子ども向きや、お年寄り向きのコントを工夫してやらせてもらおう。

 三の、コンクールに参加しなかった(できなかった)クラブ。上記の予選に落ちたクラブと同様、なにか公演の機会を持とう。それから、予選に落ちたクラブも、参加しなかったクラブも本選は観にいこう。「さすが……」にしろ「この程度」と思うにしろなにかしら、得るものはある。念のため「この程度」と思っている場合、自分たちの力量を客観的に見られていないことが多い。

 四の、すでに潰れてしまったクラブ。対策は二通り。もし君が、あなたが二年生以下、もしくは顧問であられる場合で、来春クラブを復興しようと思っているのなら。わたしの「クラブはつらいよ」を、春編一から読み直していただければと思う。いろんなことを書いてきたが、人の芝居を観て、戯曲を読むことである。熊が冬眠前に食いだめするように自分を演劇的に太らせておいておくことが大事である。以前も書いたが戯曲は百本は読んでおいてもらいたい。
 もうクラブには懲りてしまった人。芝居そのものに嫌気がさしているのなら、自分が熱中できるなにかを探そう。「少年老いやすく……」のたとえ通り、ものごとに一番熱中できるのは十代の後半である。オッサン、オバハンになってから後悔しないように、何かを探し、また挫折してもかまわないから、熱中時代でいてほしい。
 クラブはイヤだが芝居は続けたい人。そういう人は学校を飛び出そう!なにも学校を辞めろというのではない。どこか地域の劇団を探し、そこでやってみることを勧める。ただ、劇団といっても様々で、中には高校生には勧められないものも多い。教育委員会の社会教育課や、地域の市民会館や文化ホールに問い合わせてみよう。地味ではあるが健全な劇団を紹介してくれると思う。もし、それで飽き足りないのなら、都市部に限られるが、放送劇団がお勧めである。ただ付属養成所は、入所時期が決まっており、テストもあり、そう多額ではないが学費もかかることを頭に入れておいてほしい。大手プロダクションなどの養成所は、学費も高く、卒業しても皆がプロになれるわけではない。経済的に余裕があり、勉強のためと割り切っているのなら、それも道である。
 演劇科を持った大学への進学という道もある。ネットで検索したり、進路の先生と相談することを勧める。
いろんな道があるが、真剣に演劇への道を考えているのなら、若い時代に専門教育を受けておく必要がある。まあ、それは、君やあなたの中で、演劇がどれくらいの比重を持っているかによる。もの思う秋の夜長、少し自分にとってのクラブや演劇について考えてみるのもいいのではないだろうか。つれづれなるままに……

今月のコント『一寸法師の忘れもの』

サスに照らされた地面の上に、お椀と箸が一本おかれている。かすかに水の流れる音。 

好子; あ、これこれ、これだよ。まだ、まんま置いてある。
まり子; え、何これ?
好子; 見りゃわかるでしょ。お椀と箸よ。
まり子; そりゃ分かってるわよ。わたしが聞いてんのは、このシチュエーシ ョンよ。
好子; シチュエーション?
まり子; 状況とか様子って意味よ。
好子; さすが、国語クラス一番!
まり子; 失礼ね。学年で二番よ。
好子; 一番って言った方がかっこいいかなって思ったのよ。
まり子; あの福井里香には勝てないもんね。関東大推薦確実。
好子; 学年一の秀才でイケメンの後藤君ともウワサだしぃ。だから気ぃつか って……
まり子; まあ、そんなことはいいけど。
好子; 後藤君っていいよね。秀才ってとこ鼻にかけてないもんね。こないだも数学の補習課題でうなってたら、さりげに教えてくれてさ。
まり子; 答え教えんのって、イヤミじゃない?
好子; 答えじゃないよ。ヒントよヒント。あくまでも答えはわたしが出せるようにレクチャーしてくれんの。 
まり子; 後藤君はいいの。それより、ここ普段はだれも通らない学校の裏の小川のほとりじゃん……
好子; そこに一個のお椀と、お箸が一本……
まり子; 好子、どうやって見つけたの?
好子; 体育の時間にテニスボールがとんでっちゃって。探しにフェンスの隙間から出てきて見っけたの。
まり子; ふーん……たいてい、防球ネットに当たってグランドに落ちるのにね。
好子; たまたま防球ネットの破れ目から抜けちゃったのよ(お椀にさわろうとする)
里香; さわらないで!(飛びだしてくる)
二人; わ!
好子; 里香。
まり子; どうして、あなたが……
里香; ごめん驚かして。
まり子; これ、あなたが置いたの?
里香; ……うん。
好子; なにかのおまじない?
里香; ……
好子; あ、飼ってたペットが死んじゃったとか……でも、お箸一本てのは変よね。
まり子; ……これって、なんだか一寸法師だ。
里香; あ……
好子; イッスンボウシ?
まり子; お椀の舟に、箸の櫂~♪ だったよね?
里香; 知ってたんだ。
好子; さすが、国語一番と二番だ。で、そのイッスンボウシって?
まり子; 昔話よ。一寸。三・三センチの男の子が、お椀の舟に乗って、都にやってきて、お姫さまと仲良くなって、鬼退治して、打ち出の小槌で立派なイケメンになるってお話。
好子; ふーん……
まり子; でも、まさか……
里香; うん……そのまさか……
まり子; うそ!?
里香; こないだここで校外清掃やったときに見つけたの。岩にひっかかって舟が動かなくなってるとこ。
好子; マジで!?
里香; 疲れてるみたいだったから、お椀ごと家につれてかえったの……信じら れないでしょ。
二人; ……
里香; でね、家に帰ってお話したら、とってもおもしろいの。今昔物語や、徒然草とか、やたらに詳しくって。わたしは、パソコンでいろんなこと教えてあげた。あの子も飲み込みがとても早くて。もう一人でいろいろ検索とかしてたの……本気にしてないでしょ。
まり子; それは……
好子; ね……
里香; わたしね、関東大の推薦やめることにしたの。まり子もあそこの推薦ねらってたでしょ。よかったらどうぞ。
まり子; どうぞって、里香……
好子; じゃ、どこの推薦ねらうの?
里香; 帝都大。
好子; あ、そう。
まり子; あ、そうって、あそこ推薦枠ないわよ。一般入試でうけられるの後藤君くらいのもんだわよ。
里香; わたしも一般入試。
二人; ええ!?
里香; 一寸法師がそうしろって。自分に一番正直で、まっすぐな道が一番だって。
まり子; それって……
里香; あとは言わぬが花。
好子; それもイッスンボウシが……?
里香; さあ……
まり子; で、その一寸法師は?
里香; 出て行っちゃった。パソコンに「お別れします。一寸」って、書き置き残して……この、お椀とお箸もね。
好子; それで……
まり子; これがなきゃ困るでしょうしね、一寸法師も。
里香; ……わたし、賭けてんの。
まり子; 賭ける?
好子; 何に?
里香; パソコンには、一寸としか書き込まれてなかった。
好子; それって名前でしょ、あの子の。
里香; だったら、一寸法師て書くじゃない……
まり子; あ、それって……?
里香; そう、だから賭けてみたの。
好子; え、なに、なに?
まり子; 一寸と書いて「ちょっと」て読むのよ。
里香; パソコンで世界が広がっちゃって、ちょっとの間だけのお別れなんじゃないかなって。
まり子; それで……
好子; じゃ、ここで待ってりゃ……
里香; ここにいちゃ、あの子も現れにくいわ。お椀とお箸を忘れていくくらいだもん。何かとっても大事なことか、おもしろいこと……
好子; 聞き出すんだね、それを!?
里香; ううん、そっと見守るだけ。
好子; なんだ、つまんない。
まり子; それが礼儀……なんだよね。
里香; うん。
まり子; じゃ、わたしたちも隠れていようよ。
里香; ごめん。ありがとうね。
好子; ううん、会いたいなあ……
まり子; いくよ。
里香; じゃね、一寸法師……

 その場を名残惜しそうに離れる三人。お椀とお箸にサス残り、一寸法師の歌フェードアップするうちに幕

 コントというには、少し長く、地味かなと思った。しかし作品には色というかスタイルというかがあるものなので、あえて、こういう作品にしてみた。わたしの場合ファンタジーの色が濃いので、そのひな形みたいなものにしてみた。というか、こういう情景が広がり、ふくらんで、一本の戯曲になっていく。このコントから、君やあなたなりにふくらませていただければ幸いである。わたしは……すでにふくらませてある。その手の内は……ナイショ、ナイショ。
 


『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』    

 10月25日に、青雲書房より発売。

青雲書房直接お申し込みは、定価本体1200円+税=1260円。送料無料。
送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。

お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。

青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp  ℡:03-6677-4351

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