大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・11(促成魔女初級講座・実戦編・1)

2016-11-30 06:13:37 | ノベル
秘録エロイムエッサイム・11
(促成魔女初級講座・実戦編・1)



 気づくと、真っ青な空があった。

 真由は、どこかで見たことがある空だと思った。東京にはない、真っ青で密度の高い光に満ちた空。
「体の軸線が90度ずれてる。直して」
 清明の声が斜めから聞こえてきた。ゲーム機のコントローラーが一瞬頭に浮かび、R3のグリグリを1/4回転させた。
 目の前にでっかいシーサーの顔があった。

 思い出した。中学の修学旅行で来た沖縄は那覇の国際通りだ。

「瞬間移動には、すぐに慣れるよ。移動の直前に移動する場所のイメージが浮かぶようになる。ボクが手助けしたけど、初めての瞬間移動にしては上出来だ」
「どうして、那覇なんですか?」
 国際通りの歩道を歩きながら、真由は清明に聞いた。
「実戦訓練には、ちょうどいいからさ。まあ、全部歩いても一マイル。歩いて馴染んでみようか」
「武蔵さんと、ハチは?」
「武蔵さんは、基本的には自分が行ったところにしか現れることができない。沖縄には来たことがないからね。連れてこようと思ったら『五輪書』を持っていなければできない。それに初級の実戦だから、ボクでも十分だ。ハチは君が見たシーサーに化けている。邪魔が入らないようにね」

 三十分ほどかけて、国際通りの端から端まで歩いてみた。真由はすっかり旅行気分になっていた。

「なにか気づいたかい?」
「え、あ、すっかり旅行気分になっちゃって……すみません」
「ハハ、それぐらいでいいよ。武蔵さんの座っている姿でも気づいただろう。本当の剣客は、普段はごく普通の姿勢がいいだけのオジサンだ。いつも殺気立っているのは初心者だよ……言った尻から緊張する。リラックス、リラックス」
 そう言われると、真由はすぐにリラックスした。国際通りが素晴らしいのか、真由の才能なのかはよくわからない。
「で、気づいた?」
 清明は、ニヤニヤしながら、もう一度聞いた。はた目には兄妹か、若いアベックの旅行者にしか見えない。二人は完全に国際通りの風景の中に溶け込んでいた。
「えと……よくわかんないです」
「正直でけっこう。通行人の人たちをよく見てごらん。微妙に色の薄い人たちがいるだろう……」
 真由はウィンドウショッピングの感じで、周りを見渡した。
「分かりました、あの学生風のグループなんか、発色の悪いプリンターで印刷したみたいです」
「よし、それが分かったら裏世界に変換。R3ボタンを押し込んで」
 コントローラーをイメージしたのは、ほんの一瞬だった。
「どうだい、なにか変っただろう?」
「……通行人が減っちゃった」
「それでいい。ボクも真由も、あいつらといっしょに裏世界に入り込めた」
「裏世界って……?」
「現実と変わらない世界なんだけど、その道の者だけで戦うダンジョンみたいなもの。現実の人間は、みんな排除してある。きっかけが来たと思ったら、ポケットの中の式神をまき散らして」

 きっかけは、直ぐにやってきた。さっきの学生風たちが、違和感を感じてきょろきょし始めた。

「今だ!」

 清明に言われると同時に、真由は、ポケットの中の紙屑のようなものをまき散らした……!

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高校ライトノベル・タキさんの押しつ・け映画評・109『ポンペイ/グランド・ブタペスト・ホテル』

2016-11-30 06:00:38 | 映画評
タキさんの押しつ・け映画評・109
『ポンペイ/グランド・ブタペスト・ホテル』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評論ですが、もったいないので転載したものです。


ポンペイ

 昨今 隆盛を極める「キリスト教関連作品」かと思いきや、思いっきりデザスタームービーでした。

 考えてみりゃ、ポール・アンダーソン(バイオ・ハザード)監督が、そんな映画を撮る訳ゃないか。1959年に「ポンペイ最後の日」ってぇ作品があって、人々を蹴散らして我先に逃げようとするローマ人を、主人公は柵を閉じて阻み、槍に刺される。彼の命が果てる時、神(天使だったかも……いや、キリストだった筈)がその魂を迎えにくる……と言う幕切れでした。
 同じ展開かな? と思って見ていましたが、1/3位から 「どうやら、こら違うなぁ~」と判りました。
 ブリテン島でローマに反逆していたケルトの一族が全滅させられる。一人生き残ったマイロ少年(子役の怨みの視線が尋常ではない。毎度、最近の子供の演技力には驚かされる)は奴隷狩りに捕まり、17年後、無敵の剣闘士となり、ブリテンからポンペイに送られる。 そこでポンペイの剣闘士王アティカスやポンペイ支配者の娘カッシアと出会う。
 マイロとカッシアは恋に落ちるが、折からポンペイにやってきたローマ元老院議員コルブス(K・サザーランド)は、マイロの仇であり、また、カッシアを奪おうとする存在でもあった。 闘技場で、マイロが絶体絶命の危機にさらされた時、ベスビオス火山が火を噴き、ポンペイは絶望の縁に立たされる。
 正直、食いたりません。 本作はアメリカでは不入りで、失敗作とされています。主役のキット・ハリントンは第2のテーラー・キッチュなんぞと言われています。デザスターシーンと、マイロ/カッシアの恋愛は良く出来ていますが、他のドラマが弱すぎる。105分(実質90分)では短すぎた。キーファーが極悪非道のローマ人を上手く演っているが、後一押し。他の登場人物についても描写が足りない。
 思い入れが薄いから(悪役も善玉も)悲しみに繋がらないし、カタルシスも少ない。映像が優れているだけにこれが惜しまれる。 CGを半分以下に押さえて、ミニチュアとセットで撮ったとはいえ、相当に製作費を掛けている。 それがドラマ不足でボツになるとは……キット・ハリントンに同情したくなりました。

グランド・ブタペスト・ホテル

 本作、全米60館強の限定公開から始まって、後に少しは増えたのだろうが、基本的に少数だったはず。ウェス・アンダーソンの作品は、いつも爆発ヒットにはならないものの口コミで評判が広がり、結果、長期に渡って動員数が落ちないという結果となる。
 とは言っても、超大作のように1億$超え……なぁんてな事にはならない。確実にファンに受け、それなりに愛される作品と言える。2012年の「ムーンライズ・キングダム」は4000万$程度の興行収入ながら、10週間に渡ってランキングに留まった。
「ムーンライズ~」は“小さな恋のメロディー”的、お子ちゃま恋愛がベースだったので、多少つらい部分が在ったのだが、本作は遺産相続に絡む殺人ミステリーがベースなのでストレートに面白い(と、私は思ふ) ウェス・アンダーソンは基本的に大人の寓話を作り続けている。 そこにアンダーソンの、今や無くなった物(色んな意味で)への憧憬が入り込む。そして、現実に在りそうなファンタジーワールドが立ち上がる。 今作、ビル・マーレイ他アンダーソン常連組に加え、主役の伝説のコンシェルジュ/グスタフにレーフ・ファインズ(文句なし名演)、その片腕ベルボーイ/トニー・レヴォリ(まだ新人ながら、メチャ面白い)。特筆はティルダ・スウィントンのマダムD、何ちゅう老けメイク!そらまぁ、特殊メイクが発達しとりますから驚くにはあたらんかもしれませんが、アンダーソン作品の中に現れると本当にティルダが老けたのかと思わされる。
 アンダーソンお得意の画も満載、雪の荒野にポツンと電話ボックスが在ったり、ホテルその物もまるでマチュピチュのように有り得ない山頂にデンっと建っております。1930-40年頃のスクリューボール・コメディ・スタイル(古過ぎて私もあんまり見ていません)で作られており、古いと感じる向きも有るかもしれません。若干 好き嫌いに左右されるかも……です。
 アメリカでは、映画館一軒あたり売り上げの記録を樹立、これも10週間ランクイン、最終売り上げはまだ不明ながら、判っている所では5200万$位。多少好みのセンスとは違っても、結構笑える作りになっています。
 まぁ、騙されたと思ってお出かけ下さいまし(ダメでも料金払い戻しはいたしかねます。念の為〓)

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高校ライトノベル・ひょいと自転車に乗って・05『ガンバってみる!』

2016-11-29 12:12:27 | 小説6
高校ライトノベル・ひょいと自転車に乗って・05
『ガンバってみる!』
        

 わたしが感動したからと言って他人が感動してくれるわけではない。

 すごく当たり前のことなんだけど、いざ実感して見るとガックリだ。


 コンバットの新兵さんが敵中横断をやるみたいにドキドキして学校に着いても、感動してくれる人なんかいない。
 そりゃそーだよね。
 わたしは何百人もいる玉櫛中学の生徒の一人でに過ぎない。で、何百人の生徒の半分は自転車で通っている。
 同じ制服着て同じような自転車に乗って校門を潜っても、犬や猫が迷い込んできたほどにも気づいてもらえない。

 だけど、尾道少女が自転車に乗れたというのは革命的なことなんだ!

 例えて言うと、女子中学生が初めて宇宙飛行士になるようなものなのだ! わたしにとってはね。
 でも、ここ大阪の高安では「人間だったら歩く」のと「自転車に乗れる」というのは、ほとんど同じ意味なんだ。
 分かってるんだけど、つまらない。

「如月さん、自転車に乗ってるのね」

 担任の和田先生に言われた時には、思わず「ハイッ!」と大きな声で応えてしまった。
「これ自転車保険のプリント。今週中に申し込んでね。それから、ほんまは自転車通学届を提出してからやないと自転車では通学できないから。ま、早く手続き済ませてね」
 和田先生は気づいていた。
 だったら「おめでとう!」の一言ぐらい欲しいと思ったけど、まあ、生徒に目が行き届いている、学校としては上等の方なんだと、自分を納得させる。

「さっそく乗ってきたんやね!」

 師匠の京ちゃんだけは喜んでくれる。
「帰りに二人だけでお祝いしよ!」
 一時間目の体育の後、ひまわりの妖精みたいな笑顔でハグしてきた。
 京ちゃんの体からはお日様のような匂いがした、新発見。
 考えてみると、匂いが分かるくらいの近さで人に接したことが、もう何年も無い。
 わたしって……考え込みそうになるので頭を切り替える。

「わー、ご馳走になってもいいの!?」

 放課後、図書館で十五分だけ時間を潰してから家庭科教室に行った。
「失礼します」の声を掛けて家庭科教室のドアを開けると、出汁の効いたいい匂いがした。
「こっちこっち!」と誘われたテーブルには鍋焼きうどんが二つ並んでいたのだ。
「これ、京ちゃんがつくったの?」
「まーね。あたして家庭科クラブやったりするわけなんよ」

 知らなかった、転校してきてから唯一友だちになった京ちゃんだけど、てっきり帰宅部だと思っていた。

「まあ、あんまり熱心な部員やなかったからね、さ、冷めへんうちに」
「うん」
「「いっただきまーす!」」
 友情の籠った鍋焼きうどんを美味しくいただきました。

「なんだか京ちゃんには世話になりっぱなしだね」

 高安の開かずの踏切にひっかかったので、電車の轟音に紛れる寸前に言った。

 ゴーーーー ガタンガタンガタンガタン ガタンガタンガタンガタン ガタンガタンガタンガタン

 通過してから京ちゃん。
「人も街もいっしょやと思う。同じとこしか通ってなかったら違う景色は見えてけえへん……てか、あたしもミッチーに世話になってるんよ」
「え、なん……」
 聞こうと思ったら特急電車の轟音に遮られてしまった。
 タイミングを外すとシビアな話は続かなくなる。
「大阪の子って、みんな、あんなにお料理が上手なの?」
 やっと開いた踏切に話題が変わる。
「材料がええんよ。安うて美味しいもんが一杯あるからね、あのおうどんなんか一玉十九円やねんよ」
「十九円!?」
「ミッチーも自転車乗れるんや、自分で探してごらん、他にもいろいろある街やからね」
「あ、うん。ガンバってみる!」

 その足で探検に行きたかったけど、まだ運転には自信が無いので――今週中には!――と決心するわたしであった。
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高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・10(促成魔女初級講座・座学編・2)

2016-11-29 06:37:12 | ノベル
秘録エロイムエッサイム・10
(促成魔女初級講座・座学編・2)



「わしが、なぜ生涯一度も負けなかったかわかるかのう」

 武蔵は独り言のように言って、庭を眺めている。ただ、言葉の直後に鹿威しの音が入り、真由の心に突き刺さる。
「……負ける戦いはしなかった。ハハ、なんだか言葉遊びのように聞こえるかもしれんが、戦いの極意はこれしかない」
「あの……それだと、あたし、だれとも戦えません」

 真由の正直な答えに、武蔵は方頬で、清明は遠慮なく、ハチはなんとなくニンマリと笑ったような気がした。

「あ、変なこと言いました?」
「いや、正直な答えでけっこう。ここからが話よ」
 武蔵は、行儀よく端正に座っているように見えながら、どこにも力が入っていない。かといって打ち込めば、必ず反撃されるようなオーラがあった。真由の気持ちが分かったのだろう。清明があとを続けた。
「巌流島の話はしっているかい?」
「えと……佐々木小次郎さんに勝ったんですよね。たしか武蔵さんの一番大きな勝負……でしたよね?」
 うかつに多く口に含んだ濃茶は、いささか苦かった。
「あれ、まともにやっていたら武蔵さんの負けだったんだ」
「あの試合、武蔵さんは、わざと遅れてやってきた。悠々と小舟の中で櫂を削って、長い木刀をつくりながらね。小次郎はさお竹と言われるぐらいに長い刀を、すごい速さで繰り出してくる。で、わざと遅れて小次郎をいらだたせた。そして普段の二刀流は使わずに、船の中で作った櫂の木刀をぶらさげて、こう言った。『小次郎破れたり!』遅れてやってきて、お前の負けだって言われれば、たいていの者は多少頭にくる。平常心を失っちゃうね。ここまでならハッタリなんだけど、武蔵さんは畳みかけるように、こう言った『おぬしは鞘を捨てた。その刀は二度と鞘にはもどらん。おぬしの負けだ』」
「ハハ、小賢しいハッタリにちがいはない。いつも使っていた二刀流を使わなかったのも、小次郎の早さに着いていけない可能性が高かったから……そして、二刀流の武蔵が、長い木刀……意表をついたまでのこと」
「ジャイアント馬場って、プロレスラー知ってる?」
「えと……アントニオ猪木の師匠のプロレスラーですね」
 真由はスマホで検索して答えた。
「あの人は、元々はプロ野球のピッチャーだったんだ。最初に長嶋さんと勝負した時は三振をとっている」
「え、そうなんですか!?」
「背の高い人でね。とんでもなく高いところから球が飛んでくるんで、バットの軸線が合わせられないんだ」
「よい例えだ。野球は慣れてしまえば、あとは目と腕で勝てる。剣術は、そうはいかん。一度でも負ければ死ぬということだからな。巌流島勝利の主因はそこにはない。わしが勝てたのは、そうやって死地を選ぶ余裕ができたからだ」
「シチ?」
 ハチが、自分の兄弟の事をいわれたのかと耳を立てた。
「死ぬの死に地球の地とかく。文字通り、相手にとって勝てない死の地点だ」
「武蔵さんは、海を背に横に走り、小次郎の刀の軸線を殺した。つまり、小次郎が振り下ろした瞬間には、わずかに自分の位置がずれる場所まで走った。あせった小次郎は、それを補うために大刀を横ざまに振った……その瞬間、小次郎の上半身は無防備になる。そこを、すかさず武蔵さんは跳躍して、小次郎の脳天を木刀で打った。計算とアドリブの見事なコラボだ」
「それは、買い被りというもの。勝負は死地を選べた霊力。これは、そのときの清明殿から伝授されたものだ」

 武蔵は平気で濃茶を飲み干した。

「座学は、ここらへんでよいであろう。清明殿、真由どのを実地訓練に出そう。式神の作り方を教えてやってはいかが?」
「そうですね、それが、とりあえず役に立つ」

 清明は、はがき大の和紙と鋏をもってきた。いよいよ実践編にはいるようである……」

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・108『CROODS』

2016-11-29 06:24:48 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・108
 『CROODS』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ



 これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


邦題“クルードさんちのはじめての冒険”っちゅうドリームワークス製作3Dアニメ。石器時代が舞台です。アメリカで昨年3月公開(アイアンマン3のちょいと前)なんと11週ランクインして2億$位まで売り上げました。
 日本公開……あったんですかねぇ、ちょっと覚えがありません。スターチャンネルで放送されてましたからディスクには成っていると思います。

 クルード家は婆ちゃん(母方)ダッド、マム、反抗期の娘と弟、幼児(女の子)の6人家族の穴居人、ネアンデルタールなんでしょうね、昼間 狩りに出るが遠出はしない、夜は洞窟で身を寄せあっている。道具らしきものも火も持たない。 ある日、松明を持って夜も移動している青年ガイが現れる(クロマニヨンですな)
 時期を同じくして地殻変動が起こり、クルード家のスウィートホームは崩れ落ちてしまう。父/グラグは近くで洞窟を探そうと、あくまで現状維持。ガイは太陽に向かって遥か彼方の山を目指すという、ロウティーンの娘/イップはガイに興味津々。あくまで現状維持したいグラグだったが地殻変動は更に強くなり、一家はガイと共に旅に出る事となる。グラグはスーパーマン的力持ち、ガイは非力だが様々なアイデアを持っている。幾多の困難を乗り越えながら旅を続ける一家だが、目的地に到着しながらも地殻変動に先を越され、大きな地割れに行く手を阻まれる。
 グラグの怪力で割れ目を超えるが、グラグ自身は割れ目を渡れない。 翌朝、別れ難く悲しむ家族のもとに、なんと奇想天外なアイデアでグラグが戻って来る。彼は初めて自分の頭で考え、ガイですら考えつかなかったアイデアで空を飛んだ(まぁ、あり得ませんが……) 一家とガイは旅を続け、とうとう海辺に到達する。と まぁ、人類の進化と大移動を ある一家の旅に仮託して描き、家族の愛情、在るべき姿を提示する。 いやぁ、まことにスンバラシイ出来上がり、決して説教がましくなく押し付けも無い。
 まぁね、アメリカンの感覚ではありますが、日本人にも共感、共有できる範囲です。昔、“フリントストーン”っていうテレビアニメがありましたが(後に実写映画になりました。ジョン・グッドマン主演)、あのフレッド達の御先祖?っちゅう位の乗りだと思えばええと思います。
 日本でも宣伝の打ち方でヒットしたと思うのですが、配給会社には気に入ってもらえなかったようです。 レンタル屋には在るはずですから是非ともご覧下さい。一家全員で楽しめますよ。スターチャンネルを見られる方は6/13, 12:00から再放送があります。
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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・〔年賀状を書こう!〕

2016-11-28 07:14:07 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト
〔年賀状を書こう!〕



 年賀状を書こう!

 朝目が覚めて、一番に思った。
 毎年思っては書きそびれ、ひどいときは紅白を聞きながら書いていることがある。
 佳世の年賀状は、正月明けのサインだね。と、友達に言われてきた。去年は開き直って七草粥のイラスト付けてだしたら、結構受けた。

 せり、なずな、ごぎょう、はこべら、すずな、すずしろ、(   )

 にして、カッコの中に入るのは何でしょう? というクイズ付。七日に着いて、ちょうど七番目を抜いておく。
 苦肉の策だったけど「こんな手があったか!」と評判だった。
 でも、同じ手は二度とは使えない。それに「七番目はなに?」といっぱいメールが来たのにも閉口。七草ぐらい調べろよな。といって、書いた本人がなにが入るのか忘れている。まあ、思い付きだからしようがない。

 テスト明けだというのに、きちんと目を通し、柄物のフリースにジーパンといういでたちで顔を洗いにいく。誰かが朝風呂に入ったんだろう、洗面台の鏡は見事に曇って、自分の顔が判然としない。ま、長年付き合ってきた顔なので、多少曇っていても歯磨きに支障はない。
 トースト焼いて、ハムエッグこさえて乗っける。以前はマヨネーズを塗ってからトーストにしていた。美味しいんだけどカロリーが高いので、マーガリンだけで済ませる。冷蔵庫を開けると、古いのが切れていたので、新しいバター風味のマーガリンを開ける。何事も新しいものを開けるというのは気持ちのいいもんだ。スープもインスタントだけど、コーンポタージュ。コーンの粒粒が嬉しい。こいつも四袋入りのが切れていたので、新しいものを開ける。今日はなにごとも新鮮な感じで「オーシ、やるぞ!」という気になる。

 去年みたいにアイデアを期待していては、いつまでたっても書けないので、パソコンから適当なのを選んで、まあ、ごく普通なのにしよう。ただ、下1/4ぐらいは空けておいて、一人一人コメントが書けるようにしておく。
 完全にパソコンとプリンターに頼ったのは、なんだかダイレクトメールじみていて味気ない。

「そうだ!」

 パソコンのスイッチ入れてから思いつく。お父さんが九州に出張したときに買ってきたお土産の志賀島の金印のレプリカ。「漢倭奴国王」と、一見意味は分からないけどかっこいい。部屋に取に戻って、リビングへ……。

 パソコンが、まだ起動していない。いわゆる「立ち上がっていない」 この夏に買い換えたばかり。一分もあれば立ち上がるのに……おかしいなあ。
 あたしは、こういうものには弱いので、兄貴を呼ぶ「おーい、にいちゃん!」

 返事が無い。

 お兄ちゃんだけじゃなくて、お母さんもお父さんも居ない。
「え、今日なんかあったっけ?」
 リビングのテーブルにハガキの束があるのに気付く。喪中葉書だ……。

 娘、瀬田佳代が、この十二月十一日に……そこまで読んで、頭がくらりとした。

「うそ、あたし死んだの!?」
 冷蔵庫を開ける。マーガリンは新品が箱に入ったまま。カップスープも未開封だった。置いたと思った食器はシンクのどこにもない。
 洗面所の鏡は曇っていなかった……自分の姿が見えないだけだ。部屋に戻ったら着たと思ったフリースもジーパンもそのまま、クローゼットの中にある。あたしは、なぜか制服姿のままだ。

 そして、記憶が戻って来た。期末テストが終わって、嬉しさのあまり校門を出たらトラックが迫ってきた。あとの記憶は、さっき目覚めたところまで空白。

 もう一つ思い出した。春の七草の最後は……仏の座だ。

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高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・9(促成魔女初級講座・座学編・1)

2016-11-28 07:06:16 | ノベル
秘録エロイムエッサイム・9
(促成魔女初級講座・座学編・1)



「うかつだったなあ……」

 安倍青年の小さな呟きが、大きく聞こえるほど静かな山荘の中であった。
 安倍が覆いかぶさって、真由がしがみついて、閃光が走ったかと思うと、ここにいた。
 八畳ほどの和室で、縁側に続いた庭にはハチが、何事もなかったように日向ぼっこをしている。その周りは深山幽谷と言っていいほどの山の中である。

「あれは、なんだったんですか?」
「多分、中国の妖怪たち……」
「中国の?」
「うん、単に探りを入れに来ているだけかと思っていたけど。あいつらは実戦部隊だった」
「……あれも、あたしのせいなんですか?」
「真由くんが、南シナ海で中国の巡視船……無意識だけど沈めちゃっただろ。そこから手繰ったんだろうね。渋谷で網を張って、京都に来た時には、人知れず三条あたりに集結していた。ボクも気が付かなかった。油断だね」
「あ、助けていただいてありがとうございました」
 真由はペコリと頭を下げた。渋谷からこっちのことが、少しずつ整理されて、落ち着いてきた。
「あの……安倍さんていったい?」
「総理大臣の親類」
「え?」
「じゃなくて、第八十八代陰陽師頭(おんみょうじのかみ)阿部清明。ま、日本の魔法使いの元締めみたいなもん」
「ああ、野村萬斎さんが、むかし映画でやった」
「だいたい、あんな感じ。陰ながら日本と都を守るのが、うちの家系の仕事。うちのことはおいおい知ればいい。それより君だ。いきなり第一級の敵とみられたみたいだね」
「なんで、あたしが敵なんですか?」
「きみは、ヨーロッパの魔法の正式な継承者だ。まだチュートリアルの段階だけど、磨けば、すごい魔法使いになる。そうならないうちに、君を潰しにかかったんだ。ボクといっしょだったことも災いしたね。日本の陰陽道とヨーロッパの魔法が協定を結んだように思われた」

 庭の鹿威し(ししおどし)が、まるで時間にアクセントをつけるように、コーンと鳴った。

「七十年前の戦争で、京都と奈良にはほとんど爆撃の被害がなかったこと、知ってるね?」
「はい、学校で習いました。日本の敗北が決定的になったんで、文化財の多い奈良と京都は爆撃の対象から外したって」
「あれは、ボクのひい爺さんの仕事だったんだ。ああ、言わなくても分かるよ。日本の首都は東京だ。なぜ東京を守らなかったか……東京は正式には首都じゃない。ケチくさいけど法律のどこにも書いていない。天皇陛下が即位されるのも、東京じゃなくて京都の御所だ。京都の年寄りは、天皇陛下が京都に来られることを『お戻りになった』と、今でもいう」
「でも、東京は大空襲で、原爆以上の犠牲者をだしてます。守れなかったんですか?」
「沙耶くんにも聞いたと思うけど、魔法と言うのは、ここに落ちる爆弾をそっちに持っていくだけのものだ。京都と奈良の分が、東京に落ちてしまった」
「そうなんですか……」
「皇居を守るのが精一杯だった」

 いきなり庭に面した縁側に人の気配を感じた。生成りの木綿の着流しに渋柿色の袖なしを着た老人が、ハチを相手に遊んでいた。

「あ、武蔵さん。お久しぶりです」
 清明が頭を下げた。
「近くを通ったもんでな……山里におると、人恋しくなるものでな。ごめんくだされ」
「あ、どうぞお上がりください。松虫さん、お茶の用意をしてくれませんか」
 いつのまにか、座敷の傍らに和服の女性が座っていて、小さく頷くと、本格的な茶の湯の用意を始めた。
「おぬしの式神は、付かず離れず、まことに様子が良いのう。こちらの娘子が真由どのじゃな」

 鳶色の三白眼が、かすかに和んだ。この顔……宮本武蔵だ! 真由は正直に驚いた。

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・107『ビル・カニンガムアンドニューヨーク』

2016-11-28 06:47:42 | 映画評
ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・107
『ビル・カニンガムアンドニューヨーク』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ



 これは悪友の映画評論家滝川浩一が、個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


  ビル・カニンガム、80歳のファッションカメラマン。20$のワークコート(しかもカメラとこすれて破れるとガムテで繕う)を着て、チャリでニューヨークを走り回る。被写体はホームレスからセレブリティまで差別なし、コンセプトは自前の感覚、自前の哲学、自前の財布。コーディネイターに飾られたファッションには興味なし。年に2回、パリのオートクチュールに出掛けるが、実際に着られる服以外にはカメラを上げない。たとえ半世紀前のデザインであろうとパクリには一切容赦しない、類似デザインは自らの60年に渡る記録の中から証拠を探して並べて告発する。
 ニュヨーカー紙に“オン・ザ・ロード”というフォトコラムのページを持ち、彼のページから最新の流行が生まれる。それは、ファッションメーカーのコマーシャルではなく、生のニュヨーカーのファッショントレンド。かつては、今や伝説のファッション誌の大半を埋めたが、その殆どは無給なのだと言う。提示された小切手は全て破った。報酬によって自らの自由な感覚に掣肘を課せられる事を何より嫌った。
 ビル・カニンガム……リンカーンセンターの狭い一室で写真キャビネットに囲まれて暮らし(リンカーンセンターの改修で、今はセントラルパークを見下ろすアパートメントに移ったが)今でも自転車でニューヨークを走り回る。セレブリティパーティーには興味なし、チャリティーパーティーの中から自らの価値基準に見合った物を選び、出席者の撮影をしにいく。
 ビル・カニンガム……生きた伝説、今日も生きてうごめくファッションを撮り続ける。カニンガム自身、幾分かの資産はあるらしい(でなければ、この自由は担保できない)、しかし、贅沢とは全く無縁。ついでに恋とも無縁だがホモではないと本人が明言している。ただし、ホモに偏見など一切ない。彼にとって、被写体の性別も年齢も一切関係ない。在るのは個人の自由な発想と自己主張。
 もうディスクが出ている、ファッションに興味なしでも構わない。そこに映っているのは、思いっきり粋で自由な爺さんの生き様。一見の価値在り。お薦め〓

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高校ライトノベル・ライトノベルベスト・『おいでシャンプー』

2016-11-27 12:42:50 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト
『おいでシャンプー』



「摩耶です、よろしくね」

 その一言で、その人は、うちの同居人になった。

 若すぎる…………それが、最初の印象だった。

 
 お父さんは四十六歳。お母さんは……居ないってか、覚えてもいない。わたしが二歳になる直前に交通事故でなくなった。それ以来、お父さんは、男手一つでわたしを育ててくれた。

 中学のころは、イッチョマエに反抗期ってのもやってみた。塾の帰りに友だちと喋って遅くなり、お父さんが心配して迎えに来て、「遅くなるならメールぐらいよこせよ」の一声をシカトして、一晩帰らなかった。ま、その程度には。
「今日から、洗濯物、お父さんとは別にするから」
「あ……ああ、いいよ」
 お父さんは平気な感じで言った。でも、その時手にしたスポーツ新聞は上下が逆さまだった。
 洗濯物を別にすると言っても、洗濯はわたしの係だ。小学五年の冬から、わたしが、自分で言い出してそうした。
「お父さんも、たいへんだろうから」
 というのが表面的な理由だけど、わたしは、なんとなく予感があった。そろそろアレが始まる。アレが始まることは、光子伯母ちゃんが説明してくれていたし、学校でも、女子だけを集めての健康学習でも習っていた。だから、予防線を張って、自分がやるって言った。予想は当たって、アレはお父さんの盆栽の梅がほころぶころにやってきた。でも、あのころは、お父さんのパンツをいっしょに洗うことに抵抗はなかった。
 ただ、中学に入ると、友だちが、冷やかされていた。
「え、あんた、まだお父さんのといっしょに洗濯してるの!」
 で、わたしは別に洗濯することにしたのだ。
 だから、自分のはナンチャッテ反抗期。でも、学校での付き合いなんかでは――わたしも反抗期――と、思えて気が楽。

 三十過ぎから、男手一つで子どもを育てることの大変さは、顔にこそ出さなかったけど分かっている。

「新しいお母さんができるわよ」

 光子伯母ちゃんから、そう告げられたときは正直ショックだった。お父さんから直接聞いてもショックなんだろうけど、最初に光子伯母ちゃんから言われたことが寂しかった。
 でも、その週末に焼き肉食べながら、お父さんから、改めて言われたときは、わりに平気で聞くことができた。

 そして、その日がやってきた。

「摩耶です。よろしくね」

 どう見ても若すぎる。おずおずと歳を聞くと。
「三十二。でも、他の人には内緒ね。それと、わたしのこと、無理にお母さんなんて呼ばなくていいからね」
「……じゃ、摩耶さん」
 早手回しに摩耶さんが言ってくれて、少しホッとした。
 でも、表面はともかく、心の中では、お母さんどころか家族としてもしっくりこない。
 摩耶さんも、家の中を自分色に染めるようなことはしなかった。家具や水回りの配置など、そのままにしてくれていた。
 摩耶さんがやってきて初めて三人で買い物を兼ねて食事に出かけた。買い物を終えて駐車場に戻ったところで、クラスメートのノンカに出会った。
「おーい、真由!」
 ノンカは親友なんだけど、気配りがない。こういう無防備な状況で声かけるか……。
「あら、真由のオトモダチ?」
「あ……親友のノンカ」
「あ、榊原紀香です、真由の親友やらせてもらってます……」
 ノンカは、キョウミシンシンむき出しの顔で、わたしたちを見た。
「妹が、お世話に……わたし真由の姉の摩耶。姉妹っても腹違いなんだけどね」
「お、おい、摩耶」
 お父さんも、さすがにビックリ。ノンカは目を丸くした。
「ハハ、う~そ。ほんとは新しいお母さんなの。なりたてのホヤホヤ、ほら、ノンカちゃん、こっちから見て、湯気がたってるでしょ!」
「ほんとだ……!」
「まさか……」
 わたしも、ノンカと並んでみた。
「……なーんだ、カゲロウがたってるだけじゃん」
「ハハ、ばれたか」
 摩耶さんは、そんな風に、自然に、わたしたちの中に溶け込んできた。

 ある日、摩耶さんはお風呂椅子を買ってきた。
「ジャーン、カワユイでしょ!」
 それは、ほのかなピンク色で、ハートのカタチをしていた。
「ええ、それに座ってシャンプ-とかすんのかよ!?」
 お父さんがタマゲタ。
「これは、女子専用。お父さんは、今までのヒノキのを使ってください」

 わたしは、摩耶さんが来てから、お風呂椅子は使っていなかった。それまでは、お父さんと共用のヒノキのを平気で使っていたけど。わたしは摩耶さんのお尻が乗っかったお風呂椅子に自分のお尻を乗せる気にはならなかった。別に摩耶さんのことが生理的に受け付けないということではなかった。

 お父さん×摩耶さん×わたし=あり得ない……になってしまう。

 お父さんと摩耶さんは夫婦なのだから、だから、当然男女の関係にある。で、同じお風呂椅子にお尻を乗っけることができない。わたしは、摩耶さんが来てから、お風呂マットの上に座ってシャンプ-とかしていた。
 
 摩耶さんは、どうやら、それに気づいていたらしい。

 わたしはグズなので、お風呂は一番最後になることが多い。その晩、お風呂に入ると、ハートのお風呂椅子に使った形跡がない。まあ、買ってすぐなんで、摩耶さん忘れたのかと思った。
 でも、明くる日も、その明くる日も使った形跡がなく、なんだか、わたし専用のようになってしまった。

 その数週間後、わたしは恋をしていた。むろん片思い。彼は二か月前、転校してきて、わたしが所属する軽音に入ってきた。バンドが違うので、話をすることなんかなかった。そいつは敬一っていうんだけど、すぐに、みんなからケイとよばれるようになった。

「あ、ごめんケイ」

 新曲のスコアを取りに部室に入ったら、練習の終わったケイが上半身裸で汗を拭いているところだった。
「男の裸なんか気にすんなよ」
 制服に着替えて、ケイは爽やかな笑顔で部室から出てきた。ケイはな~んも気にせず、白い歯を見せて笑って、下足室の方へ行く。後にはメンズローションと男の香りが残った。

――なんだ、あの爽やかさは――

 これが始まりだった。そのケイに、こともあろうにノンカが想いを寄せてしまった。
「わたし、ケイのこと好きだ!」
 堂々と、わたしに言った。
「真由も好きでしょ?」
「いや、わたしは……」
「ホレホレ、顔に、ちゃんと書いてある。ね、お互い親友だけど、これはガチ勝負しようね!」

 で、グズグズしているうちに勝負に負けた。今日ノンカが校門でケイと待ち合わせして帰るところを見てしまった。

「どうかした?」
 家に帰ると、摩耶さんが、ハンバーグをこねながら聞いてきた。
「い、いや、なんでも……」
「そう……じゃ、使って悪い。シャンプーの中味詰め替えといてくれないかなあ。紫のがわたしの、イエロ-が真由ちゃん用。わたし、こんな手だから。お願い」
 摩耶さんは、ハンバーグをこね回して、ギトギトになった手を見せて、笑った。一瞬魔女だと思った。

「アチャー……」

 オッサンのような声をあげてしまった。
 シャンプーをしようとお湯で髪を流し、手を伸ばした定位置にシャンプ-が無かった。
 詰め替えたときにボンヤリしていたんだろう。わたしってば、自分のシャンプーを高い方の棚に置いてしまった。
 立ち上がれば、直ぐに手が届くんだけど、ハート形のお風呂椅子はプラスチック。立ち上がって座り直せば、冷やっこくなる。そんなものほんの一瞬のことだ……そう思っても、今日の失恋で心にヒビが入っている。こんなことでもオックウになる。
 で、そのシャンプーを見上げた一瞬にお湯が目に入り目をつぶってしまった。

――おいで、シャンプー!――

 理不尽なことを思った。
「あ……」
 目を開けると、自分のシャンプーが目の前の下の棚にある。
――見間違い?――
 まあ、目の前にあるので、深く考えずに使った。で、不覚だった。
「これって、摩耶さんのシャンプー……詰め間違えたんだ」
 摩耶さんのシャンプーはナンタラピュアというもので、わたし的には香りがきつい。ほんとに今日はついてない。

「別に詰め間違えてないわよ」
 めずらしく、わたしの後にお風呂に入った摩耶さんが、髪を乾かしながら言った。
「え、うそ……」
 念のため、風呂場にいって確かめてみたら、たしかに、それぞれのシャンプーが入って、定位置に置かれていた……しかし、自分の髪から漂う香りは、摩耶さんのナンタラピュアであった。

 そして、明くる日、学校で奇跡が起こった。

「真由、シャンプーとか変えた?」

 ケイが、理科実験室前の廊下ですれ違いざまに声をかけてきた。
「あ、ちょっとあってね……」
 二人の後ろでじゃれ合っていた男子がロッカーを倒してしまった。理科のロッカーなのでかなりの重量がある。
「危ない!」
 ケイは、わたしをかばうようにして、廊下を転げた。

 気がつくと、二人抱き合って廊下に倒れていた。そして、ケイのクチビルが、わたしのホッペにくっついていた。
「あ……痛あ……」
 わたしは足を捻挫していた。ケイが肩を貸してくれて、保健室まで連れていってくれた。
 痛かったけど、とても嬉しかった。廊下の向こうの方でノンカが「負けた」という顔をしていた。

「今度倒れるときは、クチビルが重なるといいわね」
 その日は、ケイが自転車に乗せて家まで送ってくれた。で、ドアを開けた瞬間摩耶さんから、この言葉が出た。
「え、どうして……」
「あ……学校から電話あったから」

 そして数か月後、ケイとわたしは自他共に認めるカップルに。
 
 摩耶さんのことは、やっと言えるようになった。

「お母さん……」

 そして、お風呂椅子は、お母さんも使っているよう。シャンプーは、その日次第で中味が違う。でも――おいで、シャンプー――と思うと、思った通りのシャンプーになっている。
 ほとんど、このお母さんは、魔女じゃないかと思ってしまう……。
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高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・8(The witch trainingのつもりが……)

2016-11-27 06:07:47 | ノベル
秘録エロイムエッサイム・8
(The witch trainingのつもりが……)



 三条河原のアベックは、川に沿って等間隔に並ぶことで有名である。

「じゃ、とりあえず河原に降りようか」
 ろくに紹介もされないうちに、青年の一言で真由は、三条河原のアベックの一組になってしまった。
「ボク、安倍って言います。よろしく」
「あ、あたしは……」
「朝倉真由さん。ひょんなことで魔法が使えるようになっちゃって、そのエクササイズのために、沙耶さん、ハチ公、そしてボクのところへまわされてきたんだよね」
「あ、はい。その通りです……なんで分かるんですか、一言も喋ってないのに?」
 それには答えないで、安倍は続けた。ハチは、おまかせとばかりに少し離れてリラックスしている。
「なんで、ここのアベックたちは等間隔で座っているか分かる? それも、この冬の寒いのに」
 真由は、改めて周りを見まわすと、同じようなアベックが並んでいるのが分かった。等間隔なのかなと思うと、上空から見たビジョンが目に浮かんだ。何十組というアベックが等間隔で並んでいる。ビジョンが見えたこと自体が、もう魔法なんだが、真由は、この程度では驚かなくなっている。魔女慣れしてきたことと、安倍青年の不思議な雰囲気に呑まれてしまっているようだ。

「これも一種の魔法。日本の古い言い方で呪(しゅ)がかかっているという」
「呪……ですか?」
「それも、二つの呪だよ。一つは互いの愛情……愛は多少の寒さもものともしない」
「なるほど……」
 納得して、真由は驚いた。真由も寒さを感じない。小春日和のような温かさを感じる。
「ハハ、真由ちゃんが感じてるのは愛情じゃないから。ボクが暖かくしている。そこのハチ公までは届いている。病気の時、お母さんが手を当ててくれたり、さすってくれたりすると病状が和らぐね。あれも原始的な呪の一つ。西洋で言う魔法とは呪と同じで、その能力を増幅させたものなんだよ。ハチは上手く教えてくれたようだね、君の頭の中にはコントローラーが見える……いまR2ボタンでボクのこと透視しようとしたね」
 無意識にやってしまったのだが、言われれば、その通りなので、またまた驚いた。で、真由のレベルでは透視しても安倍の正体は分からない。
「もう一つの呪はね……この三条河原は、むかしは処刑場だったんだ。有名なところじゃ豊臣秀次の一族やら石川五右衛門やらが、処刑されてる。アベックの間には、そういう霊が座って心を温めているんだよ」
 となりのアベックが笑った。どうやら男の子が女の子にプレゼントをしたみたいだ。
「なるほど、恋は魔法だ。でも、あたし処刑された人たちは見えません」
「経験値があがれば見えるさ。真由ちゃんにはハチが見えてるだろ。でも、他の人には見えないんだ」
「え、見えてないんですか?」
「渋谷じゃないからね、ハチもリラックスしてるんだよ。ちなみに隣にいるのが、いま言った五右衛門……おかしい、五右衛門が気を付けろって言った……いかん、ボクに掴まって!」
 言うが早いか、安倍は真由に覆いかぶさってきた。真由は反射的に安倍にしがみついた。

 次の瞬間、安倍と真由の体が爆発……したように見えた。

「しとめたか?」
「……だめ、一瞬早くテレポされてしまった」
 アベックが悔しそうに言った。
「いて!」
「痛い!」
 ハチが、アベックの男女に噛みついて消えた。周りの何組かのアベックが咎めるように二人を睨んでいた。どうやら、仲間の失敗に怒っているようだ。

 魔女の初級訓練が、いきなり実戦に入ってしまった。

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・106『X- MEN days of future past』

2016-11-27 05:54:18 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・106
『X- MEN days of future past』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ



 この映画評は、悪友の映画評論家:滝川浩一が個人的に身内に流しているものですが、もったいないので転載したものです。


久し振りに映画館にやってきました。先週は、奴がれの体調を気遣っていただき、まことに申し訳ないやら有り難いやら。ありがとうございました。

 とはいえ、早起きしての移動は辛い……もとい、眠たいよ~~〓
 では、本編……おっと、その前に、先日の「OLD BOY」、いかにも韓国オリジナルのごとく書いてましたが、なんと! 原作は日本の漫画でありました。なんとも面目無い、全く知らん作品です、これじゃマンガ読みの自称は引っ込めんとあきまへんなぁ。
 さて、本間に本編です。結論:面白いから絶対お薦めです。華五重丸です。但、“タイムパラドックス”は忘れて下さい。特に理系の皆様方、心されよ。 2023年、ミュータントも人間も最悪の未来。巧い設定ですが、ターミネイターとマトリックスの世界観のミックスです。
 まぁ、この二作の設定以外はあり得ませんから致し方なしです。量子理論(と言っても、突っ込みいれないて下さ
いよ、私にだって理解の外ですから)からすると、時間も空間も一定不変ではありません。無限数の未来パターンが存在します。だから、絶望的な現在を過去に戻って訂正出来るかってえと……これはダメなんですね。映画の中にも「川の流れに一石を投じても流れは変わらない」ってぇセリフが有ります。過去の因果を訂正すると、そこから別な時間軸による未来が始まり、新たな世界が築かれる訳で、過去に干渉しようとした現在が変わる訳ではありません。その点「マトリックス」は機械による仮想現実(夢みたいなもんですね)世界だから、何らかの変更は可能。ターミネイターも本作と同じ問題を抱えていますが、こっちはスカイネットとの戦いに決着が付いていないので理論破綻の一歩手前で踏みとどまっています。 それを言うなれば、本作も最終決着寸前のタイミングと言えなくもありませんが、映画が暗示する結論は有り得ない。
 
 ウルヴァリンが過去へと旅立って、無事帰還する訳ですが、本来、そこにはもう一人のウルヴァリンが存在します。……まぁ、そこんとこは巧い設定に成っていて納得出来る作りには成っています。
 てなヤヤコイ話になるので、この件は無視して映画の結論を丸呑みする事にいたしませう。
 ここさえクリアしたら、元々の本編シリーズとファーストジェネレーションのオールスター揃い踏み、言うならX- MEN AVENGERSみたいな話です。ミスティークは当然ジェニファー・ローレンス、今作、H・ジャックマンと彼女が主役ですから、たっぷり演じてます。全身メイクですが、まさしく名演技です。さすがであります。
 新顔にビショップというエネルギーを吸収放射できるミュータントが登場、なんと「最強の二人」のオマールが演じています。スキンヘッドではなくドレッドヘアだったので、パンフを見るまで判りませんでした。 もう一人、ミュータントの強敵センチネルの開発者にピーター・ディンクレイジ……ご存知無いとは思いますが、現在、CSで放映中の「ゲーム・オブ・スローンズ」のティリオン役でゴールデングローブ賞/エミー賞いずれも助演男優賞を取っています。スローンズの中で私の最大贔屓がティリオンです。オリジナルキャストの中にも彼のファンが多数、殊にジェニファーは殆どオタク状態であったとか……。
 ヒュー・ジャックマンは必ずどこかで裸の上半身を曝すが、今回の鍛え方は尋常の域を出ている。後ろ姿だがオールヌードも一カ所、まるでギリシャ彫刻が動いているようでした。撮影前からトレーニングを始め、撮影中も毎日鍛えていたそうで、恐らく最高の出来上がり時点で件のオールヌードを撮ったのでしょう。同性からみても、思わず溜め息が出る肉体美でした。 念のために断言しときますが、私、H◇M×では有馬線!、天地神明に誓って単なる女好きです!(何を強調しとるやら アハハ)
 本作、製作費2億5千万$(この類の最高額と言われてます)先週公開 全米9千万$ですから、まぁ、製作費は国内で賄うでしょう、後の世界興収は純利益決定!さぞかし笑いが止まらんこってしょうね。
 さて、本シリーズ、続編がすでに決定されとりまして、再来年“X-MENアポカリスム”翌年“ウルヴァリン3”さらに翌年、タイトル不明ながらウルヴァリンは絡むらしい。
 さて、H・ジャックマン……どこまで付き合うんでしょうねぇ。X-MENのコミックは、全世界5億$の売上高だそうで“ワンピース”の約2倍……ちょっと想像を絶します。今作には明確な原作があるらしく、次回作の“アポカリスム”と1、2を争うコミックだそうです。さすがに知りません。マンガ読み滝川(さっき称号返上を言うたやろに)のウィークポイントはまさにアメコミ、されど、あんまり読み続ける気にはならんのよね。  
 例えばですよ、X-MEN3でマグニートーは“キュア”を打たれて能力を失った筈が、何の説明も無く蘇っている。アメコミのご都合主義……日本でいや、“北斗の拳”のケンシローの出自が二転三転しているようなものです。好きだったから単行本27冊分、最後まで付き合いましたが、せめて“羅王”の死で終わった方が良かったと思っている人の方が多い筈です。 その点、アメコミは問答無用……知ってます?アメコミのX-MENシリーズではスパイダーマンは2度程死んでいます。
 ご都合主義……面白かったら付き合いますが、程度を過ぎるとあ~あ〓であります。

 以上、アメコミを追っかけ無い理由の言い訳でありました。まぁ、映画は一本一本が面白けりゃええので、原作なんざ知った事っちゃございません。
 ただ、原作コミックの隅から隅まで知り抜いているオタク連中の深い(????)話題について行けないのには、理屈抜きで……少々、グヤジイ~のであります。

 チャンチャン〓

 全く話変わりますが、これを打ちながら“舞台・真田十勇士”をみとるんですが……これ、新感線でやるか、せめて中島台本ならもっと面白かろうに、マキノノゾミじゃねぇ……しかも、マキノさん、否定するでしょうが中島台本の方法論と井上演出のコピー ムムム 言い過ぎですか? ま、お後がよろしいようで、チャンチャン………アハハハハ〓

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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・僕は友達が居ない

2016-11-26 07:08:10 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト
    僕は友達がない 

 僕は男ではない!

 れっきとした、波野高校二年の女子高生である。一人称が僕なので、いわゆる『僕少女』にカテゴライズされている。ほんとは女の子らしく「あたし」とか言ってみたいんだけど、そう決められているのだから、仕方がない。僕の小さな秘密。

「ノラ、また優子と、優衣のグループが睨みあっとる!」

 生活指導部長の温水(ぬくみず)先生が額に縦皺を作ってやってきた。
「で、また僕ですか……」
「すまん、おれ達の言うことは、まるっきり聞かないんでな」

 ちなみに僕は、二年になって転校してきた変わり者だ。牧瀬ノラというのが僕の名前だけど、親しみと、使い勝手の良さで、みんな「ノラ」と呼ぶ。日本人とノルウェー人のハーフということなので、これも仕方がない。

「また、イサカッテんの?」
 下足室の横でにらみ合っている二つのグループの間に入った。
「あ、ノラ。こいつら話になんないのよ!」
「話にならないのは、そっちでしょう!」
「なんだと!」
「やるっての!」
「まあまあ、あと一言言ったら手が出ちゃうよ」
 そう言いながら、間に入る。先生達は、遠巻きに見ているだけだ。
「いいんだよ、今日こそは決着つけなきゃ収まらないのよ!」
「そうだよ、もう勝負するっきゃ、手がないの!」

「それは、分かる」

 そう言うと、全員がズッコケた。
「もう、たまりに溜まった憎しみだもんね。カタ付けるしかないでしょ」
「おいおい」
「先生は黙っててください。手に負えないから僕にまかせたんでしょ?」
「ああ、でも暴力はいかんぞ」
「暴力なんか使いません。両方ともリーダーが優子と優衣。名前に『優しい』が付いてるんだから、穏やかにいきましょ。今は、お互い熱くなってるから、言いたいこと整理して、放課後視聴覚教室に来て。そこで思いっきり言い合って。僕が整理するから」

 そう言うと、二人のリーダーは、不承不承頷いた。

 まあ、今は昼休み。放課後までには、少し落ち着くだろう。勝負は放課後。
 と、視線を感じた。二階の窓から亜紀が僕のことを見つめている。
「今から、そっち行くから!」
 満面の笑みを浮かべて、新館の二階へ。廊下の窓辺にブスっとした亜紀が肘を突いて下の生徒達を見ている。
「優子と優衣のグループがケンカすればいいと思ってたでしょ」
「うん、あいつら、弱いと見たら、集団でイジメやら嫌がらせするんだもん。ケンカして消えて無くなればいい」
「まあ、そう言わないで。あれから、嫌がらせ無いでしょ?」
「う、うん……おかげさまで」

 亜紀は、下足室のロッカーにビニテで「死ね」とか「ウザイ」とか貼りまくられ、机の中にも同じようなメモが入れられていた。
 極めつけは、体育が終わって更衣室で着替えようとしたらスカートがなくなり、便器の中から見つかったという陰湿な事件だった。
 僕は、一目で狂言だと分かった。
 確かに亜紀は、非社交的で表情が暗く、人を見る目が何かを含んでいるようで、みんなからシカトされていた。原因のほとんどが自分にあることには気づかず、いろいろ自分でやっては悲劇のヒロインになっていた。

 で、僕は、わざとボールを投げて、学校のガラスを割り、名乗り出て罰に早朝登校して校内清掃をすることにした。初日は下足室。亜紀のロッカーの近くを掃いていると、ノコノコと亜紀がやってきた。僕の顔を見ると、サッと手にしたものを背中に隠した。白いビニテだということは直ぐにわかったけど「お早う」だけ言っておしまい。亜紀が上履きに履きかえているうちに、温水先生がやってきて、こう言う。
「チャチャッヤとやっとるか。手抜きしたら日にち増やすぞ!」
「はい、今日のとこは終わりです」
 そう言って、直ぐに亜紀とは反対の階段から二階に上がる。そして、亜紀の教室の前を通り、ノートの千切ったのを自分の机にいれようとしている亜紀に目を合わす。
「ハハ、また会っちゃったね」
「お、おはよう」
「変なの、さっき下足で会ったじゃん」
「あ、そうだったわね」
 おたついたところを後ろに回って、ノートの千切れを自然に見つける。
「ハハハ、自分でやっちゃ、だめでしょう?」

 亜紀は、顔を真っ赤にして大粒の涙を流した。カバンからビニテがはみ出していることにも気づかずに。

「これで、亜紀の秘密知っちゃったから、僕たち、友達だね!」
「ノラ~!」
 顔をクシャクシャにして抱きついてきた。それから、亜紀は、そういうことをしなくなったし、僕のことは友達だとおもっている。

「ノラ、そこで三宅が、女の子しばいてる! 暴力事件だよ!」

 峯岸がいうので、しかたなく、僕は渡り廊下へ行く。
「あ、ノラ、今のはちがうんだ!」
「見りゃ分かるわよ。痴話ゲンカのはてでしょ。あんたたちのは夫婦ゲンカみたいなもんだもん」
 ホッペを赤くして、しばかれた千晶が照れた顔をしている。
「でも、人が見ちゃったから、あいこにしとこ。三宅君、歯を食いしばって……はい、千晶は一発かましましょう」
 千晶は、蚊も潰せないほどの可愛いビンタをくらわせる。
「ハハ、千晶、惚れた弱みだね!」
「もう、ノラは、そうやって、いつもからかうんだから!」
「そういう照れた千晶って、可愛いよな!」
 で、夫婦ゲンカは収まる。二人とも、僕を友達と思っている。

 放課後になった。視聴覚教室の二グループのところに向かう。

「はい、双方、持ち時間は十分。相手の発言中は口出ししない。発言の順番はコイントス……はい、裏か表か!」
 で、順番を決め、言いたい放題言わせる。予備に五分とって、言い足りないところを補足させる。

「お互い様でしょ。言ったことに具体性もないし、言った、やられた時期もはっきりしない。はっきりしてんのは、もう、お互いに仲良くはやれないってこと。無理だね仲直り。でしょ?」
 互いのメンバーが頷く。
「じゃ、これからは、互いにシカトしよう。いわば冷戦だね。握手したって欺瞞だしね。それでいいね!?」
 僕は、ムリヤリ善悪を決めない。女の子の睨み合いなんて、それこそ箸の上げ下ろしまで気に入らないところからはじまっている。割り切るっきゃない。

 で、二つのグループのイサカイは無くなり、優子と、優衣のグループからも友達と思われる。

 でも、僕には友達がいない。

 僕のシリアルは、NORA A007 対人トラブルシューティング用ガイノイド(女性タイプアンドロイド)プロトタイプ。僕にとって波野高校は実用試験の場でしかない。だから友達はいない。みんな検体にすぎない。僕は、この四月にデータ分析された後、アップロ-ドされて、他の実用試験にまわされる。サ・ヨ・ウ・ナ・ラ……。

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高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・7(The witch training・3)

2016-11-26 06:48:27 | ノベル
秘録エロイムエッサイム・7
(The witch training・3)



「あんあたも、えらいもんしょっちゃったね……」

 ハチ公がしみじみとした声音でため息ついた。
「なんでも、血筋だから仕方無いらしい……」
「他にも血筋で、名前だけ引き継いでるのいるけど、からっきし。まあ、魔法が使えたってろくなことないけどね」
「うん、なんだか使い方むつかしいみたいだし。ハチ公も魔法使いなの?」
「魔法犬ってとこか……」
「魔法犬?」
「ああ、ご主人の上野先生が無くなってから、九年間も渋谷の駅前で、待ち続けてさ。それを、世間様は『帰らぬ主人を待ち続けた忠犬』ってことにしちまった。俺は、ただ犬としての……俺って秋田犬なんだ。秋田犬ってのは主人に忠実ってのが売りだったしさ。俺自身のレーゾンデートルのためにも、秋田犬の代表としても引っ込みつかなくなってしまってさ。なんたって生きてる間にマスコミが騒いじゃってさ。俺ぐらいのもんじゃない、本人が生きてる間に銅像まで造られちまって。除幕式には俺自身引っ張り出されっちまってさ。映画になるは、教科書に載るはで……けっこう大変。で、もう九十年も、ああやって銅像やってるだろ。自然と魔法犬っぽくなちまってさ、あの沙耶ちゃんの体に憑りついてるやつと仲良くなったりするわけ」
「沙耶ちゃんに憑りついてるのって、誰なの?」
「それは……内緒。いずれ分かる時もくるさ。けして神さまとか天使とかじゃないけど、悪い奴じゃないから。気楽に付き合ってていいと思うよ。ほんと新人の教育って大変だから……あ、真由のこと嫌がってるわけじゃないからね。これでも、俺使命感があるんだ。真由も大変だ、たまたま四代前がイギリス人でさ。この人が魔女の血をひいてたから、真由がやらざるを得なくなっちまった。さて、基本からやろうか」
「ああ、お願い、沙耶途中で投げ出しちゃうんだもん」
「あの子にも都合があってね、真由一人のことにかまけてらんないの。真由、ゲームってやる?」
「うん、たまにね。いまは『ファインファンタジー13ヘッドライトニングリターンズ』やってんの」
「ああ、あのラスボスが、バカみたいに強くって、何度も『最後の13日間』やらなきゃならないやつだね。あの世界観、ちょっと魔法に似てる」
「そうなんだ」
「コントローラーを頭に思い浮かべて」
「うん……」

 真由の手は無意識にコントローラーを持つ手になった。

「〇ボタンが攻撃、あ、ちょうどいいや、あそこでチンピラに絡まれてる気弱そうな大学生がいるだろ。△ボタン押して、地図を出す。ターゲットを大学生にマーク合わせて、合わせるのはL3のグリグリボタン。キャッチしたら〇ボタンで決定。あとは〇ボタンで攻撃になる」
 襟首を締めあげられていた大学生が、振りほどいて、チンピラの顔に頭突きをくらわせた。
「連打すれば、コンボ攻撃」
 大学生は、頭突きのあと、パンチと背負い投げを二回繰り返した。
「ああ、攻撃ゲージの使い過ぎ、□ボタンでガード。その間にゲージを貯める。×ボタンで相手の攻撃能力を弱くして……」
 あとの説明はいらなかった。真由は無意識にバーチャルコントローラーを操作して、HPゲージも満タンにして、さっさと逃げさせた。あとには三人のチンピラが唸って転がっている。
「さすがにゲーム慣れしてるね。これなら、すぐにコントローラー思い出さずに魔法が使えるようになる」
「R1ボタンは?」
「カーソルを……自分に合わせて押してごらん」
 R1ボタンを押すと、次々に自分の姿が変わるのが分かった。相変わらずAKBの選抜メンバーになってしまう。
「弱く押せば、コスだけ変わるから」
「……なるほど、ファッション雑誌でいいなと思ったのに変わっていく。ハハ、これいいわね」
「あんまりやると、人に怪しまれる」

 雑踏の中、真由の変化を信じられない目で見ている人が何人かいた。真由は急いで元の姿に戻った。

「魔法属性とか、戦闘、防御の属性は暇なときに切り替えとくといいよ。慣れれば、これも無意識の瞬間でできるから」
「こうやりながら、経験値をあげていくのね」
「ま、そういうこと」
「あの……さっきから、同じとこばっか回ってない?」
「バレたか。テレポのゲージを上げてんの」

 ハチ公が、そう言うと一瞬目の前が白くなり、回りの景色が変わった。東にダラダラした山並み、擬宝珠の付いた橋。その下に南北に流れる川。托鉢のお坊さんに、溢れんばかりの観光客。振り返ると京阪三条の駅。どうも京都にテレポしたみたいだ。

 首を前に戻すと、ヒョロリとした若者がやってくるのが分かった。若者の魔法ゲージは、真由とケタが二つも違っていた……。

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・105『第三の男 その他』

2016-11-26 06:31:38 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・105
『第三の男 その他』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ



これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が、個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので、転載したものです。


今週「やみきんウシジマくん2」をやっとるんですが、金貸しの映画なんぞ見たくもないので(山田孝之のファンなんですが)パスいたしました。

 さりとて、また、ボックスオフィス情報ってのもどないやろってんで、いささかイニシエの作品ではありますが……49年英作品、キャロル・リード監督/グレアム・グリーン脚本の“第三の男”であります。 映画史に燦然と輝く作品であります。とは言え、若い人は殆ど見た事無いでしょうね。アントン・カラスのチターによるメインテーマとラストシーン位はご存知かも知れません。
 案外、年嵩の方でも、題名は知っていても全編は見ていないかも……大戦直後のウィーン、喰い詰め三文文士のマーチンス(ジョセフ・コットン)が、親友ハリー・ライムに呼ばれてやってくる。
 しかし、一足違いでハリーは事故死しており途方にくれる。事故を看取った二人の男やハリーの恋人アンナ(アリダ・バリ)に会うが、どうも事故なのか殺人なのかよく解らない。
 当時、ウィーンを取り締まっていた四カ国(英米仏露の軍隊)警察には邪魔にされる。殊に英のキャロウェイ少佐からは「すぐに帰れ」と恫喝される。なんだか胡散臭い情勢。その内、事故を看取ったのが二人ではなく、そこには「第三の男」が存在したと知れる。 疑問を持ったマーチンスは、闇雲にそこら中を突っついて回るが事態はややこしく成るばかり、果ては殺人(第三の男を見た証言者が殺される)の容疑者に仕立てられる。ハリーは何かの闇商売の黒幕だと目されているが、マーチンスには信じられない。
 実は、ハリーは死んでおらず、墓の棺には別人が入っており、「第三の男」とは他ならぬハリーなのだと知れる。そしてハリーの正体も知れてくる。
 
 モノクロ作品の「光と影」っちゅう お題を頂きまして、そら“第三の男”やろってんで見返しました。他にも多数ありますが、やっぱりこれがダントツですわ。
 正直、「これがグレアム・グリーンの脚本か?」と思う程、前半のストーリーテリングはむちゃくちゃであります。
 大昔、初見時も「ナンジャコリャア」と思いましたが、今回も基本的にその感想は変わりません。
 ところが、ハリーが生きているのが解る中盤以降、本作は全く違う顔を見せます。
 街角の闇の中に男の靴だけが見えている。気付いたマーチンスが「誰だ!」と怒鳴る。二階のおばちゃんが「やかましいわよ」と点けた灯りが闇を照らすと…そこに、死んだ筈のハリーが立っている(ここも有名なシーン) ハリーは逃げ出し、その靴音と長く延びる影を追ってマーチンスが駆ける。しかし、ハリーは忽然と姿を消す。
 ここら辺りから、画面が少し斜めに成ったり。深夜のアパートの壁に男の影が映り徐々に近づいて来る、「ハリーの影?」と思いきや、何故か風船売りのおっちゃんだったりとサスペンスを盛り上げる映像のオンパレードに成って来る。現実のウィーンの夜が、まるで「オルフェ」の地獄のように見えて来る。

 この“光と影”は、クライマックス 下水道を逃げるハリーと、追うマーチンスと警官のシーンで最高潮に達する。見事な映像のニュアンス(まさに陰影)を生み出しています。
 ハリーは逃げ切れず、射殺される。冒頭と同じ墓地、今度の棺には間違いなくハリーが収まっている。空港に向かうマーチンスは車を降りて、荷馬車にもたれ、歩いて来るアンナを待つ。彼女はマーチンスの気持ちを知りつつも、彼の前を一顧だにせず通り過ぎる……煙草に火を点けるマーチンス(代表的シーン “カサブランカ”のラストと並ぶ)
 前半あれだけもたつきながら、このシーンからアンナとマーチンスの気持ちが溢れだす。 この、なんとも曰わく言い難いニュアンスはモノクロでなければ表現出来ない。カラーでは絶対醸せない映像なのです。この味を出したいがため、わざわざモノクロやセピアで撮影する人もいます。
 世界が白と黒だけで在ることによってクローズアップされてくるものが間違いなく存在します。たまにはイニシエの作品にも触れて見て下さい。
 おっと、いい漏れてました。ハリー・ライムを演じているのは、かの、オーソン・ウエルズ御大であります。死んだはずのハリーの顔が闇から現れる時の御大の表情が、本作の殆ど総てであります。

 さて、付け足しにチョコッとボックスオフィスランキング。前週の①~⑤が各一個ずつ順位を下げ、今週1位は“NEIGHBORS”週末興収4900万$、スパイダーマン2は②落ち、1億4千万$トータルと、この類いとしては少々苦戦。
 今年も、オスカーから3ヶ月。そろそろ傾向が見えて来ました。アニメと大作は毎度の通りで、ブームなのが宗教作品。もう一つがコメディのようです。このコメディ、金満アメリカンの自分勝手がバックグラウンドにあるものが多く、今週1位の“NEIGHBORS”も、隣に越してきたのが大学のクラブハウス(そんな事が有るんかい?……まぁ、有るんやろなぁ) 学生のバカ騒ぎにセス・ローゲンのお隣さんがブチ切れて抗争勃発ってなお話です。
 リーマンショック以降、意気消沈していた反動が出て来ているんだと思います。おんなじようなテーマで作っていて(俳優のランクも似たり寄ったり)それなりに当たるのもあれば、第一週300万$ポッキリとか、中には4万$未達なんてなトホホな作品もあります。  
 アメリカンが見たいコメディの傾向が全く解りませんわい。 それと、性懲りもなく、またまた“GODZILLA”を作った(日本公開7/25)のでありますがぁ……東宝第一作は1954年の水爆実験でゴジラが出現した事になっとりましたが、次回ハリウッド版ではゴジラは既に存在していて、対ゴジラ兵器として水爆を使った事に成っとるようです。
 この設定、日本人としちゃあ ちょいと 引っかかりませんか? 予告を見る限り なんやら「クローバーフィールド」みたいになかなかゴジラの全体像が見えない展開のようです。まぁ、見てみますか。

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高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・6(The witch training・2)

2016-11-25 07:00:18 | ノベル
秘録エロイムエッサイム・6
(The witch training・2)



「さて、なにからやろうか……」

 沙耶が渋谷のハチ公前で呟いた。
「あの、頭にリングのかかった人は何?」
 群衆の中に三人ほど天使のようなリングが付いた人を見つけて真由が聞いた。
「ああ、三日以内に死ぬ人。ちゃんと見えるんだ」
「沙耶も、ああだったわけ?」
「そうよ。で、知らないあなたが見つけて助けたもんだから、あたしが沙耶の体に入って代理をしてるわけ。魂は、もう向こうの世界に行ってるから、助けちゃだめ。助けると、あたしみたいなのが代わりに体に入るか、意識が戻らずに眠ったままになる」
「あ、バツ印が付いている人がいる!」
 それは、歩きスマホの女の子だった。沙耶は急いで呪文「エロイムエッサイム」を唱えた。すると、スマホが手から滑り落ち、女の子は立ち止まって、拾おうとした。その瞬間目の前を猛然とダッシュしたスーツ姿の男が駆け抜けて行った。
「待て!」
 そう叫びながら、人相の悪い革ジャンの男が追いかける。通りの向こうからも一人。そして街路樹の横からも二人のオッサンが駆け出し、スーツ姿は、スクランブルの真ん中で乱闘の末に捕まった。
 真由は混乱した。まるでヤクザが、善良な市民を拉致したように見えたからである。
「な、なにあれ!?」
「鈍いなあ、人相の悪いオッサンたちが警察。で、スーツ姿が振込詐欺の主犯。アジトから一人逃げてきたのを、張り込んでいた警察が捕まえたとこ。ほら、人だかりになるから交番からお巡りさんが出てきて、交通整理し始めた」
「さっきのバツ印の子は?」
「ほら、ピンクのセーター、野次馬の中に居るでしょ」
「あ、ああ。でもバツ印が無い」
「バツ印は、突発の事情で本人の自覚も了解もなく死が迫っている人。あの子、逃げてくる犯人にぶつかられて転倒。打ち所が悪くて死ぬとこだった。ああいう人は救けていいの。リングが付いた人でも赤い人は、まだ魂が抜け切れていない。時と場合によっては助ける。ピンク色やら白はダメ」
「沙耶も、ああだったの?」
「そう、さっきも言ったけど……リングの人を助けると、代わりに死ぬ人が出る。死に方は様々だけど、確実にね」
「じゃ、あたしが助けたのは……」
「魔法って、そういうものなの。落ちてくる爆弾は避けられても、それは別のところに落ちるだけ。場合によっては、犠牲者の数が増えることもある」

 真由は、少し落ち込んでしまった。

「デリケートなんだ真由。この程度で傷つかれたんじゃ……そうだ、灯台下暗し。ハチ公に頼もう」
 沙耶が指を鳴らすと、人ごみの中から、秋田犬が現れた。
「じゃ、散歩しながら話そうか?」
「犬が喋った!」
「びっくりするほどの事じゃないわ。テレビのCMでも、普通に喋ってるじゃない」
「あれは北大路欣也さんでしょ」
「まあ、魔法の世界って、そういうものなの。じゃ、ハチのおじさんよろしく」
「調子がいいんだから沙耶は。じゃ、真由ちゃん、一回りしようか」

 ハチの姿は見えているようで、道行く人たちも避けてくれる。心配した言葉は、実際に声に出さなくても通じるようで、ハチと真由が会話していてもいぶかる人は居なかった。

「さあ、渋谷も広い、ゆっくり話そうかい……」

 真由とハチ公は、とりあえず道玄坂方面に向かった……。

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