1月に読んだ本

2013年1月の読書メーター
読んだ本の数:20冊
読んだページ数:7046ページ

さかしま (河出文庫)さかしま (河出文庫)の感想
え、こんなに面白いの…?と読み耽った。デカダンスの聖書と言われ、澁澤龍彦がいちばん気に入っていた翻訳。人類を激しく侮蔑し、世に横溢する愚かしさから遠く逃れた隠遁の地に籠り、洗練された美と夢想に溺れる。神経症的な主人公デ・ゼッサントの日々をひたすら縷々、るる…。とりわけ前半の、宝石を嵌めこまれた黄金の甲羅の亀や、口中オルガンは、頗るツボ。ギュスターヴ・モロオやエドガア・ポオ、バルベエ・ドオルヴィリイ(等々…)の件、人工的なものを愛する故に珍奇高雅な花々だけを取り寄せる話は、とても面白くて強く印象に残った。
読了日:1月31日 著者:J.K. ユイスマンス
世界幻想文学大全 怪奇小説精華 (ちくま文庫)世界幻想文学大全 怪奇小説精華 (ちくま文庫)の感想
再読も込みで大満足。今回初めて読んだ作品でとりわけ好きだったのは、「クラリモンド」や「蜘蛛」、「闇の路地」。「幽霊屋敷」の訳が素敵だった。
読了日:1月29日 著者:
フェードル アンドロマック (岩波文庫)フェードル アンドロマック (岩波文庫)の感想
期待以上に楽しめた。
読了日:1月28日 著者:ジャン ラシーヌ
アサイラム・ピースアサイラム・ピースの感想
白い頁を繰る指先が、刻々と冷たくなる。宥めることも叶わぬ剥きだしの孤独が、ただ文章という形だけを得て吐き出されているとは…なんて、辛いことだろう(それを読むのも)。美しく異様な幻視、白を切り裂く緑の光。病室の窓に嵌められた格子よりも堅固な、強迫観念の檻は、か弱き囚われ人を逃しはない。追い詰められた小動物の悲鳴が充満して、びりびりと細かく震え続けているような世界から、心が離せなくなった。憑かれた自分の内側が、ざわりとそそけ立つ感触に苛まれても、ここにある孤独と狂気には毫も近付くことなど出来ない…と思いつつ。
読了日:1月27日 著者:アンナ・カヴァン
火葬人 (東欧の想像力)火葬人 (東欧の想像力)の感想
救いのなさに戦慄した。戦争が人間を変えてしまう、狂わせてしまう恐ろしさ。善人だが凡庸な主人公の、いとも容易い感化には背筋が凍った。何よりも、別人のように変容していく本人が、それをまったく自覚しない姿はすこぶる不気味でおぞましい…。火葬場《死の寺院》で働くコップフルキングルは、仕事に誇りを持ち、土葬に比して火葬が如何に優れているかを常に説いている。が、物語の終盤、火葬人という立場が違う意味合いを持つ。主人公のとった行動といい、彼の新たな任務といい、あまりにもグロテスク。信じるに値するものが世界から消えていく
読了日:1月25日 著者:ラジスラフ・フクス
青い花 (岩波文庫)青い花 (岩波文庫)の感想
うとり。作中作も大好きだった。未完なのが…。
読了日:1月24日 著者:ノヴァーリス
ナイトランド 創刊号ナイトランド 創刊号
読了日:1月23日 著者:朝松健・森瀬繚・朱鷺田祐介・立原透耶・鷲巣義明・マット・カーペンター他
一九三四年冬―乱歩 (創元推理文庫)一九三四年冬―乱歩 (創元推理文庫)の感想
再読。とてもよかった。やはり好きだ。色っぽくて滑稽で品があって、もちろん蘊蓄はたんもりで。面白楽しくて、でもじんわりと哀切がにじむ。それに何より、不惑にして執筆に行き詰った乱歩にそそぐ眼差しの優しさと、そんな乱歩に幻の名作を書きあげさせた愛が、物語全体を包み込んでいる。己の老いに直面させる冒頭も、その後の展開に効いてくる。時折ぐっと、胸に迫った。連載を中断させ行方不明…の乱歩、実は帳ホテルに身を潜ませていた。鞄に入れてきた昔のメモ帳には、遊び半分で書き付けた題名がびっしり。そして、一つの題名が目に留まる…
読了日:1月22日 著者:久世 光彦
潤一郎ラビリンス〈14〉女人幻想 (中公文庫)潤一郎ラビリンス〈14〉女人幻想 (中公文庫)の感想
美貌の兄妹を描く「女人神聖」がよかった。
読了日:1月21日 著者:谷崎 潤一郎
日本探偵小説全集〈2〉江戸川乱歩集 (創元推理文庫)日本探偵小説全集〈2〉江戸川乱歩集 (創元推理文庫)の感想
「陰獣」を読みたくて手に取ったが、もう一篇もう一篇…と止まらなくなった。再読の機会にもなったので、大変に満足。
読了日:1月21日 著者:江戸川 乱歩
ヴァージニア・ウルフ短篇集 (ちくま文庫)ヴァージニア・ウルフ短篇集 (ちくま文庫)の感想
素晴らしい。“意識の流れ”手法による文章を読むのには、独特な緊張感を強いられる気がしたが、少しずつ慣れると、その揺蕩いから意識が離せなくなる…つまりは癖になる。とり憑かれる。茨に歩を妨げられるように幾度となく引っかかる、そのもどかしささえ手応えだ。喚起されることが尽きない。この文章はどんな眺めを表しているのか…と、思い浮かべた答えの形はきっと今だけのもの。そう考えたら何故か嬉しくなった。とりわけ忘れがたいのは「壁の沁み」。小さな壁の沁みから始まって、豊かに広がっていくイメージの重なり。魔法を見せられたよう
読了日:1月18日 著者:ヴァージニア ウルフ
飛魂 (講談社文芸文庫)飛魂 (講談社文芸文庫)の感想
素晴らしい読み応え。圧倒され立ち竦む傍から言葉の力に押し出され、特異な設定の妙味も相俟って、耽溺した。物語の舞台はいつの何処とも知れず。主人公梨水は、書の師亀鏡が名を響かせる寄宿学校へ向かう。そこで子妹たちは外界から隔絶され、虎の道を究める為の日々を送る…。絡んでは解れる言葉の連なりがいつしか渦を成し、のぞき込むとくらくらした。亀鏡を取り囲む子妹たちも、女虎使いを中心に回り続けるうちに、次第にバターのように溶け合っていく。一人異質な梨水だけが、それをうち眺めているのだが…。見事な展開だった。他4篇は再読。
読了日:1月16日 著者:多和田 葉子
水妖記―ウンディーネ (岩波文庫 赤 415-1)水妖記―ウンディーネ (岩波文庫 赤 415-1)の感想
ただ、もう、好きな世界。うとりうとり…。
読了日:1月15日 著者:フーケー
ローマ帽子の謎【新訳版】 (創元推理文庫)ローマ帽子の謎【新訳版】 (創元推理文庫)
読了日:1月14日 著者:エラリー・クイーン
修道士の頭巾―修道士カドフェルシリーズ〈3〉 (光文社文庫)修道士の頭巾―修道士カドフェルシリーズ〈3〉 (光文社文庫)
読了日:1月11日 著者:エリス・ピーターズ
ペルセウス座流星群 (ファインダーズ古書店より) (創元SF文庫)ペルセウス座流星群 (ファインダーズ古書店より) (創元SF文庫)の感想
邪悪…というのとも違うのだが、思いの外怖い話ばかりで堪能した。
読了日:1月9日 著者:ロバート・チャールズ・ウィルスン
レ・コスミコミケ (ハヤカワepi文庫)レ・コスミコミケ (ハヤカワepi文庫)の感想
面白かった!これも好き! 宇宙の誕生から生き続けているQfwfq老人の、驚きの昔語り(語るかたる…)。とりわけ好きだったのは、「月の距離」。大潮を待ちかね、月の真下までコルクの小舟を漕いで脚榻を立てて月にのぼる一族。月の引力に持ち上げられる銀色の海の眺めと言ったら…! 他にお気に入りは、「ただ一点に」や「いくら賭ける?」、「恐龍族」。好みという点では、「光と年月」がツボだった。笑って笑って、最後にほろりと儚い気分にさせられたのが、忘れがたい余韻になった。
読了日:1月8日 著者:イタロ・カルヴィーノ
ブラウン神父の不信 (創元推理文庫)ブラウン神父の不信 (創元推理文庫)の感想
居合わせた人物の話だけで真相にたどり着く「犬のお告げ」は、犯人の動機がチェスタトンらしくて面白い。やはり逆説めくなぁ…と。とりわけ好きだったのは、おどろおどろしい雰囲気の「金の十字架の呪い」や「翼ある剣」。あとは「ダーナウェイ家の呪い」と「ギデオン・ワイズの亡霊」もよかった。“わたしが疑っているのは超自然的な部分じゃない。その自然の部分なのですよ。”
読了日:1月7日 著者:G.K.チェスタトン
現代語訳 古事記 (河出文庫)現代語訳 古事記 (河出文庫)
読了日:1月4日 著者:
雪〔新訳版〕 (下) (ハヤカワepi文庫)雪〔新訳版〕 (下) (ハヤカワepi文庫)の感想
素晴らしい読み応え。いつどこで頁を開いても、詩人の眼を通した雪景色のうちへと忽ちに降り込められていく心地は、格別だった。トルコの地方都市カルス。青みがかったかすかな光の中、悠々と、時に激しく舞う純白の雪。その、時が止まったかのような眺めは、幾度となく詩人の心象に影響を及ぼし重なり合う。何故、一人彼の瞳だけに、雪はこれほどまでに美しく映ったのか…。その答えに思いを馳せるたびに、胸が締めつけられる。幸せになりたいという秘かな願いを抱いて訪れた街で、待ち受けていたのは怖れていた恋と、与り知らぬ政治闘争だった…
読了日:1月4日 著者:オルハン パムク

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )