青柳いづみこさん、『水の音楽』

 『水の音楽』の感想を少しばかり。

 “この世にことさら男を誘う女と誘わない女の二種類がいるとすれば、明らかにオンディーヌは前者であり、メリザンドは後者である。” 4頁

 主題が好みのど真ん中…という感じで、興味深い内容がみっちりな一冊。この本を読む時ばかりはいそいそと音楽をかけて、心ゆくまで堪能した。創作された水の精の、キリスト教化されていく流れ(目的としての永遠の魂)。水の精の誘惑の方法について、その比較から、さらに宿命の女をめぐる考察へ。宿命の女が水の精である場合のねじれ現象には、思わず唸った。そして、メリザンドの正体を追ってたどり着いた答えには、ただただ溜め息がこぼれる(真に恐ろしいのは…)。
 音楽の章ではショパンの『バラード』が印象的だったし、ラファエロ前派の件や、『さかしま』、『未来のイヴ』が取り上げられる箇所も頗る面白かった。

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