イーヴリン・ウォー、『卑しい肉体』

 20世紀イギリス小説個性派セレクション、とうとう5冊目。『卑しい肉体』の感想を少しばかり。

 “いいえ、夜のこの時間の〈リッツ〉は、超、超、退屈よ、と反論される。” 76頁

 とても面白かった。刊行当時話題だったという、“陽気な若者たち”の姿を内側から描いた群像劇。まさにパーティ小説という呼び方がぴったり。確かに虚無的ではあるものの、所々のずれ加減があまりにシュールなので思わず笑ってしまう。軽くて、飽いていて、徒に陽気な彼ら…。
 数え切れないほどの登場人物たちが、入れ替わり立ち替わり現れる、趣向を凝らした数々のパーティ(野蛮人パーティに、飛行船でのパーティに…)。そこには既にお馴染みの、退屈なダンスと倦み果てた空気があるばかり。それでも気晴らしを求める彼らは、パーティの為なら何度でも足を運ぶ。そして、「退屈」と「素敵」が口癖になった若者たちは、拠り所の希薄な淡い恋をする。ふわふわと…。

 日刊紙のゴシップ記者になったアダムが、“発明”にいそしむ件が興味深かった。魅力的な人物たちと本人のあやふやさとの比が皮肉にも映るし、実のない仕事ぶりもさもありなん…という感じ。読む分には可笑しいけれどね。

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