映画「パフューム ―ある人殺しの物語―」

 観てきたわ、映画「パフューム ―ある人殺しの物語―」を。 
 引越しで忙しい最中だってゆーのにその忙しさをかいくぐり、小説の方をせっせと読んだのですもの。やっと慣れてきた三宮の映画館で、観てきたわ。

(ここから、ネタバレありありです。)
 いや、堪能した。グルヌイユがちゃんと気持ち悪い奴だし(それを言うならストーリーそのものが気持ち悪い…人の無意識をざわざわさせる)、映像と音楽から立ち昇る目に見えない種々雑多な匂いのあれこれも、生々しい映像から溢れ出して本当に襲いかかってきそうだった。
 映像と音楽でいかに匂いを表現するか、そこで苦労したそうです。私の場合、如何にも狙いすましたような場面にも、うっ…と鼻をつまみたくなりましたけれど、たとえば調合師のバルディーニが鬘を付けたり外したりしているのを見ると、「うっ…髪臭そう。頭皮臭そう。ヅラも臭そう~」と勝手に悶えておりました。おめかししている時の白粉の匂いも、相当なものと見た(微妙に感想がずれてきた…)。

 
 かなり原作に沿った内容でした。最後の最後の方だけ、グルヌイユに対してあえて原作とは違う解釈をしているのかな…と思われるところがありましたが。まあ…グルヌイユの心理が複雑すぎると、ただの説明不足になってしまったかもしれません。と言うわけで、後味が小説のときとはちと違いましたかね。でも、最後のグルヌイユは凄惨に綺麗でした。

 ますますとりとめなく書きます。
 スクリーンいっぱいのラベンダー畑や、こぼれ出しそうな黄水仙の色彩の美しさは、映像作品ならではでした。そういう場面が少しでも挟まれていると「ふうっ」と息がつけて、やっと新しい空気を吸い込めたみたいな具合になりました。
 あと、洞窟で暮らしていたグルヌイユが、自分に体臭がないことを初めて知って衝撃を受ける箇所では、小説で読んでいる時以上の説得力があったと言うか、観ているだけで「ああ、そういうことだったのか!」とすんなり得心がいったのでした。

 グルヌイユの生贄に相応しい美女たち…いや眼福でした。 
 本命の生贄となるのは、赤毛の見事な美少女なのですがいやはや可愛い…てか美しい。赤毛と白い肌と衣装のコントラストも素敵でしたが、荒野を馬で駆けていく彼女の、スクリーンの中で一点だけ燃え上がりそうな見事な赤毛が波うっているシーンは、彼女の運命を暗示するほどの忘れがたい美しさでした。その赤毛を失った彼女の姿の曰く言い難い無垢な美しさと、素晴らしい対の妙を呈していました。

 陰惨になりかねないストーリーなのに、少しもおどろおどろしくならない。美しいものと醜いはずのものが隣り合わせになって、私の中でその境界がどろどろと融け合わさってしまいそうな目眩を存分に堪能いたしました。  
 この映画を観たら、ますます香水を好きになりました。香りって匂いってやっぱり素敵だし重要。(でもつけ過ぎ注意だよグルヌイユ。)
 (2007.3.23)

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