中山可穂さん、『マラケシュ心中』

 家で本を読むのにちょっと飽きたから、昨日は図書館へ。窓際の椅子に腰掛けて。
 『マラケシュ心中』、中山可穂を読みました。 

 いつも思うことだけれど、中山作品の主人公たちが好きだ。どうしてそんなにひた向きな恋をしてしまうの? 傷つくことをなぜ恐れないの? よりによって相手はノンケ、そしていつも一目惚れの運命的な出会い。女の口説き方がかなり気障…。そんな彼女たちが好きだ。男女間の恋愛に置き換えてみると、如何に稀有なことかよくわかる。

 中山さんの描く恋愛は、兎に角いつも障害だらけだ。すぐにまわりを巻き込んで、誰かを不幸にせずにはおかない。そして、子をなさない結びつきに対しての世間の冷たさにも、真っ向から立ち向かっていかなければならない厳しさがある。それでも彼女たちはきっと、幸せなのだ。ひどく特別に幸せなのだ。そこまで誰かを愛することが出来て。たとえいつか身も世もない別れに、その胸が張り裂けたとしても。
 そしてきっとだからこそ、私のようにノンケな女でも中山作品を好きになってしまうのだと思う。彼女たちのことを、素敵だと感じるのだと思う。 

 今回この作品を読んで、はなはだ生意気な言い方ですが、やはり中山さんの作品にはどこかしら瑕があるのかもしれない…と思いました。後書きにもそのようなことが書かれていました。瑕…という言葉が相応しいかどうかわかりませんが。でも、そんなことが気にならないほど、余りある眩しい魅力が作品全体に溢れています。
 (2007.3.16)

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