計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

流れの数値シミュレーションの応用 (通風・換気シミュレーション)

2013年11月02日 | 計算・局地気象分野
 私の専門分野は「工学的手法局地気象にアプローチする」と一応、掲げておりますが、それなら「工学的手法工学問題にアプローチする」なら、例えばどんなものがあるか?というお話を書いてみます。

 建造物の外から風が入って内部を通り、再び外へと抜けて行くような流れ(通風)を生じることで、建造物内の換気が行われ、室内気温の低下を図る事ができます。人工的に機械を使って換気する場合もあれば、自然の風を上手く取り入れて通風を実現し、冷房の電気代を節約するという考え方もあるようです。

 そのような場合、建造物の間取りを基に数値モデル(コンピューター内に作る仮想的な模型)を構築し、数値シミュレーション(数値計算のよる仮想実験)を行って、建造物内外の風の流れやそれに伴う気温の変化(熱流動)を予測する事が出来ます。

 建物の平面図を基にモデルを構築して、左側から風が当たる場合を想定して数値実験してみました。窓からの流れの出入りはもちろん、どのような経路を通って空気が流れて行くのか、その様子がとてもよくわかります。


 流れの強さ(流速)をカラーで表示してみました。流れの強い所ほとんど流れのない所が一目で把握できます。窓から取り入れた流れを室内で効率良く引き回すには、どのようなレイアウトにしたら良いか?を検討するヒントになりそうですね。


 続いては温度の変化です。初期状態としては、建造物内部は周囲の外気温より若干高い状態であると想定し、左側からバーッと風を当てています。風の流れによって建造物内の熱が掻き乱され、窓の外から熱が押し出されている様子が描かれています。


 今度は風の向きをちょっと変えてみましょう。

 こちらは上側から風が当たる場合を想定して数値実験してみました。窓からの流れの出入りはもちろん、どのような経路を通って空気が流れて行くのか、先の左側からの場合とは大きく異なっているようですね。

 流れの強さを表示してみました。流れの強い所があまり見られません。取り入れる窓が少ないため、外部からの空気が建物に上手く流れ込めていないようです。


 温度の変化は、風が流れ込む部分とほとんど流れ込まない部分との間で大きく違っているようですね。


 ハウスメーカーさんのお話によると、建造物を設置する地点ではどの風向が出現しやすいか、という事情も把握してそれに合わせた間取りを考えると良いそうです。通風の特性も考慮してレイアウトを検討したり、プランを修正したりもするので、その上でこのような情報は参考になるとか・・・。

 ちなみに、私の大学工学部での専攻は土木・建設・建築工学ではなく、機械工学および生命・生体力学です。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« たまには専門分野の話題も書... | トップ | 雄大に流れる信濃川 »

計算・局地気象分野」カテゴリの最新記事