計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

数理モデルによる予測と予報

2020年12月11日 | 計算・局地気象分野
 数理モデルは、対象となる現象に対する「構築者の世界観の一つの表現」であり、その構築過程により大きく2種類に分けることができます。

・多くのデータを元に統計的手法で導かれる帰納的なもの(例・線形重回帰分析や機械学習)
・基本法則から出発し数学的手法で導かれる演繹的なもの(例・熱流体数値モデル)

 シミュレーションの結果は、それ単体ではあくまで「理論的な根拠に基づく推論・仮説」です。さらに「実験・観測による実証」が揃ってはじめて真実として認知されます。しかし、不確実性を伴う将来を対象とした予測として用いる場合は、発生し得る事態を事前に把握し、個々に備えた対応策を議論することができます。その意味では「リスクマネジメント」としての意義は大きいものです。

 また、数理モデルを構築し、そのモデルを基に将来に関する仮説・推論を導き出すのは科学や技術のフィールドです。一方、その予測を基に将来の様々な事態を想定し、事前に対応策を用意するのは経営や政治のフィールドです。両者のコミュニケーションを通じて「将来を想定し、予め備える」心構えが大切です。

 さらに「予測」と「予報」は似て非なるものです。予測とは「確かな根拠を基に将来に関する仮説・推論を導き出すこと」であり、予報とは「仮説・推論を基に将来の可能性を予想し、伝えるべき事項を決断すること」です。

 そうであれば、予測の機械化が進んでも、最後の決断は人間に委ねられます。決断には責任を伴うものであり、機械には出来ないことなのです。
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