気象学に関する講義・講演の準備も進んできています。もう1ヶ月を切りました。気象学の基礎理論や技術的な内容はもちろん講義を展開しますが、私が講演する以上、やはり「これからの気象予報士の方向性」は、やはり外す事が出来ない重要なテーマです。これは、これまでの気象予報士としての歩みの中で、常に悩み、迷い、格闘してきた重大な問題です。もし、気象学の理論だけであれば、何も私でなくとも、それ相応の大学の先生や気象台の職員の方にお願いをしても良いのです。しかし、「敢えて」この私にお声を掛けて頂いたということは、これまでの私の壮絶な?波乱万丈の?人生経験を基にした「私なりの(オリジナルの)」見解を求められているのだ、と解釈しております。だからこそ、これまで自分が悩み、迷い、試行錯誤を続けてきた、そしてその結果至りついた現時点での自分なりの見解とやらをお話したい、と入念に準備をしている所です。
これからの新しい気象予報士の姿とは「局地気象という身近であり、かつ多大な影響を及ぼす物理現象を、独自のノウハウや解析技術を用いて、地域特有の気象特性やポテンシャルを専門的な立場から診断し、その知見をユーザー対してわかりやすく伝える存在」ではないかと考えています。
世間一般では、現在も尚、局地気象の特に数値シミュレーションの実用分野は「予報」に限定されているかのような印象を受けます。実際には多くの気象予報士の方においても然りではないでしょうか。しかし、実際にこの十余年に渡って局地気象の数値シミュレーションの諸問題に関わり続けて感じたのは、シミュレーション(仮想実験)には大きく2つの形(実用の方向性)があるという事です。一つはもちろん「予報(forecast)」であり、もう一つは「想定(assumption)」です。
予報とは「これから(ある程度特定された未来において)~~となるでしょう」という情報ですが、想定とは「もし──の条件が成立した場合は~~となるでしょう」という情報です。どちらもその性質上「現象の予想」ではあると考えられますが、後者は気象業務法の制約を受ける「予報」の類ではないと考えます。後者の場合の気象予報士は独自の「予報」を行う事はありません。しかし、それは気象に関する「予想」行為を一切排除するものでは決して無い、と言う事です。
話は逸れますが、「弁護士」を英語では「lawer (ロイヤー)」と書きます。これは「law (法律)+er(~する人)」で「法律をする人」になります。予報士(予報官)は「forecaster」と書きます。これは、先ほどと同様の考え方で書くと「forecast(予報)+er(~する人)」で「予報をする人」になります。しかし、気象予報士の実際はただ単に「予報をする人」の枠に留まらず、広く「気象をする人」としての地位を確立しつつあります。その意味では、気象予報士は単なる「forecaster」の枠を逸脱して「meteorologist 」と理解されるべき存在になりつつあると考えられます。
周知の通り、弁護士の仕事としては訴訟行為がまず挙げられますが、この他にも代理交渉、法律事務等の業務もあります。あくまで「訴訟」は最後の手段、いわば「伝家の宝刀」であり、まずはそれ以外の手段でもって様々なトラブルの解決を図ろうとします。気象予報士にとっての「伝家の宝刀」は勿論、独自に予報を行う事と考えられます。但し、独自予報には多くの制限が伴う他、気象庁その他の予報業務許可事業者の予報との差別化が難しいと言う難点もあります。それは「予報」の根拠となる資料の多くが気象庁に依存しなければならない事、そして「予報」のアウトプットが、今後に起こり得ると考えられる「ただ一つ」のシナリオである事に起因します。
しかしながら、未来に起こり得るシナリオは必ずしも一通りには定まらない事はカオス理論として広く知られています。この知見を踏襲するならば、最も可能性のあるシナリオを特定する行為が「予報」であり、その予報が外れた場合に起こり得るシナリオを予想する行為が「想定」の範疇に当たります。リスクマネジメントの見地に立てば、出来る範囲で可能性のあるシナリオの全てに対する策を講じる事が望ましいのは言うまでもありません。かつて、多くの気象予報士は「予報」行為にのみ自らの活躍のフィールドを見出そうとしていた(私も然り)かのように感じておりましたが、むしろ上記のような、より広いフィールドが広がっているように思える今日この頃です。
折りしも、今年も相次ぐ台風や地震等で、多くの皆様が被害に遭われました。改めて心よりお見舞いを申し上げます。このような自然災害を前にして、果たして気象データの解析を通じて何が出来るのか、と思案しております。確かに、気象現象、特に突発的な集中豪雨を予測できるようにする、と言う事が真っ先に挙げられる事でしょう。そのためには気象予測の根幹を成す数値予報モデルの精度向上もさることながら、これまでの事例を基に、どのような時に、どのようなメカニズムで、どのような場所に発生し得るのか、を分析する事も必要と思われます。その上で、自分の居る場所ではどのような危険ポテンシャルがあるのかをある程度シミュレートすると言う方法が考えられます。
これまでの気象変化の傾向から、大規模場(入力条件)とそれに伴って生じる局地気象(出力結果)の関係はある程度見当をつける事ができます。つまりターゲットとする局地気象に関して何らかの解析モデルを構築する事ができます。
近年、この大規模場のレベルでの異常性が目立つようになってきているように感じます。従って、入力条件に従来とは異なる場合を想定してみて、この解析モデルを走らせる事で、異常な気象条件下における影響を一つ一つ検証する事が出来るかもしれません。勿論、実際にこの想定した「異常な気象条件」が起こるかどうかはわかりません。しかし、このような「なかなかありえないであろう気象条件」を付加して局地レベルでの気象面への影響を推定する、と言うのも計算シミュレーションの重要な役割と思います。その際の解析モデルの構築は、やはり物理学の理論はもとより緻密な気象データ解析を積み上げる事によって可能になるのです。
本題からは脱線して来ましたが、「今後の気候変動を視野に入れて、近未来に想定しうる、例えば気温上昇等の諸条件が局地気象に及ぼしうる影響の診断」と言う考え方は、気象コンサルティングの方向性としては有意義ではないかと考えていますその具体化についても最近、試案を巡らしています。皆さんがこの文章にお付き合い下さっている、今この瞬間も、私は気象データの解析や解析手法の研究・開発を進めているのです。この数値データを基にして、更に特定の産業分野についての独自の計算モデル式を適用し、技術計画に役立てるための工学シミュレーションを実現する事を目指しています。気象データを基に様々な産業分野・プロブレムに応じてカスタマイズされた独自の工学シミュレーションまでを視野に入れています。
これからの新しい気象予報士の姿とは「局地気象という身近であり、かつ多大な影響を及ぼす物理現象を、独自のノウハウや解析技術を用いて、地域特有の気象特性やポテンシャルを専門的な立場から診断し、その知見をユーザー対してわかりやすく伝える存在」ではないかと考えています。
世間一般では、現在も尚、局地気象の特に数値シミュレーションの実用分野は「予報」に限定されているかのような印象を受けます。実際には多くの気象予報士の方においても然りではないでしょうか。しかし、実際にこの十余年に渡って局地気象の数値シミュレーションの諸問題に関わり続けて感じたのは、シミュレーション(仮想実験)には大きく2つの形(実用の方向性)があるという事です。一つはもちろん「予報(forecast)」であり、もう一つは「想定(assumption)」です。
予報とは「これから(ある程度特定された未来において)~~となるでしょう」という情報ですが、想定とは「もし──の条件が成立した場合は~~となるでしょう」という情報です。どちらもその性質上「現象の予想」ではあると考えられますが、後者は気象業務法の制約を受ける「予報」の類ではないと考えます。後者の場合の気象予報士は独自の「予報」を行う事はありません。しかし、それは気象に関する「予想」行為を一切排除するものでは決して無い、と言う事です。
話は逸れますが、「弁護士」を英語では「lawer (ロイヤー)」と書きます。これは「law (法律)+er(~する人)」で「法律をする人」になります。予報士(予報官)は「forecaster」と書きます。これは、先ほどと同様の考え方で書くと「forecast(予報)+er(~する人)」で「予報をする人」になります。しかし、気象予報士の実際はただ単に「予報をする人」の枠に留まらず、広く「気象をする人」としての地位を確立しつつあります。その意味では、気象予報士は単なる「forecaster」の枠を逸脱して「meteorologist 」と理解されるべき存在になりつつあると考えられます。
周知の通り、弁護士の仕事としては訴訟行為がまず挙げられますが、この他にも代理交渉、法律事務等の業務もあります。あくまで「訴訟」は最後の手段、いわば「伝家の宝刀」であり、まずはそれ以外の手段でもって様々なトラブルの解決を図ろうとします。気象予報士にとっての「伝家の宝刀」は勿論、独自に予報を行う事と考えられます。但し、独自予報には多くの制限が伴う他、気象庁その他の予報業務許可事業者の予報との差別化が難しいと言う難点もあります。それは「予報」の根拠となる資料の多くが気象庁に依存しなければならない事、そして「予報」のアウトプットが、今後に起こり得ると考えられる「ただ一つ」のシナリオである事に起因します。
しかしながら、未来に起こり得るシナリオは必ずしも一通りには定まらない事はカオス理論として広く知られています。この知見を踏襲するならば、最も可能性のあるシナリオを特定する行為が「予報」であり、その予報が外れた場合に起こり得るシナリオを予想する行為が「想定」の範疇に当たります。リスクマネジメントの見地に立てば、出来る範囲で可能性のあるシナリオの全てに対する策を講じる事が望ましいのは言うまでもありません。かつて、多くの気象予報士は「予報」行為にのみ自らの活躍のフィールドを見出そうとしていた(私も然り)かのように感じておりましたが、むしろ上記のような、より広いフィールドが広がっているように思える今日この頃です。
折りしも、今年も相次ぐ台風や地震等で、多くの皆様が被害に遭われました。改めて心よりお見舞いを申し上げます。このような自然災害を前にして、果たして気象データの解析を通じて何が出来るのか、と思案しております。確かに、気象現象、特に突発的な集中豪雨を予測できるようにする、と言う事が真っ先に挙げられる事でしょう。そのためには気象予測の根幹を成す数値予報モデルの精度向上もさることながら、これまでの事例を基に、どのような時に、どのようなメカニズムで、どのような場所に発生し得るのか、を分析する事も必要と思われます。その上で、自分の居る場所ではどのような危険ポテンシャルがあるのかをある程度シミュレートすると言う方法が考えられます。
これまでの気象変化の傾向から、大規模場(入力条件)とそれに伴って生じる局地気象(出力結果)の関係はある程度見当をつける事ができます。つまりターゲットとする局地気象に関して何らかの解析モデルを構築する事ができます。
近年、この大規模場のレベルでの異常性が目立つようになってきているように感じます。従って、入力条件に従来とは異なる場合を想定してみて、この解析モデルを走らせる事で、異常な気象条件下における影響を一つ一つ検証する事が出来るかもしれません。勿論、実際にこの想定した「異常な気象条件」が起こるかどうかはわかりません。しかし、このような「なかなかありえないであろう気象条件」を付加して局地レベルでの気象面への影響を推定する、と言うのも計算シミュレーションの重要な役割と思います。その際の解析モデルの構築は、やはり物理学の理論はもとより緻密な気象データ解析を積み上げる事によって可能になるのです。
本題からは脱線して来ましたが、「今後の気候変動を視野に入れて、近未来に想定しうる、例えば気温上昇等の諸条件が局地気象に及ぼしうる影響の診断」と言う考え方は、気象コンサルティングの方向性としては有意義ではないかと考えていますその具体化についても最近、試案を巡らしています。皆さんがこの文章にお付き合い下さっている、今この瞬間も、私は気象データの解析や解析手法の研究・開発を進めているのです。この数値データを基にして、更に特定の産業分野についての独自の計算モデル式を適用し、技術計画に役立てるための工学シミュレーションを実現する事を目指しています。気象データを基に様々な産業分野・プロブレムに応じてカスタマイズされた独自の工学シミュレーションまでを視野に入れています。