パピとママ映画のblog

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エタニティ 永遠の花たちへ★★★

2017年11月13日 | アクション映画ーア行

「青いパパイヤの香り」「ノルウェイの森」のトラン・アン・ユン監督がアリス・フェルネのベストセラー小説を原作に、19世紀末のフランス上流階級の数世代にわたる愛と哀しみの人生を静かに見つめたドラマ。主演は「アメリ」のオドレイ・トトゥ、共演に「イングロリアス・バスターズ」のメラニー・ロラン、「アーティスト」のベレニス・ベジョ。

あらすじ:19世紀末のフランス。美しい花と緑に囲まれた大きな邸宅に生まれ育った17歳のヴァランティーヌは、親が決めたジュールとの婚約を自分の意志で解消してしまう。ところが、それでも諦めないジュールに心動かされ、改めて結婚を決意する。6人の子どもたちにも恵まれ、幸せな人生を送っていくが、生まれて間もない赤ん坊が亡くなったのをきっかけに、立て続けに不幸に見舞われていく。悲しみに暮れるヴァランティーヌだったが、息子のアンリが幼なじみのマチルドとの結婚を決め、やがて初めての孫が生まれると元気を取り戻していく。一方、マチルドと姉妹同然に育った従姉妹のガブリエルも夫のシャルルとともに同じ建物に住み、互いに交流を深めていく中で、再び戻ってきた大家族のような賑やかさがヴァランティーヌに喜びを与えていくのだったが…。

<感想>生まれて、会って、愛して、別れて――すべて、あなたへと続く人生の美しい瞬間。19世紀末のフランスを皮切りに、ある一家の3世代にわたる女性たちが過ごす日々を丁寧に描写する。6人の子宝に恵まれた女性がいる、いかし7人目は出産直後、間も亡くなってしまう。生まれ落ちたばかりの生命が奪われること。それは何を意味するのだろうか。

言う間でもない。生命には限りがあるということ。出逢ったばかりの生命と別れなければならない時もある。やがては、夫が先立つ。さらには、一番上の双子の男の子たちが出征し、戦死する。娘の一人も病死。娘の一人は修道院に心身を捧げることを決意する。別れ、別れ、別れの連発である。

出逢うことと、別れること。それだけで構成されている映画と言っていいのかもしれない。出逢うことも、別れることも、人生のセレモニーであるから。出逢いの時はもちろん、別れの哀しみも、ときめきと同じように大事に抱きしめてあげなければいけない。ときめきは永遠じゃないから。そして、悲しみも絵永遠ではない。だからこそ、人生におけるかけがえのない瞬間として祝福するべきなのだ。

とにかく映像の美しさが筆舌に尽くしがたい作品。緑豊かな大豪邸を舞台にした上流階級の優美な暮らしぶりに思わずうっとりして、と同時に、19世紀末以降の激動の歴史に翻弄されつつも、家族を守るため様々な困難や悲劇を乗り越えていく女性たちの物語にも心動かされる。

例えば運命の人と出会い、結ばれ結婚したとする。そして、もし結婚生活が破たんしないで続いたとして、待ち受けているのは何だろう。死別である。妻か夫か、いずれかが先立つ。それが添い遂げるということなのだから。

どんなに愛し合っていても、どんなにお互いを必要としていても、いずれは別れることになる。ときめきだけで人生は構成されている分けではないのだから。どんなに幸せそうに映る人も、別れを、悲しみを経験しているのだから。

つまり永遠というものはない。永遠は目に見えるものではない。長生きすることで人は永遠に近づくわけではない。永遠は即物的なものではない。普段の時間を、地道に積み重ねて初めて到達できるのが、永遠らしきものだと思うのだが。

しかし、息子の一人が結婚したことから、彼女はたくさんの孫に恵まれ、息子の妻を娘のように愛おしく思うようになる。息子の妻の親友とその夫。子供たちとも繋がり、大家族の肖像が紡がれていく。だが、幸せだけが永続するわけではない。生きている限り、別れの悲しみとは無縁ではいられないからだ。

映画は出逢いの瞬間を祝福する。誰かと誰かが初めて見つめ合うひと時を祝う。映画は別れの瞬間を見届ける。誰かが誰かよりも先に逝ってしまう時を見送る。その視点、アングル、そのヴィジョンは均等であり、すべては等価なものとして紡がれるのだから。

出逢うことも、別れることも、いずれにしても美しい。そしてその美しさを真に知ることが出来るのは女性なのだということを。ひたむきで凛とした映像によって証明して見せているからだ。スクリーンの至るところで、花が咲いている。咲けば、やがては散る花が、花が咲くことも、花が散ることも、同じように美しいと感じた。

2017年劇場鑑賞作品・・・263アクション・アドベンチャーランキング

 


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