森本哲郎著
『ことばへの旅 2』
『ことばへの旅 1』を読み上げたのは、いつであったか?
9月の半ばころだっただろうか?
先日、『ことばへの旅 2』読了。
この本のまえがきに、
<ことばは、また、「道」と考えてもいいでしょう。なぜなら、人びとのこころは、ことばという「道」によって、たがいに往来(ゆきき)するからです。そして、ことばという「道」を歩んで、人びとは何処かへ導かれてゆくからです。>
と、筆者は、書いておられる。
この本では、<幸福・快楽・目ざめ・豊かさ・歴史・悲しみ・寛容・疎外・死・人間の心・迷い・ふるさと・嫉妬・人間らしさ>について、古今東西の名をなした人びと、例えば、アンデルセン、エピクロス、カミュ、芭蕉、啄木、モンテーニュ、ゲーテ、陶淵明、シェークスピアなどなどの言葉を取り上げながら、思索の旅が続けられる。
<悲しみについて>では、石川啄木の歌を通して語られる。
人といふ人のこころに
一人づつ囚人がゐて
うめくかなしさ
呼吸(いき)すれば、
胸の中(うち)にてなる音あり。
凩(こがらし)よりもさびしきその音!
まれにある
この平(たいら)なる心には
時計の鳴るもおもしろく聴く
など、9首の歌が取り上げられ、その章の終わり近くには、
<人間は、まさしく、悲しい存在なのです。死に対して無力なるゆえに。ですから、その悲しさを、つねに心に刻んで一瞬、一瞬を、いとしみながら生きること、それこそが、その悲しさを克服する最も彫りの深い生き方だと思います。………>
と、記されている。
語るように、丁寧体で書かれた文章は、深遠な内容が親しみやすく心に響く。
各章ごとに挿入された矢吹申彦さんのイラストも楽しめる。
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