ぶらぶら人生

心の呟き

日常から非日常へ

2010-06-18 | 旅日記
 13日から17日にかけて上京した。
 旅は、非日常の世界に誘ってくれる。
 梅雨入りにあわせての旅立ちであったが、お天気には恵まれた。
 羽田空港に到着後、東京駅に出て昼食をとり、まずは谷中の墓地に亡き師を訪れた。
 半年ぶりの墓参である。
 谷中の桜並木は葉を茂らせ、折から、緑のトンネルとなっていた。

 墓参の後、散歩がてら、上野に向かった。
 適当に歩いていると、家の軒先に白い花が咲いていた。夏椿(沙羅樹)であろう。

      

 適当に歩いているうちに、不忍池のほとりに出た。
 以前訪れたとき、その存在に気づいた長谷川利行の碑に、再び出会った。
 初めて碑に接したときは、長谷川利行という画家について知らなかった。今は、その人生や画業について、ある程度は知っている。
 自然石に掘られた熊谷守一書の<利行碑>の文字を眺め、長谷川利行の歌二首が、生島生馬の書で刻まれているのを佇んで読んだ。

   人知れず朽ちも果つべき身一つの
   いまがいとほし涙拭わず

   己が身の影もとどめず水すまし
   河の流れを光りてすべる

 長谷川利行は放浪の貧しい画家であったが、その絵には孤高を持する雰囲気がある。
 碑の背景の池には、蓮の大きな葉が水面を覆っていた。 
 
     
    
  
    

 かなり歩き疲れた。
 田舎と違って、都会ではひとりでに思わぬ距離を歩いてしまう。
 国立西洋美術館内のレストラン<すいれん>に入って一休みした。
 太窓に緑の庭を眺めながら。
 美術館の前庭には、夾竹桃が白い花を咲かせていた。夏を感じさせる花である。

    

 雨降りは、14日の月曜日だけであった。
 その日は、国立新美術館で、<オルセー美術館展2010「ポスト印象派」>を観た。
 名立たる画家の名作が多数並べられ、贅沢な展覧会であった。
 案内のパンフレットには、<モネ、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、ルソー、傑作絵画115点、空前絶後>と、記されていた。
 10のセクションに分け、それらの作品は展示されていた。
 とにかく豪華な作品群である。
 特に、印象深かったのは、第8章の<内面への眼差し(Inner Eyes)>であった。
 シャヴァンヌの「貧しき漁夫」、ルドンの「目を閉じて」など。
 そこには、ハンマースホイの「休息」という作品もあり、懐かしく思った。
 かつて国立西洋美術館で開催された個展で、初めてハンマースホイの作品を知り、すべての絵に共通した静謐な色彩と構図に、不思議な感動を覚えたのだった。

 いつものことながら、入館者の多さにはうんざりする。
 自分の意志で、一つの作品の前に佇むことはできない。
 ゆったりと鑑賞できないのが残念だが、仕方のないことだろう。

 美術館行きの日以外は、天候に恵まれた。
 下の写真は、帝国ホテルの17階から眺めた朝の光景である。

 在京中、隅田川を船で遊覧したり、浅草を散策したり、神保町の古書店を巡ったりした。
 なかんずく、国立博物館附属の<自然教育園>の散歩は楽しかった。
 ここは大都会でありながら、田舎の自然以上に、豊かな自然が存在した。
 都会のオアシスは、私にとっても、かけがえのない場所であり時間であった。
 ここは植物の宝庫である。数々の大樹が繁り、樹下には多数の植物が群生していた。
 ホタルブクロは花をつけていたが、概して花の少ない季節である。
 花は見られなくても、その姿を眺めることはできた。
 名札のついているのがありがたく、名前だけはなじみの植物を見つけて、いくつかをカメラに収めた。

    

    

    

    

    

    

    

    
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