ぶらぶら人生

心の呟き

誕生日の日、まずは「懐古庵」で

2007-01-26 | 旅日記
 今回の小さな旅は、二泊三日。
 自分で自分のバースデーを祝う旅として。
 1月22日は、私の誕生日である。
 今となっては、別に誕生日が嬉しくもない。ただ過去の一年を無事に生きたな、という感慨はある。そして、次の誕生日まで、息災な日々が送れたらいいと念ずる、それが私にとっての誕生日である。

 お正月三箇日のうちに、旅の計を思い立った。
 ゆったりと温泉に入ってこようと。
 小さな旅は、身近にある湯田温泉に一泊すること。早速、<セントコア山口>に電話して予約を済ませた。
 その二、三日後、ただ温泉に入ってくるだけでは物足りなく思えてきた。そこで、九州に足を伸ばし、「若冲と江戸絵画」展を観てこようと、計画を練り直した。
 インターネットで、開催期間を調べると、既にお正月から始まっている。
 九州国立博物館へ行くのは初めてだが、今は、パソコンで予備知識を得られるので、便利である。大宰府のすぐ近くだと分かる。それなら、久しぶりに大宰府天満宮にもお参りしてこようと、楽しみが膨らんだ。
 (昨日のブログに、大宰府に関しては、5つの内容に分けて、一気に投稿した。)

 もう一泊は、<福岡リーセントホテル>に予約。
 準備に関しては、万事、スムーズに事が運んだ。

 22日の3時過ぎ、山口駅に下車。
 まずは「懐古庵」で、抹茶セットをいただくことにした。
 「懐古庵」は、お菓子屋&喫茶室を備えた和風のお店である。(写真)
 和の雰囲気で統一されており、私の気に入っているお店の一つである。テーブルの上には、水仙の蕾が挿してあった。
 (お店の内外の模様については、稿を改めて書くことにする。)

 箒姿の銀杏並木を眺めながら、駅前通を歩いた。
 今までの人生で、最も回数多く歩いた道かもしれない、と思う。
 今は思い出とともに歩くしかない道である。
 誕生日だが、華やぐ思いはなく、人生の晩年は冬景色に似て、少し寂しい。
 ホテルへ直行するには、早すぎたので、文栄堂に寄った。
 前回同様、新井満氏の「千の風になって」の曲が流れている。
   <……朝は鳥になって あなたを目覚めさせる
     夜は星になって あなたを見守る……>
 新井満氏の語りかけるような、素人っぽい歌声が、心に沁みる。

 文庫本を一冊求めた。
 蓮見圭一著「水曜日の朝、午前三時」(新潮文庫)
 気取った題名だ。午前三時、そこから何が始まるのだろう? あるいは、そこで何かが終焉するのか?
 私は、作者を知らなかったが、版を重ねているところを見ると、随分読まれているらしい。本の帯には、NHK BS放送の書評番組で活躍中の<児玉清氏が絶賛!!>と印刷されており、ぱらぱらとめくってみたところ、移動の車中やホテルで読むのに適していそうに思え、求めることにした。
 その文庫本の近くに、運勢について書かれた本が山積みされていた。
 気になるわけでもないのに、自分の今年の運勢欄を見ていた。
 良くも悪くもないらしい。どちらかと言えば、良い方?
 そこに書かれている戒めの言葉が面白く、思わずニヤニヤしてしまった。
 <高姿勢を鎮め     尾を振る犬は打たれぬ>
 正確に暗記したわけではないので、表現は違っているかもしれないが、そんな意味のことが書いてあった。
 威張ることは嫌いだから、高姿勢になることはまずない。その点は大丈夫だ。
 後半の意味は、打たれぬためには尾を振る犬になれ、というのだろうが、人に媚びるのは大嫌いなので、ちょっと駄目だなと思って、おかしかったのだ。
 もう少し上手に尾を振れば、生きやすいのかもしれない。でもそんなことをしたら、私が私でなくなってしまいそうだ。
 今年も不器用に生きていくしかない……。

 <セントコア山口>の温泉につかって、ゆったりとした時間を過ごした。あまり長くつかりすぎて、少々湯疲れしてしまった。
 夕食は、河豚のフルコース。
 鰭酒に始まって、ご馳走はすべて美味。
 誕生日を祝うには申し分のない夕食だった。
 ただ口においしい鰭酒を、次々運ばれる料理を味わいながら、時間をかけて飲み干してしまった。日ごろ嗜まぬお酒が体中に回って、心地よい酔いを味わった。
 最後に、食後のコーヒーを注文したところ、
 「お誕生日のお祝いに」
 と言って、過分のサービスをしていただいた。

 湯に酔い、鰭酒にもすっかり酔ってしまった。
 就寝前に、もう一度温泉に入る予定は、取りやめにした。
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