ぶらぶら人生

心の呟き

トンチンカンの原因は?

2010-02-08 | 身辺雑記
 お昼過ぎ、草花舎へ食事に行った。
 いつものならいで、雨上がりの庭を歩こうとして、初めて気づいた。カバンの中にカメラがないと。
 ああ、また忘れ物!
 草花舎に着く前には、遠近両用の眼鏡ではなく老眼用をかけて外出したことに気づいた。
 一日に、いくつのトンチンカンをすれば気が済むのだろう?
 昨日は、Mさんの葬儀から帰って、家の中にい続けるのが、心理的に不安になり、草花舎に出かけた。
 草花舎は、ありがたいことに、歩いていける範囲にある。
 心を紛らせるための申し分のない場所として。
 音楽を聞きながらコーヒーを飲み、書棚の本を手にして読んでいれば、気分が少しは晴れるのだ。
 昨日は、辺見庸著『しのびよる破局』を手に取った。
 辺見さんの文章は、扱われる話題が深刻なだけに、一見堅苦しげだが、論理が整然としているので、難解すぎるということはない。
 しかし、昨日は、同級生の葬儀のあとだったので、少々問題が重すぎた。
 本を棚に返し、代金の支払いをして帰ろうとしたとき、財布からいつものお昼代を差し出そうとして、Yさんに「コーヒーだけだから…」と、指摘された。
 払い忘れたり、払いすぎたり、悪意はないのに、怪しいことをする。
 
 昨日も今日も、トンチンカンばかり。
 「頭がいよいよおかしくなったのかしら?」
 そう案ずる私に、Yさん曰く。
 「頭の中に、何か気がかりな大事(だいじ)があると、余ごとに頭が回らないのでは?」
 全くそうだ。
 <何か気がかりな大事>は、人によって異なるものである。

 今日は、食事の後、長田弘著の『アメリカの61の風景』を拾い読みした。
 作者が車でアメリカを旅し、詩人の捉えた風景を表現した、ロード・エッセイである。
 長田弘は好きな詩人の一人であり、詩同様、表現の巧みさに感心した。


 草花舎へ出かける前に、ソコロのSさんがパソコンの点検に来てくださった。
 「ブログにあった、まど・みちおさんの詩、面白かったですね。耄碌との付き合い方が…」といった意味の話をされ、あの詩の載った詩集をよかったら貸してほしいと言われた。
 早速探してみたが、例によって、すぐには見つからなかった。
 詩題はなんだったかも気になり、草花舎から帰ってから本を探した。

 『いわずに おれない』(写真)であった。居間の机の上で見つかった。

              
 
 詩題は、<トンチンカン夫婦>だった。
 幾度読み直しても、愉快である。
 老いに伴うトンチンカンを笑い飛ばし、<天の恵み>と受け止める姿勢が頼もしい。

 が、私のトンチカンには、ユーモアを欠く。間抜け加減に面白さがない。
 しかし、まどさんの、次のような体験談は、至極似ている。

 <あの机で詩や手紙を書きます。でも書こうとすると、ペンがないとか消しゴムがないとか探してばっかりで、必要なときに必要なものが見つからないのです。>(P149)

 私も、こういったことは珍しくない。
 今朝は、料理に使いたくて、買い置いたはずの<カツオパック>を探した。
 あの大きなものが、どこに雲隠れしたのだろう?
 探す場所は限られているのに、と思うけれど、探すときには妙に雲隠れする。目の前にあっても見つからない。
 (草花舎へ出かける前に、やっと見つけることができたのだが…。あるべき位置にやはりあった。)

 昨日の朝から姿を消した<万歩計>は、ちょっと探しようがない。
 家の中の、どこかにあるだろうとは思いながら、昨夕、薬局で新しいのを求めてきた。
 歩く歩数は少なくても、少しでも多く体を動かすために、つけておかなくては気がすまないのだ。

 <トンチンカン夫婦>を読みなおした後、気に入った詩をさらに見つけた。
 少し長いが、引用しておこう。
 詩題は、「私たちは」である。

     私たちはどこでどうしていようと
     「そこ」とか「ここ」とかの
     見える「場所」で
     見えない「今」の一瞬一瞬を
     かぎりなくつづけているのだが
     つづけながらにふっと気がつく
     つづけているのは私たちではなくて
     見えない「時間」の方がひっそりと
     つづいているんだなと
     そしてそう気がつくと夜が明けるように
     わかってくるのだこの老人にも
     「時間」こそは母なる宇宙ご自身なのだと
     私たちこの世の存在物の残らずを
     その胸に抱きつづけていてくださる…
     しかも有難いことにそのやさしさの外へ
     こぼれ出ることだけは
     たとえ一瞬でもチリ一つでも
     こんりんざいできっこないんだと…

 まどさん独特の時間の捉え方である。
 なるほどなあと思うのだ。 
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