軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

「今勾股弦釣九寸股壱拾弐寸在 内ニ如図等円双ツ入ル 円径ヲ問」

2013-08-03 22:18:35 | その他の雑記
 今、釣(高さ)が九寸、股(底辺)が十二寸の、勾股弦(直角三角形)がある。その内部に、図の如く、直径が等しい円を二つ入れる。円の直径を問う



 ここ数年に読んだ小説の中で、一番気に入った作品は何かと問われたら、迷わず冲方丁氏の『天地明察』(角川書店)と答えます。江戸時代、緻密な天体観測と優れた数理センスで既存の暦の誤差を明らかにし、改暦を実現させた渋川春海の半生を描いた、史実に基づく物語。読んだのは最近ですが、もともと天文好きなので、作中で天体の運行をつまびらかにしていく様子も興味深かったし、最初は純朴でひたむきさだけが目立っていた主人公が、多くの縁や挫折から世間智を学び、巧緻で冷静な戦略家に成長していく様が面白い。何よりも本作には、物語自体が、まるで完成された幾何学図形であるかのような美しさを感じます。

 で、記事タイトルと冒頭の文章及び図は、本作上巻22~24頁に登場する算術の問題です。現代風に言えば「高さ9、底辺12の直角三角形に内接する等円の直径を求めよ」ですね。主人公はこの問いの出題者に魅了され、その出会いが転機につながっていくのですが、私も挑戦してみたら、解けるまで何と3日もかかってしまいました。しかもヒントを得た上でだよ。もちろん三日三晩集中し続けたわけではありませんが、合計4、5時間かかったと思います。ちなみにヒントというのは、本書のコミカライズ版1巻で解説されていたもので、問題を解くのに役立つ補助線を引いた図が載っていました。以下の通り。


(講談社刊、槙えびし作画『天地明察』1巻144頁より)

 実際は初日で思考が行き詰まってしまい、2日目はただ「う~ん」と悩み続けただけで、3日目にしてようやく「あ!」と解き方に気づいたという有様でした。それまでの間は上の図を10枚くらいコピーして持ち歩き、ことある毎に眺めては数値や記号、式を書き込んでは解いてみて、間違ってはコピーを捨てて記入し直しという。。。いやお恥ずかしい、科学大好きで偉そうにこんなブログやってますが、学歴は私大文系なもんで。SS木君(軌道派の密偵)とかM村さんとか、宇宙エレベーター協会で理系出身の友人諸氏ならもちろんチョチョイだよねぇ? ( ̄▽ ̄)
 しかし、すごく楽しかった。そしてもっと問題を解いてみたくなりました。本作の主人公の感動を、ほんのちょこっとくらいは体感できたかなあと。ちなみに答えはこちらですが、興味のある方はぜひ原作や映画、コミック(2巻には冲方丁先生本人が描いた四コママンガも載ってるぞ! スゲー上手。なんて多才な人なんだ)を読んでみて、一緒に考えてみてはいかがでしょうか。

『天地明察』、お薦めです。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« きょうは軌道エレベーターの日 | トップ | 第5回宇宙エレベーターチャ... »
最新の画像もっと見る

その他の雑記」カテゴリの最新記事