軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

『君の名は。』の彗星の軌道

2017-02-05 20:21:48 | その他の雑記
 『君の名は。』世界的大ヒットで記録更新中だそうです。おめでとうございます。その『君の名は。』(以下「本作」)について、水を差すようでファンに怒られそうですが、初見以来気になっていたことについて少々ツッコんでみようと思います。
 もとより「お前らスマホ使ってて3年の時間差わからんの?」「入れ替わってる時に自宅に電話しようと思わないの?(もし電話したら、瀧は3年前の自分と話せるのだろうか)」「『直接会って相談しよう』って思わない? てか瀧君、三葉ちゃんと会ってみたくないの? やっぱ奥寺先輩がいいの?」とか、ツッコミどころは山ほどあるんですが、これはお約束というやつで、深く問うてはならないのでしょう。ていうか実際そう言われました、「面白くて3回観た」という御婦人に。
 それでも、宇宙好きとしてどうしても引っかかっていたのが、画面に一瞬映った「ティアマト彗星」の軌道。こんな図だったように記憶してます。

 

 地球の衛星!? ( ゚д゚)

 観たのが昨年9月だったし、チラっと観ただけだったので、細部の違いはご容赦下さい。それだけに当時は「見間違いかも知れない。そのうちレンタルされたら確認してみよう」などと思っていたのですが、年頭あいさつの原稿を書いていて思い出し、「自分の見間違いでなければ、ほかにも疑問に思った人たちがいるだろう」と思ってネットで検索してみました。そしたら出るわ出るわ、ツッコまれまくりでした。やっぱ見間違いじゃなかったんだ。

 公転周期1200年の衛星って、遠地点どこにあるんだ? そもそもこんな回帰周期の長い彗星はありえず、軌道は放物線になって二度と太陽系に帰ってこないのが普通です。これが1回こっきりの現象なら、波線でも描いてない限りどういう軌道でもツッコむこともないでしょうが、少なくとも過去2回地球に接近して、現代の糸守町の位置に隕石が落ちており、今回はサードインパクトを防ごうというお話ですから、安定した軌道を有していたことになります。ただ、精神が入れ替わるとか時間を超越するとか、オカルトというか超常現象アリの世界なので、これもこういうものなんだ、と言われればそれで仕方ないです。本作では、必ずティアマト彗星は毎回地球近傍を通過し、必ず最接近時に地球は日本のある側を彗星に向けており、必ず原因不明の分裂を起こし、必ず大きなカケラが周回軌道にも乗らずに糸守町に落ちてくるんです。そういう作品なんです。終わり。

 結局それが全てなんですが、でもせっかくですので、ここでは本作に好意的解釈をしてみたい。一つは、とりあえずティアマト彗星は、現実の彗星と同様に太陽を焦点の一つとして周回しており、軌道も閉じた長楕円だとして、今回の接近で地球と偶然ニアミスしたために地球の引力で軌道が捻じ曲げられてしまったという可能性。つまり彗星が地球スイングバイをした。本来は月軌道の内側まで入ってきても力が足りないだろうし、じゃ前回の1200年前の接近時はどうだったのか、回帰周期が狂っちゃうんじゃないの? など色々疑問が残りますが。
 今一つは、あえてうがった見方をして、事情があって意図的にこういう設定をしている可能性。実際、よく覚えてないのですが、軌道が正しく描かれたカットもあったみたいです。もしティアマト彗星が太陽を周回する天体だったとしたら、下の図2のように1200年ぶりに近日点に近づく時期に、地球は正反対の方に位置している可能性もあるわけで、必ずしも地球とニアミスするとは限らない。

 

 本作ではそのために、無理矢理地球の衛星にしてしまったのでしょうか? それなら必ず地球と接近しますので。実際問題、このくらい近くを通らないと分裂した破片が地球に落ちてくるなんて到底ありえそうにないですし。
 しかし原因不明の分裂(本編では「ロシュの限界の外側を通る」と言うセリフがあったので、潮汐による分裂ではない。てか地球の重力じゃ力が足りないでしょう)を起こして、毎回必ず彗星の破片が落ちてくる町に、たまたま精神が他人と入れ替わるという特殊能力を持つ一族が住んでるという偶然が重なるよりも、ヒロインの三葉の一族が彗星を引き寄せていると考える方が自然でしょうから、物理法則を捻じ曲げてティアマト彗星に地球の衛星軌道を周らせているのかも知れない、という解釈も充分可能ではないかと。
 迷惑な一族だなあ。人里離れた場所に引っ越せよと思わないでもない。こうなるとティアマト彗星ってのは、彗星ではなく、三葉の一族に粘着してるストーカーみたいな存在としか思えない。ひょっとしたら一族を根絶させるための兵器か何かかも。何か恨みでも買ったのだろうか。

 この辺の答えは、それこそDVDになった時に判明すると思います。制作者側が修正を加えていたらただのミスでしょうし、そうでなければ上記の理由であえてそういう設定にしているということなのでしょう。ちょっと意地悪いですが、これも余興の一つとして、レンタルを楽しみに待つことにします。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« M村さんまたしても明察(解... | トップ | 宇宙インフラ整備のための低... »
最新の画像もっと見る

その他の雑記」カテゴリの最新記事