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そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

黒澤明の残したもの

2009-02-06 | 政治と金

幼い頃、東映の撮影所がそれほど遠くないところにあった。。隣には東映に勤める、同級生の親もいた関係で、東映時代劇を見て育った。正義と悪がはっきりと分かれていた。正義の味方は、見事なあでやかな衣装で、目バリも入って女性以上の化粧である。拷問にあっても山を登っていても衣装は乱れない

中村錦之助や市川歌右衛門は絶対に負けないし、何十人も切っても振り向くとそこに死 体はない。刀に血のりもなければ息が切れることもない。歌舞伎の手法であろうか、殺陣も決まっている。子供心にも安心してい見ていた。水戸黄門などのテレビ時代劇のなかに、未だその残像を見ることができる。

私の時代劇感を一変させたのが、黒澤明の「椿三十郎」である。主人公が汚いし感情的で乱暴である。捕らわれることもあるし万能ではない。最終シーンは晴れた空の下、笑顔の主人公たちが道の彼方へ消えていくのを見慣れたものにとっては、驚愕のラストが待っていた。その後も何度も黒澤作品を見ることになった。

昨年は、黒澤明没後10年ということで、NHKBS2で、全30作品を放映してくれた。僻地にいる者にとってありがたい企画である。視聴者による黒澤ベスト5が放映されている。因みPickup_2009_kurosawa_sに、5位が「天国と地獄」、4位が「生きる」、3位が「用心棒」、2位が「赤ひげ」、1位が断トツで「七人の侍」であった。

これを見れば分かるように、5社が経営危機になって共同制作となった「どですかでん」以前のものばかりである。「生きる」を除き、三船敏郎を上手く使った作品ともいえるし、黒白作品ばかりであるともいえる。この五作品は映画作品というより、見る者にドキュメンタリーと思わせるような映画である。黒澤の妥協しない姿勢が見られる。

とりわけ「七人の侍」は、当時の東宝の年間製作費を使い切るほどのものであった。七人の人物設定も、戦闘場面に限ることない農村、農民の描き方もすぐれ、撮影方法も素晴らしいものがある。水車小屋の炎上場面では、3度も建てて燃やしたとのことである。

黒澤は、世界的な評価が高くなると急速に作品の質が落ちてくる。「乱」や「影武者」はその典型である。大作に違いはないが、どこか冷めた目でしか見ることができなくなってしまった。人は途上にある時に最も力を見せるように思われる。

生涯たった30作品しか制作しなかった黒澤のこだわりが、あらゆる業種から急速になくなりつつある。無造作に捨てられていくばかりの大量の商品を、北の国の富めるものが創りつづけ、地球の資源を一方的に消費する世界を作ってしまった。人を使い捨てる、派遣切りも同じである。

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