ナチスに徹底的に迫害を受けた、ユダヤ人がイスラエルを建国したら、今度はパレスチナ人を徹底的に迫害を加えている。このことがどうしても理解できない。いくらかの書物を読んでみても明快な回答はない。そうした中で、今回読んだ本であるが、結果としてユダヤ人(イスラエル人)の、身勝手な優越感を確認しただけであったが、現在を知るの恰好の書である。
「ホロコーストからガザへ」サラ・ロイ著 青土社刊 内容的には、講演や対話などが多く、詳細な部分は入り組んでいるところが煩雑で、読み難い本ではあるが中東問題の本質を教えくれる。
著者は、ナチに迫害を受けた両親をもつ、アメリカ在住のユダヤ人である。とりわけ父親は、ほとんど生存者のいなかった収容所からの、奇跡的な生き残りである。30歳の時に初めて、イスラエルの地を踏み、パレスチナ人の置かれている不条理で絶望的な現実を目の当たりにして、イスラエル国家建設の矛盾を問い始めた。
1993年にアメリカのクリントン大統領の仲介で結ばれた「オスロ合意」は、イスラエルを国家として認めさせ、パレスチナに自治政府を認めさせる画期的な、和平交渉であった。その後ラビンは暗殺され、アラファトも経済弾圧を受けて権力を失うことになった。
著者は、このオスロ合意をイスラエルの策謀であって、周到に計画されたものだと、数多くの資料から論破している。すなわち、パレスチナに経済従属関係を確立した後に、オスロ合意をしてそれらを切ってしまったのである。オスロ以前にあった、3千余りのイスラエル依存の製造業社が、ほとんど数軒になった。
40年間にわたって、パレスチナ社会を利用することでイスラエルは、建国の歩を速めた。パレスチナ経済は、イスラエル社会に依存せざるを得ない形に仕上げてきたのである。オスロ以後、イスラエルの入れるパレスチナ人は事実上皆無にしたのである。こうしてガザの操業する工場は、99%も減少したのである。
すなわち、ガザや西岸地区の経済を徹底的に潰すことによって、彼らの中から和平合意を模索するグループを排除させたのである。暴力的活動を主体とするハマスの台頭は、当然計算されたものであったのである。
一昨年からの、ガザ地区への徹底的な攻撃で1400人のパレスチナ人を殺害したイスラエルであるが、死者の内300名は子どもである。ほとんどが空爆による、非人道的な国際法違反行為である。ブッシュによる支援のもとに、「反テロ戦争」として行われた、パレスチナ人へのホロコーストである。
「ホロコーストによりイスラエル国家建設が正当化されてはならず、ユダヤ教の名のもとに染料が続くことを認めない」と彼女は、ユダヤ人の希望をしめしてくれている。