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もやもや日記

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『どちらかが彼女を殺した』

2011年09月04日 | 読書日記ー日本

東野圭吾(講談社文庫)




《あらすじ》
最愛の妹が偽装を施され殺害された。愛知県警豊橋署に勤務する兄・和泉康正は独自の“現場検証”の結果、容疑者を二人に絞り込む。一人は妹の親友。もう一人は、かつての恋人。妹の復讐に燃え真犯人に肉薄する兄、その前にたちはだかる練馬署の加賀刑事。殺したのは、男か? 女か? 究極の「推理」小説。





これは面白かった。前に読んだ『卒業』同様、暗くて暗くてしょうがなかったですが、この作品はあれこれと仕掛けがしてあって、斬新な面白い形態をしていましたね。


まず、タイトルからも分かるように、ふたりの容疑者のどちらかが犯人なのですが、かわるがわる疑惑がかけられていくので、最後まで犯人が分からない。ハラハラしながら読み進めることができます。

しかし、そういうのはミステリでは普通の流れですよね。この作品の面白いのは、最後の最後まで、どちらが犯人なのか分からないままで終わってしまうというところでしょう。

えっ!?

最後の場面はとてもダイナミックでドラマチックだったけれども、ちょっとー、どっちが殺したのか教えてくれよ~~。スッキリしないじゃないの~~!

と、もやもや感を抱えたまま放り出されてしまいましたが、私はあの人が犯人だと思う! あの場面でのあの行動が決め手になったと思うね! それに、あの人の方が、より殺人への動機が強いだろうし、普通に考えて……

このように私なりに推理してみましたが、でも、やっぱりスッキリしない。



どうもよく分からない、という人のために、この文庫には《推理の手引き》なるあとがき解説が付いています。

ところが!

このあとがきが、なんと「袋綴じ」になってるんですよね; なにそれ、どういうサービスなの? あ、でも、先にあとがきから読んでしまう人へのネタバレ防止策ということなのかもしれませんね。ともかく、「袋綴じ」になっています。

私はこの本を姉から拝借したのですが、姉はだいぶ前に読んだのに、袋綴じを開けていなかった……
「あれ? 解説を読まなくてもどちらが犯人か分かったの?」と尋ねると、姉は「え…そんな話だったっけ? さっぱり覚えてない」。この凄まじい忘却力、よく似た姉妹です。私も『名探偵ポワロ』のTVドラマなんて、毎度犯人もストーリーも思い出せぬまま無限ループで見続けてるしな…。

ともかく、姉は袋綴じを開けていなかったので、私も開けなかった。でも中身が気になるので、袋綴じの隙き間からどうにか覗いて読んで(←結局、読むことは読む)、犯人確定の手がかりを得ようと試みたわけです。

それで、このあとがきが役に立ったかのかと申しますと、これが驚いたことに大して役に立たなかった…! ぐふっ。あくまでも「推理の手引き」に過ぎず、犯人を名指すようなものではなかった。うーむ、そうだろうと思ったけど、ここに書いてあることくらいまでなら、私も推理できてたんだよ~~!
まあでも、こういうつくりは面白いですね。



そんなこんなで、私はあの人が犯人だと思っていますが、ほんとうはどうなのか分からない。え、なにそれ、そんなのってアリ?? こんな推理小説ってアリなの!? スッキリしねえなあーー!! ミステリでの読後感としては、こりゃあ新感覚だぜ。

もうほんとうにスッキリしなくてもやもやしますが、物語のハラハラ感と、先を読まされるスピード感は爽快でした。ぐんぐん読み進む感じというのは久しぶりだったので気持ちがよかった。あと、物語の暗いところがなんだかんだで良かったです。


ただひとりの家族である妹を溺愛し、復讐に燃える兄。けれども、どうして妹が殺されたのかを調査してゆくうちに、妹とその親友、元恋人との人間関係のどろどろさ加減が明らかになり、兄は自分のまるで知らない妹の人物像が知ることになったりするのです。相手によって見せる顔がまるで違う。誰にでも、そんなことはある。


殺人のトリック云々よりも、この暗く冷たいドラマ部分が心に残ります。ある人が、別の誰かとの信頼関係を失いながら生き続ける悲しみというか。『卒業』でもそうでしたが、これこそが東野テイストということなのでしょうか。どんよりした余韻がありますね。


さて、初・東野作品2冊を読んでみて、結構面白かったので、今後も読んでいきたいと思っています。「加賀シリーズ」以外のシリーズも読んでみたいなあ。姉がほとんど取り揃えているようなので、正月にまた借りようっと!