半透明記録

もやもや日記

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『妖霊星』

2007年10月28日 | 読書日記ー漫画
近藤ようこ (青林工藝舎)

《あらすじ》
愛する者に一度は呪いの釘をうつも、最後には救いの手を差し伸べる…。自分で作った恋の罪から逃げないために…。
説経節「しんとく丸」を借りて描いた死と再生の物語。


《この一文》
”「しかし だれも
  ひとり勝手に 生き死には できぬぞ」

 「だれも?」

 「だれも」   ”



「あ、ほのぼのした絵」と思っていたら、内容は恐かった。恐い。恐すぎる…。呪いとか、前世の因縁とか、お告げとかいうのが、私はとても恐いのでした。
この恐さはどこからやってくるのでしょう?


長者のお姫さまは毎日鏡に自分を映して眺め暮らす変わり者。鏡に映るだけの自分が、たしかにこの世に存在しているのかどうかが分からない。
ある日見にいった田楽の舞台で、姫は自分にそっくり似た若者と出会います。彼は「身毒丸」と名乗りました。
自分に生き写しの、触れてその存在をたしかめられる身毒丸を、姫は追いかけるのですが……。


と、あらすじをまとめてみると、恐ろしかったのは呪いとかなんとかもありますが、それよりもこの姫の執念だったような気もしてきました。
この人の執念は、まさに執念というべきもので、それはそれは恐ろしかった。思い込みが激しすぎる。まあ、それがかえってこの人を美しくもしているのではありますが。あー、こわい。

前半の、姫が身毒丸に呪いをかけるあたりまではそんな感じで恐ろしいのですが、後半は一転して穏やかさを身に付ける姫君。物語の美しさも加速してゆきます。

うーん。よくできているなあ。最初はわりと力の抜けた感じの絵柄、などと失礼にも思っていましたが、この物語の怒濤の勢いにはぴったりの無駄のないシンプルな絵であることは、途中で私にも分かってきました。最初に夢を見て目が覚めた姫が夜空を見上げると星が流れるシーンは実に感動的。そして終盤でその夢が現実となり、そのときもやはり星が流れるのです。うむ。うまい。そして、こわい。

物語はこわいけれど美しく、それでもやはり美しいけれどこわかった。私には結末がなんだか恐かったし悲しかったです。なぜだか。あれは救われたのだろうけれど、どうしてだか少し悲しく、恐ろしかった。どうしてなんだろう。



どうして?と言っては、何度も読み返してしまった。
うぅ、やっぱり恐いよー。
というわけで、かなり面白かったです。
烏合さん、どうもありがとう~~!


元ネタのほうの「身毒丸」も、いつか勉強します!