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もやもや日記

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『百物語』

2007年10月10日 | 読書日記ー漫画
杉浦日向子 (新潮文庫)

《あらすじ》
古より百物語と言う事の侍る 不思議なる物語の百話集う処 必ずばけもの現れ出ずると――人々が目に見えないものを見、理性では説明のつかぬことを信じていた江戸の時代。生と死の間で右往左往する人間たちの前に、時間を、空間を超えて現れる魑魅魍魎たち。怪しのものと人間たちの滑稽でいとおしい姿と懐かしき恐怖を、怪異譚集の形をかりて漫画で描いた〈あやかしの物語〉


《この一文》

“猫が物言うのを
 聞いたのは
 それぎりだっけ  
  ――「其ノ五十四 猫と婆様の話」 ”



お友達のKさんが貸してくださいました。

全体的に、超こわいです。こわくて一息に全部は読めませんでした。ですが猛烈に面白かったです。うーむ。すごいなあ。杉浦さんは非常におっとりした魅力の女性でしたので、こんな恐ろしい物語とはイメージがなかなか結びつきません。

これは漫画ですが、絵もすごくうまい。なにか異常な静けさのような迫力があります。このために余計にこわくなる。かと思うと、ものすごく美しいコマもあったりして、私はこわい、こわいと言いながらも、絵の美しさに惹かれて休み休みどうにか最後まで読むことができました。

杉浦さんと言えば江戸ですね。
この物語も舞台は江戸です。ほんとうに江戸という時代はこんな感じだったんじゃないだろうか、というほどにこの漫画の世界には現在とははっきりと違う時間が流れています。そのあたりの表現力もすごい。

ひとつひとつの物語には、恐ろしいものもあれば、ほのぼのとしたものもあり、さすがに百あれば色々という感じです。私が気に入ったのは、ほとんど全ての物語にみられる結末のあのバッサリ感。えっ、これで終わっちゃっていいのか、いいんだ!という爽快ささえ感じる終わり方です。要するに、結末にはっきりとした理屈付けなんてしてありません。すがすがしいんです。これは不思議と気持ちがいい。奇妙な物語を奇妙なまま「なんとなく…そういうものなんですよ」で放っておく。いいですね、なんだか日本的で。そういうのは好きですよ。私はやはり日本人なんだなあ、と感じてしまいます。


というわけで、ものすごく面白かったです。
ほかのもぜひ読みたくなりました。