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もやもや日記

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『詩人のナプキン』

2005年08月22日 | 読書日記ーフランス
堀口大學訳 (ちくま文庫)


《収録作品》

ギイヨオム・アポリネエル:「オノレ・シュブラック滅形」「アムステルダムの水夫」「詩人のナプキン」/アナトオル・フランス「聖母の曲芸師」/クロオド・ファレエル:「颶風」「冷たい恋人」「萎れた手」/メデロ・エ・アブルケルク「五寸釘」/フィッシェ兄弟「エステル」/アンリイ・バルビュス「三日月」/フレデリック・ブウテ「嫉妬」/モオリス・メエテルリンク「幼童殺戮」/アンリ・ド・レニエ「青髯の結婚」/ルミ・ド・グウルモン:「水いろの目」「ドンファンの秘密」/マルセル・シュオブ:「遊行僧の話」「モネルの言葉」/レイモン・ラディゲ:「ドニイズ」「花売り娘」/マルセル・アルナック「無人島」/ジャック・ド・ラックテエル「書物と恋愛」/アルベルト・インスゥア「いまわの夢」/ジョセフ・ケッセル「懶惰の賦」/ジャン・ポオラン「嶮しき快癒」


《この一文》

”ーー僕等が法を無視した以上、僕等は法より偉大であらねばならぬのだ。彼のプロメッテエを描くために、ファラシオスは罪のない一人の男を拷問にかけさせた、しかし彼がこうして描いたプロメッテエは傑作であった、ために後代は彼の行為を許したのである。しかるに彼の描いた画がもしも全ギリシャの賞賛を買わなかった場合にはファラシオスは単に一個の殺人者であったのである。  クロオド・ファレエル「萎れた手」より”



田舎のブックオフにてお宝発見。しかも2冊も。それがこの『詩人のナプキン』ともうひとつは『新編 魔法のお店』(ちくま文庫)です。欲を言えば、ちくま文庫ならホフマンの『ブランビラ王女』やC.G.フィニーの『ラーオ博士のサーカス』などもほしかった。ああ、大昔のあの時買っておけば…、くっ……愚か者め!

さて、考えてみると意外とフランス文学好きな私は、この『詩人のナプキン』もあまりの面白さに一気読みです。アポリネールは何度も読んでいますが、ラディゲは実は初めてでした。アンリ・ド・レニエは例によって美麗だし、マルセル・シュオブの深さも期待を裏切りません。「モネルの言葉」は一度読むだけでは理解不能です。深過ぎる。収録されている3分の2は未知の作家だったのですが、新しい収穫にとても満足しています。
特に面白かったのは、クロオド・ファレエルの「萎れた手」。美しいラブ・ロマンスというだけではなく、精神の気高さについても美しく描かれています。映画のように視覚的で疾走感があって楽しいです。
他にはフィッシェ兄弟「エステル」ーーなめし皮卸小売商フェルドスパ氏の帳簿から知れる恋物語。笑えます。「11月 10日 可愛いエステルの腰巻1ダアス……二百七十法(フラン)」とか。
それから、マルセル・アルナック「無人島」ーー船が難破して無人島に流れ着いた男と女。そこで寄り添って逞しく生きようと決意するのだが…。これまた笑えます。最後の二人の台詞が最高です。ぷぷ。
フランスの短篇小説は面白いんだなー、と再確認です。