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もやもや日記

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『ムーミンパパの思い出』

2005年08月03日 | 読書日記ー北欧
トーベ・ヤンソン 小野寺百合子訳(「ムーミン童話全集3」 講談社)


《あらすじ》

ムーミンパパがわかかったころの大活躍の思い出の記。海にのりだし、怪物とたたかい、そしてかわいいムーミンママにであいます。



《この一文》

” フレドリクソンが、夜明けにかじとりの交代にやってきたとき、わたしはかれにきいてみましたーー。
 「ヨクサルがあんなに無関心なのは、おかしいと思わないか?」
  フレドリクソンの返事はこうでした。
 「そういっちゃいけないね。それは反対で、ヨクサルのほうが、あんがいいろいろ気をつかっているのかもしれないよ。おちつきはらって、てきとうにね。
  ぼくたちは、いちばんたいせつなことしか考えないんだなあ。きみはなにかになりたがってる。ぼくはなにかをつくりたいし、ぼくのおいは、なにかをほしがっている。それなのにヨクサルは、ただ生きようとしているんだ。」
 「生きるなんて、だれにだってできるじゃないか。」
 と、わたしはいいました。              ”



ムーミンパパは、「ムーミン捨て子ホーム」で育ったらしいです。夢想家のムーミンパパには辛い規則に縛られた生活。確かに不幸な少年時代です。逃げ出したくなる気持ちも分かります。
今回は、ムーミンパパの若かった頃のお話です。「海のオーケストラ号」という素敵な船に乗って冒険に出ます。仲間には、発明家のフレドリクソン、収集家のロッドユール(フレドリクソンの甥でスニフの父親)、なまけもののヨクサル(スナフキンの父親)、なんでもかじるニブリング、おばけ(かなりの裁縫好き)などなど、例によって個性的な人物が目白押しです。ミイもようやく出てきました。
この物語の素敵なところは、冒険の楽しさはもちろん、全ての登場人物がそれぞれに最も適した居場所を与えられることでしょうか。過度な教育熱心さのために皆から嫌われていたヘムレンさん(ムーミン捨て子ホームの経営者だった)にさえ、彼女とその周囲の人々が幸福と思えるような運命が用意されているのです。誰にでも、自分の才能やそうしたいと思っていることを好きなだけ発揮できる場所があるかもしれないということは、考えるだけで楽しくなります。
それにしても、ムーミンママの登場は、挿絵も含めてかなり笑えました。