裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

世界のつくり/意識編・6

2024年03月26日 14時42分09秒 | 世界のつくり

6・適者生存の法則、って

さて、深海底の風景に戻る。
増殖をつづける彼の分身たちは、圧倒的な速度と量とで、ぬくぬくと熱水を噴出させる孔を覆い尽くした。
さらに、その外洋・・・と言えるかどうかはわからないけど、生まれ故郷であるチムニーの外へ外へと、生態系の前線を押しひろげていく。
まるで、生まれたての生命による、活力みなぎるエデンの園だ。
一方で、生命の浸透が及ばない遠隔地には、純粋無垢なまでの荒涼とした景色がひろがる。
この時代には酸素すらないために、鉱物はさびることを知らない。
そんなフレッシュな正真正銘のフロンティアに、彼らは勇敢にも飛び込んでいく。
ところがそこには、寒さという環境変化のワナが待ち構えてる。
かつてあっちっちのマグマ塊だった地球はすでに冷え、水面からはるか隔絶された深海底には太陽熱も届かず、地中からの放射性崩壊熱があるのみの冷たい冷たい水の底・・・
熱水に育まれた彼の身には、極めてシビアな条件だ。
こうして、ついに生命の世界進出は止まる。
・・・いや、完全に止まったわけじゃない。
なんと、そんな冷たい環境にも平気で飛び込んでいくやつらがいるではないか。
思い出してほしいんだけど、遺伝子の変異は意図的じゃなく、無作為かつ全方向なんだった。
なぜなら、ゲノムの書き換えは不意なコピーミスに過ぎないんだから。
彼は、ぬくぬくの温度帯に適応できるように塩基配列を書き換えてきた・・・かと思いきや、「ぬくぬくの温度帯に適応する塩基配列の書き換えがたまたま生じた」ために、彼は熱水噴出孔で生きる可能性を獲得したんだ。※1
彼が熱水の環境でも平気でいられたのは、ゲノムがコピーされる際のエラーによる偶然の産物でしかない。
それと同様に、一部の彼らのゲノムは、冷水に適応できるような塩基配列のコピーミスを起こした。
こうしてたまたまその一団だけが、冷水の中でも生き延びられるようになった。
これが、適者生存の法則だ。

つづく

※1 この書き換えが起きなかった個体は、全滅した。

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園

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