マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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田中町の如来さんの接待家

2014年04月04日 07時14分23秒 | 大和郡山市へ
大和郡山市田中町在住のY夫妻は大阪平野の大念仏ご回在の接待家。

「バラ寿司を作って僧侶とトモの人たちを自宅でもてなすんや」と聞いて、お伺いした。

高野山で得度を受けたおばあさんが始めて50年間、ずっとし続けてきたバラ寿司のもてなしである。

大概の旧村では融通念仏宗派の檀家家が多い。

大和ご回在のときには檀家総代が各家を案内するが、田中町の融通念仏檀家は同家だけである。

新木町の墓寺から柳町6丁目のカワラクマ(瓦屋)を経て田中町にやってくるご回在の一行。

額田部の住民たちが「クロボン」と呼んでいた5人の僧侶が同家を訪問する。

カン、カン、カンの音色が聞こえるやいなや、「なあぁぁむぁ」と手を合わせながら座敷に上がった。

床の間に十一尊天得阿弥陀如来来迎図を掲げる三等僧中のお掛かり。

位牌やお茶を並べた斎壇に向かって先祖回向。

家内安全を願って念仏を唱える。

おばあさんが健在だった頃は信者さんも来られて座敷は40人ぐらいの人たちでいっぱいになったというのは昔のこと。

同家の知り合いの人が寄せる一夜諷踊(いちやふじ)、常夜諷踊(じょうやふじ)のお布施は少なくなったと話す。

そうしてご夫妻に向かって融通念仏を唱える大和ご回在は、9月9日から大阪(3月~5月は大阪河内のご回在)、奈良の檀家家を巡っていく。

大阪平野の大念仏本山では如来さんご回在と呼ぶ在り方は本山のご本尊が檀家にやってくるのだ。

ご回在は彼岸は除いて12月17日までの毎日だ。

天気の良い日、風がキツイ日、大雨が降る日、雪が降っても巡っていく。



念仏を終えて僧侶のお話しは如来さんの謂れ・六道など。

「毎年のお話しなのにすぐ忘れてしまうわ」と笑ってご主人が応える。

説法をお聞きして如来さんの身体堅固。

一人、一人に授かるありがたさに手を合わす。



次の行先案内される豊浦町の檀家役員も手を合わした。

それからがバラ寿司のご摂待。

すまし汁椀も添えて振舞われる。

この日の朝早くバラ寿司を作った量は一升五合。

昔は三升も作っていたそうだ。

キンシタマゴ、シイタケ、タケノコ、チリメンジャコ、チクワ、桜エビ、紅ショウガを乗せたバラ寿司は美味しい。



汁椀の具材はウズラタマゴ、エノキ、ミツバ、カマボコだ。

かつては信者さんもおられたから椀は40杯にもなったと話す。

存知している若いクロボンさんは食欲旺盛。

美味くしくいただくバラ寿司はおかわり三杯。

同家で摂待されて次の村へと向かう道中の食事どき。

これは「ケンズイ(間食)」だと話すバラ寿司である。

翌年は二日ずらした28日が田中町のご回在。

3年に一度は山間廻りがある。

平坦の場合は毎年のことであるが、山間は3年分を纏めてということであるから、ご本尊の如来さんのありがたみ違うようだと話される。



こうしてケンズイのバラ寿司をよばれた一行は、次の行先である小南町から豊浦町へ足早に駆けていった。

(H25.11.26 EOS40D撮影)