マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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中ノ川町観音寺初祈祷

2012年04月07日 08時07分37秒 | 奈良市(東部)へ
春日山から柳生へ向かう街道。

日本最古の歓喜天(かんぎてん)を祀る興福寺別院(歓禅院)があるそうだ。

そこから北へ直線にして1.5km。

かつては興福寺の末寺として栄えたとされる奈良市中ノ川町の観音寺がある。

当屋の五人衆の話では、子供のときに住職が存在していたがいつしか不在となって無住寺。

そのころに途絶えたかどうか判らないが、同寺では毎年の2月18日に十一面悔過法要のオコナイが行われていた。

享和二年(1802)に記された講式によれば初夜道(導)師作法と後夜道(導)師作法の法要が行われていた。

花持・散華、梵音、咒願、念誦発願、應用念誦、大懺悔の後にある乱聲(声)。

いわゆるランジョーの作法だ。

カワヤナギの枝木で縁叩きをした個所だ。

住職が不在となってからは奈良市鳴川町の徳融寺から住職を迎えて法要がなされる。

「かつて東大寺の長老が、中ノ川のオコナイ(初祈祷)は二月堂の修二会と同じ作法でされていたであろうと話していた」と住職は言う。

今年も一年が無病息災、家内安全、五穀豊穣を願う。

日本国で観音さんが一番多いと云う修正会は村々に下りてオコナイと呼ばれるようになった。

観音さんは三十三の姿になって困っている人に、その人に相応しい姿となって願いを叶える。

三十三は数値ではなく無数だという住職の語り。

あらゆる人の修業を救うという。



ランジョーの声を発することなく立つ住職。

それが合図だといってカワヤナギで板を叩く。

二月堂では履いた下駄で床を打つように足音をたてる。

唐招堤寺の餅談義ではシバで地面を叩く。

いずれも悪魔祓いの作法である。

中ノ川ではカワヤナギ叩きとともに太鼓を打ち鳴らしホラ貝を吹く。

大きな音をたてることで村から悪魔を追い払うのである。

初夜道師、後夜道(導)師作法、神名帳の神名発願、佛名、教化、謹奉厳、佛名・教化、教化、讃歎申、諸人勧仕帳・花餅帳、佛名、教化、頭番千年ヲ畳ミ給、神分、祈願大般若経、九條ノ錫杖、佛名、教化、牛王加持、寶印護持発願、乱聲(声)・・・と長々と続く悔過法要。

享和二年の講式と同じようにオコナイをされたかどうか判らなかったがランジョーの作法は3回行われた。

かつては鼓を持って踊っていた。

弓も引いていたという。

それは子供のころのこと。

カワヤナギの縁叩きも経験していたという。

永らく途絶えていたオコナイは復活されて随分と経つ。

大正時代に途絶えたカンコ踊り(雨乞いの太鼓踊り)も復活も願われたが・・・。

こうして長丁場の悔過法要のオコナイを終えると社務所に吊るされた大太鼓をドン、ドンと打ち鳴らす。



村人への合図である。

それを聞いた人たちが一時間後ぐらいに風呂敷を持ってきた。

ゴクサンを風呂敷に包む座の人。

ご加持された牛王札とともに持ち帰るのだ。



お札は苗代作りの際に立てられる。

ツツジやツバキの花を飾って水口の虫除けに挿すのだというが農業を営む人は少ない。

すべての座中が取りにくるまでは座敷で語らい。

女人の入堂は禁じられている。

(H24. 2.18 EOS40D撮影)