本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

映画の構造分析

2011-04-17 07:24:17 | Weblog
■本
31 日本的ソーシャルメディアの未来/濱野 智史、佐々木 博
32 映画の構造分析/内田 樹

31 日本のソーシャルメディアの普及状況やその位置づけを社会学的に分析したセミナーを収録した本です。濱野さんの著書「アーキテクチャの生態系」のソーシャルメディア部分がさらにわかりやすく噛み砕いて説明されています。ツイッターの時間性=選択同期(普段は非同期の交流だが、あるタイミングで動機的な交流が盛り上がる)、ニコニコ動画の時間性=擬似同期(別々に非同期で動画を見ているのに、コメントが動画にかぶさって出てくるので、あたかも一緒に動画を見ているように感じられる)という説明の切れ味はやはり鋭いです。ソーシャルメディアをビジネスやマーケティングにどう活用していくかという視点からさらに一歩高みにたって、日本社会とソーシャルメディアのかかわりについて考えるヒントとなるよい本です。

32 映画分析を通じて、現代思想を解説する本です。特にラカンがエドガー・アラン・ポウの小説「盗まれた手紙」を用いてフロイトの理論を分析した枠組みを使って、内田さんがヒッチコックの「北北西に進路を取れ」を用いてラカンの理論を分析している部分はスリリングでさえありました。映画の楽しさを感じつつと知的好奇心も満たされるとてもよい本です。ヒッチコックが解説した「マクガフィン」(無意味であるがゆえに機能するもの)という装置についても、この本を読んで初めて理解できた気がします。また、「ゴドーを待ちながら」という演劇が評価されている理由もなんとなくわかった気がしました(ゴドーがこの「マクガフィン」なんですね)。


■CD
28 YOU MORE/チャットモンチー

 先行シングル曲がないということもあってかアルバム全体の構成が練りに練られた完成度の高いコンセプチュアルな作品という印象を持ちました。いろんなジャンルの音楽的要素を取り入れたりトリッキーなアレンジがなされていたりして、実験的な作品とも言えます。単純にロックの持つ格好よさが感じられる素敵な作品です。小手先のテクニックではなくて、体幹の強さで勝負するサッカー選手のプレーを観ているような感動があります。


■映画
13 トゥルー・グリット/監督 ジョエル・コーエン, イーサン・コーエン
14 わたしを離さないで/監督 マーク・ロマネク

13 単純にエンターテイメント作品として面白かったです。コーエン兄弟の持つ毒やシニカルさを押さえつつ(といっても他監督の作品と比較すると十分に毒もシニカルさもありますが-「ノーカントリー」のような全編毒満載という作品と比べてという意味です)、スピーディーな展開とヒロインのジョシュ・ブローリンを筆頭とする俳優陣の好演で、ぐいぐい観客をひきつけます。逆に言うと観た後の引っかかりが少ないので、その点がオスカーを逃した理由かもしれませんが、そんな能書きが不要なくらいひたすら面白い作品だとも言えます。観て損はないです。

14 カズオ・イシグロさんの原作が大好きなので観たのですが、期待値が高すぎたのか少々期待外れでした。小説の世界観を忠実に反映した映像は美しいですし、小説では聴けない「わたしを離さないで」という曲を聴けたのは映画ならではの楽しみだと思います。ヒロインを演じたキャリー・マリガンーの抑制の効いた演技も原作のイメージどおりで素晴らしかったです。このようなたくさんの利点があるにもかかわらず、この作品は原作の持つエピソードの取捨選択に完全に失敗しているので、その点が大きな不満として残りました。2時間前後に収めるために当然原作そのままというわけにはいかないことは理解していますが、主要キャスト3人の恋愛感情に焦点を当てすぎな気がしました(原作の印象では、恋愛感情よりも友情の方や同じ運命を持つものの共感が強かった気がします)。また、本作で最も重要なカセットテープにまつわる3つのエピソード(ヒロインがカセットを聴いて踊っているのをみてある女性がショックを受ける場面、そのカセットがなくなる場面、そのなくなったカセットと同じものを探しに行く場面)がカットされているところも不満でした。個人的な思い入れが強すぎるが故の不満ですが、原作を持つ作品の映画化の宿命とも言えるかもしれません。
コメント
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