本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

グリーンブック

2019-03-02 06:19:57 | Weblog
■本
20 チームの力/西條 剛央
21 除染と国家/日野 行介
22 マンガホニャララ ロワイヤル/ブルボン小林

20 東日本大震災の支援プロジェクトを立ち上げた、大学准教授の方が書かれた組織論です。その組織論の背景にある思想の「構造構成主義」という独特の考え方が少し難解ですが、実際にボランティア組織を有効に機能させた方による話だけあって、具体的で説得力があります。特に、支援が必要とされなくなる状態を目指し「なくなることが目的」という、とかく、その存続自体が目的となりがちな組織において、その存在を否定するような目的を設定し、実際に発展的に解体したところに共感しました。また、「対立の奥には"関心"の違いがある」という考え方はとても参考になりました。相手の"関心"を考えることにより、歩み寄る余地があるのか、それとも、そもそも相容れないのか、について冷静に考えられるような気がします。「昇進・昇給」などでモチベーションを高められないボランティア組織の方が「関心」を基点として運営する必要がある、という意見も含めて、結局、自分に「関心」のある仕事を行うことが重要ということに改めて気づかされる本です。

21 20の本で東日本大震災について触れられていたので、その事後処理である除染に関するこの本を読みました。まさに、ジャーナリスト魂というべき執念すら感じられる緻密な取材に基づき、除染にまつわる、政治家や官僚、お抱え学者などの、さまざまな欺瞞を暴いてくれます。つい先日「福島汚染土、県内で再利用計画 『99%可能』国が試算」という記事を読んで、とても違和感を感じていたのですが、その背景がよく理解できました。結局は、県外で最終処分をする汚染土の総量を減らすための結論ありきの、辻褄合わせに過ぎないのですが、その住民無視の政治家や官僚の傲慢さに恐怖すら感じました。実際、現在の人間の力では、打てる手は限られているのだと思いますが、それでも、被害にあった方々に誠実に寄り添う姿勢をもって対応いただきたいと強く思いました。また、そのためにも、私たちは少しでも事実を知る努力が必要なのだと思いました。

22 ブルボン小林こと芥川賞作家長嶋有さんによる、漫画に関する連載エッセイの2作目です。かなりマニアックな内容で、取り上げられている漫画も読んでいないものが大半なのですが、その視点や語り口の面白さにより、一気に読んでしまいました。読んだことのある漫画が取り上げられた回はやはり特に面白く、共感できるところやできないところも含めて、漫画の読み方の幅が広がった気がします。特に、吉田戦車さんに関する記述が多かったので(「愉快で笑えて、ちゃんと暗い」という「ぷりぷり県」評は言い得て妙だと思いました)最近読んでいない、「感染るんです」以降の作品も読んでみたくなりました。


■映画 
19 グリーンブック/監督 ピーター・ファレリー
20 ドラえもん のび太の宝島/監督 今井一暁

19 今年のアカデミー作品賞です。黒人差別をテーマにした作品で、その描き方について賛否が分かれていますが、互いの差異を理解した上で育まれる友情をコミカルな視点も交えつつ描いた、今の時代に非常に合ったよくできた作品だと私は思いました。確かに、黒人男性のキャラクターは特別な音楽の才能に恵まれたスーパー過ぎる存在ですし、その運転手役のイタリア人の描かれ方もかなり紋切り型です。しかし、差別する側の南部の人間は、わかりやすい悪意に満ちた警官から、過去の慣習に囚われて無自覚なままに差別を行う一見善良なレストランオーナーまで、様々なパターンが描かれていて、この問題の複雑さをうまく捉えていると思います。また、主要人物二人が、人種問題以外の様々な悩みや誇りを持っていることも丁寧に描かれていて、全ての人間が共通して持つ「生きにくさ」への優しい視線が注がれている点にも共感しました。丁寧に伏線が回収されていく心地よさもあり、観終わった後に、世界が少し美しく見えるような素敵な作品です。

20 昨年公開されたドラえもんの長編映画版です。最近のドラえもんの映画は脚本がよくできているものが多い印象ですが、この作品もテンポよく話が進んでいき、アクション描写もダイナミックで素直に楽しめました。CGのクオリティがかなり上がっていますし、しずかちゃんがガールズトークをするなど、妙に色っぽくなっているところも少しドキドキしました。「クイズ」というなぞなぞを随所にブッこんでくるロボットのキャラクターが登場し、子どもを飽きさせないという点でも、うまい設定だと思いました。「世界から猫が消えたなら」などの小説も書かれている川村元気さんが脚本を担当されているので若干説教臭いところや、親子や世界観の設定が「エヴァンゲリオン」に似ている点はご愛敬。子ども向けと侮ることなく、良質なものを創ろうという志に満ちた作品だと思います。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 人事こそ最強の経営戦略 | トップ | 蠕動で渉れ、汚泥の川を »

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事