本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

私は告白する

2021-07-31 07:45:49 | Weblog
■本
61 新世界秩序と日本の未来/内田 樹 、 姜尚中
62 陽気なギャングは三つ数えろ/伊坂幸太郎

61 内田樹さんと姜尚中さんが、最近の世界情勢について対談するシリーズの3作目です。コロナ後の世界を内田樹さんがどのように捉えているかを知りたくて読みました。サブタイトルにあるように、日本(そして韓国)が「米中の狭間でどう生きるか」について語られた本で、結論は過去2作と同様に米中どちらかにつくというわけではなく、東アジア諸国が連携してこの二大国の対立を回避する融和的な第三の道を探るべし(そしてそのための明確なビジョンを提示すべき)、であると私は理解しました。壮大で理想的なビジョンを提示することの大切さは理解しつつも、その第三の道の中心となるべく日韓関係がこの状況では、なかなかこのビジョンに楽観的に乗っかろうという気にはなりませんが、日韓両国とも米中の間でどのようなポジションを取るかによって、ここ数十年の国家の繁栄が大きく左右されるということはよく理解できました。今後国家的なリソースが大きく増大することのない日本では、今の台湾が半導体で勝ち得たように、ものづくりの分野で世界的に希少性を保てるような製品(それが新型コロナのワクチンや治療薬なのかもしれませんが)を育てていくことが、とても重要だと感じました。AIなどビジネスの分野でも安易に米中の競争に追随をするのではなく、第三の道を探るべきではとも思いました。

62 「陽気なギャング」シリーズの3作目です。先週2作目を読んだので、キャラ設定等を忘れないうちにと一気に読みました。作者ご自身が、各キャラクターの自由な動きを楽しんでいるというスタンスはそのままに、本作は前作とは異なり読者の予想を裏切るストーリー展開を意識されている印象です。伊坂さんの作品は読者の予想を裏切るあまり、完全勝利とはならない苦みが残るエンディングになることもあるのですが、本作は成瀬という超人的な先読み能力があるキャラクターがいるので、どんなに追い込まれても最後はハッピーエンドになるという安心感が良くも悪くもありました。この先読み能力の辻褄を合わせるために、ストーリーがかなり強引なご都合主義になるのもご愛敬です。これでもかというほどの外道ぶりを見せる敵役が、最後に成敗される爽快感が抜群です。伊坂さんの作品にしては深みはさほどないですが、シンプルに楽しめる痛快な作品です。

■映画
56 アクアマン/監督 ジェームズ・ワン
57 私は告白する/監督 アルフレッド・ヒッチコック

56 単純なストーリーにお金をかけて壮大な演出を施し、大作に仕上げるという、実にDCコミックスシリーズらしい作品です。海底人と地上人との間に生まれたそれなりに複雑な過去を持つ主人公ですが、マーベル作品の主人公にあるような面倒くさい葛藤はほぼ皆無です(もしくは葛藤してもすぐに立ち直ります)。いじめられっ子だった少年が、マッチョで粗野な大人に成長する様子もなかなか衝撃的で、よほど父親や海底人の後見人がうまく育てたんでしょうね。このシンプルなキャラクターは、複雑化する一方のマーベル作品(新スパイダーマンシリーズはそのあたりを考慮してか、かなりポップな作りにはなってましたが)と比べると新鮮でした。日本では大ヒットしないでしょうが、アメリカではこの差別化はありだと思います。映画館の大画面で、主人公の肉弾戦を大声で応援しながら観ると楽しそうです。コロナを克服しないとなかなか難しいでしょうが。

57 引き続きヒッチコック監督の作品を。「ダイヤルMを廻せ!」や「裏窓」といった代表作を撮る直前の1953年の白黒映画です。告白を他言することができないという神父の職業倫理を背景に、自分に容疑をかけられた事件で、真犯人を知っているのにそれを言うことができないという葛藤が巧みに描かれています。捜査の過程で主人公の神父の思わぬ過去が明らかにされるなど、予想がつかない展開に引き込まれます。終盤の法廷劇も緊迫感があって見応えがありますし、それだけでは終わらない最後のダイナミックな展開も見事です。主人公の高潔さと真犯人などの身勝手さを対比させつつも、最後は人間の良心に希望を見出している点も個人的には評価したいです。一見地味な素材をスリリングに仕上げる、ヒッチコック監督の手腕が光る良作です。
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