本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

ザリガニの鳴くところ

2022-12-10 07:21:25 | Weblog
■本
98 ダブルハーベスト/堀田 創 、 尾原 和啓
99 いまさら聞けない ITの常識/岡嶋 裕史

98 AIのビジネス上の活用について解説された本です。AIはデータを貯めてこそ価値があるので、まずはAIを活用して身近な課題を解決し(1回目の収穫)、その過程で蓄積されたデータを用いて、より大きな競争優位を築くループ(2回目の収穫:ダブルハーベストループ)を構築すべし、という趣旨です。楠木健さんの「ストーリーとしての競争戦略」のAI版といったところでしょうか?細かな差異と経験の積み重ねにより、時系列で競争優位を作っていくという思想と、データの蓄積による改善が得意なAIとの相性が美しいです。AIで当初から100%の精度を求めるのは難しいので、AIで判定できないものは人間が補い、その補正を通じてAIを強化していくという、AIに対する期待値コントロールも巧みです。学習用のデータはある程度AIでも作れるようになったらしく、データの量よりも新しいデータを生み出すループ構造が大切になっている(「データ・イズ・キング」から「ループ・イズ・キング」)という視点が参考になりました。自動運転や電子決済など、ダブルハーベストループの成功事例がハイブロウ過ぎて、2回目の収穫のイメージが少しわかりにくかった点が残念でした。「ストーリーとしての競争戦略」を未読の方はそちらから読むことをお勧めします。

99 ITを過大にも過小にも評価せずに、その本質を突いたとても素晴らしい内容でした。AIは人間から仕事を奪わないが、AIの教師あり学習データ作成のようなAIの下請的な仕事が増える(この点は「ダブルハーベスト」では、AI側の視点からポジティブに表現されていましたが)や、ブロックチェーンの電力消費量の多さの問題(ブロックチェーン技術がSDGsの課題解決につながるという主張に個人的に違和感を感じていました)など、これまであまり問題とされていない視点も提起されていて刺激をとても受けました。ERPの導入を例に、業務変革とシステム導入はセット(なので、既存業務に合わせるためにベストプラクティスが反映されたパッケージソフトを過度にカスタマイズするのは、その導入効果が限定的となる)という提言の切れ味の鋭さにも感心しました。要は技術は万能ではなく、そのメリットや生まれた思想背景も踏まえて、人間の生きがいなども考慮しつつ、適材適所で活用すべき、ということなのだと思います。IT人材を増やすには、教育だけではだめで、社会がその教育を受けた人に明るい未来を提示できるか(現状は必ずしも提示できてないので、医者や文系などに流れる人も多い)、が重要という提言も芯を食っていると思います。ITの基本的な用語の解説から、その知識をどのように活かせばよいのか、まで教えてくれる、多くのビジネスパーソンに読んでもらいたい本です。


■映画
73 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン/監督 石立 太一
74 サボテン・ブラザース/監督 ジョン・ランディス
75 ザリガニの鳴くところ/監督 オリヴィア・ニューマン

73 長男がアニメ版のファンだったので観ました。私はアニメの総集編と外伝しか観たことがないのですが、シリーズの完結編として、やり切った感がたっぷりの力作です。ひねくれた私には若干ウエルメイド過ぎると感じるところもありましたが、ファンの期待通りのクライマックスに至る盛り上げ方が秀逸です。各キャラクターや舞台設定も実に魅力的です。そして、なんと言っても圧倒的な画力が素晴らしいです。クライマックスの早朝の海水の描写の美しさには鳥肌が立ちました。京都アニメーションの底力が堪能できる傑作です。

74 一部でカルト的な人気を有している作品です。三谷幸喜さんが絶賛されていた記憶もあったので観ました。三谷さんがいかにもお好きそうな、「偽物が間違われて努力するうちに本物のヒーローになる」構造を持ったコメディです。ギャグが若干ベタなところと、突如ファンタジー要素が挿入されるご都合主義過ぎるストーリー展開など、洗練されていないところもありますが、軽快なテンポとエンディングの着地の爽快さで、後味のよい作品です。あとは、いかにもコテコテのアメリカのコメディアン3人のキャラクターが受け入れられるかで、評価が分かれると思います。逆説的に日本のお笑いの質の高さも、再認識させられました。

75 原作小説の評価がかなり高いので、映画版を観に行きました。アメリカの美しい湿地帯の風景と、そこの小さな家に一人残された少女が強かに生き延びる姿が印象的です。観終わった直後は、平均以上のクオリティではあるものの、そこまでスペシャルな作品ではないと感じましたが、よくよく考えると自然の摂理について深く考察された作品だと気づきました。そして、DVがあかんということを肝に銘じました。ただ、主人公が美し過ぎるので、彼女が月並みなルックスであった方が、より感銘を受けたかもしれません。原作小説での主人公の描写等を確認したくなりました。ありそうでこれまでなかった、不思議な引っ掛かりが残る作品です。
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