本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

子供はわかってあげない

2021-09-11 11:15:25 | Weblog
■本
72 DXの思考法/西山 圭太
73 絶望スクール 池袋ウエストゲートパークXV/石田 衣良

72 新聞の書評に取り上げられていたので読みました。まずは「抽象化」して考えてから「具体化」することの大切さや、デジタル化のメカニズムをレイヤー構造としてとらえる視点など、共感できる点が多かったです。特に、自社のDXのポジションを検討する上で「本屋にない本を探す」という比喩(私は、レイヤー化によりある程度標準化されたクラウドなどの既存技術を理解した上で、市場でどのような機能・要素が欠けているかを分析し、その中で自社の強みを活かせるもののみ、開発や能力強化により磨き上げ、そして、ソリューション化できた段階で市場に出していくこと、と理解しました)がしっくりと来ました。このような納得感のある比喩がある一方で、私の読解力不足のためか、イマイチ腹落ちしない比喩も随所にあったので、少し時間を置いて再読したいと思います(特にアーキテクチャに関する議論の「夜食のラーメン」の比喩が難解でした)。DXの成功事例のような即効性のある知識は得られませんが、タイトル通り、DXを実現する上での思考法を学べる本だと思います。この思考法を実際のビジネスにどのように当てはめるていくかの、試行錯誤が求められているのだと思います。

73 もはや個別の作品について語る必要もない、長期シリーズの文庫本での最新作です。文庫版が発売されると読みたくなります。社会問題に対する描写が詳細になる一方で(本作は「動物虐待」、「無謀運転」、「引きこもり支援を掲げ多額の費用を請求する団体」、「外国人留学生から搾取する語学学校」などが題材です)、マコトら主要登場人物によるその問題に対する解決手法のマンネリ化はますます進んでいます。複雑化、陰湿化する一方の社会課題に対する、ささやかな解決のカタルシスが得られる、現代の水戸黄門のような存在になっています。日本社会の課題をストリートの視点から学ぶという意味でも有意義な作品です。


■映画
67 栄光のル・マン/監督 リー・H・カッツィン
68 子供はわかってあげない/監督 沖田 修一

67 スティーブ・マックイーン主演の、タイトル通りル・マン24時間レースを舞台にした1971年の作品です。ドキュメンタリー・テイストで描かれているので、ル・マンの会場の空気感やカー・レースの迫力がとてもよく伝わってきます。会場内の何気ない映像を随所に配置する、細やかな編集がとても効果的に機能しています。逆に、ところどころに挿入される人間ドラマが、取って付けたような印象になるのは、ご愛敬でしょうか?レース展開は、昨年日本でも公開された「フォードvsフェラーリ」ととてもよく似ているので、後年に与えた影響が大きい作品だと推察します。グッドルーザーを描いた作品は個人的に大好きなので、とても好感を持ちました。カー・レースに興味のない人も楽しめる、シンプルに良い作品だと思います。

68 原作漫画が大好きなので、コロナの影響で公開が1年以上伸びましたが心待ちにしていました。映画化の話を聞いたときに、カギとなるシーン(少年がある伏線に則った行動をとった時にヒロインが現れます)をどう描くかがポイントだと思っていましたが、そのシーンはイメージ通りで、原作ファンとしてはとてもテンションが上がりました。おまけに、原作にはない、その行動の逆バージョンも描かれていて(ヒロインがある行動をとった時にその少年が現れます)、心憎い脚色に感心しました。それ以外にも冒頭の凝りに凝ったアニメーションからの長回しの家族の団らんシーンなど、個性的な演出も印象的です。ヒロインと、同じ趣味を持つアニメファンの少年、そして、ヒロインの生き別れとなっていた父親との関係に、原作からエピソードを絞って描いている点も成功していると思います。ヒロイン役の上白石萌歌さんの、この年代でしか表現できない瑞々しい演技は素晴らしいですし、原作とイメージは違うものの、父親役の豊川悦司さんの存在感は圧倒的でした。少年の兄(姉?)役の千葉雄大さんも難しい役を上品にかつコミカルに演じられています。原作を読んでいない人にも(こそ)、お勧めできる良作です。一方で、原作の圧倒的な完成度の高さを再認識させられました。あと、あるシーンが理由でPG12指定になっているのは、少し残念でした。確かに、原作通りなので、かなり難しい選択だと思いますが、ここはうまく対処してPG12指定を回避してもよかったのではと思いました。小学生が観ても十分楽しめる(というか小中学生にこそ観て欲しい)作品なので、シネコンではなくミニシアター系での上映だった点も含め、もったいないという思いを抱いております。
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