本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

銀河鉄道の父

2019-05-05 11:36:39 | Weblog
■本
39 銀河鉄道の父/門井 慶喜
40 二度寝とは、遠くにありて想うもの/津村 記久子

39 芥川賞と違って直木賞受賞作に基本的にはあまり興味はなかったのですが、宮沢賢治が好きなので、父親の視点から語られた彼の物語という着想が面白くて読みました。賢治が利発で従順な理想的な少年時代から、金を無心してくる厄介な存在を経て、自分のやりたいことを見つけて自立し、その道半ばで生涯を終える様子を、父親の子を愛するが故の弱さや矛盾と巧みに絡めて、丁寧に表現されている点が同じ父として、とても共感できました。誰もが知っている「雨ニモマケズ」をクライマックスに持ってくる構成も見事です。素材は同じでも、視点を変えることにより、小説はいくらでも豊かにオリジナリティのあるものになることを示す、素敵な作品でした。

40 引き続き津村記久子さんの作品を読んでいます。こちらはエッセイ集ですが、例によって仕事をテーマにしたものが多いので(その真摯な姿勢にはいつも感銘を受けています)、現実に引き戻されてGW中に読むには少し不適切でした。一方、終盤のゆるーい(なぜか必ずグッズについての記述で終わります)美術館訪問記は、休日中に読むのに最適で、次の休みに何か所かには行ってみたくなりました。あまり触れられることのない津村さんの生い立ち(普段の職場や作家としての生活はよく語られるのですが)についても、珍しく突っ込んで語られていて興味深かったです。最後はブラジルW杯の観戦記で締められ、全編を通して語られる、「仕事」、「孤独」、「リラックス」というテーマや、そのどこか自虐的なユーモアも含めて、実に津村さんらしい作品だと思いました。GW明けの仕事に向けての心構えがほんの少しですが、出来た気がします。


■CD
5 労働なんかしないで 光合成だけで生きたい/スガシカオ

 こちらはGW期間中に聴くのに最適なタイトルの作品。攻撃的なタイトルの割には、王道のスガシカオ節で、ファンク、バラード、ロックとバラエティに富んだ楽曲が縦横無尽に展開されます。暗い印象の前作「LAST」の方が、ある意味攻めていて、本作はファンの期待に応えつつ、楽しい作品を創ろうという意図を感じました。歌詞の方は前作と同様に幾分露悪的な私的なものが多い印象です。デビュー当初のような突き抜け感はないですが、いろんな葛藤や妥協を経た上での作品だと思うと愛おしいです。


■映画 
38 ザ・ウォーク/監督 ロバート・ゼメキス
39 バイス/監督 アダム・マッケイ
40 64-ロクヨン-前編/瀬々 敬久
41 64-ロクヨン-後編/瀬々 敬久

38 数年前に観た予告編の映像が記憶に残っていたので観ました。ワールドトレードセンターの屋上間を命綱をつけずに綱渡りをして成功させた、フランスの大道芸人フィリップ・プティの実話の映画化作品です。主人公の生い立ちや綱渡りの計画とその協力者を手際よく説明しクライマックスにつなげる展開の速さと、綱渡りシーンのスリリングで臨場感あるCG映像のクオリティは、さすが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロバート・ゼメキス監督です。見せ場を「綱渡りシーン」に絞って時間をたっぷりとった潔さは評価できますし、成功していると思いますが、それにしても長すぎますね。ハラハラして思わず、「何往復すんねん!」と呟いてしまいました。ただ、そう感じる時点で監督の策略にはまっているのだと思います。あまり頭を使わず、身体的に映画を楽しめる作品です。

39 息子ブッシュの下で副大統領を務めたディック・チェイニーの生涯を描いた作品です。予告編を観た印象では、もっとコメディ色の強い作品かと思っていましたが、語り口はやり過ぎなくらいシニカルなものの、極めてメッセージ性の強い作品でした。その一方できちんと娯楽性も担保されていて、このあたりのバランス感覚はアメリカ映画の美点だと思います。三権分立が機能していると言われているアメリカで、チェイニーによってその牽制機能が骨抜きにされたという事実やコピーライティング(「相続税」を「死亡税」と言い換えるなど)も含めた政治へのマーケティング手法の導入と、それを日本の現政権が参考にしているであろうことが伺えたところが、この映画を観た最大の収穫でした。権力者に批判的なこの作品が、作品賞や主演男優賞(主演のクリスチャン・ベールがここまで特殊メイクをする必要があったのかという疑問を感じますが・・・アカデミーメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しています)も含めて8部門も今年のアカデミー賞にノミネートされたという事実に、アメリカ映画界の批評精神を感じます(アメリカの三権分立と同じで実際にはかなり劣化しているのかもしれませんが)。

40、41 元号が変わるタイミングなので、昭和が終わる前後を舞台にしたこの作品をドラマ版、映画版と続けて観ました。ドラマも映画も一長一短がありますが、おそらく原作により忠実であろうドラマ版の方が個人的には好みでした(ピエール瀧さんや新井浩文さんが派手さはないものの、リアリティのある良い演技をされていましたし)。映画版の方は、元号が変わることによる被害者家族への影響(報道が改元一色になり他のニュースは報道されにくくなる)について、深く取り上げている点が、このタイトルの意味がより正確に伝わってよかったです。ただ、前後編と分けたミステリー作品の宿命か、前編で謎解き以外の見せ場が必要になるため、演技やストーリーが無駄に大きく、ドラマティックになっている点に少し抵抗を感じました。後編の方も見せ場の必要性のためか、謎が解けた後にアクション的要素が付け加わり、リアリティが売りの原作に極めて非現実的な要素が加わったことも残念でした。ドラマ版で主人公の妻を演じた木村佳乃さんの演技が素晴らし過ぎたので、映画版の評価が辛くなった面もあります。
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