本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

遠きにありて

2023-06-04 06:45:09 | Weblog
■本
42 遠きにありて/西川 美和
43 世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた/中野 信子
44 マンガでわかる 休職サバイバル術/加藤 高裕

42 私が大好きな「ゆれる」などの作品を創られた映画監督である、西川美和さんによるスポーツを題材にしたエッセイ集です。2015~2018年に書かれたものが収録されていて、広島のご出身ということもあり、2016~18年に3連覇した広島カープに関するものが多いです。黒田選手や新井選手のストーリー性のある、当時のカープの快進撃を懐かしく振り返りました。バレーボール部でずっと控えに甘んじていたことや、体育会的体質が残る映画業界で働かれてきた西川さんご自身のスポーツに対する愛憎入り混じる思いと、実際のアスリートの光と影の描写が絶妙に合わさって、どのエッセイもささやかな「人生の秘密」のようなものを感じさせてくれて、素敵な読書体験でした。プロアスリートも映画監督も、私のような普通のビジネスパーソンからすると、とても煌びやかな一方で想像を絶するプレッシャーにさらされ努力をされているのだと思いますが、それでも同じ職業人として共通する悩みや喜びがある点が、救いにも感じました。伊達公子さんが二度目の引退をされるまで自分で用具等を運ばれていた、というエピソードを題材にしたエッセイの最後に書かれた「ちゃんと自分で生きている人を私たちは見た」という一節が特に印象に残りました。

43 人を煙に巻くために「脳科学」や「量子力学」を用いる知識人が、最近多いような気が個人的にしておりまして、「敵の手口」を学ぶという意味も兼ねて読みました。タイトルから、ノーベル賞等をとった過去の偉人のエピソードを元にした本だと読む前は勝手に思っていましたが、実際は著者の中野信子さんが、東大、フランスの研究所やMENSA(世界の全人口で上位2%の知能指数に入る人のみが入会を許される団体、だそうです。ディストピアの匂いが少ししますね 笑)で、出会った人々のエピソードから、その行動の特徴を抽出した内容となっています。書かれていることは、多くの自己啓発本とほぼ同じで、「空気は読まない」とか、「嫌いな仕事は他人に振る」といった、それこそ「頭の悪い人」でも実行可能ですが、実際に本質を理解せずにやってみるとしっぺ返しを食らいそうな、シンプルで人によっては有益なアドバイスが満載です。冒頭で述べられている「逆境も味方にして、したたかに生き抜いていく」というメッセージのみは共感できるものでした。こういう知識人のわかりやすいメッセージを丸ごと受け止めるのではなく、自分に都合のよいところだけしたたかにつまみ食いして、日々を生き抜いていくために参考にしていくことが大事なのだということを学びました。皮肉な表現になりましたが、時代のニーズを読み取り、ベストセラーを連発されている中野さんの嗅覚は、ビジネスパーソンとしてはやはり見習うべきだと思います。

44 身近に休職をする人が最近増えてきたので、アドバイスをする際の役に立てばと思い読みました。メンタル不調の原因から、主治医と産業医の違いや休職・復職に至る制度やステップに至るまで、コンパクトにわかりやすくまとめられていて、とても実用的です。休職する当事者としても、その方を支える周囲の人にとっても、参考になる本だと思います。休職、復職を円滑に進めることが、社員にとっては個人のキャリア形成上重要であるというだけでなく、会社側の人的資源管理の側面からも有益であるという点が強調されている点もユニークだと感じました。タイトルに「マンガでわかる」とありますが、解説が充実していて結構読み応えがあります。この本の内容を基礎知識として持っておけば、メンタルダウンした際の選択肢が増えて有益だと思います。


■CD
2 ひみつスタジオ/スピッツ

 本作はタイアップ曲にキャッチーなキラーチューン(「美しい鰭」のサビはついつい口ずさんでしまいます)が多く、その一方で、実験的な楽曲(「未来未来」の民謡調の声がインパクトがあります)もあってアルバム全体のバランスもよく、かつ、メンバー全員でボーカルを取る曲(「オバケのロックバンド」)に象徴されるようにバンドとしての関係性の良さも感じられ、近年で最も充実した印象の作品です。野心をあまり見せないバンドが、久しぶりに本気を出した快作です。売れて欲しいです。


■映画
37 キネマの神様/監督 山田 洋次

 志村けんさんが主演予定でしたが、新型コロナウイルスの感染、死亡により沢田研二さんが代役となったことでも話題になった作品です。その他にも、RADWIMPSの野田洋次郎さんが出演されていて、菅田将暉さんと主題歌を共演されているなど、とにかく話題が豊富だったのでいつか観たいと思っていました。山田洋次監督作品らしく、人間愛に溢れたやさしい作品でした。永野芽郁さん、北川景子さんは実に魅力的ですし、リリー・フランキーさん、宮本信子さん、寺島しのぶさんの演技は存在感抜群です。とにかく出演者が豪華で、観ていて楽しいです。一方で、ストーリーの方は、私が親の借金に悩まされた過去を持つこともあってか、主人公の無責任さにあまり共感できませんでした。妻や娘に対する感謝の念は、さすが山田監督だけあって巧みに表現されていて、それはそれで感動的ではあるのですが、エンディングも含めて、他人に迷惑をかけ続ける姿は、好きにはなれませんでした。主人公に共感できるかどうかで、映画の評価が決まるわけではないですが、主人公の行動をツッコミ出すと、その他の細かなリアリティのなさも気になってしまいました。小津安二郎さんの作品などへの敬意は強く感じましたが、映画愛の描き方はもう少し工夫の余地があったのではと、最近観たデイミアン・チャゼル監督の「バビロン」と比較すると少し思いました。それでも、山田洋次監督の匠の技でトータルでは良い映画を観たという満足感が得られました。ウディ・アレン監督の「カイロの紫のバラ」を久しぶりに観たくなりました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする