本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

コーダ あいのうた

2022-08-13 07:43:23 | Weblog
■本
65 ジンセイハ、オンガクデアル/ブレイディみかこ
66 1週間でGoogleアナリティクス4の基礎が学べる本 /窪田 望 、江尻 俊章、他

65 ブレイディみかこさんの2作目のエッセイ集の文庫版です。ブレイディみかこさんが「底辺託児所」と呼んでいた、失業者や低額所得者支援施設に付設された託児所勤務時代のエッセイと映画や音楽のレビューがまとめられた本です。イギリスの失業者や低額所得者が置かれた窮状と支援施設に勤務されている人々の苦難の日々が、再三登場する「人生は一片のクソ」というメッセージに象徴的なように絶望的かつ怒りに満ちたトーンで語られます。そこには「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(この作品はブレイディみかこさんの11作目だそうです)で表現される、希望の要素はほとんどありません。しかし、「ぼくはイエローで~」で成長した姿が描写されている問題児の幼少時代が描かれていて感慨深くもあります。福祉予算が削減される一方で、格差社会は依然として残り、その上たくさんの移民が集まり混沌としたイギリス社会に絶望しつつ、それでも、自分の人生を(たとえクソではあっても)自分で選択できる余地の多いイギリスで暮らす方が、日本で生活するよりも(少なくともブレイディみかこさんにとっては)ましである、というメッセージも全編に貫かれているような気がしていろいろと考えさせられました。映画評では「ザ・ストーン・ローゼズ」のドキュメンタリー映画が観たくなりましたし、音楽評に取り上げられた、ディープなイギリス音楽はその音楽をサブスクで聴きながら楽しみました。ブレイディみかこさんの作家としての矜持と社会に対する怒りが感じられる、エネルギーに満ちた作品です。

66 タイトル通りウエブアクセス解析ツール、Googleアナリティクス4(GA4)について学べる本です。現状のユニバーサルアナリティクス(UA)からの切り替えが来年に迫っているにもかかわらず、ほとんど勉強できていなかったので読みました。GA4が誕生した背景やその特徴(UAとの違い)、そして、実際の画面を見ながらの操作や設定の方法、さらにはGoogleタグマネージャーやGoogleデータポータルといった他プロダクトとの連携まで説明されていてとても参考になります。各章の最後に復習用のおさらい問題が掲載されている点も知識の定着に役立ちます。実際に操作しながらでないとわかりにくい部分もありますが、細かいところまで丁寧に説明してくれている良い入門者だと思います。


■映画
45 馬上の二人/監督 ジョン・フォード
46 コーダ あいのうた/監督 シアン・ヘダー

46 コメディタッチで始まる冒頭シーンの印象から、タイトル通り二人のマッチョな男の友情を描いたお気楽な西部劇かと思って観ていると、話は予想もつかぬシリアスな方向に展開します。コマンチ族に拉致さらた人々を救う話ですが、コマンチ族よりも白人側の非寛容さ、残酷さが強調されている点が、さすが、ジョン・フォード監督、一筋縄ではいきません。コマンチ族に拉致され育てられた少年の悲劇は、人間の罪深さ、浅はかさをこれでもかと突き付けてきます。主人公の保安官のコミカルかつクールな演技が、若干の救いとなりますが、それも全体を流れる重いメッセージを中和するまでには至りません。それだけに、主人公の最後の決断が説得力を持つのですが、完全なカタルシスは得られません。そのもやもやとした感じが作品に深みを与えているとも言え、不思議な味わいの作品です。ジョン・フォード監督の深い人間洞察力が感じられます。

46 今年のアカデミー賞で作品賞等主要3部門を受賞した作品です。少しウェルメイド過ぎるかなとも思いましたが、素直に感動しました。CODA(Children of Deaf Adult/s きこえない・きこえにくい親をもつきこえる子ども)というあまり注目されない存在をテーマにし、課題提起した点も素晴らしいと思いましたが、フランスの映画「エール」のリメイク作品なんですね。そちらも観てみたいと思いました。ネタ元作品の方を観てないので、どこまでが本作のオリジナルなのかはわかりませんが、どのキャラクターもどこか欠陥のある人物として描かれている点が、単純な美談に終わらせない魅力となっています。聴覚障がい者の両親はかなりわがままですが、それだけに、最後に下した決断の重さが尊いです。聴覚障がい者と健常者(とされる人々)との間には、乗り越えがたい壁があるということを、主人公の少女の歌唱シーンで見事に表現した演出にも唸らされました。癖は強いものの実は生徒想いの良い人である音楽教師は、ハリウッド映画で定番のキャラクターですが、ベタであるが故に心が惹かれるものがあります。観る側に安易な善悪の判断を強要しないスタンスも共感を持ちました。なにより、同じ年頃の子を持つ親として、子の旅立ちのシーンには弱いのです。涙腺がかなり刺激された作品でした。
コメント
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