本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

リバティ・バランスを射った男

2021-11-06 07:39:29 | Weblog
■本
89 麹町中学校の型破り校長 非常識な教え/工藤 勇一
90 正義を振りかざす「極端な人」の正体/山口 真一

89 先週に読んだ鴻上尚史さんとの対談本に感銘を受けたので、引き続き、元麹町中学校長の工藤勇一さんの本を読みました。子どもの成長、学びにとって何が大切か?についての本質を徹底的に考え、実践されてきた姿勢に圧倒されました。「差別をしないとは知識と技能です。心の在り方ではありません」という「心の教育」を部分否定する言葉や、「みんなと合わせるか・合わせないかは自分で決めればいい。全然たいした問題ではないよ」と「協調性」について部分否定する言葉は、私も学生時代にかけてもらいたかったですし、今、組織で仕事をする中でも心に染みました。なにより、「夢はかなうとは限らないけど、夢に向かって走り出した人にしかチャンスはやってこない」という、大人は誰もが感じていてもなかなか声に出せない真実を、中学生に向かって話されている誠実な姿勢には共感しました。「手段と目的を混同しないこと」、「自分と他人との違いを認めること」、「自分を客観視して認識する力を持つこと」など、子育てに参考になることはもちろんのこと、現代社会をサバイブする上で必要な知識・ノウハウが得られるとても良い本です。

90 SNS等で不適切な発言・投稿をした人、不祥事を起こした人に対し、執拗に否定的なコメントを投げかける人や、リアル社会でいわゆるクレーマーと呼ばれる人たちの実態を解説してくれる本です。昨今ニュースなどでも伝えられるようになりましたが、これらの「極端な人」が、よく言われているような経済的にあまり恵まれていない暇な人ではなく、実は比較的年収が高く社会的地位もそこそこある人が、独自の「正義感」にかられて行動していることが多いという実態に、あらためて考えさせられることが多かったです。裏を返せば、この「極端な人」が特殊な人ではなく、自分を客観視できなくなれば誰にでも陥る状況であることを私も反省したいと思います。また、ネットの炎上に対し、テレビを筆頭としたマスメディアが、実は大きな役割を果たしているという指摘も納得感がありました。言論の自由や個人情報保護などとの兼ね合いでネット上の規制を強化することは難しいですし、拙速に取り組むべきではないと私も思いますが、少なくともマスメディアに対しては、安易に炎上に加担するような行為を避けるような仕組みを検討すべきタイミングに来ていると思います。実態解明だけでなく、その対策についても詳細に語られています。特に、言論の自由に与える影響や権力者側の過剰な適用など、法規制のメリット、デメリットについても詳細に考察されているところと、自らが「極端な人」にならないための心構えが書かれている点が参考になりました。ネットのいろいろな問題を指摘しつつも、その可能性に対する希望も感じられます。


■映画
80 リバティ・バランスを射った男/監督 ジョン・フォード

 引き続き、ジョン・フォード監督作品を。内田樹さんもおっしゃっていたような気がしますが、民主主義の成り立ちを実感する上で、とても参考になる作品です。西部開拓時代のアメリカで、先に入植した地主と後から移住してきた人々との対立が激化し、それを暴力ではなく(「暴力」の象徴がリバティ・バランスなわけですが)、様々な犠牲を経て、選挙など法と秩序により解決しようとされてきたことがよくわかります。「法と秩序」という言葉を、トランプ元大統領が自分の都合のよいように使い、それに従う人たちが多数いたことの皮肉や、先日の日本の選挙での投票率の低さについてもいろいろと考えさせられました。それでいて、ベタではありますが、切ないラブストーリーとしても見事に成立していて、これまでに観たジョン・フォード監督作品の中で、最も優れたものの一つだと思います。ジョン・ウェイン演じる粗野だが心優しいカウボーイが、実に渋くいい味を出しています。学びの大切さ、喜びについても訴えかけてきます。メッセージ性とエンターテイメント性を両立させた、味わい深い余韻の残る素晴らしい作品です。民主主義について問われることの多い、今こそ観られるべきだと思います。
コメント
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