本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり

2018-06-30 06:26:40 | Weblog
■本
52 暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり/吉本 佳生、西田 宗千佳
53 森は知っている/吉田 修一

52 タイトル通り「ビットコイン」とそれを支える「ブロックチェーン」等の暗号化技術について解説された本です。情報技術の側面と経済面の双方から解説されていて、「ビットコイン」の与える社会的、技術的インパクトを的確に把握することができて非常に参考になりました。「公開鍵」については常々なぜ「公開」されているのに暗号化できるのかが疑問だったのですが、この本を読んでその意味がやっと理解できました(暗号が解けないわけではなく、解くために膨大な演算力が必要なのでコスト的に割に合わない、ということのようです)。「ビットコイン」に何ができて(例えば、国際的な匿名の少額決済を行う上では非常に強力でこれにより匿名の「投げ銭」などの文化が普及するかもしれない)、何ができないか(例えば、EUの通貨統合の失敗に見られるように経済力に差がある国々で統一通貨を用いることには様々な弊害があるので、世界的な統一通貨となる可能性は低い)を理解し、個々人がどのように付き合っていけばよいかを知るにはとても良い本だと思います。

53 吉田修一さんによる企業スパイ小説「太陽は動かない」の前日譚的作品です。主人公鷹野の高校生時代の生活と企業スパイになるための訓練の様子が描かれています。芥川賞作家がエンターテイメント作品を書いているので、情景や登場人物の心理描写、そしてストーリーの語り口が抜群にうまくとても読みやすいです。ただ、そのリアリズムに徹した文体と荒唐無稽なストーリー展開(心臓に爆弾が埋め込まれます)が若干アンバランスで、かえって作り物感が目立ってしまっています。小説が虚構の世界であるのは当然なのですが、その作品世界に入り込めず、常にその虚構の世界を俯瞰して見ているような感覚を感じてしまいました。「太陽は動かない」と比べると、各登場人物がクールに徹し切れておらず、少し行動に一貫性がない点も共感を妨げています。映画化を前提に書かれていると思うので、映像化するとどんな世界観になるかが楽しみです。


■CD
10 誕生/チャットモンチー

 チャットモンチーのラストアルバム。最終作にして打ち込みやヒップホップ的要素を持ち込み、新しい試みをしているところが、常に音楽的進化を模索していたこのバンドらしく微笑ましいです。このバンドの最大の特徴である橋本絵莉子さんのキュートな歌声と捻りの効いた媚びない歌詞は健在で、しみじみと心に染み入ります。7曲30分という微妙な長さの作品なので、もっと聴いてみたかったという物足りなさと、これ以上の楽曲を作ることは難しかったのかもとかいろいろと考えさせられるところもありますが、一つの時代を築いた素晴らしいバンドの素敵な作品です。


■映画 
50 沈まぬ太陽/監督 若松 節朗
51 ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー/監督 ロン・ハワード

50 山崎豊子さんの原作作品を初めて観ましたが(恥ずかしながら小説も読んだことがないです)、抜群に面白かったです。日本でなんらかの組織に属する人間に共通する憤りを、リアリズムに徹しながらかつエンターテイメント要素もふんだんに盛り込みつつ、巧みに描かれています。長編の作品ですが最後まで完全に引き込まれてしまいました。予想を微妙に裏切るストーリー展開は、物語にカタルシスを求める人にとっては評価が分かれるかもしれませんが、個人的には安易な勧善懲悪に陥らないところに、かえって大人の知性を感じました。どんな苦境に陥っても挫けない主人公の不屈の精神は、自分がそのようにできないだけにとても共感しましたし、そのように感じる人も多いのではないでしょうか?組織に対する個人の無力さをこれでもかと思い知らされるのに、それでも勇気が湧いてくる不思議な作品です。多くの海外ロケが必要で、某航空会社からの抵抗も予想される、映像化がかなり難しそうな作品を実現したスタッフの熱量も伝わってきます。素晴らしい作品だと思います。

51 アメリカでは製作費の回収が難しいなど、あまりいい評判を聞かない作品ですが、普通の新作として観ると、スピーディーなストーリー展開と、予想を裏切る展開、そして、ダイナミックな映像が魅力的なそう悪くはない作品だと思います。しかし、スター・ウォーズのスピンオフ作品として観ると、同じスピンオフ作品の「ローグ・ワン」が完璧な作品だっただけに、少し物足りなく感じました。何より、スター・ウォーズの世界観に厚みを持たせる要素がほぼなかったことが残念です。ハン・ソロの名前の由来、チューバッカやミレニアム・ファルコン号との出会いのエピソードは、それなりに興味深いものの、所詮はトリビア的な要素に過ぎず、ハン・ソロが後のスター・ウォーズ作品で果たした役割により強固な裏付けを与えるものではないと感じました。極論すれば、ハン・ソロが主人公でなくても成り立つ話で、それはそれでよくできた脚本だとは思いますが、「スター・ウォーズ・ストーリー」と名乗られるとどうしても評価が厳しくなってしまいます。
コメント
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