本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

恋の渦

2018-06-16 10:36:20 | Weblog
■本
48 偶然のチカラ/植島 啓司
49 広く弱くつながって生きる/佐々木 俊尚

48 タイトル通り「偶然のチカラ」について書かれた本というよりも、偶然をどのように解釈すれば幸せになれるか(「幸せ」という言葉が強すぎれば、「心の平安が保てるか」)について書かれた本です。ロジカルな「偶然論」ではなく、「偶然」についてのエッセイ集といった趣です。不確実性が高まり、理不尽なことが身に降りかかることが多い現代社会にとっての癒しの書とも言えます。個人的には、人生の座標軸を「幸運」、「普通」、「不運」の3段階に分け、それぞれの比率を5%、90%、5%とした場合、90%の「普通」の状態に感謝すべき、という考え方に感銘を受けました。結局は、「偶然」とは自分にコントロールできないことと割り切り、流れに身を任せつつ、自分にコントロールできること(心の持ちようや習慣など)に集中し、「偶然」とうまく付き合っていくことが大切なのだと思います。

49 マーク・グラノヴェッターの「弱い紐帯の強み」理論(家族や友人といった強いつながりよりも、知人くらいの弱いつながりが多い方が、求人などの自分に有益な情報を得る上では有利に働くという理論)を背景に、終身雇用制が崩壊し、会社に依存し過ぎない生き方が求められる現代社会では、「広く弱くつながって生きる」ことが重要という趣旨の本です。佐々木俊尚さんが、ソーシャルメディアなどを活用しながらどのように、世代を超えた弱いつながりを多く構築し、東京、軽井沢、福井の3拠点で生活する多拠点生活を送るまでに至ったかの具体的な方法やプロセスが書かれているので参考になります。経済成長が限界に達した現在の日本では、到達した成果よりも過程を楽しむべき、という考え方も好感が持てました。私も定年後の生活に備えて、自分の興味・関心に応じた、世代を超えた緩いつながりを、無理のない範囲で構築していきたいと思いました。


■CD
9 TELL ME HOW YOU REALLY FEEL/Courtney Barnett

 キャッチーな曲をいくらでも書けるのに、いきなりダークな曲から始まるリスナーに媚びない姿勢がとにかく格好いいです。円熟味というとチープな表現になりますが、若さの勢いに任せたデビュー作と比べると、自分の好きな音楽を熟考を重ねながらじっくりと創り上げた印象が強いです。現在の音楽シーンの中で、ここまで個性的な音を鳴らせるアーチストはあまりいないのではないでしょうか?このスタンスのまま、派手さはないものの良質なロックを発表し続けて欲しいです。


■映画 
44 グリーン・ランタン/監督 マーティン・キャンベル
45 恋の渦/監督 大根 仁
46 続・深夜食堂/監督 松岡 錠司
47 万引き家族/監督 是枝 裕和

44 先々週に観た「デッドプール2」で自虐的に取り上げられていたので逆に興味を持って観ました。そこまで酷い作品とは思いませんが、独特の難解な世界観を説明するのに時間を要し、肝心のクライマックスがあっけなかったところが低評価の理由な気がします。登場人物の関係性をもっと手際よく整理すればよかったのかもしれません。また、主演のライアン・レイノルズはそれなりに魅力的でしたが、「デッドプール」のぶっ飛んだキャラクターと比べると、一見無謀で傲慢だが、実は優しくて責任感が強いというありがちな設定は弱いですね。地球だけでなく全宇宙の平和を目指すという壮大な話は、他のヒーローものと一線を画すと思うのですが、それが身近な幼なじみの嫉妬に収斂するというアンバランスさも残念でした。

45 こちらもラフでダラダラとした展開が続く冒頭20分くらいは観ていて辛かったのですが、それがリアルさと登場人物の浅薄さを表現する演出上の意図と気づいてからは抜群に面白く感じました。有名俳優がおらず、場面変更のほとんどない室内劇にもかかわらず、男女それぞれの打算と下衆さが渦巻く人間関係だけで、ここまでスリリングに描く手腕は見事です。恋愛を美化しすぎず、生々しくかつチャーミングに描く大根仁監督の本領発揮とも言える作品です。人間の弱さ、身勝手さを執拗に描きつつ、エンターテイメントとして成立させている脚本も素晴らしいと思います。低予算でも、製作スタッフ側の才能とタイミングが合えば、観客を魅了する作品が創れるという見本のような傑作です。

46 先週に引き続き続編の方も観ました。世界観がわかっているので安心して楽しめました。テーマが比較的緩めのものが多く、また、前作よりも主人公のマスターのコミカルな側面が強調されていて、気楽に力を抜いて観ることができます。仕事に疲れた週末の夜に、軽く晩酌しながら観るとよいかもしれません。前作同様にオダギリジョーさんが、一風変わった心優しいお巡りさんを好演されています。

47 言わずと知れたカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した話題作です。映画館もかなり混んでいました。こんなに混んでいたのは「君の名は。」以来かもしれません。明らかに普通の作品とは客層が異なり(普段映画を観ない人がたくさん来場されていた気がします)、賞を取ることの重要性を再認識しました。内容の方は、現代日本を巧みに切り取るテーマと映像、そして、観る側に解釈の余地を残す安易な善悪の二元論に陥らないストーリー展開といった、いかにも映画祭が好みそうな要素を全て兼ね備えています。それでいて難解にはならず、子役二人の演技や使い方もいかにもお涙頂戴的ではなく周到に計算されていて、このあたりの抑制の効いた演出に好感が持てます。シリアスさの中にもコミカルさを備えた演技を見せる俳優陣の演技も素晴らしく、キャスティングの妙も味わえます。バットエンディングへと向かう大まかなストーリー展開は凡そ予想できるものの、その着地点が最後までわからず、途中で観客を飽きさせず、かつ、後味も悪くない是枝監督の手腕も見事です。
コメント
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