本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

THE PIER

2014-10-01 08:02:14 | Weblog
■本
85 スマートグリッドがわかる/本橋 恵一
86 ご先祖様はどちら様/高橋 秀実
87 グローバリズムという病/平川 克美

85 「スマートグリッド」を技術的側面ではなく、そのビジネス面での可能性について語られた良書です。「スマートグリッド」、「スマートメーター」、「HEMS」など、ここ数年経済面で取り上げられることの多いこれらのワードが、何を意味していて、なぜ注目されているのか、を手早く理解するのに役立ちます。海外の多くの国ではそもそも各家庭に安定して電気を送る、というベーシックなところで「スマートグリッド」が必要とされていて(「盗電」が普通に行われていることにも驚きました)、日本の送電網は品質がかなり高いため、「スマートメーター」導入のコストアップを吸収できるだけの付加的なベネフィットをいかに見出すか、がその普及上重要である、ということも理解できました。

86 高橋秀実さんがご自身のご先祖を調べるというノンフィクションです。相変わらずのユルい感じの中にも、一般常識とは異なる斜め下辺りからの視点の独特の解釈もあり、自分の思考の枠組みが軽く揺さぶられるような不思議な読書体験が得られます。先祖はわからない部分がある方が救われるといったことが書かれていたと思うのです、言われて見れば確かにその通りだと思いました(先祖が貴族とかだったとしても息苦しいですし、まして極悪人とかだったら救われませんし、、、とはいえ、何代も遡ると、ある程度立派な人やろくでもない人は、誰の先祖にも当然いそうですし)。私が歴史に弱いからなのだと思いますが、高橋秀実さんの本にしては少し読みにくいので、読了まで結構苦労しました。

87 「僕はこの本のすべての頁に同意署名できる。」という内田樹さんの推薦文に惹かれて読みました。確かに、内田樹さんがいろんなところで書かれているような、経済成長一辺倒の考え方に一石を投じる内容です。「国際化の推進」という流行の論調に後乗りする有識者が多い中、極めてロジカルにその論調に反論できるのが本当の知性なのだと思います。「グローバリズム」を「グローバリゼーション」(前者は国家を超えた存在となった多国籍企業至上主義というイデオロギーで、後者は「国境を越えた商品経済の拡張化」という現象、というのがこの本の立場です)と分けて議論している芸の細かさにも感心しました。全てのページに同意署名というわけではありませんが、なんでもかんでも国際化という風潮に違和感を感じる人にオルタナティブな考え方を提示する興味深い本だと思います。


■CD
45 THE PIER/くるり

 美しい打ち込みインストから始まり、昭和歌謡風の曲やタイトルそのまま(「遥かなるリスボン」)の南欧風のサウンドもあり、くるり史上最もごった煮的な印象の作品です。その中にも「loveless」という、シンプルなギターポップの王道くるりサウンドの名曲や過去の傑作「ワルツを踊れ」を思わせるストリングスが導入されたバラード(「Remember me」)もあり、僕のような昔からのファンの満足度も高いと思います。その多様性を象徴する転調続きの「Liberty & Gravity」というぶっ飛んだ楽曲もあり、企みに溢れた野心的な作品です。その一方で全体を通してとてもリラックスした感じなのも、ベテランの余裕が感じられて(実際にはかなり苦闘して作られたのだと思うのですが)素敵です。


■映画
66 愛を読むひと/監督 スティーブン・ダルドリー

 隙のない緻密な演出がなされた手堅い作品です。暗いテーマの作品なのですが、重苦しくなりすぎず、サスペンス的要素を巧みに活かして、ぐいぐいとストーリーを展開していく手腕が見事です。決して上映時間は短くないのですが、その長さが全く苦に感じませんでしたた。ヒロインの抱える恥の意識が個人的にはそれほど共感できなかったので(彼女の欠陥が人生を棒に振るほどの恥なのかを、僕にはいま一つ理解できませんでした)、そのあたりの説得力を持たせるエピソードがあってもよかったのでは、と少し思いました。歴史に明るい人には自明なことなのかもしれませんが、そこが少し残念でした。ケイト・ウィンスレットは、オスカーの主演女優賞受賞者にありがちな、やり過ぎな感じではない抑えた上品な演技で、とてもすばらしかったです。老いたヒロインを醜くし過ぎなかった(普段はきれいな女優とのその落差を演技力と勘違いする人が多いような気がします)、スタッフの節度とセンスも感じました。
コメント
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