かたちを結ぶことはできない
どこへも行き先は明かされない
ひとつの色に染まること、そうではなく、ちがった色が滲むこと
ふたつの方角から、おそれとおびえはやってくる
おそれるまま、おびえるまま
にもかかわらず、心を走らせるものがいる
*
エリック・サティ、ドビッシーの音楽
若い日、そんな作品を書きたいと安吾は友に語った
戦後、アントン・チェーホフのような静かな小説を書きたい
そう云いながら、チェーホフからほど遠いぎりぎりの作品
死んだ女への想いに決着をつけるように
生き残ったおのれを試すように『夜長姫と耳男』を書いた
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