講談師、神田愛子が卒業生先輩として、母校の6年生の課外授業を受け持つドキュメント。
神田はまず最初に講談師然とした自己紹介を扇を叩かせながら、生徒全員にさせる。
久しぶりに大きな声をだしたのでスッキリしたと応える生徒。神田愛子は次に講談のネタである偉人伝を紹介する。
美容師の山野愛子を取り上げ、彼女の尋常でない苦労話と実業家として成功した話を講談で披瀝。
誰にも苦労・絶望・ピンチがあるはずと、話の軸をそこで生徒に教える。
そして、生徒全員に課外授業で、自分たちの周囲の先人の苦労話を校外に出て取材させる。生徒たちは商店街の店主や自分の祖父・母たちの苦労・絶望・ピンチ切り抜けの実際をヒアリングして来てそれぞれ発表する。
終章が素晴らしい。芸能人のまとめとは思えない教育的で優れたものだった。
今度は生徒たちに自分自身の悩み・苦労を発表させるのである。
出る出る!父母の離婚で片親家庭になった男子生徒、仲間はずれになりかかっている男子生徒、赤ん坊のころタマゴアレルギーで瀕死になった自分を料理や家具環境の徹底改善で今も神経質になっている母親の苦労を語る女子生徒。
そしてまた、母親が重病で倒れたが、仕事で忙殺されている父に代わって、母親を看病している女子生徒の涙の訴え。
なんと彼女は涙を落としながら講談師然として扇を叩いている。
辛く悲しい気持ちと、しかし父母への愛情がない交ぜになった複雑な気持ちを精一杯表現しているのである。
観ていた私までが落涙。
その後、一重まぶたの自分の顔にコンプレックスを感じ悩んでいた生徒が、自分より深刻な悩みを持っている人が居ることを考えれば、自分の悩みなどは甘かったと素直に認識できたことを述懐する生徒も出てくる。
課外授業の時間は短かかったけれど、深い実のある経験が子供たちを急激に成長させた感である。
イジメや生徒の自殺が頻発している現代日本の学校の水面下の実態を、学者や研究者の調査ではなく、全く別世界の人によって赤裸々に知らされた思いである。
教育者としてはズブの素人であるはずの一講談師の「課外授業」は、この世の中を共に生きる人間同士(それは教師と生徒という関係だけでなくても良いと思う)の連帯を教示している内容であったように思える。
生徒はそこに敏感且つ強く共鳴されて学校という枠内では開かれることがなかったかも知れない、自分の閉ざされようとしていた心をぼつぼつとではあるが、しかし赤裸々な熱い真実を語るようになったのである。
素晴らしい教育番組であった。ビヴァ!神田愛子。
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