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★CPI接続問題の概要(中日新聞編集委員 白井康彦)/厚労省の指標「生活扶助相当CPI」はデタラメ!

2013-07-24 22:02:30 | 市民運動/市民自治/政治
生活保護の生活扶助基準の段階的切り下げがついに8月から実施。
主たる理由は、物価下落への連動です。

しかし、
生活扶助費で買う品目の物価の下落度を示すために
厚生労働省が開発した指標「生活扶助相当CPI」がデタラメだそうです。

「こんなデタラメ指標で命綱の生活扶助費を過剰カットしていいのか」
と力説されている中日新聞の白井康彦さんが
研究報告文などを寄せてくださいましたので、以下に紹介します。

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(転送・転載歓迎です)
 
★CPI接続問題の概要 ★   
     中日新聞名古屋本社生活部編集委員 白井康彦 


「架空に近いデタラメ指標」
 厚労省の生活扶助相当CPI(消費者物価指数)の算出方式の重大な問題点の2つ目が国会審議などで明らかになりました。
今まで私たちが問題提起してきたのは、「生活扶助受給世帯の消費実態が無視されている」というウエイト(支出割合)絡みの話でした。
6月以降に私が理解できたのは、基準年が違う平成20年と23年の生活扶助相当CPIを比較するための接続方式(換算方式)の問題です。こちらの方がより重要です。
生活扶助相当CPIは、生活扶助費で買う品目の消費者物価指数といった意味。CPIは、もともとは総務省統計局が調査して発表しています。通常のCPIをベースにして厚労省が開発したのが生活扶助相当CPIです。

 「2通りの物価ができていいの?」
 多くの品目の物価指数の加重平均である総合平均的な物価指数をどう算出するか。総務省統計局が通常のCPI(消費者物価指数)で行っている方法と厚労省の生活扶助相当CPIの方法とでは、重大なくい違いがあります。同じ年の同じ品目群を対象にした加重平均の物価指数が、計算方法の違いでまるで違う数字になるのです。
厚労省方式は、CPI算出の原理原則を破っているように思います。厚労省が算出した平成20年の生活扶助相当CPIは「架空に近いでたらめな数字」のように思えます。生活扶助費で買う品目群についての物価が2通りあっていいのでしょうか。いいわけありません。統計の信頼性が揺らぐ重大な事案です。

総務省統計局が調査するすべての品目を対象にした全国の総合CPIと、厚労省の特殊な方式で算出した生活扶助相当CPI、通常の方式で算出した生活扶助相当CPIの平成16、20、23年の数値を並べてみます。



総合CPIと通常方式の生活扶助相当CPIは概ね似た推移。厚労省の特異な方式で算出された生活扶助相当CPIだけが特異な動きを見せています。
厚労省は、20年と23年の生活扶助相当CPIを比較して4・78%下落としています。私が通常方式で生活扶助相当CPIを計算した結果、この3年間の下落率は2・36%でした。20年から23年にかけての総合CPIの下落率2・35%とほぼ同じです。

 「本当の下落率は1%台以下?」
 20年は物価がやや高い年なので、生活困窮者の支援団体側は平成16年を起点に、と主張しています。厚労省は、23年と16年の比較なら下落率は6・40%とさらに大きくなる、と説明しました。
ところが、私が通常方式で16年の生活扶助相当CPIを計算して23年と比較したところ、下落率は1・39%でした。検算の必要はありますが、こんなものだろうという感覚はあります。4・78%はあまりに過大。通常の考え方で通常の方法で計算するだけで、下落率がここまで縮小します。

 「基準年の扱いが問題」
 計算方式はどう違うか。まず、基準年とは何かを知る必要があります。
CPI(消費者物価指数)は総務省統計局が調べています。5年に1度、調査対象品目を入れ替えます。それに合わせ、各品目の指数や総合指数なども5年ごとに、その年の年平均を100とした新基準に変えます。基準年は、平成7、12、17、22、27年となっています。旧基準と新基準の間の年は、旧基準の指数やウエイトで全体の加重平均を計算します。18、19、20、21年の各品目の指数や総合指数(全体の加重平均)は、17年平均=100を前提にした17年基準の数値。平成23、24、25、26年の各品目の指数や総合指数は、平成22年平均=100の22年基準の数値です。
 17年基準の20年の指数と22年基準の23年の指数はどうやって比較するのでしょうか。分かりやすくするため、A品目の値段が17年の100円から毎年10円ずつ下がるというモデルを考えました。
 17年=100とした17年基準の指数で表すと次の通りです。  



 これを22年=100の22年基準の指数に変えます。22年基準の22年の指数は当然100。17年基準の22年の基準は50です。50を100にするためにどうするか。簡単。2倍します。それぞれの年の指数を他の年の指数と比べたときの変化率を変えないようにするため、17、18、19、20、21年の指数もそれぞれ2倍します。17年基準で計算された18、19、20、21、22年の指数を22年基準に置き換えるために掛ける接続係数は、



ということになります。
22年=100の22年基準のA品目の指数は、17年基準の各年の指数を2倍していけばいいわけなので、計算結果は次の通りになります。



 22年基準の23年のA品目の指数は80です。
 20年は、17年基準では70、22年基準では140となります。

 「正しい算出方法は」
 20年の全体の物価指数は、総務省統計局の通常方式では次のように計算します。



 新しい基準年になって調査対象品目とそれぞれの品目のウエイト(支出割合)が変わります。これは消費実態調査にもとづいた変更です。
新しい基準年になる前は、そのときの基準年の指数やウエイトしか分かりませんから、そのときの基準年の指数やウエイトで計算するのは当たり前です。各品目のウエイトを加味した加重平均によって、その年の全体の物価水準がつかめる、というのが当たり前の考え方なのです。
こうして出てきた全体の物価指数(全国総合年平均CPI)の17年基準(17年=100)の数字は次の通りです。



 22年基準で示される全国総合年平均CPIは次の通り。22年=100・0、23年=99・7、24年=99・7
17年基準の22年の99・6を22年基準の100にするための接続係数は



22年基準(22年=100)の各年の総合CPIは、17年基準の各年の指数に
1・004を掛けて計算します。計算結果は次の通りです。



 平成20年から23年にかけての下落率は、



基準年が違う年の年平均総合CPIの比較はこうやって行います。
ところが、厚労省はまったく違う方法で生活扶助相当CPIを計算しました。大胆不敵です。

 「革命的な算出手法」
 厚労省の生活扶助相当CPI計算方式では、本来は旧基準が適用される年の分についても、個別品目の段階で最新基準の指数、ウエイトで計算します。今であれば、22年基準です。
平成20年についても16年についても22年基準の個別品目の指数、ウエイトで計算するのです。これは実は革命的とも言うべき算出手法なのです。

 「現在・過去・未来」
 このことをよく理解するには、現在・過去・未来の関係を考えてみるといいでしょう。
物価統計は毎月、毎年、発表されます。その時点を「現在」だと考えてください。政府・日銀などは「現在の物価がどうであるから、どういう金融・経済政策を考えようか」といった具合に考えます。現在の物価水準を測るために、物価統計のための調査対象品目を設定して、個々の品目の価格を調べます。その個々の品目の指数は、どこかの基準時点と比べて設定するよりありません。このとき、「未来」の年の価格は分かりようがないので、「過去」の年を基準年にすることになります。
平成20年平均の各品目の指数で言えば、17年平均=100とした17年基準の指数になっています。ところが、厚労省の生活扶助相当CPIの算出方式では20年については、個々の品目の22年基準(22年平均=100)の指数にウエイトを掛けます。「未来」の年を基準年にしているのです。今年は25年です。20年から見れば未来です。22年がどうだったかが今は分かるので、22年基準の20年の指数にウエイトを掛けて…などと簡単に言えますが、20年の時点はこんなことは考えようもないのです。物価統計は「現在」の物価を「過去」の物価と比べるもの。「未来」の物価と比べた厚労省方式は、SF映画を思わせる手法なのです。

 「個別品目の指数の変身」 
 こういった手法を使ったことで、計算過程から、通常方式と厚労省方式とで数字が大違いになりました。指数の変化率が小さい品目は目立たないですが、変化率が大きな品目は驚くほどの差異が見られます。
デスクトップパソコンの事例で、その雰囲気を感じ取ってください。デスクトップパソコンの平成17年基準の指数を見てみます。



となっています。これを22年基準に換算します。22年基準は22年=100。



という数字が出てきます。 整理して書くと



17年基準から22年基準への華麗な変身です。例えば、20年の指数は52・9から237・2に劇的に変わっています。

 「電気製品がデフレ率かさあげ」
 電気製品は大半の品目で値崩れが続いています。全体の加重平均を計算するとき、個別品目の指数は100を超していると概ね全体の数字を引き上げます。20年の電気製品の大半の品目は、17年基準だと生活扶助相当CPIの引き下げ役になりますが、22年基準だと生活扶助相当CPIの引き上げ役になります。
別紙のエクセル計算表を見ていただければ明瞭です。
厚労省計算方式による16年、20年の高い生活扶助相当CPIは、個別品目の指数を22年基準にしたことの結果です。こうして、電気製品が生活扶助相当CPIの大きな下落率の主要因になったのです。「生活保護世帯が現実にはあまり電気製品を買わないのに電気製品のウエイトが大きくなっている」という問題は国会でも厳しく追及されました。この二つのポイントを合わせて考えてみてください。厚労省の「作為的な統計づくり」に怒りが湧いてきませんか。

 「どの段階で換算しても同じでは?」
 基準年の異なる平成20年と23年の生活扶助相当CPIをどうやって比べるのか。20年の指数の扱いが通常方式と厚労省方式とでは大きく違います。
通常方式は、対象品目すべての加重平均である生活扶助相当CPIを17年基準で出しておいて、これを22年基準に換算します。
一方、厚労省方式では、個別品目の22年基準の指数に個別品目のウエイトを掛けます。個別品目の22年基準の指数は、17年基準を22年基準に換算したものです。二つの方式は、17年基準を22年基準に換算するタイミングが違うのです。
 
 そこで、こういった質問を受けることがあります。「どの段階で換算しても最終の計算結果は同じになるのではないの」。
何となくこう思いがちですが、間違いです。個別品目の20年の指数について考えてみましょう。22年基準の20年の指数は17年基準の指数に接続係数を掛けて算出したものです。
先ほどのデスクトップパソコンの例で言えば、接続係数は22・3分の100でした。それぞれの品目について、17年基準の指数に接続係数を掛けて22年基準の指数にする計算が行われているのです。接続係数はまったくさまざま。 0・5ぐらいの数字だったり、0・8ぐらいだったり、4ぐらいだったりします。
通常方式の方はどうか。17年基準の生活扶助相当CPIに接続係数を掛けて22年基準にする、というだけ。接続係数を掛けるのは1回限りです。両方式で最終の計算結果が一致するはずがない、ことは分かっていただけると思います。
個別品目の指数に掛けるウエイトも、通常方式では17年基準のウエイト、厚労省方式では22年基準のウエイト、と違うのだから、なおさらです。

 「下落率が大きくなる方式」 
 「通常のCPIを厚労省方式で計算してみることもできるはずですね。計算結果はどうなりますか」。こう質問されたこともあります。鋭い問いかけです。
実際に私が、全国総合CPIの平成18、19、20、21年の数値を試算してみました。通常方式では、この4年の間、対象品目になっていた品目のすべてが計算に組み入れられます。厚労省方式はそうではありません。17年基準では対象だった品目が22年基準で対象でなくなると、その品目は計算から除外するよりないのです。この点に注意は必要ですが、これによる影響はそんなに大きくありません。
ともかく、両方式による計算結果を表にまとめてみました。通常方式の数値は、17年基準で算出したものを22年基準で換算した22年基準の数字です。御覧のように、厚労省方式では4年とも、かなり高めの数値が出てきます。 



このあたりの年の総合CPIについては、生活扶助相当CPIと同様に、厚労省方式で計算すると高めの結果が出るのです。このあたりの年から23年にかけての下落率を計算すると、厚労省方式では総合CPIでも下落率が大きくなるわけです。生活扶助相当CPIの下落率が、20年と23年の比較で4・78%と大きいのは、下落率が大きくなるような計算方式が採用されたせいだと言えるでしょう。なぜ、通常方式で普通に計算しないのか。生活保護の受給世帯や支援者らの不満が高まることは必至です。

 「生活扶助相当は異色のCPI」
 生活扶助相当CPIは、厚労省が勝手に作ったのですが、総務省統計局が調査している品目群の中の一部を除く総合的指数とは言えます。こういった一部の品目を除く総合的指数には、いわゆるコア指数、コアコア指数があります。これらもCPIの通常の方式で算出されます。特殊な方式で算出される生活扶助相当CPIは異色の存在です。
 


 「生活扶助相当CPIの徹底検証を!!」
 生活扶助費の削減は今年8月から段階的に削減されます。来年4月以降の削減案も既に示されていますが、それがすんなり実現していいものではありません。
予定通り来年4月から消費税の3%増税が実施されると、物価の1%台半ばぐらいの上昇が起きるでしょう。生活扶助費の削減と消費税増税がともに来年4月から実施されると、生活保護世帯の生活は非常に厳しくなってしまいます。
その上、生活扶助相当CPIがデタラメな指標です。物価と生活扶助費の関係について、政府の審議会や国会などで真剣に議論されなければならないと思います。
デタラメな生活扶助相当CPIがさほど世間で問題にされず、生活扶助費の削減が予定通りどんどん進む。そういった悪夢のような事態が進むのを傍観していていいのでしょうか。
生活保護の受給者やその支援者らも、物価と生活扶助費の関係をもっともっと研究するべきです。
生活扶助相当CPIがデタラメであることを徹底検証する特別チームを編成することが急務だと思います。



両方式計算対照表


指数の接続モデル図
平成17年から22年にかけて半値になる事例。上は17年基準(17年=100)。下は22年基準(22年=100)。
20年の指数は、上の17年基準だと70。下の22年基準だと140。
変化率は変わらず、左側の目盛りが変わっただけ。17年のところを100にしたのが上。22年のところを100にしたのが下。
17年基準を22年基準にするには、上の図の22年=50を、22年=100にする。それぞれの年の間の変化率が変わらないようにす
るため、上の図の他の年の指数にも50分の100を掛けて、下の図のようにする。



 

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