みどりの一期一会

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特定秘密保護法案、衆院で可決:国民軽視の強行突破だ/民主主義の土台壊すな/民意おそれぬ力の採決

2013-11-27 21:01:34 | ほん/新聞/ニュース
「特定秘密保護法案」が、昨日夕方、衆議院の本会議で可決されてしまいました。

特定秘密保護法案については、このブログでも何度も取り上げましたが、
このような多数で押し切るやり方は、数の暴力、暴挙としか言いようがありません。

新聞各社も社説で取り上げ、明確に反対の意思を示しています。

中日新聞、毎日新聞、朝日新聞の社説を紹介します。

  【社説】国民軽視の強行突破だ 特定秘密保護法案  
2013年11月27日 中日新聞

 広く疑念の声があがる特定秘密保護法案が衆院の本会議で可決した。巨大与党が力ずくで、渦巻く反対論をねじ伏せたのだ。強行突破は看過できない。

 福島で二十五日に開かれた地方公聴会は、いったい何のためだったのだろう。首長や学者ら七人が意見を述べたが、賛成者は一人もいなかった。「慎重に、国民のために議論を尽くすことが大切だ」「外国の信頼よりも、国民の信頼を得るべきだ」-。もっともな意見が続出した。

 とくに原発事故で放射能の拡散予測が隠された体験があるだけに、「一番大切なのは情報公開だ」と語った人もいた。

 数の力でのおごりだ
 その翌日に衆院の本会議で、一部野党との修正協議を経た法案が、駆け足で可決された。つまり、福島の公聴会はたんなる“儀式”にすぎず、与党は耳をふさぎ、尊重もしなかったのだ。あまりに乱暴である。

 さまざまな危うさが指摘される秘密保護法案であるため、報道各社の世論調査でも「慎重審議」を求める意見が、60%台から80%台を占めていた。国民の声すら軽視したに等しい。

 与党は圧倒的な数の力におごっている。修正案に加わった日本維新の会さえ、この採決には退席した。この強行可決をあえて暴挙と呼ぼう。

 修正案自体も評価に値しない内容だ。秘密の有効期間は最長三十年だったが、「六十年を超えることができない」という規定が加わったため、「六十年原則」の方が幅を利かせる恐れがある。

 その場合も七項目の例外が設けられていて、中には「政令で定める重要な情報」という、あいまいな言葉が挿入されている。これでは半永久的に国民から重要情報が遮断されてしまう。

 議員こそ反対の先頭に
 特定秘密の指定や解除などについて、首相が「その適正を確保するため(中略)指揮監督する」という条文も、効力を発揮しないだろう。首相は行政機関の「長」の上に存在する「長」であるから、公正な審判役たりえない。

 約四十万件とも見積もられる特定秘密の膨大な文書に対し、首相がいちいち目を通すはずもない。全くの空文である。


 有識者会議もたんに基準を示すだけの存在だ。本当に実質的な秘密に値するかどうかのチェックは、司法権さえからも受けない仕組みなのだ。

 付則では「独立した公正な立場において検証し、監察する新たな機関の設置」が書かれた。だが、あくまで検討事項にすぎないし、具体的な中身も不明である。法案が抱える欠陥を補えるとは到底、期待できない。

 国会への特定秘密の提供も付則に記されたものの、その方策はやはり検討事項にとどまる。この法案が国権の最高機関さえ素通りし、官僚機構が情報支配を進める原点に変わりはないのだ。

 問題のありかは特別委員会の審議を経ても山積している。衆院本会議で可決・通過したので、次は参院に移る。もっと議論して、廃案に持ち込んでほしい。

 とくに憲法の観点から疑念が持たれている点を重視すべきである。国民主権や基本的人権、平和主義の三大原則から逸脱していることだ。

 いわゆる「沖縄密約」や「核密約」などの問題は本来、活発に議論されるべき国政上の大テーマである。これに類似した情報が特定秘密に指定されると、国民は主権者として判断が下せない。

 国会議員といえども、秘密の壁に阻まれてしまう。仮に情報を得たとしても、政策秘書や所属政党に口外すると、処罰対象になる。議員は院内での免責特権があるものの、国会追及はとても期待はできないだろう。

 国政上のテーマについての言論を封じ込める法案とは、ほとんど情報統制の世界に近い。国会議員自身の問題でもある。どれだけの議員が、この深刻さを理解しているか。本来は議員こそ反対の先頭に立つべきなのだ。

 軍事面に過度に傾いている法案であるうえ、安倍晋三内閣は来年にも集団的自衛権の行使ができる「国家安全保障基本法案」の提出をめざしている。平和主義とも相いれないはずだ。

 三角形は美しく保て
 特定秘密の取扱者は、飲酒の節度や借金などまで調べ上げられる。調査は親族にも及ぶ。人権上の懸念が持たれるのも当然だ。反原発運動など、さまざまな市民活動の領域まで、公権力が監視する心配も濃厚だ。

 行政権だけが強くなる性質を持つ法案である。民主主義の三角形を美しく保つためにも、あらためて反対表明をする。


【コラム】中日春秋   
2013年11月27日 中日新聞

 明治の昔「吏党」と「民党」という呼称があった。今で言う与党と野党である。官僚側につく党が吏党、対する民権派が民党だ

▼第一回の総選挙で衆院議員となった反骨の思想家、中江兆民の命名だと伝えられる。今は死語となった「吏党」ではあるが、国会中継を見ながら考えた。この呼び名を復活させてはどうだろうか

▼<「機密」というのは、官僚制独自の発明物だ>と定義したのは、ドイツの碩学(せきがく)マックス・ウェーバーだ。ペルシャ王の会計吏は予算編成術を秘伝とし暗号を用いた。プロイセンで公表される統計は官僚らに無害のものだけである…。そんな例を引きつつ、彼は指摘した。<官僚制的行政は、つねに公開禁止を旨とする>ものであり、己の優位を保つため秘密を作り守ろうとすることほど、官僚が熱意を注ぐものはないと

▼官僚は、議会が国政調査権で情報を得ようとするような<あらゆる企てに対して闘争する。充分に情報を与えられておらず、したがって無力な議会は、いうまでもなく官僚制にとっていっそう好都合である>(『権力と支配』講談社)

▼二十世紀初頭に書かれたウェーバーの官僚論が、眼前でまさに証明されていく思いだ。国政調査権を危うくする特定秘密保護法案を、与党は衆院で可決した

▼政党が自らの首を絞める愚を冒してまで、官の喜ぶ法を作る。吏党のなせる業だろう。 


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 社説:秘密保護法案衆院通過 民主主義の土台壊すな  
毎日新聞 2013年11月27日 02時30分

 あぜんとする強行劇だった。
 衆院国家安全保障特別委員会で特定秘密保護法案が採決された場に安倍晋三首相の姿はなかった。首相がいる場で強行する姿を国民に見せてはまずいと、退席後のタイミングを与党が選んだという。

 与党すら胸を張れない衆院通過だったのではないか。採決前日、福島市で行った地方公聴会は、廃案や慎重審議を求める声ばかりだった。だが、福島第1原発事故の被災地の切実な声は届かなかった。

 審議入りからわずか20日目。秘密の範囲があいまいなままで、国会や司法のチェックも及ばない。情報公開のルールは後回しだ。

 国民が国政について自由に情報を得ることは、民主主義社会の基本だ。法案が成立すれば萎縮によって情報が流れなくなる恐れが強い。審議が尽くされたどころか、むしろ法案の欠陥が明らかになりつつある。

 この法案について首相はさきの参院選で国民に十分説明せず、今国会の所信表明演説でも触れなかった。ところが今、成立ありきの強硬路線をひた走っている。衆参のねじれ状態が解消して4カ月での与党のおごりである。

 一部野党が安易な合意に走ったことも消せぬ汚点だ。日本維新の会、みんなの党両党との修正合意は法案の根幹を何ら変えていない。維新の会と「検討する」と合意した秘密指定の妥当性を判断する第三者機関の設置も確約されたとは言えない。

 秘密指定の最長期間が60年となるなど、改悪となりかねない部分すらある。これではまるで与党の補完勢力ではないか。

 衆院は通過したが、法案の必要性を改めて吟味する必要がある。

 国の安全が脅かされるような情報を国が一定期間、秘密にするのは理解できる。

 情報漏えいを禁じる法律は、国家公務員法、自衛隊法、日米相互防衛援助協定(MDA)秘密保護法があり、懲役の最高刑はそれぞれ1年、5年、10年だ。一方、政府は、過去15年で公務員による主要な情報漏えい事件が5件あったとの認識を示した。この三つの法律の枠内で、起訴猶予になったり、最高刑を大幅に下回る刑の言い渡しを受けたりしている。

 現行法の枠内で、情報が漏えいしないような情報管理のシステムを各行政機関内で構築して規律を守ることが先決だ。

 法案では、防衛・外交情報のほか、テロ活動防止などの名目の公安情報も特定秘密の対象となる。監視活動が中心の公安捜査は、国民の人権を制約する。

 情報を知ろうとする国民が処罰されるような強い副作用を覚悟の上で、新たな法律を今作る必要が本当にあるのか。

 「知る権利」に対する十分な保障がなく、秘密をチェックする仕組みが確立されていないなど問題点や疑問はふくらむばかりだ。
院では一度立ち止まり、この法案の問題点を徹底的に議論した上で危うさを国民に示すべきだ。

 民主主義の土台を壊すようなこの法案の成立には反対する。


  社説:特定秘密保護法案―民意おそれぬ力の採決 
朝日新聞 2013年11月27日

 数の力におごった権力の暴走としかいいようがない。

 民主主義や基本的人権に対する安倍政権の姿勢に、重大な疑問符がつく事態である。

 特定秘密保護法案が、きのうの衆院本会議で可決された。

 報道機関に限らず、法律家、憲法や歴史の研究者、多くの市民団体がその危うさを指摘している。法案の内容が広く知られるにつれ反対の世論が強まるなかでのことだ。

 ましてや、おとといの福島市での公聴会で意見を述べた7人全員から、反対の訴えを聞いたばかりではないか。

 そんな民意をあっさりと踏みにじり、慎重審議を求める野党の声もかえりみない驚くべき採決強行である。

 繰り返し指摘してきたように、この法案の問題の本質は、何が秘密に指定されているのかがわからないという「秘密についての秘密」にある。これによって秘密の範囲が知らぬ間に広がっていく。

■温存される情報の闇
 大量の秘密の指定は、実質的に官僚の裁量に委ねられる。それが妥当であるのか、いつまで秘密にしておくべきなのかを、中立の立場から絶え間なく監視し、是正を求める権限をもった機関はつくられそうにない。

 いま秘密にするのなら、なおのこと将来の公開を約束するのが主権者である国民への当然の義務だ。それなのに、60年たっても秘密のままにしておいたり、秘密のまま廃棄できたりする抜け穴ばかりが目立つ。

 こうして「情報の闇」が官僚機構の奥深くに温存される。

 「これはおかしい」と思う公務員の告発や、闇に迫ろうとする記者や市民の前には、厳罰の壁が立ちはだかる。

 本来、政府が情報をコントロールする権力と国民の知る権利には、適正なバランスが保たれている必要がある。

 ただでさえ情報公開制度が未成熟なまま、この法案だけを成立させることは、政府の力を一方的に強めることになる。

■まずは国家ありき
 「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」という文書がある。

 この6月、南アフリカのツワネでまとめられた。国連や米州機構、欧州安全保障協力機構を含む約70カ国の安全保障や人権の専門家500人以上が、2年にわたって討議した成果だ。

 テロ対策などを理由に秘密保護法制をととのえる国が増えるなか、情報制限の指針を示す狙いがある。

 国家は安全保障に関する情報の公開を制限できると認めたうえで、秘密指定には期限を明記する▽監視機関はすべての情報にアクセスする権利を持つ▽公務員でない者の罪は問わないなど、50項目にのぼる。

 法案は、この「ツワネ原則」にことごとく反している。

 安倍首相は国会で、欧米並みの秘密保護法の必要性を強調したが、この原則については「私的機関が発表したもので、国際原則としてオーソライズされていない」と片づけた。

 これだけではない。国会での政府・与党側の発言を聞くと、「国家ありき」の思想がいたるところに顔を出す。

 町村信孝元外相はこう言った。「知る権利は担保したが、個人の生存や国家の存立が担保できないというのは、全く逆転した議論ではないか」

 この発言は、国民に対する恫喝(どうかつ)に等しい。国の安全が重要なのは間違いないが、知る権利の基盤があってこそ民主主義が成り立つことへの理解が、全く欠けている。

■世界の潮流に逆行
 一連の審議は、法案が定める仕組みが、実務的にも無理があることを浮き彫りにした。

 いま、政府の内規で指定されている外交・安全保障上の「特別管理秘密」は42万件ある。特定秘密はこれより限られるというが、数十万単位になるのは間違いない。

 これだけの数を首相や閣僚がチェックするというのか。

 与党と日本維新の会、みんなの党の修正案には、秘密指定の基準を検証、監察する機関を置く検討が付則に盛り込まれた。

 首相はきのうの国会答弁で第三者機関に触れはしたが、実現する保証は全くない。

 有識者会議の形で指定の基準を検証するだけでは、恣意(しい)的な指定への歯止めにはならない。役所が都合の悪い情報を隠そうとする「便乗指定」の懸念は残ったままだ。

 独立した機関をつくるならば、膨大な秘密をチェックするのに十分な人員と、指定解除を要求できる権限は不可欠だ。

 この法案で政府がやろうとしていることは、秘密の保全と公開についての国際的潮流や、憲法に保障された権利の尊重など、本来あるべき姿とは正反対の方を向いている。

 論戦の舞台は、参院に移る。決して成立させてはならない法案である。



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