読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

ななつ星が歴史を変える -十津川警部シリーズ- 西村京太郎 オール読物2014.5-11月号

2015-02-01 11:16:14 | 読んだ
十津川警部シリーズであるが、小説新潮に同時期に掲載された「金沢が歴史を創った日」(2014.6-12)と同様、第2次世界大戦の終戦時を題材としている物語である。

私は「金沢・・・」を先に読んでいたのだが、これ同時に読んでいたら混乱しただろうなあ。

今回は、十津川警部が、三上刑事部長からプライベートで夫婦同伴で、JR九州の「ななつ星」に乗車し、何か起きるであろう事件を防ぐよう指示される。
という、まあありえないことから始まる。

もっとも、まあありえない、事件がこの物語では起きているのであるが。
さらに、申し上げれば、十津川警部は事件を防ぐことがなかなかできないし、事件の拡大も多い、最終的には解決するのではあるが、十津川警部が登場してから起きる殺人も多く、そういう意味では「名探偵」ではないのである。

上記の評価は、なんだかで読んだやつで、名探偵といわれる人物が物語に登場してから殺人が起き、その人数が一番多かったのが「金田一耕助」だったような気がする。
もしかしたら、十津川警部は金田一を超えたのではないだろうか?

というわけで、今回も、十津川警部は事件を未然に防ぐことはできませんでした。
しかし、今回の事件は、物語の大きな流れにあまり影響しないので、まっいいか、なのである。

さて、ななつ星のなかで行われるのは、終戦間際、蒋介石のもとから和平の使者として日本にやってきた「繆斌(みょうひん)」が行った、和平工作がなぜ失敗したのか?そして終戦後すぐに蒋介石によって漢奸として処刑された繆斌の名誉はどうなるのか?
といったことを、中国側から4人(繆斌の子孫)と日本側から4人がでて話し合うのである。

私は今回この物語をよんで初めて繆斌という人物を知ったのであるが、彼の工作はなかなかに面白いものがある。
そして、なぜ蒋介石が米英やソ連を差し置いて単独で和平を行う必要があったのか、という説明にも説得力がある。

この繆斌の和平工作は実際にあったらしく、ウィキペディアにも載っている。

和平工作には、時の総理大臣・小磯國昭や国務大臣・情報局総裁緒方竹虎、天皇に近い東久邇宮稔彦が賛成したのだが、例えばもっとも戦争に反対していたといえる米内海軍大臣や重光外務大臣が猛反対。
しかも戦争遂行に積極的であった、阿南陸軍大臣が賛成という、なんだか、これまでのイメージが全然違う展開である。

このあたりが、何べんも繰り返され語られるので、このあとどういう展開になるのだろうか、と心配しながら読み進めていたたら、事件発生。

というわけで、この和平工作についての解説と論評がこの物語の柱である。
そちらのほうに興味がある方は、ぜひ読んでいただきたい、「金沢が歴史を創った日」も合わせて読むと、終戦間際のいろいろなことが知ることができる。

このシリーズはまだまだ続くのだろうか?
十津川警部シリーズとは別に、楽しみではある。

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