尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

岸田内閣のゆくえ、「小池新党」の可能性ー2024年政局展望

2023年12月13日 22時26分34秒 | 政治
 岸田首相は臨時国会終了後の14日にも、安倍派所属の閣僚を更迭(こうてつ)する意向を表明した。当初は副大臣、政務官も含む「安倍派一掃」になると言われ反発も広がっていたらしい。岸田派にも不記載はあったわけで、安倍派だけに責任を取らせるのかという気持ちも判らないではない。だが安倍派が突出して不記載金額が多かったのは間違いない。事実とは違うなら、そう主張すればいい。それが「精査する」「捜査中」だの言ってるだけで、官房長官がまともに答弁出来ない状態が続いている。党どころか国民にも悪影響をもたらしているのだから、常識的な感覚では自分たちの側から辞表を出すべきだ

 ところが「安倍派一掃は見送り」ということになりそうで、政務官は残留するらしい。そもそも党内最大の安倍派を敵に回したら、岸田内閣は成り立たない。怒らせたら再選はない。さすがにもう総裁再選は諦めたのかもしれない。だが人事でこうフラフラするようでは、いつまで岸田内閣が持つのかという感じになってきた。松野官房長官の後任は、報道によれば林芳正前外相と伝えられている。実力的には十分だろうが、近年は自分の派閥以外から起用されることが多かった。岸田派以外から起用できないぐらいの党内情勢なのかもしれない。まあ、ちょっと前までは竹下内閣の小渕恵三のように、自派の中堅幹部を据えることが多かった。小泉内閣では福田康夫細田博之安倍晋三だった。総理の名代格だから、自派閥の方が安定する面はあるだろう。
(松野官房長官の不信任案否決)
 取りあえず、今後「予算編成」が控えていて、1月末には通常国会が開かれる。よって、いくら支持率が下がろうが、自民党内に反発が広がろうが、予算成立までは岸田内閣が存続すると見るのが自然だ。ただ、その間の捜査の進展により、「予算成立後の退陣」を表明しなければ予算が成立しない事態もある。そう発言しているのが石破茂氏で、1989年のリクルート事件当時、竹下政権はそうせざるを得なかったと例を挙げている。だが、その時は首相の秘書が未公開株を取得するなど本人への疑惑があり、また野党第一党の社会党が土井たか子党首のもとで支持が高くなっていた。7月に参院選が控えていた事情も大きい。

 今回は2024年に国政選挙は(補欠選挙以外)予定されていない。野党は分断されていて、弱小勢力になっている。今選挙をすれば野党が大きく伸びるという世論調査があってこそ、与党への厳しい追及に迫力が出る。岸田内閣も自民党も支持率が低迷しているが、それ以上に野党の支持率も低い。それ以上に自民党内に「次の首相候補」がいない。世論調査をしても、これという有力候補が出て来ない。今回名前の挙った派閥からは出られないだろうし、岸田首相を引きずり下ろしたら支持率が回復するという見込みもない。野党側も今どき「審議拒否」は出来ないだろうから、なんだかんだ言っても予算は成立するのではないか。

 ところで、4月末に補欠選挙が予定される。現時点では対象議員がいない(汚職容疑で逮捕・起訴された秋元真利議員も議員を辞職していない)が、今後今回の裏金問題で辞職する議員が出て来ると見込まれるのである。(証拠が検察当局にそろっている場合、政治資金規正法違反を認めて早く辞職した方が公民権停止期間が短くて済む。)その補欠選挙は(自民党にとって)厳しいものになるだろう。岸田首相からしてみれば、安倍派の辞職議員がもたらした補選の責任を取らされて辞めざるを得なくなるのは不本意だろう。そうなると、ここでイチかバチか衆議院を解散してしまおうという誘惑に駆られるに違いない。

 ということで岸田首相は予算成立後の解散を選ぶ可能性が高いのではないか。その選挙では自民党・公明党の与党勢力は減るだろう。しかし、地方選挙の結果を見ても、自民党全体がどうしようもなく追い込まれているとまでは見えない。減っても過半数は維持出来るかもしれず、仮に過半数を割り込んでも国民民主党を連立に入れることで過半数を維持出来ると踏んでいるに違いない。それが臨時国会中に突然「ガソリン税のトリガー条項解除」の話が再燃した理由だと思う。そこまで先を読んで、布石を打っておくということだと僕は考えている。

 一方、そのような岸田首相の目論みに対抗する勢力はどこにあるだろうか。それは立憲民主党や共産党ではなく、実はあるかもしれない「小池新党」ではないだろうか。小池とは小池百合子都知事である。それを支持するとか期待するとかという話ではない。だが、国民民主党から前原誠司氏が離党を表明し「教育無償化を実現する会」したことを見るとそういう予測が可能になる。その後に小池知事が「東京都の高校授業料無償化」を打ち出したのも、連動した動きではないか。(これは私立高校生徒の保護者への支援だから、無償化とは僕は評価していないが。)もちろん、それは大阪の「維新」と結びついている。
(前原新党の立ち上げ)
 前原氏は2017年のいきさつから「立憲民主党」には行けない。自民との連立を模索する(かに見える)玉木路線の「国民民主党」とも決別した。2017年の「希望の党」では小池氏と協力した。また、以前から地元京都では「維新」と協力してきた。ということで、前原新党を仲立ちにして、「維新」と小池都知事が結びつくという可能性を考えておくべきだと思うのである。2024年7月には都知事選が予定されている。小池氏が三選を目指すかどうかは明言していないが、一般的には「また都知事選に出るだろう」と思われているらしい。本人は最後まで明言を避けるだろうが、僕は国政復帰の野心はあるだろうと推測しているのである。
(江東区長選後の小池知事と大久保新区長)
 直近の10日に行われた江東区長選では、小池都知事は何回も足を運んだと報道されている。選挙が好きなんだと思う。2017年には都知事就任1年で国政選挙に出るのは難しく、また「民進党」(当時)の全員ではなく「排除」発言で批判を受けた。しかし、もう「排除」は済んでしまった(小池氏に排除されたのが「立憲民主党」である。)そこで大阪と東京の「実績」(と自分たちで主張するもの)、例えば(私立高校を含めた)高校教育無償化を取り上げて、国政選挙に出る可能性が高いと踏むのでいる。ただ春から初夏に解散がない場合、都知事選に出ることになる。どうなるかは現時点では読み切れない。

 吉村大阪府知事は2025年に万博を控えている以上、それが終わるまでは国政選挙に出ることが出来ない。そうなると、「維新」政権は小池氏を首班候補に担ぐことになるだろう。前原氏はもう小勢力になってしまったが、外務、財務、官房長官などを即戦力で務められる人材には違いない。小池、吉村、前原が並んで演説すれば、自民党にお灸を据えたい保守系有権者に人気が出る可能性を秘めている。このままでは終わりたくない小池氏や前原氏は、「最後の闘い」をするだろうか。僕が思うに、それが2024年政局の最大関心事。繰り返して言うが、自分はこのような「維新=小池」政権が成立したら大変だと思っている。だが、いろんなことを考えておくべきだと思うのである。
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