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尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

岡林信康23年ぶりのCD「復活の朝」

2021年05月02日 22時28分45秒 | アート
 岡林信康(1946~)の23年ぶりという新作CD「復活の朝」を買ってしまった。CDを買ったのはずいぶん久しぶり。そもそもCDプレーヤーが故障して、しばらく聞けなかった。配信で聞いてるわけでもなく、一年ぐらいテレビでたまに聞くぐらいだった。最近DVDとCDを一緒に再生できるプレーヤーを買って、ようやく聞けるようになったのである。クラシックや昔の英語の歌(ナット・キング・コールサイモン&ガーファンクル等)を流してることが多い。
(「復活の歌」)
 「コロナ禍の中23年ぶりに放たれる岡林信康の全曲書下ろしアルバム。等身大の姿が浮かび上がる全9曲!」と書かれている。「2020年6月にYouTube上で突如発表されたアルバムタイトル曲でもある「復活の朝」をはじめ、環境破壊生と死自身の老い平凡な日常のありがたさ画一化する社会やシステム体制への痛烈な皮肉など、今の時代の空気に切り込んだ岡林信康らしいテーマが並ぶ。アルバムのラストには1stアルバム『わたしを断罪せよ』(1969年発表)に収録された「友よ」の続編ともいえる「友よ、この旅を」で締めくくられる。」

 岡林信康って誰だと言われるかもしれない。60年代末から70年代にかけて「フォークの神様」を呼ばれた。「山谷ブルース」「手紙」「チューリップのアップリケ」などで日雇い労働者や差別をテーマにして、放送されない名曲を数多く作った。でも僕はラジオで聞いて知ったんだから、ある時期までは放送できたんだろう。これらは日本のプロテストソングの代表曲だ。
(昔の岡林信康)
 その後、労音公演に現れずに「失踪」し、まさにボブ・ディランのようにロック調に転向して再登場、はっぴいえんどをバックに、「私たちの望むものは」「それで自由になったのかい」などを歌った。前者は「私たちの望むものは 生きる苦しみではなく 私たちの望むものは 生きる喜びなのだ」と始まりながら、歌詞は転々とし「今ある不幸せに止まってはならない まだ見ぬ幸せに今跳びたつのだ」と呼びかける。後者は「あんたの言ってる自由なんで ブタ箱の中の自由さ 俺たちが欲しいのは より良い生活なんかじゃないのさ」「それで自由になったのかい それで自由になれたのかよ」と安定に向かう70年代に向かって激しく煽動した。
(「手紙 それで自由になったのかい」のシングルレコード)
 ライナーノートを松本隆が書いている。「ひとつの時代を駆け抜けて、数十年ぶりに会えない日々があって、またこうして巡り会える幸福。」70年代以後の岡林は農業をやったり、演歌に近づいて美空ひばりに曲を提供したり、民謡のリズムを取り入れた「エンヤトット」のロックを作ったり…。いろいろな道を歩いていたが、音楽活動としては自主製作はしてもプロとしてのCDは作らなかった。そして、2021年、コロナ禍の中に岡林は帰ってきたのだが…。全9曲に3千円はちょっと高いかもしれない。知らない人は手を出さないだろう。でも「友よ」の続編があるとか言われると、僕は買わずにいられない気になった。
(最近の岡林信康。ライナーノートから)
 さて、その曲は。全曲作詞も作曲も岡林信康。「復活の朝」は「高層ビルの壁がならび 太い蔦がからみついてゆく ビルは蔦の葉に飲みこまれ やがてトリの声響く深い 深い森に変わるのだろう」と始まる。「蝉しぐれ今は消え」では「この旅を終えた時 亡骸となるけれど 良き想い出となって 君の心に宿り 生き続けたいと思う」と歌う。広い意味で「環境」と「老い」が基調となっている。「コロナで会えなくなってから」「恋と愛のセレナーデ」「お坊ちゃまブルース」「アドルフ」と現代日本を風刺する。「BAD JOKE」「冬色の調べ」に続き「友よ、この旅を」。

 雨の日も風の夜も この道を歩み行く ささやかな喜びに 微笑みながら
 悲しみは新しい 喜びを運ぶのか 陽は沈み陽は昇る 歩いてゆこう
 喜びも悲しみも 受けとめて噛みしめて このたびを行こう 友よ 
 終わりの日まで 

 バラード調の調べに載せて、やはり「老い」の年月が歌われる。岡林の神話的名声を知っていて、今や高齢を迎えた人しか買わないかもしれないが、この年月の歩みを感じさせられた。
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