尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

震災2カ月-「知事抹殺」を読む

2011年05月12日 20時48分37秒 |  〃 (原発)
 昨日は震災2カ月だが、同時にハンセン病違憲国賠訴訟の熊本地裁判決10周年の日だった。映画見てて遅くなって、帰ってメール見るまで全く忘れてました。東京の新聞には報道がなかったが、さすがに熊本日日新聞には出てる。「差別なくす旗振り続ける」 

 震災の死者は毎日少しずつ増えている。今や生還はないわけだから、死者が増えるとは、行方不明者が少しずつ減っていることを意味する。僕が被災地にいた4月18日に死者が行方不明者を上回り、5月7日に行方不明者が1万人を割った。今朝の朝刊では「死者1万4981人、行方不明9853人」である。昨日は行方不明者9880人だった。阪神淡路大震災の死者・行方不明者は6437人だった。2カ月たって、未だに阪神淡路大震災の犠牲者すべてを上回る行方不明者がいるのである

 福島第一原発事故は、まだその行く末が見えない。この問題に関しては、前福島県知事佐藤栄佐久の「知事抹殺 つくられた福島県汚職事件」(平凡社、2009)を読んだ。これは実に興味深く、面白くてためになる必読本。後半の「汚職事件」をめぐる部分も冤罪主張本として面白い。昨年の特捜捜査スキャンダルを経て、いまや誰もこの事件を検察の構図だけで判断する人はいないだろう。何しろ2審東京高裁では「わいろ額ゼロ」という認定なのだから。贈賄側は水谷建設で、これは小沢一郎事件に出てくるところだから、福島県知事事件の構図が崩れると重大な問題となってくる。ところで、佐藤前知事は逮捕されてから、独房で食事すると思ってなかったなどと書いてる。参議院議員、県知事にして、裁判所は初めてだというし、全然司法界のことを知らないのである。(地元の松川事件の救援を知らなかったか。)

 一方、前半の原子力をめぐる国との闘いのところは、こっちが知らないことばかりで、いやびっくりした。というか、東電の事故隠し、もんじゅの事故などは個々には覚えているが、佐藤知事が国と闘ったことで、2003年には一時東電の福島、柏崎の全原発が停止にいたった。なんて、忘れてました。そこに読売が原発再稼働に向けた社説を出す。結局、佐藤知事は東電と国に県としての報告書を渡し、要望を突きつけることで運転再開を認めた。その要望とは何かというと、「原子力安全・保安院の経産省からの分離」「原発の高経年化対策の強化」だった。(103ページ)

 今回の事故に関して、なんで原発を推進する経産省の中に、原子力安全・保安院という組織があるのかとみんな思ってるだろう。2001年からの省庁再編時にそういうことにされた。しかし、原発立地県の知事から分離の要求がちゃんと出ていたのである。(ちなみに要望を受けた経産相は故・中川昭一。)やはり自民党政権による人災だったのである。

 今検索すると、佐藤前知事は原子力で国と対立して「国策捜査」で抹殺されたというような記事がいっぱい出てくる。ご本人は公式ブログで4月21日に海外特派員協会で行った講演を載せている。英訳も載ってるので直接読んでください。

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