尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

懐徳館庭園(旧加賀藩主前田氏本郷本邸庭園)に行く

2022年10月15日 22時41分40秒 | 東京関東散歩
 10月第3土曜日は毎年東京大学のホームカミングデーである。まあ、僕は東大が「ホーム」じゃないけれど、2年間コロナで開催されなかったこの日を実は待っていたのである。それは東大本郷キャンパス内にある「懐徳館庭園」が公開されるからである。東京には幾つも素晴らしい庭園があって、国の名勝に指定されている。その中で普段は非公開なのが、浅草寺の伝法院庭園とここ懐徳館庭園である。伝法院は時々公開されるので、前に見ている。しかし、懐徳館は1年に1日だけの公開なのである。
    
 「懐徳館庭園」は「旧加賀藩主前田氏本郷本邸庭園」である。よく知られているように、東大本郷キャンパスは江戸時代に加賀藩上屋敷だった。有名な「赤門」(現在、構造調査のため閉門中)は1827年に将軍家斉の娘が前田家に輿入れするときに建てられた門である。明治になって、前田家は本郷邸を本邸とした。その後改築を行い、1905年に日本館、1907年に西洋館が竣工し、明治天皇も訪れた。へえ、本郷の地に壮麗な洋館があったんだ。その後1926年に前田邸敷地と農学部、代々木演習林を交換することになり、前田家は駒場に今に残る大規模な洋館を建てたわけである。(本郷の洋館は空襲で焼失。)
(本郷にあったかつての洋館懐徳館) 
 懐徳館庭園は本郷キャンパスの一番東側にある。今日は自宅から行きやすい地下鉄千代田線湯島駅から歩いて、龍岡門の方から入った。結構坂道だったのを忘れていて、本富士警察署まで結構疲れたが、東大構内に入れば案外近い。突然出て来る感じである。日本館が見えるが、それが先の写真。玄関近くに机があってちょっとした資料が置いてあった。玄関は空いてるけど、中は公開してない。館に入れなければ、さっさと庭の方に向かうしかない。そうすると案外狭くて、池に水がないから「枯山水」そのもの。どこか兼六園を思わせるけど、あそこをぐっと小さくした感じか。
   
 庭の方から邸宅を見ると、こんな感じ。この邸宅は戦後になって、1951年に総長宿舎(大学迎賓館)として再建されたものだという。その時庭園はなるべく在来のもので修復したと書かれている。庭側はガラス窓で廊下が見える。昔風の日本の家である。
   
 「懐徳」とは論語から取られているという。「君子懐徳、小人懐土、君子懐刑、小人懐恵」だそうである。「君子は徳を重んじるが、小人は土地を重んじる。君子は法を重んじるが、小人は自らの利益を重んじる」という意。前田家はさすがに百万石で、今の東京にも幾つもの足跡を残している。ただし、この本郷邸やその後の駒場邸も江戸時代のものではない。震災、戦災があったからではなく、大名家は華族として明治に続き、皇族の訪問に備えて洋館を建設したのである。島津邸(現・清泉女子大)も同様。近代遺産なのである。帰りがけに振り返って屋敷を写した。
  
 後はブラブラ歩きながら本郷三丁目駅に急ぐ。東大構内は内田ゴシックと呼ばれるような壮麗な建築がたくさん残っている。こういう建物を見ると、どんな青春のドラマがかつて繰り広げられたのかと想像の翼がふくらんでいく。東京の大学には近代の美が残されている。また無料の博物館なども多い。以前も書いたが、「大学を観光に生かす」ということをきちんと考えて欲しいと思う。東京と京都では大きな財産になると思う。
 (安田講堂)(赤門)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『なまいきシャルロット』『... | トップ | 「戦前日本の映画検閲ー内務... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

東京関東散歩」カテゴリの最新記事